著者
栗田 啓子 Keiko Kurita
雑誌
経済学論究 (ISSN:02868032)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.133-157, 2015-09-20
著者
中屋 隆明
出版者
Hokkaido University(北海道大学)
巻号頁・発行日
1997-03-25

ウイルスの感染を受けた細胞は、大別して3つの運命をたどる。一つは、ウイルスの増殖に伴い、細胞が破壊される溶解感染(lytic infection)である。第2の感染様式は、ウイルスの感染によって、細胞が、がん化(transformation)する場合である。そして第3番目は、細胞とウイルスが共存する感染様式であり、持続感染(persistent infection)ないしは潜伏感染(latent infection)と呼ばれる。特に、溶解感染を起こし、死滅するか、あるいは持続感染を起こし、ウイルスとの共存下で生き続けるかは、ウイルスの細胞傷害性と深く関わる。また、潜伏感染からの活性化は宿主側の免疫応答能と深く関わる。本研究では、ヒトに持続、潜伏感染し、免疫疾患を引き起こすヒト免疫不全ウイルス、および精神神経疾患との関連が示唆されているボルナ病ウイルスについて、その感染機序を解明することを目的とした。ヒト免疫不全ウイルス1型(Human immunodeficiency virus type 1: HIV-1)は、後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因ウイルスであり、感染機序の解明は、治療法を確立する上で極めて重要である。本研究では、HIV-1の感染様式をin vitroの実験系において解析し、HIV-1の細胞傷害性および持続感染機序に関与する遺伝子の同定を試みた。また、HIV-1の調節タンパク質の一つであるRevの働きを阻害するデコイオリゴヌクレオチドを用いて、抗ウイルス剤としての可能性を検討した。一方、ボルナ病ウイルス(Borna disease virus: BDV)は、元来ウマに脳炎を起こすボルナ病の原因ウイルスとして分離されたものであるが、最近の研究により、ヒト、特に精神疾患患者との関連が指摘されている。一方、慢性疲労症候群は、その病因にウイルス感染症が疑われており、うつ症状などの精神症状も見られることから、本研究では、BDVと慢性疲労症候群との関連性を検討すると共に、免疫抑制状態にあるHIV-1感染者および悪性脳腫瘍患者に対するBDVの疫学調査を行い、ヒトにおけるBDVの感染様式について検討した。従って、本論文は「第1章: ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)の細胞傷害性の低下に関わるアクセサリー遺伝子の変異」、「第2章: RREデコイオリゴヌクレオチドによるHIV-1増殖抑制効果」および「第3章: ヒトにおけるボルナ病ウイルスの感染に関する研究」から構成される。第1章は以下の内容に要約される。1. HIV-1のin vitroにおける継代感染により、低細胞傷害性のウイルスが現れ、継代4代以降は持続感染する細胞が出現した。継代と共にvpr遺伝子内のナンセンス変異の割合が増加し、20代以降の持続感染細胞では、ほぼ全てのプロウイルスが変異型であった。これらのことから、vpr遺伝子の変異が細胞傷害性の低下をもたらす一因であることが示唆された。2. 継代50代において、vifからvprにかけてミスアライメント欠失と考えられる変異を伴うウイルスが検出された。この欠失ウイルスは、複製、増殖が可能であり、さらに細胞傷害性をほぼ消失していることが、組み換えウイルスを用いた感染実験により明らかとなった。3. vpr遺伝子内のナンセンス変異は生体内のプロウイルスにも高率に認められ、in vivoにおける存在様式の一つであることが示唆された。第2章は以下の内容に要約される。1.Rev response element(RRE)内のRevタンパク質結合部位(bubble構造)を含むオリゴヌクレオチド(RREオリゴヌクレオチド)を合成した。これらのオリゴヌクレオチドはRevと結合することが明らかとなった。2. RREオリゴヌクレオチド(ARO-2)は、1から10μMの濃度において、ヒトT細胞由来株であるMOLT#8およびM10細胞に持続的に感染したHIV-1(実験室株)のウイルス産生を抑制した。また、HIV-1が潜伏感染したヒトT細胞由来株(CEM)であるACH-2細胞において、TNF-α刺激によるウイルスタンパク質の合成(ウイルスの活性化)を抑制した。一方・添加濃度10μMにおいて、RREオリゴヌクレオチドの細胞に対する傷害性は認められなかった。3. RREオリゴヌクレオチド(ARO-2)は、ヒト末梢血単核球細胞に感染したHIV-1(臨床株)のウイルス産生を抑制した。第3章は以下の内容に要約される。1. HIV-1感染者(タイ国)は非感染者に比べ、BDV抗体陽性率が有意に高く、特にHIV-1陽性の性病(STD)患者ではその傾向は顕著であった。また、一般に免疫抑制状態であることが報告されている悪性脳腫瘍患者(グリオブラストーマ)の脳腫瘍組織からもBDV RNAが高率に検出された。2. 日本国内の慢性疲労症候群(CFS)患者では、健常者と比較し、抗BDV抗体およびBDV遺伝子の陽性率が有意に高かった。3. CFSの家族内集団発症例において、CFSと診断された患者(両親、次男および長女の4名)は全てBDVとの関連が示された。一方、CFSのいずれの基準にも該当しない長男はPBMC中のBDVp24遺伝子および抗BDV抗体は陰性であった。以上のことから、HIV-1はアクセサリー遺伝子の変異により、宿主細胞と共存している可能性が示唆されること、また変異が起きにくい領域(RRE)のアナログであるRREデコイオリゴヌクレオチドの抗ウイルス剤としての有用性を明らかにすることができた。さらに、BDV感染とCFS患者の発病あるいは症状との関連性を指摘すると共に、ヒトにおけるBDVの存在様式は、宿主生体の免疫応答により抑制された状態にあると考えられる知見を得ることができた。
著者
加納 修 KANO Osamu
出版者
名古屋大学人文学研究科
雑誌
名古屋大学人文学研究論集 (ISSN:2433233X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.193-211, 2018-03-31

