著者
小野 佐和子
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.93-103, 1984-10-15
被引用文献数
1

摘要:近世都市における住民のレクリエーション研究のひとつとして幕末の江戸で行われた花見のあり方を考察した。その結果,下層町人を主体とする行列・仮装・滑稽劇をその特徴に認め,当時の花見が,演劇的装いのもとに笑いを通じて民衆の想像力を解放する働きを有しており,花見の揚が民衆の笑いと変身の空間であるとする知見を得た。
著者
岡村 穣 佐藤 仁志
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.777-780, 1998-03-30
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

名古屋市は,戦災復興計画以来,小学校を地域の防災上の拠点とするため,約半数の113小学校が道路を隔てて公園に隣接している。その中の8校の校庭は,道路を廃して公園と一体化させた学校公園となっている。校長及び教頭への学校公園の管理に関する聞き取り調査では,授業の一環としての利用はあるが住民の利用は少なく,授業時以外の責任の曖昧さや管理の負担を感じており,できれば専用で使いたいという回答が多かった。大森北小学校(守山区)では,学校公園を利用したワークショップに,多くの児童,親,及び学区住民が参加したが,学区連絡協議会長,校長及びPTA会長の3者の参画及び呼びかけが有効であった。
著者
青木 陽二
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.53-57, 1999-08-25

江戸時代に来日した欧米人の日記や旅行記を調べることにより,彼らが日本の風景の中で,地形の細やかさ,植生の豊かさ,山上までの耕作,郊外の田園散策路,長崎の入江,富士山,街道の並木を好ましいと記述していることがわかった。記述の中には植物の多様さ,高木の美,新緑,紅葉,熱帯と寒帯の植物なども記していた。彼らはまた,日本人の花好き,旅行好きであること,田畑を庭園のように耕すことなどを記述していた。これらの欧米人の風景記述は,景観評価のデータとして今後分析を試みる価値があると思われる。
著者
村上 修一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.238-245, 2003-01-31
被引用文献数
1

近代の空間成果として注目すべき形態の多重解釈性(暖昧性)という観点から検証すべく、ガレット・エクボ(1910-2000)の初期4事例の図面を調査し分析考察を行った。その結果、樹木列植による囲みを単位空間として、列植の隙間・延長の交差・ずれという空間構造や高木列植の視線透過性による暖昧性が明らかになった。また、その空間構造によって視点移動にともなう空間変化が顕在化することが明らかになった。これらの結果は、近代の空間成果としての暖昧性が、エクボの初期作品に共有されことを示し、成果がいかに空間化されたかを示す。
著者
濱野 周泰 古賀 正 青木 司光 北沢 清
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.155-160, 1987-03-31
被引用文献数
1 2

ハマヒサカキ、サツキを供試植物として無給水日数と生存率ならびに土壌水分との関連について実験を行った。両種とも土壌水分の推移を修正指数曲線によるモデルにより予測した。生存率は折れ線回帰によるモデルにより解析を行い、ハマヒサカキは第1折曲点19日、第2折曲点37日、サツキは同41日、同44 75日という値を得た。さらに両極の生存率の折曲点の値を修正指数曲線によるモデルに代入し、その時点の土壌水分を推測した。
著者
藤井 英二郎 清田 秀雄 安蒜 俊比古 浅野 二郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.199-204, 1985-03-30
被引用文献数
2 4

摘要 緑葉,紅葉,落葉期のケヤキとマロニエに対する注視特性を比較した。ケヤキては3期ともマロニエに比へて幹とその周辺に庄視点がより集中した。また,ケヤキの注視点移動は幹に洽った垂直的移動か多く,マロニエては幹と樹冠,枝を結ふ斜めの移動か多かった。これらの違いは,細かな枝ぶりと多くの小さな葉による密て均質な樹冠のケヤキと,疎らな枝ぶりで大きな葉をもち変化の多い樹冠をもつマロニエとの違いか原因と考えられた。
著者
岡田 昌彰
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.721-724, 2006-03-27
被引用文献数
1

