著者
坂江 千寿子 秋庭 由佳 上泉 和子 佐藤 真由美 藤本 真記子 福井 幸子 木村 恵美子 角濱 春美 小山 敦代 杉若 裕子
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.341-348, 2005-12-28

看護師がイノベーションと認識し、かつ、研究的根拠が明白な看護技術の採用程度とその看護師が所属する看護部の組織的要因との関連性について探求することを目的に、病床数規模別に無作為抽出した看護部責任者141名、及び、各病院10名のスタッフナース計1410名を対象に調査した。スタッフには根拠のあるイノベーティブ看護技術22項目について、E.M.Rogersの普及決定過程における段階モデルを用い質問し採用度を算出した。責任者には、個人的特性の他、雇用状況、研修費用、病院の管理運営会議への参加、研修機会、情報収集の手段、地域交流、専門看護師の勤務形態等、24項目の組織特性を質問し、返送された127部(90.1%)中、有効回答124部、スタッフナースの有効回答886部を分析対象とした。その結果、イノベーティブ看護技術の採用度と看護部の組織特性の関連では、「専門看護師や認定看護師の配置」*、「病院機能評価をうけている」*、「教育・研究機関の併設」**、「院内教育プログラムやセミナーの公開」**、「院内情報ネットワークの整備」*、「文献検索手段としてのインターネットの利用」*、「院外研修の伝達共有の場」**の質問項目で、有意な関連が認められた。さらに、「看護部の意志決定を委員会に委譲することがある」*、「専門性の高い看護師の勤務形態の工夫」***という回答は、組織特性であると同時に、その組織特性を形成する責任者個人の特性としても解釈でき、改めて、看護部責任者の姿勢の重要性が明らかになった。*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001
著者
渡部 一郎 長門 五城 三浦 雅史
出版者
青森県立保健大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

リハ治療では、疾患や障害に合わせ、運動強度や物理療法の種類や強さを設定する。近年開発された毛細血管顕微鏡観察装置では非侵襲的に毛細血管血流速度が定量化できる。この臨床的意義を検討した。健常人の手指冷水負荷後毛細血管血流速度は皮膚温の改善とともに上昇した。姿勢保持や介入困難な脳性麻痺症例では障害側手指の毛細血管血流速度低下を認めた。糖尿病では毛細血管の狭小、変形などの形態学的異常と、有意の毛細血管血流速度低下が示された。糖尿病の有酸素運動では、毛細血管血流速度が改善し微小血管循環の治療への有用性が示された。
著者
中村 由美子 宗村 弥生 内城 絵美 伊藤 耕嗣 杉本 晃子 鳴井 ひろみ 吹田 夕起子 澁谷 泰秀 浜端 賢次 杉本 晃子 権 美子
出版者
青森県立保健大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,病気の家族メンバーがいる家族へのケアを支援するために,項目反応理論を用いた家族機能尺度の有用性について検討することを目的とした。病気の家族メンバーには、がん患者や介護の必要な高齢者を含んでいた。有効回答を得られたのは195名(男性52名,女性142名)であった。構造方程式モデリング手法(共分散構造分析)を用いてモデルを構築した結果,"家族機能"と"QOL"という2つの構成概念が直接影響を及ぼすことが示された。また,項目を洗練化するために,合計19項目からなる尺度を項目反応理論(IRT)によって分析した。項目反応理論を用いた分析は,項目の洗練化だけではなく家族機能モデルの開発にも有用であった。
著者
中村 由美子 杉本 晃子 赤羽 衣里子 澁谷 泰秀 下山 裕子 米谷 真紀子 小山 真貴子 工藤 明美
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.45-52, 2006-06-30
被引用文献数
1

