著者
藤野 博
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.429-438, 2013

心の理論(ToM)の発達に関する基礎研究は発達障害の臨床研究と実践に影響を与え,また臨床事例を対象とした研究はToMの発達基盤の解明に向けられた基礎研究の進展に貢献してきた。本論文では最初に,メタ表象操作に関わるToMの概念が自閉症スペクトラム障害(ASD)の社会性やコミュニケーションの問題を認知的な視点から説明できる可能性への期待が発達障害の臨床研究に与えた影響について展望するとともに,この概念が適用できる範囲について問題提起した。次いで,ToMのアセスメント・ツールとして藤野(2002,2005b)が開発した「アニメーション版心の理論課題」の妥当性について示し,これを適用して収集したデータに基づいて,学齢期のASD児におけるToMの発達過程,ToMの獲得と言語力の関係,ToMの問題に対する発達支援における2つのアプローチの有効性と限界,ToMの獲得と精神的健康の問題について論じた。そして最後に,ASD者の側から見たToM研究の問題点について批判的に検討した。
著者
本郷 一夫
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.417-425, 2013

本稿では,臨床発達心理士の専門性と役割について,大きく3つの観点から論じた。第1に,臨床発達心理士認定運営機構の歴史を振り返ることによって,臨床発達心理学における「臨床」の意味について検討した。第2に,臨床発達心理士の専門性の中核を成す「発達的観点」の意味について,発達アセスメントと発達支援の観点から検討した。第3に,東日本大震災後の支援を通して,東日本大震災の支援における臨床発達心理学と発達心理学の役割について考察した。また,発達心理学と臨床発達心理学における「基礎」と「実践」の循環性について考察した。これらの議論を通して,今後の発達心理学研究の方向性について提案した。
著者
無藤 隆
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.407-416, 2013

本論文は,発達心理学が実践現場に役立つ可能性を,保育を例として検討する。特に,その問題を,研究が実践にどう役立つのかというより大きな問題の一部としてとらえる。発達心理学を含めた研究の進展が,実践と研究の関連を変えてきている。その中で,エビデンスベーストのアプローチがその新たな関連を作り出した。また,実践研究の積み上げを工夫する必要がある。実践を対象とする研究として,実践者自身によるものと,実践者と研究者の協働によるアクションリサーチ,そして研究者が実践を観察し分析するものが分けられた。さらに,関連する研究として,子ども研究全般,カリキュラムや指導法に示唆を与える研究,社会的問題に取り組む研究,エビデンスを提供する研究,理論枠組みを変える基礎研究,政策へ示唆を与える研究などに分けて,各々の特質を検討した。実践現場から研究を立ち上げることが重要だと指摘した。最後に,研究的実践者と実践的研究者の育成を目指すことが提言された。

1 0 0 0 OA 訓蒙天文図解

著者
岡田伴治 訳
出版者
東生亀次郎[ほか]
巻号頁・発行日
vol.上, 1874

1 0 0 0 OA 宇宙の話

著者
浅野利三郎 著
出版者
世界思潮研究会
巻号頁・発行日
1922
著者
笠尾 敦司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.221-228, 1995-02-25
被引用文献数
12

画像の加工を目的とした画像編集作業を行う前に,加工すべき領域を指定しやすくするために画像を絵柄に応じた小さな領域に分割しておくことは有益である.その技術として領域分割アルゴリズムの利用が考えられる.しかし,画像編集で扱う画像は非常に大きいため,既存のK-平均アルゴリズムを画像編集の前処理に応用すると,大きな作業メモリと極端に長い処理時間が必要になる.そこで,大きな画像を小方形領域に分割して処理を進める分割K-平均アルゴリズムを開発した.小方形領域の境界で生じる分割領域のつながりの悪さを解消するため,小方形領域の間に境界領域を設け,既に分割し終わった境界領域の分割結果と,分割領域の情報を記録した分割領域テーブルを参考にし,K-平均アルゴリズムで分割処理を進める手法を開発した.本分割K-平均アルゴリズムを利用することで,少ない作業メモリで高速に領域分割処理を実行できるようになった.
著者
加藤 克紀
出版者
日本動物心理学会
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.11-18, 2006-06-25

