著者
山本 和行
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育學研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.13-22, 2009-03-31

本稿は大日本教育会編『全国教育者大集会報告』第1・2巻(1890年)に基づき、1890年5月に全国の教員・教育関係者を集めて開催された全国教育者大集会の議論を分析し、議論に現れていた「国家教育」論の内容を明らかにしようとするものである。大集会での議論は、日本の近代学校教育制度形成の画期である1890年10月の第二次小学校令・教育勅語発布の直前に行われたものとして、重要な意味を持つ。その内容を分析すると、大集会に現れた「国家教育」論は教育理念や教育内容・方法に関する問題というよりも、市制町村制施行を強く意識し、教育費負担の問題を中心とした教育の管理運営に関する問題として議論されていた。しかも、そこでイメージされていた国家と教育との関係は多様なものであった。そのうえで、そうした議論のありようが「国家教育」を標榜する国家教育社の結成にあたって、どのように作用し、吸収されていくのかを明らかにした。
著者
ジェイムズ ノーマン 森本 祥子
出版者
日本アーカイブズ学会
雑誌
アーカイブズ学研究 (ISSN:1349578X)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.70-87, 2013

<p>イギリスでは、19世紀以来、民間アーカイブズ(所有権が民間にあるもの)の保存を王立手稿史料委員会(Royal Commission on Historical Manuscripts)および全国アーカイブズ登録局(National Register of Archives)が担ってきた。現在はその責務は国立公文書館民間アーカイブズ・チームに引き継がれている。イギリスには民間アーカイブズ全体をカバーする法制度はないため、全国規模で集約した情報を元に、アーカイブズの類型に応じた法制度を活用しつつ、その保存と活用を支援することとなる。本稿では、こうした取り組みを紹介する。</p>
著者
松本 保
出版者
日本アーカイブズ学会
雑誌
アーカイブズ学研究 (ISSN:1349578X)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.57-67, 2013

<p>国立国会図書館では、「国立国会図書館東日本大震災アーカイブ構築プロジェクト」を行っている。東日本大震災に係る災害の記録を始め、発災前の被災地域の記録、復興過程の記録及び過去に発生した地震・津波・原子力発電所の事故の記録を積極的に収集・保存していく。また、国全体としての連携を実現するため、諸機関による収集・保存の呼び掛け・支援を行い、記録の所在情報など検索に必要な情報の集約を進めている。本稿では、その目標・基本理念、公開までに行ったコンテンツ構築の取り組み、東日本大震災アーカイブの概要、今後の課題について述べる。</p>
著者
松澤 孝明
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.697-711, 2014
被引用文献数
4

わが国における研究不正の低減に向けた検討に資するため,文献情報をもとに諸外国の国家研究公正システムの特徴を分析した。研究活動における公正さ(Research Integrity)を確保し,研究不正の低減を図っていく国全体としてのシステムのことを,本報では「国家研究公正システム(National Research Integrity System: NRIS)」と定義する。近年,NRISの比較研究は広く世界的な規模で行われている。そこでまず,先行研究におけるNRISの比較・分類の考え方を整理し,調査対象国のNRISの分類を行ったところ,米国をはじめとする「法的な調査権限を有する研究公正当局のある国」に分類される国は,全体としては少なかった。さらに主要国の研究不正の状況と研究開発やNRISの特徴の関係について俯瞰的な分析を行った。その結果,NRISの検討に当たっては,各国の研究不正の特徴や国情を踏まえ,さまざまな特徴あるシステムを検討していくことが重要であることが示唆された。
著者
長部 喜幸 治部 眞里
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.685-696, 2014
被引用文献数
8

日本版NIHや製薬企業における,政策決定・戦略立案に資するエビデンス提供のため,新しい指標に基づいた医薬品産業の現状俯瞰・将来予測を試みた。今回は,パイプラインを有する事業主体の規模や種類に着目し,医薬品開発のカギを握る事業主体について分析した。その結果,米国の強みは中小企業・ベンチャー企業にあること,また一方で,日本の中小企業・ベンチャー企業は米国のような働きを担っていないことが明らかとなった。