著者
神谷 研二 CLIFTON KELLY H. GOULD MICHAEL N. YOKORO KENJIRO
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
Journal of Radiation Research (ISSN:04493060)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.181-194, 1991
被引用文献数
2

We have developed an in vitro-in vivo transplantation assay for measuring the concentration of clonogenic epithelial cells in cell suspensions of rat mammary tissue. Rat mammary clonogens from organoid cultures are capable of the same degree of PLDR as clonogens in vivo. The growth and differentiation of mammary clonogens to alveolar colonies or ductal colonies is regulated as follows: a) in the presence of E<SUB>2</SUB> and high prolactin (Prl), cortisol induces mammary clonogens to proliferate and differentiate to form alveolar colonies which secrete milk and begin losing clonogenic potential, b) in cortisol deficient rats, Prl and E<SUB>2</SUB> synergistically stimulate non-secretory ductal colonies, formation of which retain clonogenic potential, c) E<SUB>2</SUB> without progesterone stimulates alveolar colony formation in the presence of cortisol and high Prl, d) progesterone inhibits mammary clonogen differentiation to milk-producing cells and induces ductogenesis in a dose responsive fashion in the presence of E<SUB>2</SUB>, cortisol and high Prl. High prolactin levels coupled with glucocorticoid deficiency increases the susceptibility to mammary carcinogenesis following low dose radiation exposure by increasing the number of total mammary clonogens which are the presumptive target cells and by stimulating their proliferation after exposure.
著者
朴 金蓮 増田 雄司 神谷 研二
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.175, 2006

損傷乗り越えDNA合成機構は、DNA修復機構とともに染色体の恒常性の維持に必要不可欠な生物機能である。酵母で同定された<I>REV1、REV3、REV7</I>遺伝子は、損傷乗り越えDNA合成反応に関与し、電離放射線からの生体の防御と突然変異の誘発に重要な役割を担っている。ヒトREV1タンパク質は、鋳型塩基に対してdCMPを取り込むデオキシシチジルトランスフェラーゼ活性を持つ。この活性は、進化的にとてもよく保存されていることから、生体の防御において生物学的に重要な活性であることが示唆されているが、その意義は不明である。<BR> 今回我々はヒトREV1タンパク質の構造解析から、dCMPの認識に重要と考えられるアミノ酸残基を同定した。それらのアミノ酸残基が実際にdCMPの認識に機能しているかどうかを実験的に証明するために、それらのアミノ酸残基をアラニンに置換した変異体REV1タンパク質を精製し、その生化学的性質を詳細に解析した。その結果、たった一つのアミノ酸置換によってREV1の基質特異性と損傷乗り越えDNA合成活性が劇的に変化することが分かった。今後は、この変異型REV1タンパク質を培養細胞で過剰発現させ、dCMP transferase活性の生物学的意義を明らかにしたいと考えている。
著者
笹谷 めぐみ 徐 衍賓 本田 浩章 濱崎 幹也 楠 洋一郎 渡邊 敦光 増田 雄司 神谷 研二
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.44, 2011

放射線の重大な生物影響の1つに発がんがある。広島長崎の原爆被ばく者の疫学研究から、放射線が発がんリスクを増加させることが明らかにされているが、100mSv以下の低線量域においては有意な増加は得られていない。放射線発がんの分子機構の解明は、発がんのリスク評価につながると考えられているが、放射線照射後の細胞内で誘発された損傷がどのように発がんに結びつくかは明らかではない。我々は、放射線発がんの分子機構を解明するために、実験動物モデルを用いてより単純化した系での解析を行うことを試みた。実験動物モデルとして、修復機構の1つである損傷乗り越えDNA合成に着目し、その中で中心的な役割を担うRev1を過剰発現するマウスを作成し、発がん実験を行った。また、ヒト家族性大腸ポリポーシスのモデルマウスであるAPC<SUP>Min/+</SUP>マウスを用いて掛け合わせを行った。研究の先行している化学発がん実験結果や、放射線分割照射により誘発された胸腺リンパ腫を用いた解析から、がん抑制遺伝子であるikaros領域の欠失および、それに伴うikarosスプライシングバリアントの出現が放射線分割照射における特徴的な損傷として検出された。損傷乗り越えDNA合成機構の異常は、このikarosスプライシングバリアントの出現頻度に寄与していると示唆される結果を得ている。また、損傷乗り越え合成機構の異常は、APC<SUP>Min/+</SUP>マウスモデル系における自然発生腸管腺腫を有意に増加させる結果が得られ、損傷乗り越えDNA合成機構がゲノムの安定性を維持するために機能していることが明らかになった。今回はこれらの結果について報告したい。
著者
田中 泉 田中 美香 石渡 明子 槫松 文子 佐藤 明子 鈴木 桂子 石原 弘
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.160, 2007

