- 著者
-
佐本 英規
- 出版者
- 日本文化人類学会
- 雑誌
- 文化人類学 (ISSN:13490648)
- 巻号頁・発行日
- vol.85, no.1, pp.073-091, 2020 (Released:2020-10-08)
- 参考文献数
- 17
本論文は、ソロモン諸島マライタ島南部アレアレ地域の村における人びとの共住のあり方について、歓待をめぐる在地の論理に焦点をあてて考察するものである。アレアレの人びとは、複数の家族が暮らす十数の家屋のまとまりからなる村で生活を送る。村には、父系的な出自原理と夫方居住の原則によって成り立ついくつかの家族が数世代にわたって定住する一方、二次的な権利による土地利用や居住、婚入、親族関係や友人関係を伝手とする一時的な訪問と滞在といった、様々な人の出入りが頻繁に認められる。また、20世紀半ばにアレアレを中心としてマライタ島全域で隆盛した土着主義運動以来、一般的に1つの村は、異なるクランを出自にもつ複数の家族のまとまりによって構成される。複数のクランの成員が同一の土地に共住する今日のアレアレの人びとにとって、来訪者を歓待し、平穏のうちに共に住まうということは、生活上の大きな課題である。そうした課題に対してアレアレの人びとは、独自の方途によって向き合ってきた。本論文では、今日のアレアレにおいて人びとが1つの村に共住することが、互いの差異を制御することを試みる行為と思考の継続によって可能になることが示される。