著者
大橋 実 岡本 恒雄
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.893-902, 1957

パン酵母培養における通気の生理化学的意義を解明することを目的として研究をはじめ, その手段として培養液の酸素濃度および酵母の呼吸能をポーラログラフ法により測定することを企図し,まず測定法ならびに装置につき諸種の基礎的検討を行った。酵母培養液(廃糖蜜液)の酸素還元波は第1段波の部分が共存成分の悪影響が少なく定量の対象とすることができ,波高の評価は空気飽和食塩水溶液0.5mol濃度(6.33mg O<SUB>2</SUB>/<I>l</I> at 30℃)によることが実際的方法と認めた。ワールブルグ検圧法とポーラログラフ法の呼吸測定結果は大体の一致をみ,菌濃度2.5~20g/<I>l</I>の範囲で酸素吸収速度と菌濃度は比例する結果をえた。改良制動回路を有する手動直読式の自作のポーラログラフならびに付属装置は研究室ならびに現場使用に便なことが証明された。
著者
高橋 浩 西村 陽一
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.138-142, 1969
被引用文献数
2

結晶度の低いハロイサイトから合成したA型ゼオライトの吸着特性を容量法およびスプリングパランス法によって調べた。ハロイサイトから合成したA型ゼオライト(ゼオライトA')の吸着特性はモレキュラーシープA(M.S.A)の吸着特性と異なる。すなわち,ナトリウム型において,モレキュラーシーブAはn-パラフィン(>C3)を吸着しないのに対して,ナトリウムーゼオライトA'はかなりの量のn-パラフィンを吸着する。またカルシウム型において,モレキュラーシープAはイソパラフィンを吸着しないことが知られているが,カルシウムーゼオライトA'はイソブタンを吸着する。これらの実験結果はゼオライトA'の平均細孔が対応するモレキュラrシープAの細孔より大きいことを示している。化学分析その他の結果から,原料ハロイサイト中に不純物として含まれていた鉄がゼオライト構造中に残っており,ゼオライトA'とモレキュラ-シ-ブAの吸着特性の相違はアルミノケイ酸塩骨格中の鉄の置換によるものと考えられる.
著者
滝本 雅祥 横山 忠夫 沢田 昌 山下 素治
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.793-797, 1963
被引用文献数
6

メラミンの脱アンモニア縮合物であるメラム,メレムを種々の原料から分離確認することが,イオン交換クロマトグラフィーと紫外吸収スペクトルの測定から容易となったので(既報),この方法を用いながらこれらの単離をはかった。メラムはジシアンジアミドの溶融物からアルカリと水を用いて精製再結晶して, またメレムはメラミンの密閉器中における溶融分解物を水から再結晶して得られた。水から再結晶したメラム,メレムは,それぞれ2および1分子の結晶水を含有する。<BR>メラム, メレムの水に対する溶解度は極めて小さく25℃ではそれぞれ約0.05および0.003g/lであった。酸, アルカリにはメラミン, メラム, メレムの順に加水分解され易い。メラムは加水分解されてメラミンとアンメリンを生成し,メレム(シアメルリル環を有する)は, シアメルル酸になるが, さらにその中間過程に生成されるジアミノ- モノヒドロキシ化合物, モノアミノ-ジヒドロキシ化合物を見出した。紫外の吸収を利用してメラム, メレムの解離定数を測定し,<I>K</I>b<SUB>1</SUB>としてそれぞれ7.50×10<SUP>-2</SUP>,1.79×10<SUP>-12</SUP>を得た。また紫外,赤外吸収スペクトルの測定も行なった。
著者
滝本 雅祥 舟川 隆義
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.804-809, 1963
被引用文献数
1

メラミンから脱アンモニア縮合によりメラム, メレム, メロンが, また逆にこれらの化合物から付加アンモニア反応によりメラミンが生成されるが, その条件や機構を知るためこれらの化合物およびそのおのおのとメラミンとの混合物について前報同様示差熱分析と加熱生成物の組成分析を行なった。そして,これらの反応について明らかにすることができたが,特にメラムの脱アンモニア縮合がメレムを経ずに直接にメロンになり易いこと,メラミンにメラム,メレム,メロンを混合するとメラミンの脱アンモニア分解が促進されしかも混合されたものと同じ縮合物が多く生成すること,これらの付加アンモニア反応はメラムが最も容易に行なわれ(約315℃),メレムはシアメルリル環がトリアジン環になる変化をともなうために非常に遅いことなどを知った。
著者
森川 清 木本 寅喜 阿部 良之助
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學會誌 (ISSN:03694208)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.150-155, 1941

