著者
新谷 昌之 内藤 勇太 山田 信吾 野村 祐吾 周 勝 中島田 豊 細見 正明
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.539-544, 2008-09-20
参考文献数
25
被引用文献数
3 15

残留性有機汚染物質(POPs)として懸念される有機フッ素化合物,ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)およびペルフルオロオクタン酸(PFOA)のメカノケミカル(MC)処理に注目した.酸化カルシウム(CaO)を反応助剤とし,小型遊星ボールミル(ミル回転数700 rpm)を用いておよそCa/F(mol比)=2でPFOS,PFOAのMC処理を行った結果,どちらの物質とも3時間の処理で80%以上分解することが明らかとなった.処理後は,炭酸カルシウム(CaCO<sub>3</sub>)やフッ化カルシウム(CaF<sub>2</sub>)の生成が確認され,C–F結合やC–C結合の開裂反応によって分解反応が促進することが示された.また,有価なCaF<sub>2</sub>の生成により,マテリアルリサイクルの可能性も見出された.
著者
大石 勉 平岡 節郎 加藤 禎人 多田 豊 全 炯圭 山口 隆生
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.907-911, 1998-11-20
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

バイオリアクターとして実用化されている特殊撹拌翼 EGSTAR (イージースター) の動力特性を実験的に明らかにした.邪魔板無しの所要動力は摩擦係数と修正 Re数を用いたパドル翼に対する亀井ら (1995) の動力相関式の形でまとめることができた.パドル翼に対する翼相似パラメーターγ<I>n</I>p<SUP>0.7</SUP><I>b/H</I>は EGSTARでは1.57γ(<I>d/H</I>)(<I>h</I><SUB>d</SUB>/<I>d</I>)<SUP>0.59</SUP>と修正された.邪魔板有りの所要動力は亀井らの動力相関の手法を用いることができた. EGSTAR撹拌翼の完全邪魔板条件とそのときの動力数は次式で示された.<BR>(<I>BW/D</I>) <I>n</I><SUB>b</SUB><SUP>0.8</SUP>≧0.74 (<I>h</I><SUB>d</SUB>/<I>d</I>) <SUP>0.12</SUP><BR><I>N</I><SUB>Pmax, ε</SUB>=3.7 (<I>h</I><SUB>d</SUB>/<I>d</I>) <SUP>0.59</SUP> (1-ε) <SUP>-1.1</SUP>
著者
田辺 義一
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学 (ISSN:03759253)
巻号頁・発行日
vol.21, no.10, pp.687-691, 1957

化学工業の進歩発達につれて化学機械方面の改良されたものはかなりみられるが,なかんずくこの方面の発明にも注目されるものが出現してきている。戦後約10年間の発明を回顧してみるに,その一端を充分に察知することができる。<BR>化学機械の分野においては種々の有名な発明が多くみられるが,吸湿ならびに吸収の操作に関してここ数年間の発明中特に目新しいものについてその特徴とする点を抽出してみたい。
著者
上和野 満雄 上ノ山 周 山本 一巳
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.760-765, 1995-07-10
被引用文献数
5 3

本報で提示するリアルタイム多点温度計測法は測定対象物における多点の温度を同一時刻に計測しパーソナルコンピュータにて一定時間間隔で表示できるものである.すなわち, リアルタイム多点温度計測法の基本的な原理は, 多数の熱電対で検出された出力信号をアナログ信号として増幅し, 一定時間間隔毎に同一時刻にサンプル&ホールド回路に取り込み, ホールドしている間にアナログマルチプレクサによって各ホールド回路から, 順次トランジェントメモリー内でA-D変換してパソコンにより処理し表示できるものである.本測定により, 非定常的にして時々刻々と変化をする熱移動現象を詳細に捉えることができる.<BR>応用例としては, 従来から使用されている走査型測定法に比して, 本法の有用性を両者の測定法を用いた攪拌槽内の熱的混合状況の測定により明らかにすると共に, 重合時における槽内の温度分布変化の測定を試みた.
著者
近藤 和生 松本 道明 吉田 貴司 園田 高明
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.542-547, 2000-07-10
被引用文献数
1 2

