著者
安田 勉
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学紀要 (ISSN:13455524)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.151-162, 2000-03

国立情報学研究所の「学術雑誌公開支援事業」により電子化されましたMany children suffered physical and mental damage from corporal punishment in schools. Many teachers have cognition to admit corporal punishment. I give a lecture on" educational psychology" in the university, students too have cognition to admit corporal punishment. The purpose of this research is to analyse the cognition of corporal punishment of students, who are currently study in a faculty of education of a college and potential teacher in the near future, to eradicate corporal punishment from Japanese schools where corporal punishment is still prevailing, though the corporal punishment is denounced in the Act of School Education of 1947. The findings show that many students have still suffered from aftermath of the corporal punishment which they experienced in the previous stage of education. One of the reason why the students admit corporal punishment is greatly due to a school culture, which admit corporal punishment as necessary for a tool of education, when some teacher can't communicate with children, they inflict corporal punishment. The reason for teacher's usage of corporal punishment is, presumably due to a lack of communication skills. In conclusion, developing and reinforcing communication skills of students, particularly those who study in a department of education, are crucial to eradicate corporal punishment from Japanese schools.
著者
藤井 博英 山本 春江 角濱 春美 村松 仁 中村 恵子 坂井 郁恵 田崎 博一
出版者
青森県立保健大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

現代医療には、「やまい」を持った時に生じる不安や苦悩への対処ケアが不足していると言われている。青森県地方では、それをシャーマンが補完している実態がある。本研究の目的は、シャーマンのもたらす"癒し"の実態から看護実践に還元できる内容を抽出することである。そこで、いたこのA氏に対して相談内容や、役割についてインタビューを行った。利用者は、病気治療にかぎらず、ふりかかった不幸や災いなど人生の問題場面に幅広く相談していた。それらの相談にイタコは、"口寄せ"により対処し、問題の因果応報を判断して、指示的に関わり行動化させることで"癒し"をもたらしていた。さらに、シャーマンを訪れた経験のある外来患者に対して、シャーマンがもたらす"癒し"について半構成的インタビューを行った。その結果、「対処方法を教えて欲しい」「原因が霊的なたたり、障りでないか判断して欲しい」と望み、「めどが立つ(見通し)」「前向きになれる」「やる気になる」「腹をくくる」などの心情の変化を体験していた。患者の「前向きになれる」「やる気になる」など、力を蓄え、発揮させるというエンパワーメントが行われていた。また、これらに関わる外来看護師に"癒し"について半構成的インタビューを行った。その結果、患者が「癒される」感情を<ホッとする><安らぎ><安心><和む><リラックス>などと捉えており、この対応として<傾聴的な態度><患者に寄せる関心><自己(患者)の存在の承認><その人らしい日常生活が送れるサポート>など行っていた。シャーマンの"癒し"は、ある程度行動を強制することにより「力を与える」方向に、一方ナースは、患者の心情を受け入れ保障する方向に関わっており、患者の必要としている"癒し"は、その両者を含んでいるのではないかと考えられる。
著者
山岡 伸 小山 達也
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森保健医療福祉研究 = Aomori Journal of Health and Welfare (ISSN:24356794)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.8-12, 2020-12-04

[目的] 現在,食事調査は日々の食事の栄養価などの食事摂取状況を把握するために行われている。しかしながら,食事からの栄養価の算出は第二次世界大戦以降の人々の食事を対象としている場合が多く,それ以前の時代の人々の食事はほとんど対象にされていない。したがって,古文書などの史料から,昭和初期以前の食事の栄養価の算出を試みようとした研究はほとんどない。そこで,本研究では,江戸時代における弘前藩の史料である[年中行事御祝献立並三方等御飾]に記載されている食事の描写から栄養価の算出を試み,その結果から,江戸時代の史料が食事の栄養価の算出のための新たな既存資料として利用できるか栄養価の算出方法の検討を行った。[方法] [年中行事御祝献立並三方等御飾]から一部料理を抜粋し,日本食品標準成分表2015年版(七訂)を用いて,雑煮,田作り,数の子,うちまめの栄養価を算出した。[結果] [年中行事御祝献立並三方等御飾]から食事の栄養価を算出することができ,雑煮のエネルギーは446kcal,田作りは81kcal,数の子は49kcal,うちまめは46kcalと推定された。[結論] 本研究で算出した各料理の栄養価は,現代の食事調査法の1つである写真法によって栄養価を算出された結果に相当すると考えられる。したがって,江戸時代などの史料からの食事の栄養価の算出は,現代の食事調査の知識を活かすことで可能となることが示唆された。
著者
工藤 奈織美 山本 春江 杉山 克己
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.1-7, 2005-03-31