子育て期の家族は子どもの成長・発達に伴い、様々な変化に対応しなければならない。家族のライフサイクルからみた思春期の子どもをもつ家族は、家族の発達段階における「教育期」にあたり、現代の思春期の子どもが抱える社会問題も踏まえて、家族がこの時期の発達段階を移行するためには危機的な状況も多く、社会的なサポートが必要であると考えられる。そこで、本研究では、独自に開発した尺度を用いて、思春期の子どもをもつ家族の家族機能を評価してその特徴を明らかにし、社会的サポートを含めた家族への看護に関する示唆を得ることを目的とした。A町に住む中学生の子どもをもつ463名の父母を対象に『家族機能』、『自己効力感』、『QOL』について測定した結果、家族機能においては「絆」という情緒的機能が高く、また「役割分担」の機能が低いことが明らかとなった。『自己効力感』では、この時期の父母ともに「能力の社会的位置づけ」が低く、思春期の子どもをもつ家族の発達課題である職業生活や夫婦生活の見直しからの影響が推測されるなど家族のライフサイクルの特徴がうかがえる結果であった。父母間の比較においては、『自己効力感』、『家族機能』ともに母親が低値であり、小さな子どもをもつ養育期と同様に母親の負担が大きいことが推測された。『QOL』では、母親の「友人関係」が重要であり、友人を作る場の確保など思春期にある家族の家族機能の特徴をふまえて地域保健活動や家族看護実践を行っていく必要性が示唆された。
著者
竹森 幸一 山本 春江 浅田 豊
出版者
青森県立保健大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、大学における新たな教育方法、すなわち学生がある事例をもとにしたシナリオに基づいて、自主的、自立的に学習し、学生間で相互に助け合いながら学習するという教育方法であるPBL (Problem Based Learning)の手法を、地域住民の生活習慣改善に応用した新しい教育モデルを開発することである。平成15,16年度は青森県N町、17年度は青森県T町で減塩を中心とした食生活改善教室を開催しながら、新教育モデルの開発を行った。教室参加住民は、開発したTYA方式の主特徴であるシナリオを基盤として、チューターによるサポートを受けて、減塩を中心とする生活習慣改善のための知識やスキルを習得することができた。各年度のグループワークの質的分析の結果、前半の学習では(1)自分の減塩行動・工夫点の振り返り、(2)自分の食生活の振り返り等の学習過程、後半では(1)確実かつ長期的に実行可能な目標の導出・再構築、(2)生活習慣全体に関わる健康行動の重要性の理解等の学習過程を経た。参加住民同士が、お互いの生活経験を学習資源とした自由な討議を行なうことが減塩に関する行動変容・実践につながったと捉えられる。N町教室終了後の追跡において、教室参加群は教室終了後の低下した食塩レベルを維持していたグループ(維持群)とリバウンドがみられた群(戻り群)に分けられた。維持群の喫煙、飲酒、運動などの健康習慣レベルが戻り群や検査群のレベルより高かった。このことから食習慣は他の生活習慣と関連しあっており、生活習慣改善を目指す健康教育は主目的とする生活習慣と共に他の生活習慣の改善も組み込んだプログラムが効果的であると考えた。
著者
木村 恵美子
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.289-295, 2006-12

