著者
柳井 重人 保田 圭一 丸田 頼一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.273-276, 1995-03-31
被引用文献数
3 4

本研究では,住宅地における生垣等の囲障分布の実態と囲障に係わる住民意識との関連性等を明らかにし,生垣化推進に際しての問題点や課題を探ることを目的とした。調査対象地区は東京都大田区内の住宅地とし,現地踏査による囲障分布実態調査およびアンケートによる住民意識調査を行った。その結果,生垣の出現率は人口密度等の地域特性の相違によって異なること,ごく身近な接道部の緑の量は,住民の身近な緑の多少感や満足感に影響を及ぼし,それには生垣の存在が深く係わっていること等が把握された。さらに,生垣の所有者は,街並みとの調和等の美観の面での効果を生垣の利点として評価する一方,剪定等の維持管理を負担に感じていること等が把握された。
著者
下村 泰彦 廣野 慎 山本 聡 増田 昇
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.639-642, 1999-03-30
被引用文献数
3 2

本研究では,大阪市の都心業務地区で緑が集積して存在することによる環境保全に係わる効果を微気象,鳥類出現,景観評価の視点から,緑の集積度(街路上での天空状況,100m圏域内での緑被率)が異なる4地区を対象に比較考察した。結果,微気象に関する気温では8月測定から緑の集積度が高い今橋・安土両地区の方が全時間帯で0.6〜2.7℃気温上昇が抑制され,12月測定では16,17時台で0.2〜1.2℃気温低減が抑制されること。鳥類出現では今橋地区(7種97羽)が種数・個体数共に最多であること。景観評価では『ゆとり』『広がり』『開放感』等の空間量や『親しみ』『美しさ』等の修景面での評価が有意に高いこと等,緑の集積による効果が確認できた。
著者
山田 宏之 丸田 頼一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.84-94, 1987-11-15
被引用文献数
5 10

樹木による日射軽減効果を明らかにするために、ケヤキとキンモクセイの単木の緑陰を対象に、樹影内外の日射量分布の測定を行い、次のような結果を得た。1)快晴の場合、樹影内の日射量分布の日変化は比較的少い。2)樹影内の日射量は、天気の相違により大きく変化し、快晴時に最小、晴、曇の順に、より大きい値を示した。3)樹形の相違によっても日射の軽減率は異なり、樹冠が広く低い樹木ほど、その率が大きい。
著者
下村 泰彦 増田 昇 山本 聡 安部 大就 田村 省二
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.289-294, 1992-03-31
被引用文献数
4 7

本研究は,公共空間と接道部空間とを相互に関係づけながら,フォトモンタージュ法を用いて景観シミュレーションモデルを作成し,景観モデルの評価を通じて今後の街路修景・緑化手法に関する有効な知見を得ることを目的とした。その結果,公共緑化に関しては,壁面状況の良悪に係らず,高木の樹冠を大きくすることによって景観の向上が認められ,修景・緑化効果を明らかにすることができた。特に,歩道中央植栽は,修景・緑化効果を十分に発揮することが明らかとなった。接道部緑化に関しては,壁面状況,植栽形式に係らず,接道部を緑化することによって景観が向上することを明らかにし,接道部緑化の修景・緑化効果を確認することができた。
著者
大石 道義
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.69-74, 1985-12-19

本報はその地域特有の郷土景観を保護・育成しようとする場合,どのような条件が必要かについて,福岡県八女地方の郷土景観の主要構成要素である竹林の保全を事例として調へてみたものである。本事例では,特に筍の缶詰加工の導入や間代打の資源としての活用による農家経済や地域経済の安定が,保全の大きな要因となっている。結論的には竹や竹林の価値を十分に認識して,その有効な活用をすすめていくことが竹林の保全につながる。
著者
坂井 文
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.421-426, 2003-03-31
被引用文献数
3 3

This paper will examine how the function and design of the London Square was shaped by broader social and cultural change, in the period between the development of Covent Garden in the seventeenth century, and the establishment of the archetypal Garden Square by the beginning of the nineteenth century. The study examines how changing management of urban open spaces influenced their design and functions, while also considering the development of ideas of natural landscape in the city. In particular, the paper argues that management regulations on the central part of a Square and on the secondary street in a Square formed the central open space to be a privileged communal space for the Square residents' use. At the same time there was cultural tendency to admire horticulture among the gentry, leading to attempts to bring natural elements into the design of squares -particularly lawns, shrubs and trees. These modifications culminated in the mature Garden Square of the late-eighteenth century, which had a relatively fixed form. The paper charts the diffusion of this form of urban open space.
著者
山田 宏之
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.157-162, 1994-03-31
被引用文献数
6 12