本研究では, リチウムに対して高い選択性を期待できる新規な抽出試薬である含フッ素フタロシアニン誘導体 (ヘキサデカ (2, 2, 2-トリフルオロエトキシ) フタロシアニンおよびヘキサデカ (2, 2, 3, 3, 3-ペンタフルオロプロポキシ) フタロシアニン) を合成した. まずこれらの抽出剤によるアルカリ金属の抽出平衡を測定した. 低pH領域ではどの金属イオンもpH依存性を示さず, イオン対の形で抽出され, またリチウムおよびカリウムについては高pH領域ではpH依存性を示し, カチオン交換型の抽出が生じているものと推察された. これらの抽出反応における抽出種および抽出平衡定数を決定した. 高pH領域では両抽出試薬ともにリチウムに対して選択性を示した. この領域でヘキサデカ (2, 2, 2-トリフルオロエトキシ) フタロシアニンによるリチウムイオンの抽出速度を平面接触型撹拌槽を用いて測定した. 抽出速度過程は, 抽出試薬の拡散過程によって律せられていることが推察された.
著者
宮川 洋光 本田 克美 宗像 健
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.134-138, 1989
被引用文献数
2

精留効果の組成による変化の原因を究明する目的で, <I>N<SUB>OG</SUB></I>の著しい変化を報告しているLiangらの実験とできるだけ同一の条件のもとに実験を行った.その結果<I>N<SUB>OG</SUB></I>は組成とともに大きく変化することが認められた.<BR>また, 表面張力特性による検討を行うため, この系の沸点液の表面張力を測定したところ, ある組成で極大値をもち, この組成を境としてネガティブ系からポジティブ系に変化することがわかった.また, Moensの提案したstabilising-indexを用いれば<I>N<SUB>OG</SUB></I>との関係がかなりよくまとめられることがわかった.
著者
鄭 相鐵 今石 宣之 朴 興吉
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.385-392, 1995-03-15
被引用文献数
2 1

水平管型ホットウォールCVD反応器を用い, 種々の操作圧力下で, 酢酸亜鉛を原料としたZnO薄膜を合成し, 膜性状に及ぼす操作変数の影響を検討した.ミクロトレンチ上の成膜形状と管軸方向の成膜速度分布を, ミクロおよびマクロな数値シミュレーションにもとづいて検討した.実験結果からCVD機構が圧力によって変化することが示唆された.実験結果を説明するためのモデルが提案された.モデルから, 高圧力下では, APCVDに関する前報で示したと同様に, 酢酸亜鉛から直接表面反応を経てZnO膜が形成されることが示された.低圧下では気相反応で活性種が生成され, それが管壁へ拡散し, 速い表面反応を経て成膜される.中間圧では, 気相中の活性種が窒素などによって失活されるとモデル化できることを示した.10~300Torrの中間圧力域では, これら2つの反応経路が共存するが, 活性な中間体は窒素分子との衝突で失活される.活性中間体から原料に戻る逆気相反応速度が窒素濃度の3乗に比例すると仮定することで, 実験結果を, 完全ではないが, ほぼ説明できた.
著者
松隈 洋介 高谷 真介 井上 元 峯元 雅樹 上島 直幸
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.402-408, 2006-09-20
参考文献数
8
被引用文献数
2 3

光化学スモッグや悪臭公害の主要な原因の一つになっている,低濃度溶剤をハニカム型ゼオライトを充填した回転式吸着塔を用いた,TSA方式で除去・濃縮するシステムについて最適化のためのシミュレーション計算を行った.本研究では,各パラメータが溶剤回収率,所要加熱量および濃縮倍率に及ぼす影響を検討することにより,最適条件の選定を行った.<br>この結果,53000 m<sup>3</sup> (STP)·h<sup>−1</sup>の排ガスを処理する装置の最適形状は,層高0.8 m,吸着,加熱再生およびパージ部の分割比が300°/30°/30°で,最適操作条件は,再生ガス流量15000 m<sup>3</sup> (STP)·h<sup>−1</sup>,再生ガス温度453 K,回転数14 rphであることがわかった.また,処理ガス流量が変化しても,比較的簡単な制御により,所定の性能を維持できることがわかった.<br>このような計算により,排ガス条件と目標性能に即した装置の最適設計を行うことが可能であることがわかった.
著者
田隈 広紀 桜井 誠 亀山 秀雄
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 = Kagaku kogaku ronbunshu (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.256-264, 2013-07-20
被引用文献数
3

