著者
祖父江 寛 福原 節雄
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.1070-1073, 1958
被引用文献数
1

ブナ, 赤松, 竹, エゾ松材よりBraunsの方法で天然リグニンを抽出し3800~650cm<SUP>-1</SUP>領域の赤外線吸収スペクトルを測定し,各吸収帯の帰属を推定した。ブナでは3400cm<SUP>-1</SUP>はOH伸縮振動,2940,2860cm<SUP>-1</SUP>はCH<SUB>2</SUB>,CH<SUB>3</SUB>のCH伸縮振動,1720,1660cm<SUP>-1</SUP>はC=Oの伸縮振動,1600,1510cm<SUP>-1</SUP>はベンゼン環の骨格振動,1460,1425,1365cm<SUP>-1</SUP>はCH<SUB>3</SUB>,CH<SUB>2</SUB>等のCH変角振動,1325cm<SUP>-1</SUP>は(不明),1270,1220cm<SUP>-1</SUP>はarylC-O伸縮振動,1120,1030cm<SUP>-1</SUP>はO-C(aliphatic)伸縮振動,825cm<SUP>-1</SUP>はベンゼン環のCH面外変角振動によるものと一応推定した。この際,1270cm<SUP>-1</SUP>吸収強度<1220cm<SUP>-1</SUP>吸収強度であった。次にブナ,赤松両リグニンを比較した。赤松はブナに比較して1325cm<SUP>-1</SUP>の吸収がなく,かつブナとに逆に1270cm<SUP>-1</SUP>吸収強度>1230cm<SUP>-1</SUP>吸収強度であった。これらの関係を既往の文献をも参考とし針葉樹, 広葉樹, 禾本科(竹),リグニン等について比較検討した。
著者
和田 悟朗 伊藤 千賀子
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.78, no.11, pp.1694-1699, 1957

非電解質の水溶液に対する電解質の塩析作用をあらわす式としてさきに本文(1)式をみちびいたが,本報ではこの式の低用例として16種類の1-1型電解質水溶液へのジエチルエーテルの溶解度の測定値と計算置との比較を行った。電解質の塩析作用の大きさの順は本文(4)の順となる。またMillerの求めた電解質の水和数hおよびイオン接近距離αの値を用い,パラメーターΔS1を適当にえらんで計算した溶解度は電解質のmolality m=0.1~1.0の範囲内では0.1の誤差範囲内で実測値とよく一致するが,電解質の高濃度で乃をそのまま用いると,溶媒の全本秀子がすべてイオン水和水になるという矛盾を生じ,(1)式は物理的意義を失い,計算値は負の浩解度を示すだけでなく,イオン水和層内における局部溶解度S1も負となる。Si=Oとなるようなイオン水和数hoを定義してみると,種々のイオンのhoはアルカリ金属イオン,ハロゲンイオンに関して規則性を示し,前者ではイオン水和エネルギーの小さいほど,後者ではイオン水和エネルギーの大きいほど大きい値を有し,電解質の塩析作用の程度を予想することができる。
著者
真島 美智雄
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.78, no.9, pp.1413-1416, 1957

1・サリチルアルデヒドコバルトa2.5一メチルサリチルアルデヒドコバルト,3.mナフトールアルデヒドコバルト,4・5一プロムサリチルアルデヒドコバルト,5.5一ニトロサリチルアルデヒドコバルト,6・o一オキシアセトフェノンコバルト,7.8一オキシキノリンコバルト,8.サリチルァルドキシムコバルト,9・サリチルアルデヒドパラトルイルイミンコバルトの9種の錯塩について溶媒の種類を変えて溶液または分散の状態で放射性コバルトを用いてコバルトの交換を行った。それによると水中では6のみすみやかに大部分交換し,他のものは交換率が低い。アルつ一ル申では1,4,6は24時間以内で完全交換し,3は24時間後でも交換率は21.6%で低い。8は38.3%部分的に交換し,7は交換しない・ピリジン中では2,3,4,5はいずれも完全交換し,7,8はそれぞれ16・3%,38・4%部分的に交換する。すなわち7はアルコール,ピリジン申での交i喚の模様が異なり,6は他のものと異なり水中でも大部分交換するから交換の有無の判定には使用する溶媒の種類を限定する必要がある。
著者
岩月 章治 伊藤 勝清 山下 雄也
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.1822-1825, 1967
被引用文献数
7