レトロトランスポゾンIntracisternal A-particle (IAP) DNA element は二つのLTRに挟まれたgag-pol遺伝子を所持するユニットであり、反復配列として正常マウスゲノムに数千コピー含まれている。これに由来するRNAは多くの正常細胞に含まれており、レトロトランスポジション機構により逆転写されてゲノムに組み込まれ、周囲の遺伝子に影響を及ぼす潜在性の内在変異原である。これまで我々はC3H/Heマウスにおける放射線誘発骨髄性白血病細胞においてIAP媒介性のゲノム異常の頻発することから放射線障害の過程においてレトロトランスポジションの頻発することを示唆してきた。細胞内には膨大な量のIAP類似核酸が存在するために、IAPの逆転写を解析することは困難であったが、IAP RNAの逆転写過程を解析するために逆転写レポーター遺伝子測定系を開発し、放射線による逆転写促進を見出したので報告する。<BR> 特殊なマーカー塩基配列を組み込んだIAP RNAを強制発現するようにデザインした逆転写解析用のトランスジーンを構築した。これを安定導入したRAW264.7細胞の核酸分析により、レトロトランスポジションの一連の過程の生成物であるtRNA-Pheをプライマーとした初期cDNA、逆転写中間過程のcDNA群、最終逆転写産物である完全長cDNAおよびcDNAの組み込まれたゲノム部位の同定により、レトロトランスポジションの発生を証明した。さらに、これらの逆転写中間過程のcDNA類のreal-time (RT-)PCRによる極微量定量技術の確立に成功した。この安定導入細胞に1-5GyのX線を照射したところ、線量にほぼ依存して逆転写物量が増加したが、RNA量に変動は見られなかった。このことからIAP RNAの逆転写過程が放射線により促進することが示された。
著者
大谷 聡一郎 青木 伸 池北 雅彦 森田 明典 モハマド ズルキフリ 伊石 安里 王 冰 田中 薫 岡崎 遥奈 吉野 美那子 細井 義夫
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.106, 2011

我々は、オルトバナジン酸ナトリウム(バナデート)が、p53転写依存性・非依存性の両経路を抑制する阻害剤として機能し、腸死を克服できる初めてのp53阻害剤であることを明らかにしている。放射線防護効果が報告されている他のp53阻害剤としては、ピフィスリンαやピフィスリンµが知られているが、これら3つの阻害剤の内、防護効果の最も高いバナデートのみがp53変性作用を有していることを見出した。我々は、このp53変性作用をバナデートの特徴と捉え、p53変性作用を有する新しい阻害剤の探索を進めた。一方、p53変性作用は、p53分子内に存在する金属イオン結合部位に配位する亜鉛イオンの解離によって生じることが報告されていた。 そこで本研究では、p53依存性の放射線誘発アポトーシスを引き起こすMOLT-4細胞を用いて、亜鉛キレート化剤のp53阻害剤としての有効性評価を行った。その結果、検討した5種のキレート化剤の内、2種がアポトーシス抑制効果を示した。アポトーシス抑制効果が最も高かったBispicenは、バナデートと同様にp53変性作用を示し、転写依存性・非依存性両経路のアポトーシス過程を抑制した。さらに、p53ノックダウン細胞株やp53変異体株、p53欠損細胞株での比較から、Bispicenのアポトーシス抑制効果がp53特異的であることも明らかとなった。現在、p53特異性の向上を目指し、Bispicenにp53特異的ペプチドを付加したハイブリッド化合物の活性評価を進めているところである。
著者
高橋 麻衣子 鈴木 啓司 山下 俊一 甲斐 雅亮
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.118, 2008