イノベーション・エコシステムの確立が,文部科学省による「イノベーション促進のための産学官連携基本戦略」の中で提唱されている.イノベーションはホリスティックであり,そのシステムを確立していくためには,総体的な研究アプローチが必要であり,研究開発マネジメントが求められている.<br>本研究では,このような研究アプローチを支援する仕組みとして,プロジェクト&プログラムマネジメント(P2M)の導入と具体的な研究支援ツールであるロジックモデルとバランススコアカードを利用した,研究計画支援システムを提案する.このシステムを4年間大学の研究室における工学研究に導入した結果,研究発表数,研究論文数等研究業績の向上に効果が見られ,また大学で研究する学生の研究力向上に効果が見られた.さらに産学官連携研究にて,両ツールが複数技術の統合化や,ステークホルダ間の利害調整に重要な役割を果たすことが示唆された.
著者
大江 修造 高松 秀明
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.275-279, 2000-03-10
被引用文献数
1

溶媒和モデルを用いた気液平衡における塩効果の推算法を先に提案した. 本モデルにおいては, 混合溶媒の蒸気圧降下を考慮する事によって沸点及び全圧の推算を行っている. 混合溶媒の蒸気圧降下を示す活量係数は構成する各純溶媒+塩系における溶媒の活量係数との間に加算性が成立するとした. 本報においては, 蒸気圧降下を示す活量係数をより正確に表現するために, 異種溶媒間補正係数を導入した関数形を新たに提案した. この補正のための関数形は, [1] 混合溶媒の蒸気圧降下を示す活量係数の極値を表し, [2] 純溶媒の時, 補正を行わず, [3] 多成分系への拡張を可能にするという特徴を有する. これにより混合溶媒+塩系における蒸気圧降下の推算精度を格段に向上できた. さらに, 2成分溶媒+塩系で決定した異種溶媒間補正係数を用いて3成分溶媒+塩系の沸点の推算を行ったところ良好な結果が得られた.
著者
NAKAO SHIN-ICHI SUZUKI MOTOYUKI
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
JOURNAL OF CHEMICAL ENGINEERING OF JAPAN (ISSN:00219592)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.114-119, 1983
被引用文献数
3 110

Intraparticle distribution of adsorbate amount in cyclic adsorption and desorption is simulated by two methods: rigorous numerical solution of the particle-phase diffusion equation and the linear driving force (LDF) approximation. It becomes clear that the conventional value of 15 <i>D</i><sub>s</sub>/<i>R</i><sup>2</sup> as the intraparticle mass transfer coefficient, <i>k</i><sub>s</sub><i>a</i><sub>v</sub>, in the LDF method is not advisable for the simulation of transient adsorption and desorption. A mass transfer coefficient defined by including the cycle time is thus proposed. In this new conception, <i>k</i><sub>s</sub><i>a</i><sub>v</sub> increases with decreasing cycle time and approaches π<sup>2</sup><i>D</i><sub>s</sub>/<i>R</i><sup>2</sup> with increasing cycle time. Simulations of cyclic mode by the LDF method using this new <i>k</i><sub>s</sub><i>a</i><sub>v</sub> agree well in the steady state with that obtained by numerical solution of the diffusion equation. In unsteady-state operation, however, the two simulations do not coincide with each other because of overestimation of driving force for adsorption and underestimation for desorption in the LDF method.
著者
HARANO YOSHIO OOTA KOICHI
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
JOURNAL OF CHEMICAL ENGINEERING OF JAPAN (ISSN:00219592)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.119-124, 1978
被引用文献数
2

