著者
矢野 正子
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

20世紀後半の保健医療制度の変遷における看護分野の課題について、国の看護施策と看護の変化を明らかにするためにマスネディアである新聞と看護関係誌の内容を分析することによって、その変化を看護政策論の立場から説明出来る資料を得ることを目的とした。全国紙について1945(昭和20)年から1999(平成11)年迄の55年間の記事内容をKeyword「看護」で年次別に検索・整理し、最終的に15大分類とした。「看護」に関する新聞記事数は55年間で1672あり、1945(昭和20)年には4件であったが次第に増え、夕刊の発行(1961(昭和26)年、紙面数も増もあるが年平均4.8(1945〜1949年)、11.6(1950〜1959年)、30.2(1960〜1969年)、30.2(1970〜1979年)、33.6(1980〜1989年)、57.6(1990〜1999年)であった。記事数の多さから見た10位迄の順位は、1位:看護婦が関わる事件、2位:看護争議、3位:マスメディア、4位:看護行政、5位:看護婦(士)事情、6位:国際、7位:老人看護、8位:看護教育、9位:裁判、10位:看護体制であった。報道の内容と国会審議議事録等に見る経緯から戦後55年間は、看護婦確保の課題を基軸に3期に分けられ、第1期:戦後の混乱と看護婦の労働者意識目覚めの時期(1945〜1965年)、第2期:看護婦確需給計画による看護婦確保対策の始まった時期(1966〜1984年)、第3期:高齢社会に備える看護職員需給見通しによる看護職員確保対策の時期(1985〜1999年)とした。「看護」に関する新聞報道記事数から、それを分類・整理してみることにより、現状施策に観する施策の有無と将来施策の予測性とを兼ね備えた供覧されている、と分析した。
著者
園田 明人
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究では、随伴性判断のバイアス認知に及ぼすオプティミズム特性の役割と、オプティミズムやバイアル認知の持つストレス適応のメカニズムを調べる実験と調査を行った。実験1では、2種の刺激条件(ノイズ/得点獲得)と4種の随伴条件(25-25,25-75,75-25,75-75)を組み合わせた8条件の随伴性判断課題に取り組んだ。オプティミズムに関する個人差特性として、説明スタイル(ASQ)、認知スタイル、絶望感、生活志向(LOT)を取り上げ、随伴性判断バイアスの差異が認められるかどうかを調べた。その結果、負の抑うつ的説明スタイルの持つバイアス効果が示された。すなわち、嫌悪刺激を用いた75-75随伴条件で、オプティミズム群に正のバイアス効果が認められ、得点獲得刺激を用いた25-25随伴条件で、オプティミズム群に負のバイアス効果が認められた。他の個人差特性によるバイアス効果はみられなかった。実験2では、客観的に非随伴性の事象の経験が、後の反応-結果随伴性事態における学習課題の遂行を阻害するか、特に、オプティミズム特性や随伴バイアスがこの遂行阻害を防衛する働きを示すかどうかを調べる実験を行った。その結果、負の抑うつ的説明スタイルによるオプティミズムス水準の差異は、先行処置の随伴性判断にも、後続のテスト課題の遂行にも、有意な差異をもたらさなかった。しかしながら、随伴性判断のバイアスの有無により群分けし(非バイアス群、正のバイアス群、負のバイアス群、統制群)、テスト課題の遂行を比較したところ、非バイアス群は、バイアス群の統制群に比べ、遂行が遅滞していた。実験2の追跡調査として、実験の先行処置におけるバイアスの有無が、自然状況でのストレッサーに対するストレス適応に関与するかどうかを調べた。その結果、ストレス反応が増加していたのは、負のアドバイス群であった。
著者
池田 哲夫 斉藤 和巳 武藤 伸明
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、画像や映像などのマルチメディアデータの効率的な類似検索方法を開発することである。具体的にはBustosらのピボットによる類似検索方法を土台として類似検索方法を開発することである。類似検索方法として、Bustos法でのピボット集合要素の交換方法を改良した方法と、マンハッタン距離に基づく一般化ピボット法の2方法を提案した。2方法とも従来方法に比較して、類似検索性能、ピボット集合選択時間が優れていることを実験で確認した。さらに、実験対象データの性質を効率的に解析可能とすることを目的として、ネットワーク内のコミュニティ抽出方法と、ネットワーク可視化方法を複数考案した。
著者
山田 浩
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

緑茶成分は基礎研究により、インフルエンザウイルスの宿主への感染を抑制することが報告されている。本研究では緑茶うがいのインフルエンザ予防効果を、高校生を対象としたランダム化比較試験により検証した。予め文書同意が得られた高校生757名を対象に、緑茶うがい群又は水うがい群にランダムに割り付け、1日3回、90日間、うがいを行った。インフルエンザ発症者は緑茶うがい群19名(4.9%)、水うがい群25名(6,9%)であり、緑茶うがい群で発症者が減少する傾向を示したものの統計学的に有意ではなかった。予想されたうがいの効果量が少なかった理由として、うがい実施の不徹底等、今後の大規模臨床試験への課題が残された。
著者
岩崎 邦彦 藤澤 由和
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