哺乳類細胞における主要なDNA損傷修復経路として非相同末端結合修復(NHEJ)と相同組換え修復(HR)が知られ、NHEJは主にG1期で、HRはS期からG2期で働くことが知られている。最近、NHEJ修復経路の中にさらに複数の経路が存在し、少なくともDNA-PKcs/Kuに依存した経路とartemisを必要とする2経路があることが明らかになってきた。しかしながら、これら修復経路がどのような役割分担をしているのかは依然不明である。そこで本研究では、制限酵素を細胞内に直接導入して同じ形状のDNA切断末端を誘導するという系を用い、DNA切断末端の構造依存的な修復経路の役割分担を検討することを目的とした。G0期に同調した正常ヒト二倍体細胞に、制限酵素(Pvu II、100 U)をエレクロポレーション法を用いて細胞内に導入し、DNA二重鎖切断の誘導を抗53BP1抗体を用いた蛍光免疫染色法により検討した。その結果、まず制限酵素導入後1時間の段階で、約90%の細胞の核内に53BP1フォーカスが誘導されるのを確認した。その内、核全面に分布するタイプや計測不能な多数のフォーカスを持つ細胞が60%程度存在し、残りの約20%の細胞は、3〜20個程度が核内に散在するフォーカスのタイプ(タイプIIIフォーカス)であった。制限酵素導入後時間が経つにつれてタイプIIIフォーカスを持つ細胞の割合が増加し、DSBの修復が確認できた。次に、artemis依存的な修復経路を阻害するために、ATM阻害剤KU55933を処理した結果、タイプIIIフォーカスを持つ細胞の割合は処理の有無により顕著な差はみられなかったが、artemisを阻害した細胞では核あたりのフォーカス数はより多かった。以上の結果から、ブラントエンドタイプの切断末端が、その修復にartemisの活性を必要とすることが明らかになった。
著者
菅原 努
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.6, 2007

我が国での放射線影響の研究は第五福竜丸事件(1954年)に始まった。我が国は世界で唯一の原爆被爆国であるが、その被ばく直後の調査研究は占領軍政府によって封印されてしまった。1945年以降も米・ソ連・英・仏などでは原爆の爆発実験が繰り返し行われていたが、それに我が国の科学者が注目するようになったのは、この1954年の事件以後である。そのころの大気の放射性物質での汚染は著しいもので、放置できない状況にあった。この測定には我が国の学者がすぐに対応できたが、放射線を全身に受けた場合については、我々はほとんど知識を持っていなかった。アメリカから専門家が援助に来日したが、そこでアメリカでは原爆の開発と並行して、大規模な生物学的研究を行っていたことを知った。内科医で放射線科も兼務していた私は、RadiologyをつうじてICRP(1950)の勧告をしり放射線障害に関心を持っていた。私は1955年に国立遺伝学研究所の新しい変異遺伝部に移り、研究に専念することになった。我が国ではこれをきっかけに文部省(当時)科学研究費で「放射線影響の研究」が始まった(桧山義夫編「放射線影響の研究」東京大学出版会1971)。これを受けて1959年に日本放射線影響学会が設立されたのである。また1955年には原子力基本法が制定され、我が国も原子力時代に突入した。こうして世界の状況を把握し、それに負けない研究成果をあげるべく、新しい体制が作られ、放射線の生物作用の本体を探る研究が展開されていった。そのレベルアップと国際化の努力のあとに、昭和の和魂洋才の流れを見るような気がする。
著者
荻生 俊昭 セケルバイエフ アレキサンドル 青木 芳朗 小林 定喜 久住 静代 稲葉 次郎 ベレジーナ マリーナ ケンジーナ グルマーラ ルカシェンコ セルゲィ ベレジン セルゲィ ジョタバエフ ジェニス
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.266, 2008