Heat evolution rate curves were recorded with KBrO<sub>3</sub>-quiet supersaturated aqueous solution at constant cooling temperature, <i>T</i>, by using a differential scanning calorimeter and were analyzed on the basis of the growth rate of all crystallites pre-formed in the sample solution. Taking microscopic observation into account, the expression of the overall growth rate, <i>R</i>, was derived, on the assumption that the crystallite surface is Kossel''s and that its growth rate is determined by two-dimensional nucleation rate, <i>J''=k<sub>1</sub>''S<sup>m''</sup></i>.<br> <i>R=βhAJ''≈k<sub>1</sub>"(C<sub>0</sub>-C)<sup>2/3</sup>S<sup>m''</sup></i> (1)<br>where C, C<sub>0</sub> and S are concentration at <i>t=t</i> and =0 and supersaturation ratio, respectively. <i>m''</i> is number of solute in a critical nucleus and is not constant, but depends on <i>S</i> and <i>T</i>.<br> The values of two-dimensional nucleation parameters (<i>m''</i> radius, free edge energy σ'' and surface energy estimated from σ'' and activation energy) were of reasonable order of magnitude. Comparison of these values with those of the three-dimensional parameters obtained previously is discussed. It may be concluded that Eq. (1) and hence the expression for <i>J''</i> proposed in this paper are adequate for the growth rate and two-dimensional nucleation rate, respectively.
著者
梶内 俊夫 白神 直弘 畑山 実
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.450-455, 1985

層流領域においてビンガム流体のテーパー管拡大流れと縮小流れによる圧力差を実験的に検討した.<BR>テーパー部に積分形エネルギー収支式を適用してビンガム流体のテーパー管による圧力差の推算式を得た.運動エネルギーに対する補正係数と広義レイノルズ数を導入することによって, 無次元化圧力差はニュートン流体に対する式と相似な形で表すことができた.圧力差を予測する計算手順を示した.<BR>これらの式からの予測値は実験結果と良好に一致した.
著者
北村 吉朗 多田納 寛志 竹原 淳彦 高橋 照男
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.425-427, 1989

著者らは先に, バイオマスを原料とするエタノールの代替エネルギーとしての利用法として, 未精製アルコール水溶液を燃料中に直接混入させるエマルション燃料を提案した.また有機廃液の焼却処理に関連して, ケロシンを用いたW/Oエマルションが, 水相中にメタノールやエタノールのような1価アルコールが存在すると著しく不安定になることを報告した.さらにこのような不安定化は界面活性剤の吸着の阻害による合一の促進によることを明らかにした.しかしこれまでの研究ではいずれも燃料油としてケロシンのみを用いてきた.そこで本研究では高沸点留分をより多く含む燃料油として軽油ならびにA重油を用いて, W/Oエマルションの安定性に対して水相中のアルコールがどの様な影響を及ぼすかを検討した.なおこれまでの研究から, W/Oエマルションの安定性を評価するにはその破壊時間と界面活性剤の吸着量が代表的な因子と考えられるので, この2点についての実験的検討を行った.
著者
小島 紀徳 長嶺 淳
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.237-242, 2010-07-20

二酸化炭素問題の対策技術の一つとして,資源量が豊富である岩石の風化反応に注目した.しかしながら,岩石を利用する対策技術では,その風化反応速度は遅く,その反応速度がネックになると予想される.本研究では,基礎的知見を得るために,様々な珪酸塩鉱物について,速度論的検討を行った.<br>実験は,二酸化炭素飽和水を用意し,粉末状の鉱物を加え,恒温槽内(25°C)で撹拌を行いながら,二酸化炭素を流し続けた.そして,一定時間経過後,一定量採取し,手早くろ過し,ろ液からの再沈澱を防ぐために硝酸を加え,液中の主成分元素を定量した.<br>溶解反応は,瞬間的な溶出過程・一次的な濃度増加過程・風化反応の平衡からなることがわかった.さらに,風化反応の律速段階は,鉱物表面上に存在することから,風化反応速度を表面積当りの溶解速度として求めた.速度は2.1×10<sup>−5</sup>–7.3×10<sup>−4</sup> mol/(m<sup>2</sup>· h)の範囲であり,中でもCaを主成分とするCaSiO<sub>3</sub>,CaCO<sub>3</sub>の溶解速度が速いことがわかった.
著者
岡島 いづみ 山田 和男 菅田 孟 佐古 猛
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.553-558, 2002-09-20
被引用文献数
3 39

