著者
野嶋 政和
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.439-444, 1998-03-30
参考文献数
48

本稿では, 露伴を代表とする都市空間についての秩序認識と理想像についての包括的な言説群の歴史的背景を探る-環として, 公共オープンスペースの秩序形成を対象とし, 都市空間の変容を構造的に把握することを通じて, オープンスペースとしての道路における秩序形成のあり方を考察する。具体的には, 近代都市空間における交通・防災・衛生・美観などの道路の諸機能に抵触する諸行為の排除のプロセスを, 長屋・裏長屋=「スラム」の住民の代表的な職業であり, 道路などのオープンスペースを生業の空間としていた大道芸と「雑業」への取締を対象として明らかにすることを課題とする。
著者
高橋 理喜男
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.17-23, 1963-03-30
被引用文献数
2 2

Die Planung der Spielplatze in Osaka fing aus Anlass von einem unvorhergesehenen Unfall an. Das war "Die Anordnung des vom Schadenfeuer betroffenen Teils in dem Kita-Bezirk" im Jahre 1909, die vorwiegend aus dem Plan von Strassen und Spielplatze bestand. Der Plan war so epochemachend, dass ein gewisser Fremder ihn sehr eifrig unterstutzte, und dennoch wurde seine Ausfuhrung aus dem falschen Grunde gehindert, dass Spielplatze sich nur in einem besonderen Bezirk sammeln. Die zweite Planung, zum Andenken der Thronbesteigung entworfen, durchgang zu Beginn der Taischo-Zeit(1961), und sieben Spielplatze wurden sich gerecht auf der ganzen Stadt verteilt, und auch jeder in der Nahe der Schule. Nach einigen Jahren (1921) wurden vier Volksbibliotheken neben den Spielplatze angelegt. Geschichtlich ist diese Verbindung, nach meiner Meinung, das seltsame und bemerkenswerte Beispiel, darauf die westliche Zivilisation einwirkt.
著者
楊 舒洪 進士 五十八
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.465-470, 1997-03-28
被引用文献数
2

中国杭州の「西湖十景」は,南宋時代(1127〜1278)に南宋画院の画家らに画題として描かれることによって成立した風景地である。本研究は,「西湖十景」が成立するまでの背景や形成要因ならびにその発展と変化を史実から明らかにすると共に,このような人文的景勝地(名所)の発展条件について考察した。その結果「西湖十景」は,(1)南宋の都としての杭州の発展(2)杭州と西湖の風土(3)西湖らしさというイメージの固定化と定着(4)権力者の芸術愛好による風景画の興隆と需要増(5)南宋画院における山水画の構図の改変などを背景として成立し,そして媒体の宣伝によって景名が保存されたり,時代とともに見直され,現在にいたっていることが判明した。
著者
曾 碩文 浅川 昭一郎 遠藤 寛
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.703-708, 2004-03-31
被引用文献数
3 3

In order to explore children's consciousness of the changes in winter play spaces during the past 12 years, a questionnaire was delivered to elementary school students in Sapporo, in 2002. Our aim was to understand the reasons for the decrease in the frequency of outdoor play activities in winter. The results were as follows: (1) The frequency of outdoor play activities decreased during the past 12 years, as well as the willingness to play outside in winter. (2) In the case of positive parents attitudes towards outdoor play activities in winter, the frequency of outdoor play activities of their children was higher compared to parents with negative attitudes. (3) Compared to 12 years ago, the frequency of playing on roads and barren grounds decreased, and the mostly used play spaces in winter were parks and dwelling surroundings. (4) There were no changes in the frequency of playing in parks during the past 12 years, therefore availability of parks proves to have an important role even during the winter season. According to the results, for the future planning of winter playgrounds, we have to consider not only the facilities (tangibles), but also the management (intangibles) of these spaces.
著者
夏原 由博 神原 恵
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.617-620, 2001-03-30
被引用文献数
9 16