セミパラチンスク旧核実験場では、1949年~1989年に約450回の核実験が行われ、周辺住民は1962年までの約120回の大気圏内核実験により複数回の低線量放射線の外部と内部からの複合被ばくをした。協会では2001年以来、カザフスタンの放射線影響調査防護センター、国立原子力センター等の協力を得てこれらの住民の疫学調査を行ってきた。調査では放射能雲の通過した地域の住民(被ばく調査集団)と対照地域の住民(対照調査集団)について、公文書保管所や住民登録所等での書類調査、住民の聴取り調査等でデータを収集している。2008年7月末時点での調査対象者は約117,300人で、被ばく調査集団46,400人が含まれる。この集団で居住歴判明により線量計算が可能な者は約18,200人、うち生死判明者は約14,800人(生存者:7,000人、死亡者:7,800人)であった。対照調査集団は設定後の日が浅いので今回の解析には用いなかった。死因としては循環器系疾患が全死因の42%で、虚血性心疾患、脳血管疾患が多かった。新生物は全死因の21%で、食道、胃の悪性新生物が多かった。ロシア連邦保健省の計算式により被ばく線量を計算し、被ばく線量と死因(ICD-10分類)に基づいて被ばく集団の内部比較でリスク比を計算した。男性では新生物も循環器系疾患も線量に応じた有意な増加はなかった。女性では高線量群で新生物による死亡リスクは有意に増加した。性別、年齢、被ばく線量、民族に関するロジスティック解析では、循環器系疾患のリスクはいずれでも有意の差が見られたが、新生物では性別、年齢、民族でのみ差が見られた。本調査はまだ調査開始後の期間が短いことから、今後、対象者を増やすとともに、各種指標の信頼性・妥当性、交絡因子やバイアスの検証が必要である。(この調査は平成19年度エネルギー対策特別会計委託事業「原子力発電施設等放射線業務従事者等に係る疫学的調査」の一部である)。
著者
古渡 礼恵 柿沼 志津子 甘崎 佳子 平野 しのぶ 山内 一己 西村 まゆみ 今岡 達彦 島田 義也
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.186, 2008

【目的】放射線と化学発がん物質が複合曝露された時に発生するがんにおいて、がん関連遺伝子の変異の蓄積がどのように変化するかについての情報は未だ少ない。そこで、放射線とエチルニトロソウレア(ENU)の複合曝露により胸腺リンパ腫(TL)を誘発し、その<i>Kras</i>の点突然変異の頻度とスペクトラムが単独曝露とどのように異なるか、また、その変化が<i>Ikaros</i>の点突然変異とどのように異なるか比較した。<br>【材料と方法】B6C3F1マウスにX線0.8~1.0Gyを1週間間隔で4週間全身照射、もしくは、ENUを飲料水として100~200ppmを4週間投与した。処理は1)4週齢または8週齢からX線照射、2)4週齢または8週齢からENU投与、3)4週齢からX線照射した後8週齢からENU投与(X to ENU)、4)4週齢からENU投与した後8週齢からX線照射(ENU to X)、5)4週齢からX線照射とENU投与を同時曝露(X+ENU)の条件で行った。<i>Kras</i>ならびに<i>Ikaros</i>の変異は、cDNAのダイレクトシークエンスにより調べた。<br>【結果】TLの発生頻度はX線単独またはENU単独での発生頻度と比較して、(X to ENU)群でも(X+ENU)群でも相乗的に、(ENU to X)群では亜相加的に増加した。<i>Kras</i>の点突然変異はX線単独でもENU単独でも、4週齢から処理したものに比べ、8週齢から処理したもので減少していた。<i>Ikaros</i>では週齢による点突然変異の現れる割合に変化はほとんどなかった。次に(X to ENU)群では、<i>Kras</i>と<i>Ikaros</i>のそれぞれで、点突然変異が(超)相加的に増加した。しかし、(ENU to X)群では、<i>Kras</i>の点突然変異は相加的な増加が見られたが、<i>Ikaros</i>では見られなかった。また、(X+ENU)群では、(X to ENU)群と比較して、<i>Kras</i>の点突然変異は著しく減少したのに対し、<i>Ikaros</i>は増加することがわかった。<br>これらの結果から、発がんの複合曝露効果は、曝露の順番などの曝露様式に依存し、それは、がん関連遺伝子の点突然変異の誘発頻度によって一部説明できると考えられた。
著者
橋本 優実 PANKAJ KAMDAR Radhika 松井 理 橋本 光正 松本 義久 岩淵 邦芳
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.102, 2011

