著者
杉浦 敏浩 橋本 哲 寺野 真明 中村 政治 川瀬 貴晴 近藤 靖史
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.123, pp.11-22, 2007-06-05
被引用文献数
1

室内環境は,建物在室者のプロダクティビティや健康に影響する.したがって,プロダクティビティに着目すれば,プロダクティビティ向上を意図した室内環境計画や室内環境改善を行うことも想定できる.しかし,これらに対する投資判断や実施効果を確認するための評価方法が整備・標準化されておらず,室内環境をより高品質なものにする取り組みは充分には進められていない.このような状況の中,筆者らはできるだけ簡単に,かつ確実に実施できる標準的なプロダクティビティ評価方法について検討を行った.本報ではまず,既往のプロダクティビティ評価方法と最近の研究動向を整理する.次に,一般的な建物で利用できる標準的な評価方法の要件を整理し,これをもとに評価票を提案する.さらに今後の課題を整理する.
著者
森戸 直美 西宮 肇 都築 和代
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.161, pp.19-27, 2010-08-05
被引用文献数
1

冷房の気流が睡眠に及ぼす影響について明らかにする目的で,被験者実験を実施した。比較したのは、エアコンの風を感じにくくするために開発した天井設置型冷房システム(天井冷房)と一般的な壁取り付け型エアコン(エアコン冷房)の2条件である。いずれの条件とも、実験室内の平均温度が26℃になるように制御した。実験用戸建住宅内の2実験室を使って10名の健康な青年男子を被験者とした。被験者近傍における実測の平均値は、天井冷房条件は温度26.4℃、相対湿度53%、平均放射温度26.1℃、風速0.04m/s、PMV-0.25、エアコン冷房条件は同じく26.4℃、58%、26.3℃、0.14m/s、-0.30であった。天井冷房の方が、風速は小さく(躯幹部位置で最大風速0.3m/s、エアコン冷房では1.1m/s)、かつ、送風頻度(冷風が吹き出す頻度)も少なくなった(8時間あたり11回、エアコン冷房では28回)。平均皮膚温や快適感、睡眠段階毎の総時間には2条件間で有意な差は認められなかったが、エアコン冷房の方で風を感じており、温冷感でやや寒いという申告であった。送風時においての比較では、エアコン冷房の方で皮膚温低下度が額や腕など露出部位において有意に大きくなり、覚醒、心拍数の上昇、ならびに、体動の回数が有意に多くなった。これらの結果は、エアコン冷房の方が冷刺激となり睡眠を阻害する可能性があり、天井冷房の方が睡眠に適していたことを示唆している。
著者
山中 俊夫 甲谷 寿史 宮本 敬介
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.112, pp.13-21, 2006-07-05

居住者に清浄な空気を提供できる置換換気の利点を活かしつつ、上下温度分布の不均一を緩和できる床吹出し空調システムを「準置換換気」と定義し、円形吹出し口を有する室内における人体由来の汚染物の鉛直濃度分布を予測する手法の構築を目的として、円形開口の径と吹出し風量をパラメータとして縮尺0.731の模型室を用いた実験を行った。Koestelの非等温噴流の式から算出される風速が0となる高さ(絶対到達距離)を利用して室内をゾーニングし、流量バランスと汚染物の質量バランスに基づくゾーンモデルを用いて汚染物濃度の鉛直分布を予測する手法を考案し、19条件の吹出し条件を対象にした実験結果から、同予測手法の実用性を検証した。
著者
松平 秀雄 阪倉 康男 田中 康雄 中田 勉 濱田 彰
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.1, pp.67-73, 1976-06-25

本研究で言う列車風とは,トンネル内を走る列車のピストン作用によって引き起こされる風である.トンネル内で列車が発進・加速・等速・減速・停止する場合に,列車風速および空気吐出し量が時間とともにいかに変化するかを定量的に把握し,地下鉄空気調和設備の設計資料を得ることが本研究の目的である.本報告ではまず単線のトンネル模型を作り,その中で模型列車を走らせることにより,上記の関係を求めるとともに,トンネル内の空気の運動方程式(非線形微分方程式)を立てて考察したので報告する.
著者
今井 正樹 岡田 誠之 武藤 暢夫
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.67, pp.57-65, 1997-10-25
被引用文献数
1