Recently, renovation project of existing structures, such as old architecture, industrial or civil engineering facilities are taken for efficient use of existing facilities with different functions. This current on social facilities may suggest the gradual change of value from flow (scrap and build) to social "stock". Their purposes of renovation are to acquire economic benefit or efficient preservation of cultural heritages, however, landscape or spatial values or meaning of renovated landscape or space which the structures take on as a result of renovation have yet to be sufficiently discussed. This study reviews social trend of renovation projects, and introduction of existing aesthetic theory of Mitate and Estrangement permits the manifestation of potential value of landscape and space, such as significance of "distance" caused by semantic difference between present and past use. In this meaning, landscape and space of industrial or civil engineering facilities (i.e. technoscape and technospace), such as watertowers, channel defenses, or abolished railway tracks are concluded to possess high potential to produce estranged value when renovated.
著者
土肥 真人
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.31-36, 1993-03-24
被引用文献数
2 4 5

本論は,明治6年の太政官布告による公園設置を地租改正による東京の都市オープンスペースの変化の中に位置づけて考察することを目的とする。江戸の往還,広小路,河岸,寺社境内などは賤視された人々の居住地でもあったが,地租改正事業によりその多くから排除される。しかし公園とされた社寺境内からの排除はみられず,明治7年の地所名称区分による官有地第3種の規定により借地料を収める公園出稼人として扱われることになる。一方で道路からは居住者の断固たる排除がみられる。本論における考察の結果,明治初期にみられる都市オープンスペースからの居住者排除に関する扱いの相違から,公園と道路が明治初期に果たした役割が明らかにされた。
著者
鈴木 誠
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.61-66, 1985-03-30

摘要 20年以上放置され荒廃した明治期の庭,旧伏見宮家別邸銚子福鶴荘の庭を発掘調査し,実測,文献,ヒアリングにより往時の姿を推定した。特に主庭部分については旧景観の図上復元を試みた結果,明冶期の庭園の特徴とされる自然を生かした借景庭園てあることがわかった。また,千葉県銚子犬吠埼という庭の立地の意味するものもあわせて考察した。
著者
永松 義博 岩渕 由生子 長澤 栄子
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.727-730, 2002-03-30
被引用文献数
4 4

視覚障害者の公園利用の状況,公園を利用するに際しての支障事項,また,どんな公園施設を望んでいるかを知るために,点字アンケートを行った。視覚障害者が利用している公園は自宅から容易に行ける場所にあり,多くの緑と広い空間があった。公園に行かない理由は,公園に行くまでの移動に危険がある,遊ぶ仲間がいないことなどがあげられた。視覚障害者が望む公園施設は,主に,散歩道,ベンチ,休憩所などであった。
著者
外村 中
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.266-269, 2001-01-29
被引用文献数
2

中国ではすでに5世紀後半頃には,生活環境にすぐれた郊外に住居を構え,朝早く起きて都市内にある職場に通うといった,いわば極めて現代的な生活様式が一部知識人達の間に流行していたらしいことが認められる。本稿は,この点に関して最も詳しい記録を残した人物のひとりである梁の沈約(441-513)の郊居(郊外の住居)についての基礎的な考察である。
著者
古山 道太 服部 勉 進士 五十八
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.377-380, 2005-03-31

Shiki-an Garden(Negishi, Taito Ward in Tokyo) is a garden inside the residence where Shiki MASAOKA(a superior haiku poet in the Meiji era) had lived for about 9 years from 1894 (the year 27 in the Meiji era) before he passed away by the vertebra caries of disease in 1902(the year 35 in the Meiji era). In this research, it emerged the garden's sort, form, position and terms of plants and facilities in the garden, from some analyses about 398 articles of Shiki's essays, poems (haiku, tanka, and new-style poetry), pictures, letters, reminiscence notes of his pupils, old garden photos and pictures. In addition, I made 9 ground plans year by year which are re-creating garden scenes in his life. As a result, this garden was classified into three kinds of era, and had each of different garden scenes. It also could be inferred that a progress of garden scenes considerably concerns with a growth of his disease and a change in his view.