国立情報学研究所の「学術雑誌公開支援事業」により電子化されました。The amount of exercise of 29 people in the snowfall period and non-snowfall period was investigated in Aomori City to clarify the influence of "Snow crearing" on the amount of exercise in the snowfall period and to clarify the difference season in the amount of exercise and the number of steps. The results were as follows : 1) The season and the weather such as the snowfall and snow did not influence people who took regular exercise, and the amount of exercise and the number of steps were the same in the snowfall period. 2) "Snow crearing" contributed to the amount of exercise and the number of steps in the snowfall period. 3) "Snow" did not influence the amount of exercise and the number of steps of people who took regular exercise so much. 4) A significant correlation was seen between the amount of the exercise or the number of steps, and daily activity, such as shopping on foot.
著者
大和田 猛
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.223-240, 2006-12

国立情報学研究所の「学術雑誌公開支援事業」により電子化されました。The Elderly Abuse Prevention Law was adopted on November 1, 2005, and is slated to come into force on April 1, 2006. This is associated with the fact that the problem of elderly abuse has bubbled to the surface in recent years and begun to be regarded as a significant social problem. Given this, questions such as how homecare support centers, which handle living assistance for the elderly in a comprehensive manner, should respond to this problem and what can be done to relieve this problem through the practice and functions of care management, which has come into being as a result of the establishment of the elderly care insurance system, demand urgent consideration. The purpose of this paper is to compare the results of the research into the realities of elderly abuse at home, compiled by the Ministry of Health, Labor and Welfare, and those of the similar research that the author has conducted on in-home elderly people in Aomori Prefecture, review the functions and roles of care management and identify challenges for the practice of care management.
著者
川内 規会 オガサワラ メリッサ 山田 真司
出版者
青森県立保健大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、医療通訳に焦点を当てながら外国人患者と医療従事者が抱えているコミュニケーションの問題を分析し、医療通訳の今後の可能性を考察した。在日外国人対象の調査では、外国人患者の医療現場における言語上の不安要因が明らかになり、さらに外国人患者は病院内の説明を十分に理解していないという結果から、「情報保障」の問題が重要視された。医療通訳の調査では、通訳者の活躍が期待されているが、医療通訳派遣システムが形作られている大都市の課題と外国人が少ない地域でかかえる課題には、将来的な改善点が大きく異なることから、今後、地域社会のニーズに合わせた段階的な医療通訳の対応が必要であると考える。
著者
大和田 猛 加賀谷 真紀
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.109-121, 2008-12

福祉系4年制大学の学生が特別養護老人ホーム等の配属実習先において、遭遇した実習現場職員の利用者との関わり場面の自由記述から、レジデンシャルワーカーとしての専門職資質、特に利用者の権利擁護や虐待予防の問題を中心に若干の課題を検討した。その結果、社会福祉施設という対人援助の実践現場においても、良質なサービスの提供、利用者の尊厳の保持、利用者の意向の尊重、権利擁護、虐待防止などの基本的に職員に求められる行動規範について問題のある職員が存在することが示唆された。特に、施設の利用者は心理的虐待やネグレクトを受けやすく、自己尊重と尊厳を維持する権利、適切な介護を受ける権利、質の高いサービスを受ける権利、人格が尊重される権利などについて、権利侵害が多いことが類推される。したがって、レジデンシャルワーカーを養成する教育組織における人権教育の必要性が求められ、施設においても倫理綱領の作成と職員の行動規範の確立、人権意識啓発のための研修、職場内のスーパービジョン体制の整備などを通して、真の意味で利用者の快適なソフト面での生活環境を整備することが集眉の課題である。
著者
廣森 直子
出版者
青森県立保健大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

現在、高い専門性が求められつつも、十分な労働条件や社会的地位が得られていない「専門職」も多く、そのような傾向は女性が多くの割合を占めている専門職でより顕著である。本研究では、司書と栄養士を事例として取り上げ、専門職として女性がいかにキャリア形成しているのか、あるいはできないでいるのか、またそれを支える専門性とは何かについて、専門職として働く女性と、資格を取得しながらも専門職として働いていない女性(潜在専門職)を対象にインタビュー調査を行い、実証的に明らかにした。
著者
露木 敏子
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.119-130, 2004-03-31

国立情報学研究所の「学術雑誌公開支援事業」により電子化されましたFamily caregivers of elderly persons with dementia, who become mentally and physically exhausted because of the pressures of home care, are forced to live under difficult circumstances. Many of them have no one to confide in and find themselves isolated at home, facing a serious situation. Family caregivers of elderly persons with dementia in the S district of Shinagawa Ward, Tokyo, banded together for a forum for discussion in which to be able to speak their minds to each other. That led to the start of the "Association of Families Who Care for Elderly Persons with Dementia" as part of classes on home care for the stay-at-home disabled elderly at a health care center in the district. I participated in the association as an adviser for seven years since its start in 1993. The families, who shared common problems, successfully restored their mental and physical health by forming a group (The Association of Families Who Care for Elderly Persons with Dementia) and joining the gathering continuously to build close cooperative relations among themselves. This research was conducted to focus on and analyze the group dynamism brought about by the association through the process.
著者
小野 恵子 内田 陽子 中谷 久恵
出版者
青森県立保健大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

