著者
佐藤 昌
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.167-188, 1986-02-28
被引用文献数
2 1

近年日本の伝統様式の庭園が諸外国で築造せられ,高い評価を受けている。これについては,長い間の書籍,見聞記,広報,写真,映画等の情報の集積によるものであるが,国際的評価を得る主な原因は,彼等が実際に造られた日本造園を自分の国で実際に見る機会を得ることである。本稿は,諸外国で行なわれた万国博等に我国が出展した庭園及び日本に旅行滞在した外国人が自らの庭に作った初期のものを考察するものである。
著者
渡辺 達三 鈴木 雅和
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.187-192, 1992-03-31
被引用文献数
4

蓮は古来,紅蓮,白蓮などとその花色によって分けて呼ばれるように,色彩に大きな関心がもたれてきた。蓮の花色には花弁,雄ずい,花托などの要素が関与し,それら全体によって独特の色あいを呈するが,今回は,そのうちでも大きな要因をなすとみられる花弁を取り上げ,それを拡散照明受光方式による色彩色差計により測定し,L^*a^*b^*表色系による色彩空間を求め,1)品種(間),2)開花経過日数(間),3)着弁位置(間)におけるその実態の把握を行った。
著者
斎藤 馨 熊谷 洋一 本條 毅 趙 東範 吉岡 太郎 筒井 一貴
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.197-200, 1995-03-31
被引用文献数
7 4

東京大学キャンパス樹木調査GISデータを用いて,建築物を含む樹木景観の現況把握・予測に必要な情報処理手法について検討した。GISデータから樹木・建築物の3次元データ生成・可視化するシステムを整備し景観シミュレーション画像を試作した。その結果,(1)既往樹木調査GISデータに植物成長モデルを適用して樹木景観を効率的かつリアルな予測,(2)市販GIS建築物データをベースにして設計CADシステムで景観予測に有効な建築物データの効率的な作成,(3)GISとCADとが相互にデータ共有して都市内樹木景観の現況・将来像の予測ができることを示し,今後の都市内における景観情報処理システムのプロトタイプを明らかにした。
著者
坂口 次郎 鈴木 雅和
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.197-200, 1996-03-29
被引用文献数
1

本研究の目的は,大規模都市公園における空間構成を客観的に記述し比較検討するため,グラフ理論に基づいたグラフの計測示数により,空間構成を解析することにある。日本における15ケ所の国営公園を対象とし,ゾーニングされた空間をグラフの頂点,それらを連結する主要な動線を辺としてグラフ化を試みた。またグラフの規模,連結度,分散度,関連数などのグラフ示数を計測し比較することにより,大規模都市公園における空間構成を類型化することができた。大規模都市公園におけるゾーニングは1段階だけの単純な構造ではなく,空間を複数回分割する階層的な構造があるなど,空間構成上の特微か把握でき,本解析法の有効性が確認できた。
著者
愛甲 哲也 鄭 佳昇 浅川 昭一郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.669-672, 2002-03-30
被引用文献数
9 12

利用者の心理的側面から自然公園の収容力を設定するため,混雑感や許容限界の把握手法が検討されてきた。しかし,許容限界を数値で指摘させる手法では,利用密度の高い区域での指摘率の低さなどの問題点も指摘されている。本研究では,大雪山国立公園姿見地区の利用者を対象に,利用状況の異なる場面を想定した写真により,混雑感と許容限界を把握し,その特性について検討した。許容限界の指摘率は数値で指摘させた過去の事例に比べ高く,利用状況を想定しやすく,回答しやすかったと考えられた。しかし,写真中の利用者数と混雑感に一貫した関係がみられない場合もあり,利用者の位置や構成に検討が必要なことが示された。
著者
大野 朋子 加我 宏之 下村 泰彦 増田 昇
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.603-608, 2002-03-30
被引用文献数
14 9

本研究は,岸和田市における竹林の拡大特性を調査した。その結果,1968年に竹林数567箇所,総竹林面積2,134,600m^2, 1978年に竹林数619箇所,総竹林面積2,535,000m^2, 1992年に竹林数773箇所,総竹林面積4,210,700m^2,を示し竹林の拡大は明らかで,特に1978〜1992年の拡大が顕著である。拡大特性は標高50〜100m,傾斜度5〜10°,傾斜方位は南南東で面積拡大を示し,標高O〜50m,傾斜度0〜5°,傾斜方位は東北東で箇所増加と平均竹林面積の減少傾向を示した。
著者
加藤 和弘
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.77-80, 1996-03-29
被引用文献数
40 26

