著者
市川 裕介 小林 透
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.1195-1203, 2011-03-15

我々は,レコメンデーションなどでの利用を目的としたサイコグラフィック属性として,ユーザの多様性受容度をユーザ個々のWebアクセス履歴のべき乗則を利用して推定する手法の提案を行った.実履歴を用いた検証の結果,ユーザ個々のサイトアクセス傾向がべき乗分布を示すこと,べき指数が観測期間によらずユーザ固有の特性値であること,べき指数がユーザの多様性受容度に相関があることから,提案手法が有効であることを示した.
著者
美馬 のゆり Noyuri Mima
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2010-03-24

本研究では、科学技術に関わるいくつかの教育実践事例をもとに、学習環境のデザインの取組みと結果について、その過程を含めて学習の共同性と社会性の観点から明らかにし、21 世紀における初等教育から高等教育、さらには生涯教育までをも含めた、学習環境をデザインする際のデザイン原則を導出することを目的とする。学習環境のデザインとは、目的、対象、要因、学習に至るまでの過程などを意識した活動であり、そこに関わる人々の活動を物理的環境も含めて組織化し、実践しながら、振り返り、位置付け、修正していくという、構成的で、循環的な、環境に開いた学習環境を創造する行為を指す。本研究は、学習科学が誕生していく流れの中で実施してきたものである。学習科学の誕生に密接に関わる認知科学では、一連の学習研究から、学習の「共同性」や「社会性」の重要性が明らかになっていった。情報通信技術を利用する革新的な学習環境のデザイン研究を実施する上では、社会的にはその環境は全く整っていない時代であった。そのような状況において、関係者と交渉しながら環境を独自に整備し、実践者と密な関係を築きつつ、研究チームを組織し、ある時は実践者となり実践研究を行ってきた。本論文は以下の4部から構成される。第Ⅰ部 学習環境デザインのための基礎理論第Ⅱ部 学習環境デザインのための基礎実験第Ⅲ部 学習環境デザイン・モデルの実験第Ⅳ部 学習環境デザイン・モデルの展開はじめに、研究の背景や目的とともに研究手法について述べる。学習環境デザイン研究には、近年の認知科学研究および、教育におけるコンピュータの利用に関する研究という二つの大きな流れが存在する。そこで学習環境デザインのための基礎理論として、これらの流れをそれぞれ概観する。そこから誕生した学習科学という研究分野および、「デザイン・メソッド」という研究手法について論じる。デザイン・メソッドとは、デザイン、実践、評価を繰り返すことによりその環境を洗練させていく過程である。次に二つの基礎実験結果を考察する。まず、小学生と科学者が参加する通信ネットワークを利用した科学の学習環境に関する実践研究を行った。その結果、二つの異質な実践共同体の接続によって、学習者の社会的動機づけが促進され、学びが生じたことが明らかになった。そこでは想定していた小学生だけでなく、科学者が共同的に活動することで共同的メタ認知が促進され、科学者の側にも学びが起こったことが示された。次にもうひとつの基礎実験として、大学において「ものづくり」を取り入れた授業をデザインし、その学習過程を分析、考察した。その結果、ものづくりを取り入れた授業では、学校外の共同体との社会的な関わりや、その共同体の中に存在するモノ(道具や制度などの人工物)との相互作用の機会、すなわちモノを介した活動によって共同的メタ認知および社会的動機づけの機会が提供され、学習が促進されることが明らかになった。学習環境デザインのための基礎理論を検討し、それを踏まえた2つの基礎実験で得られた知見および、学習に関わる認知科学の研究成果を応用し、大学の学習環境デザイン・モデルの実践研究を行った。大学における学習者を学生だけでなく、教員をも含めて位置づけ、大学全体の学習環境を「制度」と「空間」の両側面からデザインした。10 年にわたる取り組みの過程とその結果の考察から、学習科学研究が教育の改善、改革において、制度設計、空間設計の段階から貢献できることが示された。学習の共同性および社会性を基軸にした学習環境デザイン研究を進めてきたことにより、デザイン原則(空間、活動、共同体、道具、デザイナー)が導出された。それは、学習環境デザインの視点を学習者と教師という教室内の関係から、複数の学習者、複数の教師や専門家、地域住民といった学校外の人々との関係まで広げ、その実践の「持続可能性」を考慮したことによる。本研究で導出されたデザイン原則、および新たなデザイン研究の手法を適用することで、学校教育だけでなく、市民活動、生涯学習までをも含めた学習環境のデザインについての応用可能性が明らかになった。学習の共同性および社会性を基軸にすることで、学校という枠組みを超え、組織、さらには社会の持続可能な変革へとつながっていくことが、新たなデザイン研究の方法論とともに示された。本研究で明らかになったデザイン原則や、学習環境デザイナーの位置づけの変化は、革新的な学習環境を持続可能なものにしていくという目的によって、導出されてきたものである。科学技術が高度に発達し、社会的環境の変化の激しい21 世紀の社会において、共同体の再生産と継続を行っていくには、共同体内部に、自己のおかれた状況を認識し、あるときは革新的な変化を生み出していく「学習」機能すなわち、「持続可能な学習(サステイナブル・ラーニング)」を備えておくことが鍵となる。サステイナブル・ラーニングは、教室などの学習の現場から、生産の現場、労働の現場、福祉の現場のみならず、政策の立案の現場まで、その組織や社会が継続していくために、実践共同体が持つべき機能である。そこには、本研究で導出されたデザイン原則とともに、共同体内部の学習環境デザイナー・チーム「サステイナブラーズ(sustainablers)」の存在が不可欠であることが明らかになった。本研究の独自性は、学習の共同性と社会性に注目した学習環境デザインの有効性と共に、そのデザイン原則を明らかにした点である。これに加え、これまで教育・学習研究ではあまり扱われてこなかった大学の学生や教職員、企業や市民活動における成人の学習への洞察と、学習科学の研究者の新たな役割の強調にある。新たな役割とは、学習と社会の関係を常に意識し続けること、社会にどのように寄与しているかを常に自分に問いかける姿勢を持つことである。学習に関わる活動に深く、そして継続的に従事していることから、そこから導かれる予見、すなわち新たな学習環境の可能性について語ることは可能である。またそれだけでなく、具体的な学習環境をデザインし、実践し、改良しながらその成果を過程も含めて公表し、社会に対して積極的にはたらきかけを行っていくことも重要な役割のひとつである。
著者
古俣 達郎
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ (ISSN:24343110)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.107-137, 2018-11-30