The works of Gregory of Tours feature many slaves fulfilling various tasks. The society he describes was a slave-owning society. In sixth-century Gaul society that he describes, slave owning was common not only in the middle class but also at local village level. This paper focuses on the activities of these slaves and asks why some tasks were committed to slave labour. It is remarkable that Gregory of Tours mentions few slaves fulfilling agricultural labours. Instead, his works depict slaves in manufacturing roles. To work by one’s own hands was considered dishonourable for both the descendants of Roman aristocracy and for Germanic men of influence in sixth-century Gaul. Social custom sometimes forced tasks to be undertaken by slaves. One example is marriage by abduction, a continuation of Roman tradition wherein slaves would abduct a girl for marriage. Finally, it is interesting to note that slaves were also active in the execution of royal orders. Merovingian kings relied on slaves in their
著者
馬場 典子
出版者
名古屋大学国際言語センター
雑誌
名古屋大学日本語・日本文化論集 (ISSN:1348804X)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.17-36, 2018-03-31

本稿は、感情を表す動詞のうち、「嫌悪」の感情を表す動詞「嫌う」が持つ複数の意味について記述し、それらの意味の関連性を明らかにすることを目指した。分析の結果、「嫌う」には7つの別義が認められた。それらの別義は「メタファー」と「メトニミー」という比喩により動機づけられている。また、拙論では「感情を表す用法」と「感情以外のものを表す用法」に分けて考察していたが、本稿では「放射状カテゴリー」の概念を援用することにより、包括的な記述をすることができた。また「嫌う」には、他の動詞「避ける」と意味が近いものもあり、他の感情である「困る」との連続性が感じられるものもあることがわかった。さらには「感覚」という別の領域との繋がりもある例も認められた。
著者
仲 真紀子
出版者
教学社
巻号頁・発行日
2010-11-10

心理学科をめざすあなたへ, 改訂版, ISBN: 978-4-325-16698-6, pp.142-143
雑誌
総合政策研究 (ISSN:1341996X)
巻号頁・発行日
no.44, pp.5-13, 2013-10-30
著者
山本 逸郎 遠藤 聖奈
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.113, pp.47-56, 2015-03-27

教員免許状更新講習「理科を苦手とする教員のための小学校物理実験」を受講した延べ286名の小学校教員に理科の実験でうまくいかなかったことを具体的に記入してもらったところ,4学年の「水の沸騰の実験」と「水が氷になる実験」に関する記述数が全学年の実験の中で圧倒的に多いことがわかった。それらの記述の内訳は,前者の実験では「水の沸点が100℃にならない」が,後者の実験では「水が過冷却する」が最も多く挙げられていた。本研究では,これら2つの実験について詳しい測定を行い,実験条件を変えたときに測定結果がどう変わるのか議論する。
著者
松原 朗
出版者
中國詩文研究會
雑誌
中國詩文論叢 (ISSN:02874342)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.41-71, 2015-12-31