埼玉県幸手市を対象に,1989年,1990年の2年間,盛夏の14時,4時における気温分布の移動観測を行った。測定結果から気温分布図を作成し,緑地分布との関連についての考察を加え,緑地分布と良く対応した形の都市高温化が発現していることを把握した。次に,測定範囲内から抽出した30地点を中心にした直径500m,250mの範囲内の緑被率,緑地率を航空写真から計測した。それらの値と測定された気温との関連を各種回帰分析により解析した結果,緑被率10%あたりの気温低減率として,14時において0.21℃という値を得た。これらの値を過去の調査事例と比較,考察するとともに,1989年,1990年の結果について,回帰係数の比較を行った。
著者
村上 朝子 仲 隆裕 藤井 英二郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.97-102, 1993-03-24
被引用文献数
1 1

本研究は,いけばなと盆栽の取り扱いについて,庭園植栽意匠との関係に注目し,考察した。いけばなの取り扱いについて中世の絵巻物や花伝書等を用いて検討した結果,「真の花」であり,座敷の押板飾りに欠かせない「三具足の花」が仏前の供花から派生し成立する過程が推察された。また,花伝書の記述から,特に「草の花」は自然の美を表現しようとするもので,このとき,当時の庭園植栽の姿が想定されていたことが指摘された。一方,盆栽については絵巻物から,縁や庭先に置かれる盆栽は庭の景を構成する一要素となり,これを考慮した植栽意匠がなされた場合があったこと,また,盆栽が植栽の整姿に影響した可能性について考察された。
著者
章 俊華
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.761-764, 1999-03-30
被引用文献数
3 9

本研究は,中国皇家庭園頤和園を対象として,園内に多く掛けられている「扁額」に表現された内容からみた庭園空間の特徴を明らかにすることを目的としている。研究方法としては文献・資料に記録された「扁額」を思想・芸術・政治的各背景から分析した。その結果,仏教思想,神話・伝説不老不死の神仙思想に基づくもの,倫理や道徳に関する儒教思想に基づくもの,詩歌・絵画,自然の追求,超現実の仙境等芸術的背景と皇帝の恩徳をたたえる政治的背景の両方に基づくもの,統治者の確固たる地位と無限の権勢,知恵等政治背景に基づくものの,以上4つの庭園空間の特徴が見られた。
著者
香川 隆英 田中 伸彦
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.201-204, 1995-03-31
被引用文献数
1 1 3

我が国における森林の風致施策は,明治6年の「官林調査仮条令」において,社寺林を風致林として保護するところから始まる。その後,今日までの120年の間に様々な歴史・変遷の過程を経ながら,森林の風致施策は展開してきた。その風致施策の2本の柱は,保安林制度の中での施策と,国有林におけるレクリエーションの森を代表とする施策である。本論では,保安林制度における,風致保安林と保健保安林について,保安林制度及び森林風致施策の歴史の中での位置づけを明らかにする。
著者
長田 光世 森 清和 田畑 貞寿
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.151-156, 1993-03-24
被引用文献数
1 3

本研究は,生態学的な水辺緑地計画の視点から,計画指標となりうるトンボの種の把握を目的に,トンボの生息環境としてきわめて良好な環境である桶ケ谷沼におけるトンボの優占種の検討を行い,それを基礎とした複数の池の比較考察を行ったものである。その結果,トンボ科の広域分布種について,環境復元の段階的な発展に伴い種を4段階に分類し,それぞれ有効と推定できる指穏種を提示した。また,特にチョウトンボは,池を中心とする水辺緑地の多様な構造に対応して個体数密度を増加させ,さらに最もトンボ相が豊かになるような多様な構造をもった水辺緑地では,夏期調査時のトンボ科全体に対して最大の優占種となる指標性をもつことが把握された。
著者
吉田 直隆 難波 良平 片谷 克也
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.123-133, 1990-11-26
被引用文献数
2 2

森林公園の植生の形態を構成する樹種,立木密度,林況,および芝生地等の形態が,その利用状況に直接的に影響することは,一般的に自明のこととされている。そこで,代々木公園の通年にわたる利用実態調査をもとに,植生の形態を類型化し,植生の形態と利用との関係を明らかにするとともに,芝生広場の利用者が最も好む形態と広さについても明らかにした。
著者
前中 久行 大窪 久美子
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.143-148, 1986-03-31
被引用文献数
3 1