本稿では、明治末のアメリカ人留学生で日本学者であったチャールズ・ジョナサン・アーネル(Charles Jonathan Arnell 1880-1924)の生涯が描かれる。今日、アーネルの名を知るものは皆無に等しいが、彼は一九〇六(明治三十九)年に日本の私立大学(法政大学)に入学した初めての欧米出身者(スウェーデン系アメリカ人)である。その後、外交官として米国大使館で勤務する傍ら、一九一三年に東京帝国大学文科大学国文学科に転じ、芳賀矢一や藤村作のもとで国文学を修めている(専門は能楽・狂言などの日本演劇)。卒業後は大学院に通いながら、東京商科大学(現:一橋大学)の講師に就任し、博士号の取得を目指していたが、「排日移民法」の成立によって精神を病み、一九二四年十一月、アメリカの病院で急逝した。
著者
仁井田 陞
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.602-620, 1952-04
著者
松藤 ちひろ
雑誌
研究報告コンピュータグラフィックスとビジュアル情報学(CG) (ISSN:21888949)
巻号頁・発行日
vol.2018-CG-171, no.15, pp.1-2, 2018-09-23

筆者はS.Kajiらが2012年に発表した論文"Mathematical Analysis on Affine Mapsfor 2D Shape Interpolation"[1]の実装を試みている.この論文では2000年にAlexaらが提案した変形行列を用いたARAPと呼ばれるモーフィング手法に改良を加えた二次元モデルに対する補間手法を提案している.一方三次元モデルに対するモーフィング手法も2016年にS.Kajiによって提案されている("TETRISATION OF TRIANGULAR MESHES AND ITS APPLICATION IN SHAPE BLENDING"[2]).筆者はこの二つの論文を元にMathematicaでの実装を行い変形の実験を行い様々な手法の特徴を考察した.さらに,M.Mullerらによって提案されたShape Matching("Meshless Deformations Based on Shape Matching"[3]) を組み合わせたモーフィングの実装を行い,拡張性のあるモーフィングライブラリとした.