リンパ浮腫ケアの中では患肢の挙上が最も多く実践されている。そのケア効果検証の準備段階として、患者が行っている「患肢の挙上」の実態を把握することを目的として5名のリンパ浮腫患者に半構成的インタビューを行った。その結果、1.対象者の平均年齢は57.2歳、原疾患は乳がん1名、子宮がん4名、リンパ浮腫発症時期は、手術退院直後〜11年の幅があった。リンパ浮腫の病期は、I期2名、II期3名で、患肢部位は、子宮がん術後患者で左下腿のみ2名、左下肢2名、乳がん術後で左上肢1名であった。2.患肢挙上方法:挙上時間は平均7時間半で、高さは5〜13cm、挙上に用いる物品は、綿素材の薄い布団、テンピュール枕等で、患肢を乗せる面を広くする工夫をしていた。患肢挙上中に圧迫療法の併用はなかった。3.患肢挙上効果:手指や手背の浮腫軽減は軽度にある、あるいは不規則ながらあるという「効果あり」は2名。浮腫軽減はないが習慣で挙げている、挙げると気持ちがいいので行っているのは2名、残り1名は、挙上することで合併症を引き起こした。患肢挙上の目的は浮腫軽減だけではなく、また、リンパ浮腫の病期と効果の有無に関係はなかった。Limbs-up is the most popular care for Lymphoedema patients. The aim of this study is to research the actual circumstances for limbs-up of patients. I interviewed to five patients. In results, Patient's age 57.2 (mean), Breast cancer ; 1 patient, Uterus cancer ; 4 patients. The term of Developing Lymphoedema were 11 years from right after operation. Stages of Lymphoedema were stage one ; 2 patients, stage two ; 3 patients. Part of swollen limbs were left shin ; 2 patients, left femur and shin ; 2 patients, and left arm ; 1 patient. The actual circumstances for limbs-up were 1. Lifting time was a half and 7 hour (mean), 2. Height was 5-13cm, 3. Goods for limbs-up were thin mattress with cotton, pillow with tempur. An idea was to keep wide on lifted bed, not partial. All of patients lifted their limbs without multilayer compression. Effect of limbs-up were mild or irregular ; 2 patients. 2 patients lifted their one despite none effect. because, custom for sleeping, relaxation. One patient drew urination disorder by low limbs lifting. Effect of limbs-up between stage of Lymphoedema was unrelated.国立情報学研究所の「学術雑誌公開支援事業」により電子化されました。
著者
細川 満子 千葉 敦子 山本 春江 三津谷 恵 山田 典子 今 敏子 工藤 久子 玉懸 多恵子 鈴木 久美子 古川 照美 桐生 晶子 櫻田 和子
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.159-165, 2008-12

本研究の目的は、効果的な在宅看護実習を展開するために、学生に実習前に身につけさせたい態度について、教員はどう捉えているか明らかにすることである。研究方法は、北東北3県の教育機関34校に所属する在宅看護実習担当教員を対象に郵送法による無記名式自記式質問紙調査を実施した。調査の結果、13名から回答(回収率は38.2%)が得られた。回答者の臨床経験年数は平均7.0年、教員としての経験年数は平均10.4年であった。実習前に、学生に身につけさせたい態度として293コード抽出され、『対象者の生活様式・価値観にあわせた行動ができる』、『信頼関係形成に向けた行動ができる』、『礼節を重んじることができる』、『学生自身の自立した生活ができる』、『主体的に学ぶことができる』、『医療人としての倫理性を遵守できる』の6カテゴリーとなった。在宅看護実習では、学生は生活者である療養者を援助する者として、『学生自身の自立した生活ができる』ことが基盤となる態度であり、全てのカテゴリーのベースになっていることが考えられた。在宅看護は療養者とその家族の多種多様な生活事象の理解をした上で、健康問題や生活課題をアセスメントし、生活条件やQOLの向上、維持を図る看護について「生活モデル」での援助を展開する必要がある。在宅看護において看護師は訪問者としての立場で支援関係を成立させて、限られた時間で看護を展開するという特徴があるため、『対象者の生活様式・価値観にあわせた行動ができる』ことが重要である。そのためには『信頼関係形成に向けた行動ができる』、『礼節を重んじることができる』態度が在宅看護実習では必須である。また、今後ますます求められる『医療人としての倫理性を遵守できる』ことや、『主体的に学ぶことができる』態度を形成するための教育内容が必要であることが示唆された。
著者
向井 友花
出版者
青森県立保健大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

