著者
Takeshi Inoue
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.15-23,59, 2005-01-31 (Released:2009-07-31)
被引用文献数
1

The theoretical literature points out that inflation targeting and the exchange rate peg have the advantage of lowering the inflation rate. Controlling for the other relevant variables, this paper estimates the effects of these policies on the inflation rate in 20 transition countries during 1995-2003 by using regressions on panel data. The main finding is that inflation targeting and the exchange rate peg appear to have been effective in lowering inflation rate even in transition countries.
著者
黒坂 真
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.35-40,59, 2005-01-31 (Released:2009-12-03)
参考文献数
4

北朝鮮では,金父子に対する崇拝が強化されてきた。本稿は北朝鮮の体制について二種類のモデルを提起する。第一は労働党幹部が,一般国民の労働配分を直接決定できる場合である。第二は労働党幹部が,一般国民の誘因制約と参加制約を考慮して,一般国民と契約をする場合である。分析により,脱北したときに得られる所得が低いと一般国民がみなしてきたことが,金父子に対する崇拝強化の重要な原因であることがわかる。
著者
今村 弘子
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.41-49,59, 2005-01-31 (Released:2009-07-31)
参考文献数
6

北朝鮮は2002年7月に価格改革を主とする経済管理改善措置を開始した。同措置を中国の改革開放政策と比較すると,同措置は順序を無視した改革であること,北朝鮮では金日成から金正日と政権が連綿と続いていること,北朝鮮の経済があまりに困窮しており,インセンティブ・システムが働かないことなどから,中国の改革開放政策と類似しそいる点は少なく,北朝鮮の経済を改善させることは難しい。
著者
鄭 光敏
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.25-34,59, 2005-01-31 (Released:2009-07-31)
参考文献数
24

本稿は都市部飢饉としての北朝鮮飢饉の性格の解明の一環として,北朝鮮の政治経済システムの中核に位置する,首領経済が,人々の食糧の獲得能九すなわち,「食糧エンタイトルメント」にいかなる影響を及ぼしたかを論じた。北朝鮮における食糧配給システムは,首領とその一家を頂点とした差別的ヒエラルキー構造になっている。このようなエンタイトルメントのヒエラルキーを規定する物質的基礎は「首領経済」の形成にあった。
著者
田畑 朋子
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.31-48,99, 2004-06-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
10

ロシアの90年代の人口減少に対して各地域がどのように寄与したかについて検討した。92年からの人口減少が欧露部の中央などでの自然減少と,極東や北方地域での社会減少によるものであり,99年以降の人口減少加速化は欧露部の中央,北西部,沿ヴォルガ地域などでの自然減少の加速化によるものであること,人口減少の主要因である男性の早死は欧露部の中央,北西部や大都市圏,出生率の低下はロシア全域で生じたことを明らかにした。
著者
小出 秀雄
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.49-60,100, 2004-06-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
23

本論は,日本の家電リサイクル法とEUの廃電気電子機器リサイクル制度のしくみと現状を概観し,使用済み家電製品を消費者が排出する際に適用される料金支払制度,および不法投棄の可能性を考慮した場合,どのような政策を実施すべきかをモデル分析により明らかにする。料金の支払い方式の違いによって,理論的に妥当な政策は異なる。そして,前払い方式が必ずしも後払い方式よりも優れているわけではない,という興味深い結論を得る。
著者
阿部 新
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.61-71,100, 2004-06-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
26

日本では産業廃棄物は基本的に民間部門によって処理されるのに対し,ドイツでは公的部門によって処理される。しかし,最近,両国においてこの2つの方式の考え方を混合させるという動きがある。本稿では,まず,この2つの処理方式を分析・比較したうえで,どのようにして双方を組み合わせるべきかについて検討する。そして廃棄物を外部不経済の大きさで区分し,それに従って双方を組み合わせるべきであるという含意を得る。
著者
岩崎 一郎 佐藤 嘉寿子
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.14-30,99, 2004-06-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

1998年に始動したハンガリーの新年金制度は,強制的私的積立年金の導入という点で画期的である。しかし,年金改革をめぐる政治的意思決定プロセスとその後の制度運用は,省庁間の利害対立,与野党間の政治力学,労働組合や金融機関を含む利益集団の存在に大きく左右された。それは,強制的私的積立年金の制度的枠組や私的年金基金の経営実績にも一定の悪影響を及ぼした可能性が高い。強制的私的積立年金が将来においてサステナブルであるためにも,保険加入者の利益が最も優先されるようなガバナンス改革やモニタリング機構の強化が求められる。
著者
家田 修
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.1-13,99, 2004-06-30 (Released:2009-07-31)

本稿はハンガリーの地位法を事例として,第一に,移行経済を語る出発点は社会主義体制ではなく,そこからさらに時代を遡る必要がある(連続的な未完の体制移行),第二に,自由競争など経済的合理主義を社会的に受容する過程は進んでおらず,市場経済体制に対する内発的な信頼感は醸成されていない。むしろ政治が経済的合理主義の行き過ぎを制御すべきだという価値基準が強化されている(経済に対する政治の優位),この二点を論述した。
著者
奥田 央
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.1-14,78, 2004-01-31 (Released:2009-12-03)
参考文献数
25

ロシアでは1990年代以降コルホーズ,ソフホーズの土地の民有化や,フェルメルの形成をめざす土地改革が実施されたが,フェルメルは,予想と異なって大きな発展を遂げず,また編成替えされた農業企業も,かってのコルホーズ,ソフホーズと組織上の変化はほとんどない。本報告は,ロシア農村の歴史的背景(とくに共同体的な伝統)から,「私的土地所有」の問題を考察したい。また本報告は,ロシア人学者イリーナ・コズノワのこの問題に関する観点の紹介にもあてられる。
著者
蓮見 雄
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.15-26,78, 2004-01-31 (Released:2009-12-03)
参考文献数
36

EUの「包領」となるカリーニングラードの問題は,EU拡大後のヨーロッパを占う試金石である。経済特区の失敗は経済悪化と闇経済の蔓延をもたらし,EUとの社会経済的格差が拡大した。問題解決には,これを克服する展望を作り出すことが重要である。ロシアは,ヨーロツバ共通経済空間を通じたEUとの制度的収斂とともに,この地を「分断の象徴から協力の拠点へ」と変革する国家戦略に基づいた開発プランを推進すべきである。