フェニルイソニトリル,<I>p</I>-トルイルイソニトリル,<I>o</I>-トルイルイソエトリル,シクロヘキシルイソニトリルの三フッ化ホウ素エーテル錯体による共重合性を, イソニトリルと共鳴構造が類似しそしてカチオン重合するジアゾメタンとの共重合およびこれらイソニトリル間の共重合により検討した。ジアゾメタンとの共重合性はフェニルイソニトリル, <I>p</I>-トルイルイソニトリル><I>o</I>-トルイルイソニトリル>シクロヘキシルイソニトリルの順である。イソニトリル間の共重合からのモノマー反応性はシクロヘキシルイソニトリル>フェニルイソニトリル, <I>p</I>-トルイルイソニトリル> <I>o</I>-トルイルイソニトリルの順である。<I>o</I>-および<I>p</I>-トルイルイソニトリルの間で<I>o</I>-体の重合性が低いのはオルト位のメチル基の立体障害に基因すると推定される。またイソニトリルがジアゾメタンと共重合することから,イソニトリルとジアゾメタンの重合機構は類似しているものと推定される。
著者
佐藤 利夫 水口 純 鈴木 周一 戸倉 正利
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.216-220, 1967

ヤマノイモ科イチョウィモ(Dioseorea Batas Decne forma Icho)の根茎粘質物をその特性である高粘性を失なわないように抽出精製する方法を案出し,精製粘質物の化学的および物理化学的性質を明らかにした。<BR>イチョウイモ根茎の水抽出液にドデシル硫酸ナトリウムと塩化ナトリウムとを加えておだやかに除タソパクをくり返すことにより,高粘性でしかも超遠心的に均一な粘質物を収得した。ここに得られた精製粘質物をさらにドデシル硫酸ナトリウム処理しても多糖とタソパク質との比(10:4)は変わらず,また相対粘度の上昇も認められなかった。<BR>精製粘質物の絶対粘度は2.7X10<SUP>3</SUP>ml/g,分子量14.6X10<SUP>4</SUP>,比旋光度は-60°の値が得られた。この粘質物はマンナンとして48%,水酸基をもつアミノ酸残基に富むタソパク質10%,リソ3,8%を含む一種のリン糖タソパク質であることがわかった。
著者
佐藤 利夫
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.982-985, 1967
被引用文献数
1

イチョウイモ粘質物の粘性の発現にはマンナンが主要な役割を果している。この報告ではこのマンナンの構造をアセトリシス, 過ヨウ素酸塩酸化などによって検討した。<BR>このマンナンはゾウゲヤシマンナンなどと同様なβ(1→4)結合をした直鎖状の構造をもつことがわかった。また粘質物中ではマンナンのアンヒドロマンノース1molあたり2molのアセチル基が結合していることがわかった。イチ箪ウイモ粘質物が容易に熱変性を受けて高粘性を失なってしまうという特異な性質はこのアセチルマンナンの性質によるものと思われた。
著者
佐藤 利夫
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.989-991, 1967

イチョウイモ粘質物(アセチルマンナンータンパク質一フィチン酸複合体)に各種酵素を作用させて, この粘質物の粘性の発現に関与している因子の検討を行なった。プロテアーゼ,ホスファターゼ(フィターゼ)を作用させてもその高粘性は失なわれないが, セルラーゼを作用させると急激な粘度低下と還元糖の漸増をみた。このことからβ(1→4)結合をしたマンナンが粘性の発現に主要な役割を果しており, タンパク質部分, フィチン酸などは粘性発現に直接関与していないものと考えられた。
著者
丸茂 秀雄 高井 誠
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.2190-2195, 1965
被引用文献数
2