東京都文京区内の17ケ所の緑地で樹林地における越冬期の鳥類を調査し,鳥類の種組成と植生の構造の関係を明らかにした。鳥の種類数は,高木に覆われた面積よりは植生の階層構造,特に低木層の発達の程度に依存しており,各階層の植被率や種数が増加するに従って鳥類の種数も増加した。但し植被率も植物種数も,ある程度以上になると鳥類の種数の増加に寄与しなくなる可能性が示唆された。鳥の種類が少ない緑地では,鳥類による低木層の利用が鳥の種類の多い緑地に比べて少なく,ウグイスなど低木層を好んで利用する種類は見られなくなる傾向があった。以上より,鳥類群集保全のためには,植生の下層部に配慮した緑地整備が必要であるといえる。
著者
丸山 宏
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.7-12, 1984-05-31
被引用文献数
1 1

摘要:明治19年12月25日の府告示により成立する円山公園は,ハ坂神社,安養寺,長楽寺,双林寺の各境内地の上地にその端を発している。社寺境内地処分は,地組改正を念頭においた近代的上地所有制の確立とも関連する政策である。本稿では社寺境内地の解体解程で,円山公園が誕生する具体的な経緯を論じた。特に円山公園成立前にその一部が名区であったこと,また社寺境内外区画の決定の際に名所地が設置されていたことは新しい知見である。
著者
平澤 麻衣子
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.365-368, 2005-03-31
参考文献数
27
被引用文献数
1

The purpose of this study is to clarify relationship of arrangements between the garden lantern and the buildings in Byodo-in garden. Garden lanterns, since ancient times, have been offered Buddhist tribute in center positions in front of the main temple building that enshrined some Buddhist statues. In this study, based on some examples of arrangements of garden lanterns in ancient Buddhist temples, it could be pointed out the following two features in arrangement of the garden lantern in front of Houo-do; (i) it was affected the arrangement of the garden lantern by that there spread the Aji-ike pond, (ii) as it was decided the location of the garden lantern of Byodo-in garden, it seems to have been considered the ratio of the distance between the lantern and two buildings, that is, Houo-do and Ko-gosho which had been located against Houo-do across the Aji-ike pond for resting or looking Houo-do but had already been lost. As a result, the arrangement of the garden lantern of Byodo-in garden was not only under the category of ancient Buddhist temples but also had an original feature. Furthermore, based on the considered above, it could be referred changes of arrangements of garden lanterns in the process which garden lanterns of ancient Buddhist temples had been accepted to Jodo temples.
著者
亀井 幹夫 中越 信和
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.391-396, 2001-03-30
被引用文献数
3 1

天然記念物制度の指定方針とその変遷を明らかにするため,植物に関連する国指定天然記念物の指定の実態を分析し,その時間的変遷を以下のように整理した。戦前は,自然破壊の阻止,学術資料の保存,郷土や国家への愛情の向上という3つの意図を持ち,偏りがあるとはいえ指定対象は多岐にわたっていた。第二次世界大戦での敗戦によるナショナリズム的側面の後退と高度経済成長がもたらした深刻な自然破壊によって,学術優位が定着すると共に,珍奇なものから代表的・一般的なものへと保護すべき対象も変化した。近年,面的な保護を中心とした指定が進められている。しかし,他の自然保護施策との関連から,より柔軟な制度改革が必要であろう。
著者
森下 諦三 野田 茂行 小沢 知雄
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.16-24, 1974-12-20

各種産業の工場では,有機性排水を活性汚泥法により処理している。その際の活性スラッジの成分は,ズーグレア,ワムシ,原生動物から成りたっている。したがって,生物処理スラッジの主体は,蛋白質で,有機質肥料として活用出来るものである。著者らは,スラッジの肥効を,ノイバウエル幼植物試験法,土壌中の無機化分解実験(砂質または粘土質土壌使用)および排水の消化工程で添加される凝集剤の影響テストにより検討した。さらに,活性スラッジの芝草に対する肥効と土壌改良性を,市販の類似資材と比較して調査を行なった。結果のまとめ(1)活性スラッジは,なたね油粕やニシン荒粕と同よう,緩効性の肥効を示し,かつまた,油粕施用時の生育障害を認めなかった。(2)凝集剤の添加は,一般に発芽率を稍低下させ,また無機凝集剤の中で,消石灰がリン酸の肥効に最も悪い影響を与えた。(3)芝草に対する活性スラッジの肥効は,その地上部より地下部によく現れる。(4)芝生への活性スラッジの施用は,踏圧による土壌の硬化を軽減する。(昭和48年10月21日,日本造園学秋季大会発表)
著者
大澤 啓志 黒田 貴綱 勝野 武彦
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.565-570, 2006-03-27
参考文献数
23
被引用文献数
6 7