大阪府南部の国土地理情報2次メッシュ「冨田林」「岩湧山」の範囲で,250m方形区単位でのニホンアカガエルの生育環境適合性を卵塊の有無を指標として推定した。現地調査は2000年2月から4月に175方形区で行った。このうち,本種の卵塊が分布していたのは15個であった。地理情報システムによって,方形区ごとの平均標高,平均傾斜角度,土地利用面積率,谷の有無を取得し,これらを2カテゴリー化した値を説明変数として,数量化2類(ダミー変数による判別分析)によって本種卵塊の有無を判別するモデルを推定した。その結果,地形要素が判別に高く寄与し,標高は160m以下,傾斜は10度以下,樹林面積率20%以上で谷の存在する方形区に卵塊が分布すると予測された。対象地2874個のうち,208個で本種が生育可能であると推定された。これらのうち,連続した生育適地の面積が広いほど実際の卵塊出現率が高く,孤立化が局所絶滅からの回復を阻害しているものと考えられた。ロジスティック回帰により方形区5個(3125ha)以上が連続している場合に,期待出現率1が得られた。
著者
鈴木 誠 河原 武敏 ジャネル ベルナール
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.19-24, 1988-03-31
被引用文献数
1

20世紀初頭フランス西部,メーヌ・エ・ロワール県モーレヴリエ町に,フランス人建築家アレキサンドル・マルセルの設計になる,池泉回遊式の日本庭園が造られた。同国内でも最古かつ最大級の日本庭園でありながら,地元の人々にさえ良く知られずに,近年まで長年放置されていた。本研究では現地調査の結果をふまえ,この庭の現況と往時の姿,成立経緯と時代背景について,マルセルの他の業績と共にまとめた。
著者
北村 文雄
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.29-33, 1976-01-24
被引用文献数
1

イ)本研究は造園樹木の亜硫酸ガス抵抗性の季節的変異を究明し,都市における造園樹木の利用および保護,管理面に貢献することを目的として行われた。供試樹木としてカマクラヒバ,マサキ,サツキツツジを用い,その3〜4年生苗木を鉢植として,1972年5月より1年間,隔月毎に公害実験用グロースキャビネット内にて亜硫酸ガスを接触させて,植物の被害状況およびその後の生育状態を調査した。また灌水による被害軽減効果を検討した。ロ)実験結果から,供試樹木の亜硫酸ガス抵抗性は冬季(1月)およびそれに続く時期(3月)がもっとも強く,冬季に入る直前(11月)も抵抗性が強くなっている。逆に夏季(7月)がもっとも弱く,それに続く時期(9月)も弱いが,夏季に入る直前(5月)は種類によって被害の出現度が異なる。ハ)被害度の1指標とした落葉率はほぼ観察による被害度と同じ傾向を示す。ニ)処理後の生育をみると,枯死したものはなく,いずれも回復している。3月現在でカマクラヒバはすべて正常に生育し,マサキ,サツキツツジは7月および11月処理区を除いてほぼ正常に戻っている。7月区は被害による落葉後の新葉の萠出が遅れ,11月区も落葉期が冬にかかったために新葉が萠出していない。ホ)灌水による被害軽減効果はあまり認められない。へ)供試樹木の亜硫酸ガス抵抗性は,全般を通じてカマクラヒバが非常に強く,次いでマサキ,サツキツツジの順である。
著者
黒田 乃生
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.645-650, 2009
被引用文献数
1

日本は1992年にユネスコの「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」を締結し、現在11件の文化遺産と3件の自然遺産が世界遺産一覧表に記載されている。世界遺産委員会では自然環境への人間の働きかけの結果生み出された「自然と人間との共同作品」である「文化的景観」のように、自然的要素を有する文化遺産の保護が進められている。文化遺産における自然的要素としては、植物相や動物相、地質や地形、土壌などがあげられるが、これらについては自然遺産保護と文化遺産保護の双方の視点が欠かせないという指摘もある。しかし、実際には文化遺産はICOMOS、自然遺産はIUCNが、国内でも文化遺産は文化庁、自然遺産は環境省がそれぞれ評価と保護の措置を所管しており、文化遺産における自然的な価値の保護が包括的な体系の下に行なわれているとは言いがたい。また、日本では「紀伊山地の霊場と参詣道」における林業関係者による抗議の落書きの例のように、時間の経過や人為によって変化する森林のような自然的要素について、その役割と保護管理の手法が明確になっていない面もあると考えられる。以上の背景から、本研究では自然的要素である森林を対象として、日本における世界文化遺産の登録資産及びそのバッファーゾーンにおける現状を把握し、保護のありかたについて考察することを目的とする。The comprehensive protection of cultural and natural heritage has been an issue and has also been discussed by the World Heritage Committee. Through an analysis of the current situation of forests in the World Cultural Heritage Sites, the following points are clarified. In general, 74% of all properties and 77% of properties and buffer zones are covered with forests. Within the forest area, 36% of the forests are planted forests and 20% are national forests. Most of the forests have been under the influence of human activity, which has resulted in characteristic vegetation. A local-government level forest management plan that corresponds to the character of the forests and provides comprehensive protection to the cultural and natural elements is essential. Moreover, the evaluation process for cultural heritage should incorporate specific description of the vegetation as this will lead to an objective assessment and effective management plan.
著者
竹形 顕 岡田 昌彰 宮澤 泰子 堀 繁
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.641-644, 2003-03-31
被引用文献数
1