アポトーシスに陥った細胞において、XRCC4はカスパーゼ3あるいは7で切断され、DNA ligase IV結合領域を含むが核移行シグナルを欠いた35 kDaのN末断片(以下pN35)となることが知られている。本研究では、XRCC4断片化のアポトーシスにおける役割を調べた。<BR> マウスリンパ腫L5178Y細胞由来XRCC4欠損細胞株M10細胞をスタウロスポリン(以下STS)で処理してアポトーシスを誘導した。アポトーシスは、カスパーゼ3の活性化あるいはアポトーシス特異的DNA断片化(TUNEL法)を指標に検出した。<BR> M10細胞に野生型XRCC4を発現させた細胞株(M10-XRCC4)をSTS処理すると、pN35が検出されたが、カスパーゼで切断されない変異型XRCC4(XRCC4 D265A)を発現させた細胞株(M10-D265A)ではこの断片は検出されなかった。このときM10-XRCC4でのみ、アポトーシスの増強と、カスパーゼ3上流に位置するカスパーゼ8および9の活性化体の増加がみられた。STSによるアポトーシスに対する増強効果は、M10細胞にpN35を発現させても認められなかったが、核移行シグナルを付加したpN35を発現させると認められた。M10-XRCC4と M10-D265Aの両細胞において、 XRCC4とDNA ligase IVは、アポトーシスの進行に伴い核から核外へ移行した。<BR> 以上より、カスパーゼによるXRCC4のN末断片化はアポトーシスに必要であることが確かめられた。pN35は核内に存在する時にアポトーシス増強作用を発揮することが明らかとなった。アポトーシス増強の機序としては、pN35によるカスパーゼ8および9の活性化の促進が考えられた。一方、アポトーシスの進行に伴うXRCC4とDNA ligase IVの核外移行には、XRCC4のN末断片化は必要ないことが示された。<BR> なお、M10細胞は文部科学省ナショナルバイオリソースプロジェクトを介して理研BRCから提供された。
著者
今中 哲二 遠藤 暁 川野 徳幸 田中 憲一
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.146-146, 2009