これまでの研究を発展させ、在宅エンドオブライフケア(終末期ケア)を支える訪問看護師とケアマネジャーとの連携の様相を明らかにし、コロナ禍における在宅療養の連携支援の実情を明らかにするとともに、終末期の在宅療養者を支える訪問看護師とケアマネジャーの連携支援モデルの構築に発展していく。
著者
山岡 伸 小山 達也
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森保健医療福祉研究 = Aomori Journal of Health and Welfare (ISSN:24356794)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.8-12, 2020-12-04

[目的] 現在,食事調査は日々の食事の栄養価などの食事摂取状況を把握するために行われている。しかしながら,食事からの栄養価の算出は第二次世界大戦以降の人々の食事を対象としている場合が多く,それ以前の時代の人々の食事はほとんど対象にされていない。したがって,古文書などの史料から,昭和初期以前の食事の栄養価の算出を試みようとした研究はほとんどない。そこで,本研究では,江戸時代における弘前藩の史料である[年中行事御祝献立並三方等御飾]に記載されている食事の描写から栄養価の算出を試み,その結果から,江戸時代の史料が食事の栄養価の算出のための新たな既存資料として利用できるか栄養価の算出方法の検討を行った。[方法] [年中行事御祝献立並三方等御飾]から一部料理を抜粋し,日本食品標準成分表2015年版(七訂)を用いて,雑煮,田作り,数の子,うちまめの栄養価を算出した。[結果] [年中行事御祝献立並三方等御飾]から食事の栄養価を算出することができ,雑煮のエネルギーは446kcal,田作りは81kcal,数の子は49kcal,うちまめは46kcalと推定された。[結論] 本研究で算出した各料理の栄養価は,現代の食事調査法の1つである写真法によって栄養価を算出された結果に相当すると考えられる。したがって,江戸時代などの史料からの食事の栄養価の算出は,現代の食事調査の知識を活かすことで可能となることが示唆された。
著者
山田 典子
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.17-24, 2004-03-31

スリランカは開発途上国の中で最も早く高齢化社会を迎えようとしている。スリランカでは、コロンボに代表される大都市および22の地域の胸部疾患クリニックを拠点にDOTSを活用する結核対策が運用されている。しかし、2002年10月末現在、旧戦闘地域を含む12の地域で未だDOTSの整備がなされていない。さらに、検査設備や技術職の不足などの課題も抱えている。結核蔓延状態を改善していくためには、予防教育により治療中断を防止し、結核治療率を高めることが重要な課題である。
著者
今 淳 澤村 大輔
出版者
青森県立保健大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

心筋の胎仔創傷治癒機構(FWH)が成獣創傷治癒機構(AWH)へ移行する時に,遺伝子がどう変動するか網羅的に解析した。その結果,多数の変動遺伝子を検出し,特に,Has-2,MMP,fibromodulinの抗線維化に関連する遺伝子は抑制し,I型コラーゲン,アクチン,TGF-betaの線維化に関連する遺伝子,toll-like receptor,シクロオキシゲナーゼ等の免疫に関与する遺伝子は上昇した。次に,抑制した遺伝子を心筋壊死組織に導入したところ,軽度に抗線維化を認めたが,何れも完全なFWHは誘導されなかった。従って,各遺伝子はFWHのマスター遺伝子ではなく,更なる遺伝子の関与が考えられた。
著者
福島 真人 尾崎 勇
出版者
青森県立保健大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

痛覚,脳または自律神経の反応における呼吸の影響を検討するために,脳波,交感神経皮膚反応(SSR),指尖容積脈波(DPG),主観的痛みスケールを記録した。左手に呼気と吸気時にそれぞれ電気刺激を与えた。刺激強度は痛覚閾値とした。刺激強度は同一であったにも関わらず,被験者の主観的痛みスケールでは,吸気の電気刺激に比較して呼気刺激で痛みが弱いと感じていた。痛み関連脳電位の後期成分の振幅は吸気よりも呼気で小さかった。痛みの情報処理は呼吸によって動揺し,痛みは呼気時に中枢神経システムによって制御されていることが示唆された。
著者
岩井 邦久 森永 八江 西嶋 智彦
出版者
青森県立保健大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