大都市を中心とした水需要の増大に対し,水資源の高度利用,下水道への排水量の抑制を主目的とする水の再利用システムとして,"中水道"の開発,実用化が進められてきた.本研究においては,配水管の通水能力の減少,管路の閉そく,熱交換器などの熱交換率の低下,スライムの発生に伴う局部腐食の増加などを引き起こしている"スライム障害"を水質面から取り上げ,具体的にはスライムの発生形態および発生要因を中心に,最終的にスライム発生を抑制させる目的で,特に中水の水質との関連性を踏まえて実験を進めた.主な検討項目は,(1)スライムの発生,生育条件の検討,(2)スライムの抑制,(3)スライムの生物活性,である.次に研究結果を要約すれば以下のとおりとなる.1)実排水および人工下水を用いて,スライムを発生させた場合,処理原水に対して凝集沈殿処理水ではその30%,砂ろ過処理水では10%まで発生を抑制できた.2)スライムの発生は水中の栄養塩類としてN,P化合物の存在が大きく影響し,とりわけPの存在は発生の主要因となっている.3)発生の経時的変化は一次反応の形態をとることが確認された.4)今回のスライムの組成はC_7H_<12>NO_6で示され,生物体としての細菌の組成と類似しており,酸素吸収量からも生物体としての活性が認められた.
著者
福島 逸成 林 徹夫 浦野 良美 龍 有二 渡辺 俊行 赤司 泰義
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.66, pp.57-66, 1997-07-25
参考文献数
11
被引用文献数
7

本研究は,福岡における住宅の冷房用電力消費量に及ぼす気象条件や住宅仕様や住まい方などの影響について検討したものである.まず,調査データを基に冷房用電力消費量を推定し,福岡の戸建て住宅の年間冷房用電力消費量が札幌の約6倍,那覇の約1/3倍であることなどを明らかにした.そして,在来住宅と断熱気密住宅について,気象条件,通風利用,冷房機器の使われ方,などによる冷房用電力消費量を試算し,断熱化が全国的に夏季電力消費量の削減に有効であること,実際の住まい方を想定すれば福岡の冷房用電力消費量は断熱気密住宅でも在来住宅より大きくなること,福岡の住宅仕様としては断熱化に加え日よけの工夫や通風の利用が欠かせない条件であること,などを示した.
著者
福島 逸成 浦野 良美 渡辺 俊行
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.57, pp.35-48, 1995-02-25
参考文献数
21
被引用文献数
8

住宅における冷房設備の普及は,エネルギー消費に大きな影響を与える.本研究は実態調査を基に,近年の九州地域,主に福岡市における戸建住宅と集合住宅のエネルギー消費構造を次の目的で整理した.1)用途(冷房用,暖房用,給湯用など)別エネルギー消費量の推定方法とその結果を考察する.2)住宅設備器具の普及率,使用状況,エネルギー消費量を整理する.3)平日と休日の時刻別エネルギー消費変動を生活状況との関係から把握する.4)他地域との比較から九州地域の住宅エネルギー消費特性を評価する.
著者
大橋 一正 中島 康孝
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.45, pp.1-11, 1991-02-25
被引用文献数
2

本研究は既存の事務所建物において消費されるエネルギー量を調査・分析し,省エネルギー診断を行う基礎的な資料,および手法を提案した.各建物においてエネルギー消費量は固有のものであるが,建物の用途によってはある程度共通性がある.本報告は既存事務所建物におけるエネルギーの消費実態調査を基に空調用エネルギー消費量と各年度(1981〜1985年)の気象変動量がどのような関数で表すことができるかを重回帰分析による略算式で示し,この簡易推定判定式を省エネルギーを目的とした各建物のエネルギー管理が容易に行われるための初期診断の基礎資料とした.分析対象とした既存建物の規模は延べ床面積約1700〜39000m^2,平均約7700m^2である.
著者
澤登 龍彦
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.47, pp.83-90, 1991-10-25
被引用文献数
2

吸収式ヒートポンプに関する最近の研究は,個々の機器に対する性能向上を目的とする実験的研究のほかに,吸収サイクルについて多くの方式が検討されている.しかしながら,各サイクルの性能を検討する際に不可欠な理論的成績係数・昇温値については明確なものがみられない.吸収式システムにおいては溶液の特性,特にその溶液濃度による沸点上昇の影響を考慮しなければならない.本研究は,溶液特性がデューリング則に適合する場合には各温度間に簡単な関係が成立することを利用し,種々のサイクルについて理論的性能を求めて検討したものである.
著者
百田 真史 井上 隆 川瀬 貴晴 野原 文男 本間 睦朗 横田 雄史
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.120, pp.23-31, 2007-03-05
被引用文献数
1