広島・長崎の原爆直後に爆心地近辺に入った早期入市者については、入市直後にさまざまな疾病が現れたことが知られている。従来より誘導放射線による被曝影響の可能性が指摘されているものの、その因果関係を検討するには、個々の入市被爆者に関する情報が不十分であった。2008年8月に放映されたNHKの番組の中で、早期入市者の病状について1950年頃にABCCが聞き取り調査を行った個人記録が紹介された。その記録によると、嘔吐、下痢、脱毛といった、急性放射線障害と同様の症状が起きていたことが確認されている。我々は、そのような記録がある2名に入市時の行動についてインタビューを行い、行動経路に基づいて誘導放射能からの外部被曝を計算した。8月7日に入市し、爆心から900mの自宅に立ち寄り、一週間ほど文理大グラウンド(1400m)で寝泊まりしたAさんの被曝量は9.40mGyとなった。不確定さを考慮しここでの見積もりは約30mGyとした。Aさんは、8月13日に発熱、下痢、口内痛を発症、1ヵ月後に歯齦出血、脱毛があった。8月7日に、比治山から電車通り沿いに爆心近くを通って己斐駅まで歩いたBさんの被曝量は2.6mGyとなったが、不確定さを考慮し約8mGyと見積もった。Bさんは、9月12日に嘔吐、下痢で病臥、10月5日頃に脱毛がはじまった。AさんやBさんの病状は急性放射線症状を想定させる一方、従来の知見に基づくと、かれらの被曝量の見積もりは放射線症状を引き起こすほどではない。我々としては、以下の3つの可能性を考えている。(1)観察された疾病は、疲労や感染症などによるもので放射線被曝とは関係ない、(2)被曝量の見積もりが大きく間違っている、たとえば、本研究の見積もりには含まれていない内部被曝の寄与が大きかった、(3)原爆被爆という極限的な状況下で、放射線被曝が他の要因と複合的に作用して閾値が大きく下がり急性放射線障害のような症状が現れた。どの説明がより適切であるか今の段階では結論できないと考えている。
著者
SHOICHIRO FUJITA HIROO KATO WILLIAM J. SCHULL
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
Journal of Radiation Research (ISSN:04493060)
巻号頁・発行日
vol.32, no.SUPPLEMENT, pp.154-161, 1991 (Released:2006-05-31)
参考文献数
24
被引用文献数
7 14

Numerous attempts have been made to estimate the distance at which 50% of the individuals exposed to the A-bombing of Hiroshima and Nagasaki died, ostensibly from their exposure to ionizing radiation. It is difficult to convert most of these distance estimates to a dose-related LD50, since radiation shielding was ignored. The recent reassessment of the atomic bomb radiation dosimetry has provided an opportunity for the estimation of the bone marrow LD50. There is a surprising concordance in the various estimates that have been made given the different groups of survivors involved and the methods used to estimate the LD50/60.
著者
Takeshi HIRANO
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
Journal of Radiation Research (ISSN:04493060)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.329-340, 2008 (Released:2008-07-17)
参考文献数
103
被引用文献数
54

Reactive oxygen species (ROS) are essentially harmful for living organisms, including human beings. It is well known that ROS-induced damage of cellular components may lead to human diseases, such as inflammatory diseases, degenerative diseases, or cancer. In particular, oxidative DNA damage is premutagenic, and thus, the generation of DNA damage and the failure of its removal are critical events for tumorigenesis or carcinogenesis. To prevent this disadvantage, living organisms have defense mechanisms against ROS-induced gene instability. Studies of 8-oxo-Gua and its main repair enzyme, 8-oxoguanine DNA glycosylase 1 (OGG1), are informative and useful, because 8-oxo-Gua is commonly observed in DNA, and OGG1 enzymes exist in a wide variety of living organisms. The importance of OGG1 was confirmed by polymorphism analyses and studies using knockout mice. Moreover, analyses of the influences of environmental factors on DNA damage and repair systems have confirmed the effects of heavy metals on 8-oxo-Gua formation and OGG1 expression. These studies revealed that the 8-oxo-Gua repair system is crucial for the prevention of mutation-related diseases, such as cancer. In this review, the advances in this field during the last two decades are described.
著者
Akiko UZAWA Koichi ANDO Yoshiya FURUSAWA Go KAGIYA Hiroshi FUJI Masaharu HATA Takeji SAKAE Toshiyuki TERUNUMA Michael SCHOLZ Sylvia RITTER Peter PESCHKE
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
Journal of Radiation Research (ISSN:04493060)
巻号頁・発行日
vol.48, no.Suppl.A, pp.A75-A80, 2007 (Released:2007-05-19)
参考文献数
15
被引用文献数
20