第一報に於て<sub>1)</sub>水素添加法に依る有機物中酸素の直接定量法を試み最適分析條件を決定した.本報では白金シリカゲル上の熱分解機構を實驗に依て解析的に檢討すると共に計算に依て化學平衡論的方面から精細に考察して本分析法の原理を明確にした.
著者
明石 博吉
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.1909-1912, 1963
被引用文献数
1

イタコン酸の反応の一つとして,イタコン酸と酢酸ビニルとの反応によって,ビニルエステルを得る可能性を検討するために両者の反応を行なった。さらにポリビニルアルコールと無水イタコン酸との反応によってポリビニルイタコネートを得た。<BR>反応方法はイタコン酸と酢酸ビニルとの反応では,Adelmanのビニル交換反応の方法に従って,イタコン酸を酢酸ビニル中に加え,硫酸水銀(II)を触媒にして常温放置または沸点で熱して行なった。ポリビニルイタコネートは無水イタコン酸とポバールを酢酸中(酢酸ナトリウムを加え)または,ジメチルホルムアミド中でピリジンを触媒として熱して得られた。結果はイタコン酸と酢酸ビニルの反応では酢酸ビニル,アセトアルデヒド,酢酸等の低留分を留去した後,減圧蒸留すると,エチリデンジアセテートに相当する留分と主留分I(bp82~85℃/13mmHg)と後留分II(bp88~95℃/13mmHg)が得られた。Iは元素分析,赤外線分析その他の結果からエチリデンジエステル型の反応生成物(A)であることがわかった。後留分中には無水シトラコン酸およびイタコン酸ジビニルエステルが混在していることがわかったが,沸点近接のため単離できなかった。シトラコン酸の場合も酢酸ビニルとの反応で同様の生成物が得られた。また,ポリピニルイタコネートは熱水に不溶の弾力ある透明なフィルムを作る固体樹脂で一般の溶剤にとけ難い。ナトリウム塩は水溶性で高分子電解質の一種と考えられる。
著者
三原 一幸 高岡 京
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.389-393, 1959

リシノール酸およびそれを酸化して得られる12-ケトオレイン酸のサッカロースモノエステルを合成して,その界面活性剤としての諸性状を明らかにするとともに,既に報告があるサッカロースモノステアレートおよびオレエートと,同一条件下における比較検討を行って,脂肪酸基の構造の差異によるその界面活性能の相違について研究を行った結果,(1)これら4種のエステルの表面張力,界面張力は各濃度においてほぼ同じであり,大きい差異はない。(2)浸透性は1%以下の濃度にあっては12-ケトオレエートが,1%にあってはリシノレートが大で,脂肪酸部に親水基を持つものが良好であり,ステアレート,オレエートと大きい差異を生じた。(3)起泡性は12-ケトオレエート>リシノレート>オレエート>ステアレートの順となり,特にステアレートは小さく,1%濃度においては12-ケトオレエートの約1/10であった。(4)乳化性は植物油6種,鉱物油1種について行った結果W/O型エマルジョンでは,ステアレート,オレエートが,O/W型ではリシノレート,12-ケトオレエートが良好であった。(5)その他溶剤に対する溶解性,ミセル限界濃度,ビルダーの影響等について調べた。
著者
稲村 裕
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.87, no.7, pp.734-736,A39, 1966
被引用文献数
1