フラボノイドは抗酸化活性等の保健効果が期待されているが、吸収性が低い。我々は、ペクチンがフラボノイドの吸収を促進する作用とそれによる生理的影響について検討した。その結果、フラボノイドの水酸基が多いことやカルボニル基の有無等が作用に関与していることを明らかにした。また、ケルセチンの吸収はペクチンの摂取量依存的に増加し、それによって低密度リポタンパク質 (LDL) の酸化抵抗性も強まることも明らかになった。これらの結果は、ペクチンの新しい作用を示す可能性があると共に、フラボノイドの吸収性向上にアプローチするものである。
著者
山田 真司 山田 典子
出版者
青森県立保健大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

唾液アミラーゼ活性によるストレス測定値それ自体,および測定値の前後変化と質問紙による主観的な質問項目(疲労感,興味,楽しさなど)との関連については一つの質問項目を除き乏しかった.従って,これらの主観的な感覚は複数の要素から構成されたものであり,唾液アミラーゼ活性によるストレス測定値のみによって代替することは困難であると思われる.ストレス測定値と関連の高かった質問項目は「これから計測するストレス値は高いだろう」というものであったことから,唾液アミラーゼ活性によるストレス測定値に示される客観的な身体状況が主観的にも的確に評価できているという結論が導かれた.
著者
藤本 満記子
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学紀要 (ISSN:13455524)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.119-132, 2001-03

現在、看護学分野において、ケアリング、癒しといった概念が重要視され、患者-看護婦関係、中でも共感の重要性が改めて注目されている。しかし、看護婦は実践場面でこのことに配慮して関わっていながら、その概念の曖昧さから効果的に活用できない現状にあり、その明確化が求められている。本研究では、東北地方の某県立病院内科系病棟に勤務する看護婦31名を対象に、半構成的質問紙による面接によって、共感プロセスとその影響因子を帰納的に導き出した。また、共感プロセスの各段階と情動的共感性尺度との関連性を検討した。結果、共感プロセスは『第一印象』、『独自性の気づき』、『共感的理解』、『積極的関わり』:苦痛を和らげたい思い→関わり→患者の変化、『信頼関係の深まり・成長』と連むことが明らかになった。共感プロセスには、患者側の要因である「個室」「重症度」「患者・家族の受け止め方」、看護婦側の要因である「経験」「姿勢」「看護ケア体制」が影響していた。また、この共感プロセスの概念枠組みに洽って、本研究対象者の語った患者関係について段階別に3群に分類した情動的共感性尺度得点には有意差がなく、看護における共感スケール開発の必要性が示唆された。以上から、本研究ではふだんの実践で看護婦があまり意識していない共感プロセス、影響因子を明確にでき、トラベルビーや小代のモデルを犬枠において検証し、積極的関わりの部分をより明細化できたと考える。
著者
宮本 拓也 藤本 真紀子
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.445-447, 2005-12-28

国立情報学研究所の「学術雑誌公開支援事業」により電子化されました。本文の著者名は誤植。(誤)藤本真紀子 (正)藤本真記子
著者
藤本 真記子 坂江 千寿子 佐藤 真由美 上泉 和子 角濱 春美 福井 幸子 木村 恵美子 小山 敦代 杉若 裕子 秋庭 由佳
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.321-329, 2005-12-28

看護における新しい考え方、方法の普及速度に差が見られることから、普及に関する影響要因を検討する目的で、全国47都道府県から規模別に抽出し、調査協力が得られた141施設の看護部責任者及び各施設10名のスタッフに質問紙調査を行った。看護部責任者、スタッフそれぞれに質問紙を作成し、個人の属性、施設の状況に加え、革新性(知的興味、上司の姿勢など普及に影響すると考えられるもの)に関する質問に4段階の尺度で回答を得、返送された看護部責任者の有効回答124部、ナースの有効回答886部を対象に、属性と革新性との関係を分析した。その結果、看護部責任者で、「新しいことを取り入れ広める時、チームや委員会を組織する」「リーダークラスの看護師に根拠を説明する」「学会や看護協会などの情報を活用する」などで平均得点が高く、「降格人事をしている」が低かった。スタッフは、「研修の参加者は、内容を伝達し広める使命がある」「病棟では協力体制がある」「病棟責任者は積極的に研修を勧める」などで、低い項目は、「新しいことを取り入れるのは提案者が誰かによる」「新しいものを受け入れにくい理由として『時間がとれない』『面倒だ』と感じることがある」「病棟責任者は『トラブルは引き受けるから』という姿勢である」などであった。属性との関係では、「研修伝達の使命感」は、学会・研修参加回数、講読雑誌数が多い群が高く、20代が低かった。「面倒、時間がない」は、高い年代の群がやや高かったが、全体として低い点数であり、研修伝達と同様、看護者としての使命感が強く自覚されているのではないかと考えられた。学会・研修会、雑誌など、情報へのアクセスと革新性の関連が確認でき、これを普及にうまく活用していくことの重要性が示唆された。