Charged particle therapy depends on biological information for the dose prescription. Relative biological effectiveness or RBE for this requirement could basically be provided by experimental data. As RBE values of protons and carbon ions depend on several factors such as cell/tissue type, biological endpoint, dose and fractionation schedule, a single RBE value could not deal with all different radiosensitivities. However, any biological model with accurate reproducibility is useful for comparing biological effectiveness between different facilities. We used mouse gut crypt survivals as endpoint, and compared the cell killing efficiency of proton beams at three Japanese facilities. Three Linac X-ray machines with 4 and 6 MeV were used as reference beams, and there was only a small variation (coefficient of variance < 2%) in biological effectiveness among them. The RBE values of protons relative to Linac X-rays ranged from 1.0 to 1.11 at the middle of a 6-cm SOBP (spread-out Bragg peak) and from 0.96 to 1.01 at the entrance plateau. The coefficient of variance for protons ranged between 4.0 and 5.1%. The biological comparison of carbon ions showed fairly good agreement in that the difference in biological effectiveness between NIRS/HIMAC and GSI/SIS was 1% for three positions within the 6-cm SOBP. The coefficient of variance was < 1.7, < 0.6 and < 1.6% for proximal, middle and distal SOBP, respectively. We conclude that the inter-institutional variation of biological effectiveness is smaller for carbon ions than protons, and that beam-spreading methods of carbon ions do not critically influence gut crypt survival.
著者
Liren QIAN Fei CAO Jianguo CUI Yicun WANG Yuecheng HUANG Yunhai CHUAI Luqian ZAHO Hao JIANG Jianming CAI
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
Journal of Radiation Research (ISSN:04493060)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.741-747, 2010 (Released:2010-11-23)
参考文献数
35
被引用文献数
67

Most ionizing radiation-induced damage is caused by hydroxyl radicals, and the selective reduction of hydroxyl by hydrogen in vitro has been demonstrated previously. Irradiation of the heart can cause chronic cardiac disease. This study was designed to test the hypothesis that hydrogen-rich water (pure water saturated with molecular hydrogen), which is easy to use, induces cardioprotection against ionizing irradiation injury in mice. In this paper, we demonstrate that hydrogen can protect myocardium degeneration from radiation-induced injury, decrease myocardium malondialdehyde (MDA), 8-hydroxydeoxyguanosine (8-OHdG) levels, and increase myocardium endogenous antioxidants in vivo. We suggest that hydrogen has a cardioprotective effect against radiation induced injury.
著者
Takashi UNO Kouichi ISOBE Naoyuki UENO Ataru FUKUDA Satoshi SUDO Hiroaki SHIROTORI Isao KITAHARA Takanori FUKUSHIMA Hisao ITO
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
Journal of Radiation Research (ISSN:04493060)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.449-454, 2010 (Released:2010-07-29)
参考文献数
12
被引用文献数
12 3

The objective of this retrospective study was to report initial results of CyberKnife stereotactic radiotherapy (SRT) boost for tumors in the head and neck area. Between March 2008 and August 2009, 10 patients were treated with SRT boost using CyberKnife system due mainly to unfavorable condition such as tumors in close proximity to serial organs or former radiotherapy fields. Treatment sites were the external auditory canal in two, the nasopharynx in one, the oropharynx in three, the nasal cavity in one, the maxillary sinus in two, and the oligometastatic cervical lymph node in one. All patients underwent preceding conventional radiotherapy of 40 to 60 Gy. Dose and fractionation scheme of the Cyberknife SRT boost was individualized, and prescribed dose ranged from 9 Gy to 16 Gy in 3 to 4 fractions. Among four patients for whom dose to the optic pathway was concerned, the maximum dose was only about 3 Gy for three patients whereas 9.6 Gy in the remaining one patient. The maximum dose for the mandible in one of three patients with oropharyngeal cancer was 19.7 Gy, whereas majority of the bone can be spared by using non-isocentric conformal beams. For a patient with nasopharyngeal cancer, the highest dose in the brain stem was 15 Gy. However, majority of the brain stem received less than 40% of the maximum dose. Although a small volume high dose area within the normal structure could be observed in several patients, results of the present study showed potential benefits of the CyberKnife SRT boost.
著者
小平 潔
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
Journal of Radiation Research (ISSN:04493060)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.116-119, 1964-06-01 (Released:2006-08-29)
参考文献数
14
被引用文献数
3 5