The changes in vegetation and small animal fauna were investigated in terraced paddy with stone masonry in the hilly and mountainous areas of northeast Kyushu where cultivation has been progressively abandoned. Grassland which includes Imperata cylindrical - Miscanthus sinensis community and Juncus effusu community was formed depending on the soil moisture in the extensively managed sites. With the progression of vegetation succession in the abandoned managed sites, the M. sinensis community has attained dominant status. Although frog species diversity increased in the mountainside terraced paddy, the abandonment of paddy field cultivation led to a decline of frog composition. Rana ornativentris and Rhacophorus schlegelii had continually inhabited the moorland vegetation since the open water bodies required for breeding in frogs were disturbance-created by the rooting behaviour of mammals. With regard to the mouse fauna, Apodemus speciosus had colonized the extensively managed sites, and A. argenteus was found in the abandoned sites characterized by dense coverage of tall plants such as M. sinensis. Though the Micromys minutus population had increased in the extensively managed sites subject to continued mowing, they were absent from sites that had been abandoned for approximately 15 years. It was clarified that the vegetation succession is dependent on both land-form and management practice, and that vegetation and soil moisture are important factors in determining small animal fauna.
著者
下村 彰男 江頭 俊昭
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.307-312, 1992-03-31
被引用文献数
2

レジャー,レクリエーションは「楽しさ」や「やすらぎ」といった心(情緒)的情報を提供する活動であり,その活動の場である遊楽空間は情報提供のための空間装置として,その装置性,構造性が追求・計画されるべきであると考える。そこで,その基礎資料とするべく,本研究では近世における遊郭,芝居町など,心的情報提供空間の装置性に関して,文献・資料調査を中心に検討を加えた。その結果,(1)境界,(2)階層構造,(3)「導入」装置,(4)「繁・華」装置に大きな特徴がみられ,空間全体のイメージアビリティを高め,別世界性を強調すると同時に,気持ちの切り替えや雰囲気の高揚を促す仕組みを有していることが明かとなった
著者
武田 史朗
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.809-812, 2005-03-31
参考文献数
17
被引用文献数
2 5

There has been an ongoing increase in the number of the "natural burial grounds" in the U.K. since 1993, where burial and nature reserve are both regarded as main objectives. The movement towards this type of burial has multiple origins, which includes each independent effort by citizens and a naturalist social worker for Do-It-Yourself burials, and by a cemetery officer for an eco-friendlier and more cost-effective burial style. These efforts were integrated into a single movement by a group of psychotherapists as part of its search for an un-institutional style of death, under the consideration for environmental issues. The rapid progress of the movement was possible partly because of the absence of the general laws that regulate the burial activities by private parties. The government has started to consider the potential of a nationwide standard for burials and cemeteries, which may legalize the natural burial grounds and improve the currently unregulated management of them in future. In such governmental efforts the accumulation of expertise and the codes of practice developed by the private institutions have been playing considerable roles. To establish sustainable management strategies to maintain the sites healthy as both burial grounds and woodland is considered to be the case in point.
著者
樋口 昭彦 高尾 忠志
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.807-812, 2006-03-27
参考文献数
16
被引用文献数
1

The purpose of this study is to understand the structure of streetscape improvement by Business Improve Districts (BIDs) in New York City. Three BIDs in New York City, including Grand Central Partnership, Alliance for Downtown New York, and Times Square Alliance, were selected as case studies. A series of interviews to the BID officials as well as field surveys was conducted in the year 2000 and 2005. The major findings are the following. a) Steetscape improvements by three BIDs are planned and implemented to promote districts' interests through community-involved project processes, b) whlie the BIDs'streetscape improvement businesses are under the supervision of the city agencies, they are cooperating by sharing information, c) the BIDs can maintain high quality of streetscape design by flexibly appointing best-suited designers, d) budgetary condition of the BIDs is stable but not plentiful enough to proceed many streetscape improvement projects at once, and e) the effects of the streetscape improvement projects by the BIDs are evaluated mostly through indirect indexes.
著者
中本 学 関岡 裕明 下田 路子 森本 幸裕
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.585-590, 2002-03-30
参考文献数
33
被引用文献数
15 15

筆者らは,福井県敦賀市中池見の休耕田において,コナギやアゼナなど小型で一年生の水田雑草を保全するための管理手法を検討した。植生調査は,耕起を再開した1997年に開始し,復田を行った2000年まで継続した。耕起を停止した場合には,サンカクイなど特定の多年生草本が著しく増加するため,耕起の継続は不可欠であった。さらに,耕起を継続しても増加する多年生草本を減少させるには,復田が有効であった。このことから,生物の保全を目的とする休耕田の管理手法として,耕起の継続に加えて数年に一度の復田を組み入れるシステムを提案した。
著者
黒川 朋広 中村 攻 木下 勇
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.245-248, 1996-03-29
参考文献数
3
被引用文献数
3

本研究では千葉県佐原市の山車祭りを事例に祭礼における都市空間の使われ方の変遷を見た。その結果以下の点が明らかになった。古い市街地の狭い道路も山車の通行の見せ所の舞台となっており,都市の変容とともに電線などの障害が生じてもそれを克服する工夫が見せ場ともなっていたように,都市の変容に合わせて祭礼の工夫がなされてきた。が,モータリゼーションや商業構造の変化といった大きな変化は祭礼における空間利用の意味をも変えつつある。祭礼における空間利用には歴史的にもまた人の関わりという面でも多義的な意味が内在している場合もあり,そのような場の意味を再評価しながら祭礼を都市空間の整備に活かしていくことが必要である。