イミダゾリン型両性界面活性剤から調製した28種の金属塩の低密度ポリエチレンの内部用帯電防止剤としての性能を検討した。<BR>金属塩を練り込んだポリエチレンの加工性,熱安定性は良好で,表面にはブリード(Bleed out)はない。帯電防止性は表面固有抵抗, 摩擦帯電圧などで評価した。さらに接触角, 摩擦係数ならびにそれらの表面物性の洗浄後の変化から, 単分子層形成による内部用帯電防止剤の作用機構を考察した。<BR>内部用帯電防止剤としての性能は金属根ではMg,Ca,Pb,Mn,Ba,Cd塩がすぐれており, アルキル基はC<SUB>11</SUB>H<SUB>23</SUB> より若干C<SUB>17</SUB>H<SUB>35</SUB>の方がよい。<BR>成形法による帯電防止性の差はあまりないが,インフレーション法によるフィルムでは,小規模に行なう場合には内側と外側で表面固有抵抗に差があった。この原因はやはり単分子層の形成不十分なためと考えられる。しかし,摩擦帯電圧は少ししか差はなく,開封後には短時間で外側と同程度のよい性能を示すようになる。
著者
横山 泰
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.175-179,A12, 1962

β一オキシーα,α一ジメチルーβ一フェニルプロピオン酸エチル(I)はベンゼン中五酸化リンにより,エトキシカルボニル基の1・2一転位したジメチルアトロバ酸エチル(II)を生成するD。これが脱水試剤の特殊性によるか否かを確かめる目的で種々の脱水剤を用いた結果,1はきわめて脱水され難いが多量の濃硫酸と処理するとジメチルアトロバ酸と若干のメチル基の転位し元生成物が得られることを見いだした。またこのカルボキシル基の転位が一酸化炭素の脱離と再付加による分子間転位でないことを確かめた。Iのρ-メチル,ρ一クロル置換体も同様の転位を起すことを見いだした。これら脱水反応に関連して脱臭化水素反応を検討する目的で,β一プロムーα,飴ジメチルーβ一フェニルプロピオン酸エチル(II)の液体アンモニア中カリウムアミドとの反応を行なった結果,カルボキシル基の1,2一転位したジメチルアトロバ酸アミドが得られることを見いだした。IIの硝酸銀との反応では置換隼成物のみが得られた。
著者
山口 悟郎 柳田 博明 小野 修一郎 副島 繁雄 和田 重孝
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.1499-1501, 1964

コランダム単結晶の水熱育成法は未だ確立されているとはいい難い。本報ではこの方法におけるいくつかの問題点,オートクレーブ内の温度差の問題,育成のための最適温度圧力条件,種子結晶,原料など反応物質の問題,時間と成長率との関連の問題についての実験結果をもとに,本法の特質を考察した。この結果,オートクレーブ内の温度差は外壁測温の場合よりかなり小さく,とくに銀カプセルを用いた場合ほとんど無視できるものとなる。コランダムの溶解速度に対する著者らの数値を用いて,この温度差の実効値について半定量的に議論した。つぎに,最適温度圧力については高温高液充填度ほどよいことがわかった。高温は結晶成長速度を速め,液の高充填度は,温度差の実効値を大にするものと考えられる。種子結晶については,成長に少なくとも2段階あり,種子のカット方向が重要であろうことが示唆される。原料については,コランダム,あるいは水酸化アルミニウムの状態の時間変化の影響は認められなかった。成長機構は成長段階が少なくとも二つあることに特徴がある。現在まで著者らの実験方法で数cmのコランダム単結晶を得ることができるが,鉄イオンの混入による着色を除去するのは困難である。
著者
浅原 照三 山下 健二郎 片山 志富
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.485-489, 1963
被引用文献数
3

最も簡単な脂肪族オキシ酸であるグリコール酸より導びかれるポリグリコリドに関して,その生成原料の検討,反応速度,反応温度の決定などについての研究を行なった。ポリグリコリド生成の原料としては,グリコール酸,モノクロル酢酸およびモノクロル酢酸ナトリウムを用いた。グリコール酸およびモノクロル酢酸ナトリウムは触媒の存否にかかわらず反応するがモノクロル酢酸の反応は触媒が存在しなければ進行しない。グリコール酸の脱水反応は無触媒の場合にも酸化アンチモンの場合にもともに見掛けの3次反応である。酸化アンチモンを加えれば,反応速度は大きくなるが,分解反応も激しくなるので,無触媒のほうが高重合度のポリマーを与える。臭化カリウムを用いたモノクロル酢酸の反応は見掛けの2次反応であった。それぞれの場合の反応速度の解析値が得られた。常圧における最適反応温度は219℃ であるが,ポリグリコリドの融点や溶融粘度を考慮して,225~230℃ が望ましいと考えられる。