In Japan, Sr-90 in brown rice showed two peaks at October 1959 and October 1962, whereas Sr-90 in polished rice showed almost constant level, and quite less contamination. Cs-137 contamination was roughly 10 times of that of Sr-90 in polished rice. This ratio is higher than that of fall-out itself, which has been estimated as around 3. A discussion was made on the mechanisms, which can be important factors to give rise such a high Cs-137 contamination of polished rice: characteristic effect of NH+4 ion on the liberation of Cs+ ion from flooded rice soil, rate of absorption of Cs and Sr by plant roots as well as plant body surfaces, and rate of translocation of Cs and Sr in plants.
著者
Wei ZHANG Chunyan WANG Deqing CHEN Masako MINAMIHISAMATSU Hiroshige MORISHIMA Yongling YUAN Luxin WEI Tsutomu SUGAHARA Isamu HAYATA
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
Journal of Radiation Research (ISSN:04493060)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.441-446, 2004 (Released:2004-12-22)
参考文献数
26
被引用文献数
16

Cytogenetic investigation of stable-type aberrations (translocations) was carried out with our improved methods on 28 elderly individuals in a high-background radiation area (HBRA) in China, and on 24 elderly individuals in a control area (CA). The level of radiation in HBRA is 3 to 5 times higher than in CA. The mean frequencies of translocations per 1,000 cells in HBRA and CA were 12.4 ± 5.3 and 10.0 ± 3.8, respectively. No significant difference was found in the frequencies between HBRA and CA (P>0.05, Mann-Whitney U test). When elderly individuals in HBRA and CA were classified into four subgroups of HBRA nonsmokers, HBRA smokers, CA nonsmokers, and CA smokers, a significant difference was found in the frequencies between CA smokers and CA nonsmokers (P<0.05, Mann-Whitney U test). Furthermore a tendency of difference (a near T-value of 0.05 level) was found in a comparison of HBRA smokers vs. CA nonsmokers. The present results indicate that the elevated level of natural radiation in HBRA plays a less significant part than smoking in bringing about the induction rate of stable-type aberrations (translocations) in those areas.
著者
HARUO EZAKI NOBUO TAKEICHI YASUHIKO YOSHIMOTO
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
Journal of Radiation Research (ISSN:04493060)
巻号頁・発行日
vol.32, no.SUPPLEMENT, pp.193-200, 1991 (Released:2006-05-31)
参考文献数
7
被引用文献数
14 20

We analysed thyroid cancers which were diagnosed clinically or detected at autopsy during 22 years (1958 to 1979) in a sample of 75, 493 study subjects exposed in Hiroshima belonging to the extended LSS sample of the Radiation Effects Research Foundation. One hundred and twenty-five cases of clinical thyroid cancer (15 in males and 110 in females) were confirmed, giving a crude incidence rate per 100, 000 person-years of 2.7 for males, 12.4 for females and 8.6 for both sexes combined. There was a significant increase of thyroid cancer with increase of atomic bomb radiation dose (thyroid tissue dose based on T65D) in females and in the sexes combined. This tendency was predominant in those exposed at less than 19 years of age. Compared to the control group, the relative risk in the ≥0.50 Gy group was higher at 4.0 for males (not significant) and at 4.3 for females (p <0.01). Latent thyroid cancer was detected in 155 cases or 3.5% (2.5% for males and 4.5% for females) of the 4, 425 cases that came to autopsy during the same period. Compared to the control group, the relative risk in the 50 + rad group was 1.7 for males (not significant), 2.0 for females (p <0.05) and 1.9 for both sexes combined (p <0.05). New data obtained from autopsy cases between 1950 and 1985 have been added.