1,2-ジベンゾイルエチレンや1,2-ジベンゾイルエタン,さらに3-ベンゾイル-1-フェニル-1-プロパノールの還元はすでに行なわれているが,その生成物の一つとして得られる1,4-ジフェニルブタン-1,4-ジオールには一対の立体異性体,aおよびbがあり,いずれがメソ型,いずれがラセミ型であるかが明確でなかった。著者は1,2-ジベンゾイルエタンと3-ベンゾイル-1-フェニル-1-プロパノールのラネーニッケル触媒による接触還元を行ない,後者からは上記異性体のジオールaおよびbを得,前者からはジオールa,bのほかに3-ベンゾイル-1-フェニル-1-プロパノールを得た。また水素化ホウ素ナトリウムによる還元では1,2-ジベンゾイルエタン,3-ベンゾイル-1-フェニル-1-プロパノールのどちらからも上記ジオールa,bのみを得た。これらの還元においては生成物の収率のうちジオールbのそれが圧倒的に高かった。またtrans-1,4-ジフェニル-2-ブテン-1,4-ジオールのラネーニッケル触媒による接触還元ではその生成物としてジオールaのみが得られた。以上の還元の結果とすでに行なわれている上記被還元物質のアルミニウムイソプロポキシドによる還元の結果からこれらの還元の機構について考察し,そこから上記2種の異性体の立体構造について推論した。
著者
遠藤 彰 斎藤 真澄 伏崎 弥三郎
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.85, no.9, pp.593-597,A47, 1964
被引用文献数
1

脂環式炭化水素類の環に直結した炭素間二重結合を有機過酸で酸化すると,一般のオレフィンと異なり環の拡大をともなうような例が報告されている。著者らはこの種の反応を詳しく調べるために,双環テルペンのカンフェンを過酢酸,過安息香酸で酸化しその反応生成物を調べ,また過酸の消費量を測定することによって反応速度を求めた。反応生成物は主としてカンフェニランアルデヒドで,その他に過酢酸酸化ではカンフユングリコールのモノ酢酸エステル,過安息香酸酸化ではカンフェンオキシドが認められた。反応速度は2次反応速度式で表わすことができ,種々の条件で2次反応速度定数が得られた。反応は溶媒の極性が大きいほど遅いことから,オレフィンの過酸によるエポキシ化反応と同じく分子機構で反応が進むと考えられる。
著者
山口 勝三
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.171-173, 1959
被引用文献数
7

ピリジンの存在のもとにスルファミン酸によるフェノール類ならびにアルコール類の硫酸エステル化を行なった。フェノ._ル類との反応では転移反応によるスルホン化をふせぐためピリジンを過剰に用い,フェノール類の溶媒をかねさせることにより比較的低温で容易かつ簡単に硫酸エステル類をうることができる。この方法によれば第一,第ニアルコール類のみならず第三アルコールも反応して硫酸エステルを与える。これによりフェノ.一ル,チモール,カルバクロール,パラオキシ安息香酸,カテコール,レゾルシン,'ヒドロキノン,レスアセトフェノン,n-プタノール,イソプロピルアルコール,メントール,アリルアルコール,第三ブタノールなどの硫酸エステルを得た。
著者
佐藤 誠 松木 健三 菅原 陸郎
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.484-487, 1968
被引用文献数
5

定電位掃引法により酸性溶液中における二酸化マンガン電極の還元反応について検討を行なった。その結果還元分極曲線は,電解液のpHおよびマンガンイオンの濃度に依存した一定の電位で二ヵ所に還元波を示し,第1波は二酸化マンガン,第2波は低次のマンガン酸化物の溶出反応に対応することがわかったのマンガン酸化物の溶出反応に対応することがわかった。すなわち,pH3以下で第1波のピーク電位とpHおよびマンガンイオ。すなわちンの濃度との関係は,掃引速度に関係なく(1')式に一致し,第2波のピーク電位では,掃引速度が速い場合(3')式に一致するが,掃引速度が遅い場合(4)式に示した不均デ化反応による影響のため(3')式からずれるようになる。またpH3以上になるとピーク電位は(1'),(3')式から大きくずれるが,これは中性溶液中での反応と類似した挙動を示すためと思われる。<BR>以上の事実から,酸性溶液中における二酸化マンガン電極の還元の総括反応は(1)式で示されるが,その過程は中間体として(2)式によりオキシ水酸化マンガンを生成し,ついで(3)または(4),あるいは(3),(4)式にしたがって電解液に溶出するものと考えた。MnO<SUB>2</SUB>+4H<SUP>+</SUP>+2e→Mn<SUP>2+</SUP>+2H<SUB>2</SUB>O (1) E=E<SUP>0</SUP>-0.118pH-0.0296log(Mn<SUP>2+</SUP>) (1') MnO<SUB>2</SUB>+H<SUP>+</SUP>+e→MnOOH (2) MnOOH+3H<SUP>+</SUP>+e→Mn<SUP>2+</SUP>+2H<SUB>2</SUB>O (3) E=E<SUP>0</SUP>-0.178pH-0.0591log(Mn<SUP>2+</SUP>) (3') 2MnOOH+2H<SUP>+</SUP>→MnO<SUB>2</SUB>+Mn<SUP>2+</SUP>+2H<SUB>2</SUB>O (4)
著者
入江 遠
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.90, no.12, pp.1179-1195, 1969
被引用文献数
3