Nikko city, which is well known as one of the most typical tourism area in Japan, is developed also as an industrial city with copper refinery industry principally in Kiyotaki District. The company of copper industry, Furukawa Corp., contributed to the regional economy, regional welfare, and formed independent industrial hamlet with characteristic folk customs. However, recent stagnant economy of copper industry transformed such regional attitude. This study attempts to manifest the actual circumstances and transition of regional attitude to copper industry, analyzing Expressions in Students' Essays and indicated 3 characteristics, (1) Decline of image related to copper industry with its decadence, (2) Decline of regional attitude as an independent hamlet and (3) Maintenance of Industry-derivative Folk Customs. In addition, we made comparative analysis with several former studies on the image to regional industry to surmise the factors which makes the case of Kiyotaki unique.
著者
章 俊華 木村 弘
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.797-800, 1998-03-30
被引用文献数
3 4

本研究では,中国私家庭園における「廊」に着目し,分析対象庭園の「廊」の種類と分布状況により,空間構成の類型化とその特徴を明らかにすることを目的として,蘇州市にある8つの庭園の「廊」に対して実測調査し考察を行った。その結果,8つの私家庭園における空間構成の類型化は4つのグループに分けられた。その特徴は特有な特性を持つグループA,特有,且つ神秘な特性を持つグループB,離水,且つ開放的な特性を持つグループC,隣水,且つ多様な特性を持つグループDをそれぞれの極とする立体構造の分布が把握できた。「廊」形態の変化に基づいた空間の特質から類型化と対応関係が見られた。
著者
福富 久夫
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.138-139, 1985-12-19
著者
白幡 洋三郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.37-42, 1984

1789年, 代々の宮廷庭師の家に生まれたレンネはその職をついだ。しかしヨーロッパ近代の幕開けフランス革命の年に生まれたことで, 彼は19世紀前半の公園開幕の時代に出会う。宮廷造園家の仕事と都市自治体の公共造園の仕事とを結びつけることは, レンネを代表とするこの時代の造園家たちが史上初めて直面した大きな社会的要請で, この時生まれた公園観は, ドイツの公園の性格を決定づけた点で大変重要である。
著者
深町 加津枝 奥 敬一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.647-652, 2002-03-30
被引用文献数
9 12

薪炭利用などをとおし地域住民と密接な結びつきがあった里山ブナ林の多くは,今日,面積の減少や管理放棄など,保全上の様々な課題を抱えている。本研究では,里山ブナ林の景観を対象とした評価実験を行い,都市住民との比較から里山ブナ林に対する地域住民の景観評価と継承意識の特徴を分析した。レパートリーグリッド法による分析からは,繁茂度,自然性など里山ブナ林の景観に対する印象軸を抽出し,土地利用履歴ごとの景観の評価構造を示した。多元的評価尺度を用いた景観評価では,地域住民と都市住民との里山ブナ林の評価に大きな差異があり,地域住民の継承意識が水土保全機能,身近さ,美しさに規定されることを明らかにした。
著者
藤崎 健一郎 半田 真理子
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.151-156, 1994-03-31
被引用文献数
4 10

本研究は,植栽が微気象に及ぼす効果を定量的に把握することを目的とし,特に温度に重点をおいて調査したものである。日射の強い夏の日においても樹林内外の気温差は2〜3℃程度であるが,人が感じる差異はこれよりはるかに大きい。そこでグローブ温度計を用いて黒球温度を測定したところ,気温差が1.6℃の時に17.1℃の差があり,体感温度の差を定量的に表現するのに適していると考えた。そこで,各種の植栽地内外において,気温,黒球温度及び他の微気象要素の測定を冬季に行った。その結果,街路樹の有無によっても黒球温度で8℃程度の差ができること,地表面の状態によっても黒球温度に差ができることなどが明らかとなった。