著者
日置 史郎
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.27-38,78, 2004-01-31 (Released:2009-07-31)
参考文献数
33
被引用文献数
1

本稿は,中国の沿海部から内陸部への浸透効果を地域間産業連関の観点から分析し,地域格差問題への示唆を導くものである。浸透効果は地域間産業連関による波及効果のみに限定して,最終需要誘発生産額と産出乗数を計測した。沿海部の成長極は中部沿海地区や南部沿海地区であり,それぞれ中部地区や西南地区への浸透効果がやや大きいが,沿海部から内陸部とりわけ西部への浸透効果は総じて小さく,西部大開発の妥当性が示唆される。
著者
Zoltan Denes
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.39-48,78, 2004-01-31 (Released:2009-07-31)
参考文献数
24

Two main integrated environmental and economic accounting systems, the SEEA and the NAMEA frameworks, are reviewed in this paper with an emphasis on derived indicators. NAMEA indicators in physical terms better serve the multi-dimensional needs of sustainable development than the adjusted monetary macro-indicators in the SEEA, which rely on the maintenance cost valuation. While maintenance costs are crucial for policy making, approximating the depreciation of natural assets with maintenance costs is controversial and misleading. Physical accounts should be the core of integrated accounts, and they should always be made public.
著者
雲 和広
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.49-56,78, 2004-01-31 (Released:2009-07-31)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

本稿の分析は,距離変数という地理的要因が有意かつ直感的に理解可能な形でロシアにおける地域間人口移動に影響を与えていることを示した。距離変数の導入方法など重要な問題は残されている。しかしながら距離減衰効果の存在は明らかであり,重力モデルの適用可能性を示すことが出来た。ロシアの人口移動を分析する上で地理的要因を考慮に入れることの必要性が示唆され,今後分析を進める際の方向性を示すものであろう。
著者
平手 賢治
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.57-68,79, 2004-01-31 (Released:2009-07-31)
参考文献数
11

本稿は,規範的正義論の観点から,体制移行を支える背景的正義を述べる。すなわち,L.バルツェロビィチの見解を,J.ロールズの社会的正義論に適った動態的平等主義の観点から,進化させ,体制移行の目指すべき範例を述べるのである。その結果,自由化政策は公正としての正義の構想によって,制度化政策は財産所有の民主政という政治構想によって,安定化政策は重なり合う合意の観念によって,背景的に支えられていることを明らかにする。
著者
池本 修一
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.16-29, 2003-06-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
5

チェコでは,1998年の社会民主党政権樹立を契機として,これまでの改革路線が転換した。そのなかで産業政策での主な政策転換は,外資への直接投資による私有化と外国直接投資促進などの産業政策の導入である。この2つの政策によって電気機械,輸送機械部門の外資企業を中心に企業改革が進展すると同時に輸出が増加し,チェコの経済発展に一定の貢献をしている。
著者
田畑 朋子
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.46-55,76, 2003-06-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
18

2002年10月にソ連崩壊・ロシア独立後初めての国勢調査がロシアで行われた。本稿では,この国勢調査の調査票について,前回1989年国勢調査調査票との比較により,次のようなその特徴を明らかにした。(1)市場経済化を反映して,失業や求職活動を含む就業に関する多くの質問が加えられた。(2)生活資金源に関する設問が大きく様変わりした。(3)ソ連崩壊を反映して,国籍・民族・言語に関する設問が大きく変化した。
著者
トラン ヴァン・トウ
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.30-36,75, 2003-06-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
12

本稿は,計画経済・社会主義経済システムから市場経済への移行問題を経済学的に分析するための理論的枠組みの構築を試みたものである。この分析は,経済移行と経済開発という2つの視点を同時に把握し,開発メカニズムと移行戦略を総合して1つの理論的枠組みで展開したことが特徴的である。また,このペーパーは,中国やベトナムのような社会主義国であると同時に途上国でもある国にとって、ショックセラピー(急進主義)ではなく,グラデュアリズム(漸進主義)という移行戦略が有効であることも改めて示している。
著者
石川 健
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.1-15,75, 2003-06-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
14

本稿では,体制転換後ロシアの電力・石油・ガス部門において進行している生産減と雇用増の同時進行がなぜ可能なのかについて,公式統計と簡単な推計結果を利用しつつ検討し,これらの部門が雇用増を可能とする特殊な条件(費用構造と収益性)を備えていることと,体制転換後に固有の賃金未払いが同部門で大規模に見られるということもこれと関係する要因であることを示す。