本研究では,性能検証過程の指針に準じた過程を経て竣工したオフィスビルの熱源系統に対して,受渡し後段階における性能評価の実践的研究として,企画・設計要件書に倣った性能規定に基づき,熱源システムの運用段階における性能評価を行った.その結果,一部熱源構成機器を除いてほぼ性能規定どおりであることと,建物全体のエネルギー消費面でも規定を満たすことが確認でき,充実が望まれる第三者性を確保した性能評価の事例を提示することができた.
著者
桑原 康浩 杉山 浩美 宋 永学 住吉 大輔 黒江 大亮 赤司 泰義
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.124, pp.11-18, 2007-07-05
被引用文献数
1

本研究の目的は,インバータ冷凍機を導入した熱源システムの省エネルギー効果を定量的に明らかにすることである.対象となる熱源システムは主に,インバータ冷凍機,統合型冷却塔,フリークーリングシステムで構成されており,インバータ冷凍機のCOPは部分負荷運転時に最大で18を実現する.本報では対象の熱源システムについて概説した後,実測結果に基づいて,熱源システムの性能評価を行った.その結果,冷凍機単体のCOPは月平均値で最大18.2,熱源システム全体のCOPは9.2という高い値が確認された.
著者
瀬尾 要 西川 誠行 水野 稔 小寺 弘一 大西 潤治
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.49, pp.13-23, 1992-06-25

二次元的模型を用いファンコイルユニットによる空調システムを,実際の設定条件下で作動させた場合について,空気の吹出し方向の差異が省エネルギー性および室内温熱環境に与える影響の基本的特性を,実験・計算の両方から検討した.その結果,吹出し方向によっては,室内での気温・気流分布特性がかなり異なることや熱損失の軽減が図れることがわかった.また,計算ではふく射の影響が顕著であることや壁関数が有用であることも明らかとなった.計算結果は,実験とも比較的よく一致した.
著者
貝塚 正光 岩本 静男
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.33, pp.103-113, 1987-02-25
被引用文献数
1

室内の熱環境は,気温・湿度・気流・放射などの物理的条件と,着衣・代謝などの人体側条件とによって評価される.これらを総合した温冷感指標の一つとしてPMVがP.O.Fangerによって提唱されている.通常の空調室内では,これらの物理的条件やPMVは一様ではなく,その不均一さは在室者の不快や空調効率の悪化を招く.例えば,コールドドラフト,大きな上下温度差,大きな片側放射冷却や加熱などの障害を生じたりする.したがって,熱環境をより的確に評価するためには,このような物理的条件やPMVなどの分布をも把握する必要があり,数値予測法はそのための有力な方法となりつつある.室内気流や気温の分布の数値予測法については,例えば貝塚に概観されているように,多くの研究がなされており,実用的にも用いられる段階に至っている.また,本論文で取り扱う室内放射授受の計算法についてはB.Gebhart,P.O.Fangerなどがすでに定式化している.さらに,坂本は加熱面のある模型室内に対して気流流動と放射授受を組み合わせた計算を行っており,平松・貝塚は二次元暖房室内のベクトル放射温度や作用温度の分布の計算をも示している.本論文は,室内熱環境の数値予測法を確立するための研究の一環として,特に放射授受による熱環境の分布のみに着目し,壁面温度・ベクトル放射温度・平均放射温度・PMVなどの算法を定式化し,床暖房または強制対流暖房を想定した室内に適用し,両暖房方式の特性の一面が把握できることを示すものである.二次元室内を対象とした平松・貝塚では,気流流動と放射授受の計算を組み合わせ,気温や対流熱伝達率の分布をも未知量として数値予測を行ったが,本報では放射授受の計算法を吟味するために気流流動の計算は組み込まず,気温と気流は一様なものと仮定し,対流熱伝達率は既知なものとして適切な値を用いた.このような計算法は,基本的にはP.O.Fangerがすでに示したものと同様である.異なる点は,気流計算と組み合わせることを考慮して室内表面を細かく分割したこと,放射場の方向性を表す中村によるベクトル放射温度を計算したこと,人体の形態係数を微小立方体の形態係数から近似する中村の方法を用いたこと,射度(radiosity)の代わりにB.Gebhartの吸収係数を用いたこと,形態係数の計算に山崎による優れた算法を用いたこと,などである.なお,本論文の一部は筆者らによって,参考文献8),9),10),11)にすでに報告したものであることを付記する.
著者
田中 毅弘 後藤 滋
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.45, pp.35-42, 1991-02-25
被引用文献数
1