紅藻(フジマツモ科)から7種の新しい含臭素化合物を単離し,それらの化学構造を明らかにした。すなわち,2種のプロムフェノール:2,3-ジブロム-4,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド〔2〕および3,4-ジブロム-5-(メトキシメチル)カテコール〔3〕;2種の含臭素セスキテルペノイド:ローリンテロール〔14〕,C<SUB>15</SUB>H<SUB>19</SUB>OBr,およびローレニソール〔17〕,C<SUB>15</SUB>H<SUB>19</SUB>OBr;および3種の含臭素環状エーテル:ローレンシン〔18〕,C<SUB>17</SUB>H<SUB>28</SUB>O<SUB>3</SUB>Br,ローレアチン〔19〕,C<SUB>15</SUB>H<SUB>20</SUB>O<SUB>2</SUB>Br2,およびイソローレアチン〔20〕,C<SUB>15</SUB>H<SUB>20</SUB>O<SUB>2</SUB>Br2,である。また,これらの含臭素化合物に関連のある新物質,たとえばローレン〔9〕,C<SUB>15</SUB>H<SUB>20</SUB>,およびデブロムローリンテロール〔15〕,C<SUB>16</SUB>H<SUB>20</SUB>O,などを海藻から単離した。さらにアプリシン〔11〕,アプリシノール〔12〕,およびデブロムアプリシン〔13〕が海藻の成分として見いだされた。なお,これら含臭素化合物の生合成についての試案を提出した。
著者
鈴木 周一 元井 操一郎 比恵島 康夫
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.662-664, 1961

最近, 含窒素有機物の新しい除去法として試用されて来たキノン- 活性炭処理法をショ糖中の微量タンパク様物質除去の目的に適用した。<BR>すなわち,ベンゾキノンまたはナフトキノン細末を用い,粗糖液にこれを添加し,十分反応せしめ著しく発色した液に活性炭を加えて脱色ロ過し,いわゆるキノン-活性炭処理を行なった。含窒素有機物除去度合の判定として用いられたポーラログラフによる酸素極大波抑制度の測定によれば,キノンを添加せずに活性炭処理のみで得られたショ糖液は明らかな極大波抑制作用を示すが,キノン-活性炭処理を施して得られたショ糖液は基準物質と同様な極大波を現わし,抑制物質すなわち含窒素有機物が相当に除去されていることが認められた。またいわゆるキャンデーテストによる糖液の加熱着色試験を行ない,着色度合を吸収スペクトルをもって測定した結果,キノン処理を施さないものは著しく褐色に着色するが,本法によって得られたショ糖液は可視部および紫外部領域においてともに吸光度小さく,含窒素有機物除去の効果がよく示された。
著者
冨田 裕
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.81, no.11, pp.1729-1730, 1960

エリスロタンタウリン(I)はTallen試薬(+),セミカルパゾン,ジメドン誘導体を生成する。アルカリと加熱すれば1molのアルカリを消費して溶解し,酸と加熱するとIにかえる。またクロム酸酸化によってラクトンカルボン酸C<SUB>10</SUB>H<SUB>8</SUB>O<SUB>4</SUB>が得られ,過マンガン酸カリウム酸化すると1,2,3-ベンゼントリカルボン酸が生ずる。水素化アルミニウムリチウムで還元して得られるトリオールは過ヨウ素酸を消費せず,C-CH<SUB>3</SUB>基も存在しない。赤外線吸収の値と考えあわせるとエリスロセンタウリンには,式IまたはI'が与えられるが,biogenesisの立場から式(I)の正しいことを推定した。