インバウンド戦略を検討するために定量的調査を実施し、外国人が意識する日本のイメージや強み、及びおもてなしを含めた日本における観光の魅力等について把握するとともに、同じ日本を対象とした日本人による国内観光旅行がどのような需要によって生じているかに把握を試みた。特に、今年度の分析では訪日人数が欧米において最も多く、長期に渡って安定的に多いアメリカ人を対象に調査を実施した。その結果、アメリカ人が思う日本人の強みは、文化・人・食にあることが示さ、その一方で日本人が思う日本の強みがおもてなし・安全・治安というように両者で一致しないことが明らかとなった。
著者
齊藤 真也
出版者
静岡県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

我々は皮膚血管では電位依存性Caに対する依存度が他の血管よりも低いため、温度低下に対する耐性が高く、収縮が維持されることを見出した。一方神経損傷モデルラットでは交感神経の損傷に伴い、細胞内Ca排出が減った結果血管の収縮応答性が亢進し、少ない刺激で大きく収縮することが明らかとなった。これらのことを合わせて考えると、神経損傷モデル動物の皮膚血管では弱い収縮刺激を受けて、すでに血管が収縮している状態にあることが示唆された。そこで、血管を拡張させる薬を投与したところ、血流が回復するとともに、痛みに対する感受性が下がった。以上のことから血管を拡張させることが神経因性疼痛治療になりうることを見出した。
著者
山崎 泰広
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

肝毛細胆管膜に存在するコレステロールトランスポーター・Abcg5/Abcg8の機能亢進は、コレステロール胆石症を引き起こすと考えられている。我々はこれまでに過栄養状態が肝毛細胆管膜におけるAbcg5/Abcg8の機能、および発現を顕著に増加させることを見出したが、その機構に関しては不明であった。本研究では、過栄養状態がAbcg5/Abcg8のトラフィキング、および機能発現に与える影響について解析した。その結果、肝臓にコレステロールが蓄積した状態では、細胞内小胞に蓄えられたこれらトランスポーターの毛細胆管膜への移行が促進すること、その機構にcAMPシグナルが関与することを明らかにした。
著者
根本 清光
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

中枢神経系で重要な役割を果たすNMDA型グルタミン酸受容体(NMDAR)の2Cサブユニットの遺伝子(Grin2c)が、肝細胞肥大誘発作用、肝細胞傷害性あるいは肝細胞増殖性肝肥大誘発作用を示す化学物質の投与ラット肝臓で顕著に発現亢進することを見いだし、これら化学物質の作用にNMDARが何らかの役割を果たすものと推定された。しかし、肝細胞株でこのような化学物質によるGrin2c遺伝子の発現亢進を見いだすことができず、他の細胞種から産生される因子など間接的な要因で発現亢進が引き起こる可能性が考えられた。
著者
武藤 伸明
出版者
静岡県立大学
雑誌
経営と情報 : 静岡県立大学・経営情報学部/学報 (ISSN:09188215)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.141-148, 1996-03-31

This paper describes the implementation of the semantic network and the processing of the preference rules for the pragmatic inference on the natural language understanding system based on the feature structure grammar. The method taken is the control of the constraint solver with these processing and it keeps advantages of the constraint-based approach.
著者
武藤 伸明 斉藤 和巳 池田 哲夫 大久保 誠也 藤澤 由和 小藪 明生
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、 ソーシャルネットワークから収集可能なエゴセントリック情報より、全体ネットワーク構造を推定する手法の開発を目的とする。このネットワークの構造推定は NP-困難クラスに属する組合せ最適化問題を扱うことになり、その効率的な解法として遅延評価付き貪欲法の応用法を考案した。また、ネットワーク構造推定法の妥当性を評価するために、ネットワークの本質的構造を表す評価尺度の考案や、ネットワークデータを含む各種データの可視化法の考案を行った。
著者
鈴木 康夫
出版者
静岡県立大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