妊娠高血圧症候群の病態の軽減に対する植物性ポリフェノールの有効性を見いだすため、妊娠ラットに一酸化窒素(NO)合成酵素阻害剤を投与あるいはフルクトース(果糖)を過剰摂取させ、アズキポリフェノール摂取が血圧、酸化ストレス、糖・脂質代謝に及ぼす影響を検討した。その結果、アズキポリフェノール摂取はNO欠乏妊娠ラットに顕著な血圧上昇抑制効果は示さなかったが、腎臓のMn-SOD発現を増加させた。またフルクトース摂取妊娠ラットに認められた肝臓の脂質合成転写因子の発現上昇を一部抑制した。
著者
大和田 猛 加賀谷 真紀
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.21-28, 2008-06

本研究は、青森県内のホームヘルパーを対象に対人援助におけるコミュニケーションスキルの活用の現状を調査し、その実態を明らかにすることにある。その結果、(1)ヘルパー業務の中で身体介護や家事援助と並んで、相談業務という心理社会的業務を行っているヘルパーが50%にのぼる、(2)何らかの形でコミュニケーションスキルを活用しているものは、79%存在する、(3)最も多く活用されている技法は、うなずき・相槌・共感・明確化・繰り返しなどである、(4)利用者との信頼関係や親密性を維持するためのコミュニケーション効果については、情緒的・精神的・心理的に安定する、ことや行動障害の軽減・性格が穏やかになる・存在認知が出来るなどが挙げられている。これらの結果から、対人援助の専門職としてのホームヘルプサービス業務の確立のためには、コミュニケーションスキルが不可欠なものとして活用され、利用者の精神的・心理的・情緒的支援に活用されなければならない。
著者
大和田 猛
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.17-25, 2005-03-31

2000年6月に成立した社会福祉法は、我が国の社会福祉パラダイムを地域福祉の推進と規定した。個別地域社会において、地域福祉を推進していく上に、「福祉コミュニティ」の形成は不可欠である。本研究では、地域福祉の歴史、背景を考察し、地域福祉政策も福祉コミュニティづくりの理念と方向を持つものであることを考察した。さらに、先行研究の地域福祉概念や構成要件をレビューした。その結果、地域福祉は、地域を基盤にする社会福祉の構築と環境づくり、福祉コミュニティづくりが一体化されたものであり、福祉コミュニティづくりが伴わなければ、在宅福祉を軸とし、地域を基盤とした福祉が構築されたとしても、真の地域福祉とは言えない。福祉コミュニティは、コミュニティづくりの目標であると同時に、コミュニティを構成する一つの社会状態をつくるというものでもある。従って、地域福祉の推進の上で、「福祉コミュニティ」づくりは重要な意義をもつ、と結論付けた。
著者
井澤 美樹子 中村 惠子
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.111-118, 2004-03-31

糖尿病患者は、糖尿病の療養のため、今までの生活習慣を変え療養行動を生活に組み入れることが求められる (行動変容)。しかし行動変容の必要性を認識していても行動を実際に変えることは難しい。そこには、自己存在価値と行動変容ができない原因の帰属が関連していると考えた。そこで糖尿病患者7事例の療養行動の考え方と自己存在価値について学習理論の視点から分析した。その結果以下のことが示唆された。1) 自己存在価値の捉え方は、「他者との比較による価値付け」と「自身による価値付け」という2つに特徴づけられた。(1)「他者との比較による価値付け」をする人は、自己存在価値観が低く、行動変容できない原因が外的統制要因に帰属していた。(2)「自身による価値付け」をする人は、自己存在価値観が高く、行動変容できない原因が内的統制要因に帰属していた。2) 療養行動の目標では、「他者との比較による価値付け」をする人は「今を無理しない・楽に」、「自身による価値付け」をする人は「これからを考える」という特徴があった。3) 療養行動の評価の視点は、「他者との比較による価値付け」をする人は結果で判断する、「自身による価値付け」をする人はプロセスで判断するという特徴があった。看護職者が糖尿病患者の行動変容を支援する場合、行動変容ができない原因の帰属傾向、自己存在の価値付け、及び療養行動の目標と評価の視点を理解し、その情報を患者教育に活用することで糖尿病患者はエンパワメントされることが示唆された。