大阪府下の主要な7公園で区域を定め、休日の芝生他の滞在者数調査を行なった。各公園の平均滞在者密度は7調査地中4ヶ所が約50人/haであった。これらの公園ではカセクサ、シマスズメノヒエなど踏み跡植物が高頻度で出現した。この踏み跡植物を利用密度の指標として大阪府下の各地各種の草生地の構成種を位置づけ、レクリエーション利用と植生の関係を検討した。
著者
横田 健一 中村 攻 木下 勇 轟 慎一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.695-698, 1997-03-28
被引用文献数
6 5

住宅密集市街地の住民参加型のまちづくりにおいて,宅地化できない狭小な土地をポケットパークとして整備する動きが各地に起きている。このような状況に対して東京都内の豊島区4・5丁目地区,世田谷区太子堂2・3丁目地区,墨田区一寺・言問地区を事例として,ポケットパークができることに対して近隣住民がどのような関わりを持ち現在に至っているのが,ということを明らかにするために,主に現在管理に関わっている住民を対象としたヒアリングによる調査を行った。その結果1.意識とその表出2.問題への対応3.小規模な社会集団の発生と縮小といった点にポケットパークと近隣住民の関わり方の特微がみられた。
著者
市原 恒一 豊川 勝生 山田 健 大川畑 修
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.191-196, 1991-03-30
被引用文献数
3 7

森林施業が行われている既存の人工林を森林レクリエーションのための森林,すなわち景観的な価値が高い森林に改組する方法について検討している。今回は笠間営林署筑波山国有林のヒノキ複層林試験地の林内景観と森林の構造との関係を,写真および現地における景観評価試験により検討した。写真と現地の試験結果は,おおむね一致した。その結果,複層林は一般の林分より美しく,特に,(1)林内相対照度が大きい,(2)樹幹が通直である,(3)奥行きが深い,(4)奥行きが浅い林分では明るい林外が見通せる,などの条件をそなえた複層林が美しいと評価されることが明らかになった。
著者
徐 英大 森本 幸裕
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.56-60, 1996-08-29
参考文献数
11
被引用文献数
1 4

歴史的に美しい日本庭園のデザイン要素が定量的に把握できれば, 日本庭園のデザインの特質が明らかになり, 日本庭園の再構築の可能性も考えられる。そこで本研究では, 日本の代表的な日本庭園である桂離宮庭園を中心に自然的な形態の把握手法として, フラクタル理論を適用し, 庭園の重要なデザイン要素である池の形と樹木, 庭石, 建物の分布の特性について検討した。その結果, 各デザイン要素にフラクタル性が存在していることが明らかになり, それらをフラクタル次元として定量化することができ, その次元は池の形の定量的な比較や樹木, 建物, 庭石の分布のデザイン特徴を表わすのに有効である可能性が認められた。
著者
藤崎 健一郎 長倉 亮一 高田 彬成
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.397-400, 2007-03-30
被引用文献数
2 1

Recently, school children sometimes participate in cultivating school turf. Even though as it is, the following case must be an outstanding case. An elementary school child proposed to make school turf. The merit and demerit of school turf were discussed in the class of integrated learning. They decided to execute an experiment to select better turf grass species for school ground. On this process, they contacted with many persons includes specialists and volunteers. As results, they got small but worthy turf plot. After they graduated, the city government gave budget to enhance turf. Now the school children, parents, graduates, teachers, and volunteers are attending workshop to maintain that school turf. On the process of learning about turf grasses, many persons from outside of the school helped the school children. The present social background must be different from the 1970 th decade when many school turf were constructed but disappeared soon. This time the school children studied much about biological and cultural aspects of turf grasses. In addition to natural scientific matters, the children studied much about the importance of the social connections.
著者
丸田 頼一 支倉 紳 柴田 知之
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.19-24, 1985-03-30
被引用文献数
1 1

適要 1864年に,カリフォルニア州政府が設置したヨセミテ公園は,広域な原生地域を対象とした全米で最初のものてあった。その後,この公園は国立公園に吸収合併されたか,1902年,レッドウフドパークの設置以後,カリフォルニア州政府は州営公園系統の整備を着実に進め,現在ては,260ヵ所にものぽる多種多様な公園を設置している。本論においては,このような州営公園の発展の史的事実及び背景等を明白にしようとするものである。