本研究は本年度で終了する。本研究の目的は、インフルエンザウイルスの宿主変異機構を明らかにし、その成果をもとに新規な抗インフルエンザ薬や次世代のワクチンをデザインする実験的基盤を確立する事である。この目的は下記のとおりおおむね達成された。本研究は、インフルエンザウイルスの進化、宿主変異機構の核心を突く研究に発展しつつあり、今後さらに本研究が継続できればと願っている。1)ヒトおよび動物から分離されたインフルエンザウイルスの受容体解析によりインフルエンザウイルス宿主が持つ受容体シアル酸の分子種に(Neu54Ac,Neu5Gc)および結合様式(Neu5Ac2-3Gal,Neu5Ac2-6Gal)に結合できるものが選択されその繰り返しにより宿主変異を遂げる可能性が明らかとなった。2)その証拠としてN-グリコリルノイラン酸(Neu5Gc)分子種を気道上皮細胞に持つ動物種(ウマ、ブタ)から分離されるウイルスはすべてNeu5Gc含有糖類を受容体とすること、N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)を気道上皮に持つ動物(ヒト)から分離されたウイルスはNeu5Acと結合することが分かった。3)シアル酸結合様式が異なるMDCK細胞と発育鶏卵細胞でインフルエンザ患者(ヒト)から分離したウイルスを継代すると、前者においてはNeu5Ac2-6Galを認識するウイルスが分離されるが、発育鶏卵で継代するとNeu5Ac2-3Galに強く結合するウイルスが選択されやすいことが分かった。4)インフルエンザウイルスは宿主により受容体認識の性質は変異するが、これは末端シアル酸の分子種、およびシアル酸の結合様式のみであり、どのウイルスもシアル酸α2-3(6)Galβ1-3(4)GlcNAcβ1-構造を最も強く認識するが判明した。このことから、上記糖鎖がインフルエンザウイルスに共通した受容体構造であり、この類似体および抗イデヤオタイプ抗体はウイルスの変異を克服した広域性のある抗ウイルス薬として、また受容体抗体は広域性のある次世代インフルエンザワクチンとして有効であることが実験的に明らかとなった。
著者
山田 静雄
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は過活動膀胱における病因を膀胱における神経伝達物質受容体異常の面から検証し、その有効かつ安全な薬物療法を確立することを目的とするもので、当該期間で以下の研究成果を得た。1)背椎損傷ラットモデルにおいて、過活動膀胱の徴候である膀胱の不随意収縮波形及び膀胱重量の有意な増大が認められた。2)背椎損傷ラット膀胱への[3H]NMS特異的結合Bmax値の有意な増加が認め、この増加は、膀胱機能曲線の不随意収縮曲線波形における振幅と発現頻度(過活動膀胱の程度)と良好に相関した。3)テストステロン投与による前立腺肥大症モデルラット膀胱において、重量の有意な増加と[3H]NMS特異的結合Bmax値の有意な増加が認められた。以上の結果から、背椎損傷ラットおよび前立肥大ラットの両過活動膀胱モデルにおいて、膀胱ムスカリン性受容体異常が認められ、本病態における抗コリン薬の有効性が示唆された。4)ラット膀胱の受容体標品において、[^3H]αβ-MeATPは飽和性の特異的結合を示した。αβ-MeATP、βγ-MeATP、MRS2273、PPADSおよびsuramineは、いずれも膀胱への[^3H]αβ-MeATP特異的結合を濃度依存的に抑制し、その結合親和性はαβ-MeATP>βγ-MeATP>suramine>PPADS>MRS2273の順であった。これより、ATP(P2X)受容体がラット膀胱に存在することが示され、本受容体は創薬標的分子となることが示唆された。5)トルテロジン(Tol)は経口投与により膀胱mAChRに結合し,その結合様式はOxyと比べ緩徐かつ持続的であった。またTolの唾液分泌抑制作用は,オキシブチニン(Oxy)と比べ有意に減弱することが示された。以上の結果より、TolはOxyよりヒトにおいて口渇の副作用が減弱することが示唆された。
著者
剣持 久木 西山 暁義 川喜田 敦子 中本 真生子
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

2006年秋からフランスとドイツの教育現場に導入された、共通歴史教科書を、教科書成立に至る過程、歴史的背景から教科書の内容の分析、仏独両国での教科書の評価、現場での使用状況、さらには東アジアなど他地域への応用可能性を研究した。その結果、実際の使用状況は、二言語学級での使用など限定的であるという実情が明らかになったものの、ドイツ・ポーランド間でも同様の計画が具体化するなど、仏独の事例は限界をもちつつも国際歴史教科書対話のなかで一つのひな形の役割を果たしていることが確認された。
著者
湖中 真哉 伊藤 一頼
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、総合的地域研究の立場から、東アフリカのマー系社会を中心とする牧畜社会をおもな対象として、フィールドワークを実施することにより、これまでほとんど報告例のなかった難民(国内避難民)が国家・国際的な外部からの支援に頼らずに自発的に形成する「地域セーフティ・ネット」の実態を記述・分析した。紛争の結果形成された「群集集落」が相互扶助と安全の拠点となり、地域セーフティ・ネットの役割を果たしていることを解明した。
著者
赤井 周司
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

加水分解酵素とバナジウム化合物を同時に用いることで,入手容易なラセミ体アリルアルコールを1つの鏡像体に変換する方法を開発した。この研究成果は医薬品開発などに不可欠な不斉合成技術に革新的な概念を提示するものである。また,酵素と金属バナジウムという共に高活性で異質な触媒が1つのフラスコ内で共存し,且つ機能を十分に発揮できるよう,メソポーラスシリカの細孔を利用して両触媒の作業空間を区分したことが特筆される。