運用信頼性の立場からみた,遠隔監視システムによる建築設備に関する調査と解析を,1986年から1988年の3箇年間行った.本報では,まず遠隔監視システムの概要,解析データと調査概要,警報発生の状況における建物用途・規模別,月・曜日・時刻別,原因・設備別などの解析を多面的に行い,定性的な傾向と特徴を明らかにした.これらの結果から,建物用途・規模別では文化施設で中小ビルが,月・日・時刻別では特に冷房運転時の立上げ負荷変動時で,そして,原因・設備別状況においては機器故障の原因による熱源設備が,それぞれ多いことを統計的解析によって算出した.
著者
谷口 孚幸 並木 裕 高橋 一郎
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.15, pp.19-31, 1981-02-25
被引用文献数
1

本研究は,事務所建物における必要衛生器具数を使用者の"許容待ち時間"から算出する方法を提示したものであり,1)業務内容別の衛生器具使用状況アンケート調査と,2)許容待ち時間に関するアンケート調査の結果からGPSS(General Purpose Simulation System)による衛生器具使用シミュレーションモデルを作成し,男子小便器を例にとり,衛生器具使用の待ち時間を"あふれの割合"と対応させ,既往の算定値との比較・検討を行ったものである.本研究により各計画対象階の計画人員数が同じでも,業務内容が異なると衛生器具使用頻度のピーク発生時とその値は異なり,衛生器具使用時の待ち時間を一定に保つサービスを行うためには各階の必要器具数は,かなりの差を生じることが明らかになった.
著者
鈴木 哲夫
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.47, pp.59-66, 1991-10-25

管路を流れる流体の形状損失ヘッドを生じさせる原因が,流体あるいは管壁への流れの衝突に基づくものとして,乱流の流れにおける合流管の損失係数を示す理論的表示式,および文献にある研究者の実験結果に基づいて理論的な表示式の実験係数を定めた.それらにより,任意の合流角度と任意の面積比の場合について非対称Y形の合流する流れの損失係数を計算することができる.また,計算値は実用上十分な精度で良く一致している.
著者
田中 毅弘 後藤 滋
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.47, pp.1-6, 1991-10-25
被引用文献数
1

第1報では,遠隔監視システムの概要,解析データと調査概要,警報発生の状況における建物用途・規模別,月・曜日・時刻別,原因・設備別などの解析を多面的に行い,定性的な傾向と特徴を明らかにした.そこで,本報では,初期故障の概念とその評価方法を提案し,具体的な事例として,既報のフィールドデータのうち,幾つかの建物を対象に初期故障の解析を行い,初期故障における発生推移状況,原因・設備別の解析結果を示す.これらの結果は,遠隔監視システムによる建築設備における初期故障の取扱いについての一つの提案と実証を行うものである.
著者
児玉 昭雄 大蔵 将史
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.127, pp.11-18, 2007-10-05

太陽熱温水器を駆動熱源とするデシカント空調機と顕熱処理用の冷却コイルを組み合せた太陽熱利用デシカント空調システムについて,全冷房出力に対するデシカント空調部の寄与割合に着目し,室内全熱負荷,顕熱比,換気回数の影響を調べた.処理風量と太陽熱温水器の循環水流量が室内顕熱負荷と連動する本システムでは,顕熱負荷の増加に伴って除湿機再生温度が低下することに加えて,顕熱交換器の低温側空気中の外気割合が増加することで給気温度が土昇し,デシカント空調プロセス部の寄与割合は低下する.換気回数が増加しても再生空気入口温度が低下して顕熱交換器で給気温度が低下するため,冷却コイルに求められる顕熱処理能力は増大しない.
著者
崔 光煥 木村 建一
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.51, pp.43-51, 1993-02-25
被引用文献数
1

再生器,熱交換器,蓄乾槽,および除湿器からなる太陽熱利用開放形吸収式除湿乾燥システムのうち,再生器について屋内で行った実験の結果を報告する.従来の屋外の実験では,外気条件の変動,特に風速の変動が激しいため,再生器の特性を把握することが困難である.そこで,開放式模型再生器を製作し,定常状態で再生表面の温度を一定にし,水溶液の流量を制御しながら再生器の空気層の高さと風速を変え屋内実験を行い,風速と風量の再生量に及ぼす影響を調べた.その結果,空気層の高さが異なる場合,風量の水分蒸発量への影響はほとんどなく同じ空気層の場合には風速が大きいほうの再生量が多かった.また,吸収剤として使用した塩化リチウム水溶液の電導率と温度を測定しあらかじめ作っておいた塩化リチウム水溶液用標準濃度曲線を用いて運転中に水溶液の抽出をせずに濃度を容易に連続して求める新しい方法を提案した.実際にこの方法で濃度を求め連続記録することができた.実験結果から計算して求めた無次元数間の関係は文献所載の層流に対する物質移動の式に比べ0.5m/s以上の風速域ではやや離れるが,より低風速域ではかなり異なる結果となった.