亜臨界から超臨界領域の水を用いてエポキシ樹脂の分解を行った.その結果,350–380℃,25MPaの条件で樹脂は完全に分解し,約90%がフェノールやイソプロピルフェノールなどの単環フェノール類や,比較的分子量の小さな生成物である水+メタノール可溶分として回収された.一方,380℃における熱分解では分子量の大きな残渣やTHF可溶分が生成物の約半分を占めていることから,反応場に水が存在することで樹脂の炭化が抑制され,低分子化が進行することを確認した.また超臨界メタノールを用いた場合には,エポキシ樹脂の分解は起こるものの,同様の条件の超臨界水分解に比べて軽質化はあまり進まなかった.当該技術の応用の一例として,エポキシ樹脂をマトリクス樹脂として使用した炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の分解・炭素繊維の回収を試みたところ,380℃,25MPaの超臨界水を用いると樹脂分は低分子化して炭素繊維からはがれ,付着物のない炭素繊維を回収することができた.
著者
牧野 司 海瀬 卓也 佐々木 健志 大村 直人 片岡 邦夫
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.566-573, 2001-09-20
被引用文献数
6 12

本研究の目的は,アスペクト比2のテイラー渦流反応装置に層流条件下で存在する孤立混合領域(IMR)を観察することである.IMRは,レイノルズ数が200以下で装置環状部の上下循環流にそれぞれトロイド渦形状で明瞭に観察された.滑らかな表面の回転内円筒では単純なトーラス構造が観察され,表面に突起を設けた内円筒では細いトーラスが中心トーラスをスパイラル状に囲む構造が観察された.また突起の数が異なれば,レイノルズ数が極近い条件でも,細いトーラスの数が異なることを確認した.したがって,IMRの構造は突起付きの内円筒の回転により生じる周期的な摂動に依存すると考えられる.ラグランジェ法を用いた数値計算より得た仮想流体粒子の2次流循環1周期当たりの摂動回数<i>n</i><sub>e</sub>が細いトーラスの数と対応することがわかった.このことから,IMRの幾何学構造はポアンカレ・バーコフの定理の適用により,理解可能であることがわかった.
著者
金森 敏幸 溝口 健作
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.91-95, 2011-03-20
被引用文献数
1

濃度差と圧力差を駆動力とする液体の膜分離では,膜の透過性に応じて膜近傍に濃度境膜が形成されるが,濃度差を駆動力とする場合(拡散)には液本体に比べて膜面の濃度が減少し,圧力差を駆動力とする場合(対流)には膜面で濃縮が起こる.したがって,拡散と対流が共役する膜透過における膜近傍の濃度境膜形成機構は,極めて複雑である.さらに,膜デバイスで広く用いられている中空糸膜では,濃度と圧力は流れ方向でも変化するため,数学的に厳密な解を求めることは困難である.本研究では,市販の有限要素法アプリケーションを用いて中空糸型血液透析器の溶質除去性能について詳細に検討したところ,濾過による溶質除去促進について既往の実験結果を再現することができた.
著者
Seiya Hirohama Dai Takeda Mamoru Iwasaki Kazushige Kawamura
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
JOURNAL OF CHEMICAL ENGINEERING OF JAPAN (ISSN:00219592)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.588-593, 1996 (Released:2005-03-15)
参考文献数
9

The activity coefficients of HSO3– and H+ were determined in concentrated aqueous solutions of NaCl in order to provide a theoretical basis for using sea water as a solvent in flue gas desulfurization processes.The activity coefficient of HSO3– was determined at 313 K and 323 K by measuring the pH of mixtures of NaCl, H2O and small amounts of NaHSO3 at a known partial pressure of SO2. The activity coefficient of H+ was determined over a temperature range of 296 K–333 K by measuring the pH of mixtures of NaCl, H2O and small amounts of HCl.As the ionic strength increased, the activity coefficient of HSO3– decreased while that of H+ increased. The Pitzer Equation could correlate the activity coefficients of both species with reasonable accuracies for practical use.