ICR雄マウスにおいて,離乳後5-6週間の社会的隔離がオープンフィールド行動に及ぼす影響を直接観察法を用いて検討した。10分間のオープンフィールドテストにおいて隔離飼育個体と集団飼育個体は類似した行動変化を示したが,2つの行動成分,すなわち伸展と毛づくろいについては異なっていた。隔離飼育個体の方が最初の4分間の伸展の減少が有意に遅く,また隔離飼育個体でのみ最後の4分間に毛づくろいの有意な増加が認められた。以上の結果は,若齢期における社会的経験の剥奪が新奇環境における不安やストレス反応を強め,慣れを抑制する可能性を示唆した。

1 0 0 0 OA 訓蒙天文略論

著者
テート 著
出版者
島村利助
巻号頁・発行日
1876
著者
穴吹 雅敏 安原 和宏 平田 弘志
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要. 電子情報学部 (ISSN:13472666)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.27-32, 2003-03-31

In various operating of a crane, the fixed coefficient controller is not suitable to obtain the good control performance, because of the crane characteristic fluctuates by change of the suspended rope length and the suspended load. In case of the rotational crane, moreover, we also must be consider the effect of corrugation angle in order to acquire sufficient performance. In this paper, we propose a strategy of control for the rotational crane using variable pole assignment method in which closed loop poles of control system becomes fixed values for the change of the rope length, the change of the corrugation angle and the change of the load. The effectiveness of proposed control system is confirmed by the computer simulation, in addition, it was also confirmed from the experiment on anti-sway control of actual rotational crane.
著者
鈴木 洋子 星野 純子 堀 容子 長澤 伸江 前川 厚子 近藤 高明 榊原 久孝 岡本 和士
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.168-177, 2009 (Released:2011-05-26)
参考文献数
22

We investigated the relationship between the caregiver's meal and their fatigue by an analysis with a semi-quantitative food frequency questionnaire completed by the main caregiver. The 90 caregivers were 25 men and 65 women aged 20–80 years. They took care of patients at home who required more than level 3 care or who suffered from cognitive dysfunction. Adjusted for sex and age, neither the intake of grain nor of fish and meat, which were the main food groups in respective grain meals and fish and meat meals, was significantly correlated with the caregiver's perception of fatigue. On the other hand, the correlation between caregiver's fatigue and the intake of bean and seaweed food groups was significant (p < 0.05) or non-significant (p < 0.1). Elucidation of the most appropriate type of food for the principal meal will be necessary to minimize the perception of fatigue by the caregiver.
著者
土橋 ルミ子 内海 文子
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.338-342, 2008 (Released:2009-02-16)
参考文献数
6
被引用文献数
5 4 8

本研究では,長崎県内の設置主体の異なる3施設の看護師590名を対象に,標準予防策における知識・態度・実践に関する質問紙調査を実施した.標準予防策における知識・態度・実践のレベルおよび関連性,さらに基本的属性ごとに分析を行った.   その結果,知識得点—態度得点(rs=0.17, p<0.01),知識得点—実践得点(rs=0.057, p>0.05)には関連がなかった.態度得点—実践得点(rs=0.412, p<0.01)には関連性があり,態度は実践に結びつく重要な因子であると考えられる.看護師の標準予防策における知識得点は,平均値8.9(SD1.5)であった.実践得点は,中央値(25~75パーセンタイル値) 84.5(78~91)で,態度得点92(87~97)に比べ低かった.知識や態度を身につけていても,実践に結びついていないと考えられる.基本的属性による分析では,看護師経験年数や年齢が増すごとに,態度,実践得点は優れており(p<0.01),経験年数や年齢に応じた教育・訓練が効果的であると考えられる.また,副看護師長や感染管理に関する委員会に所属している看護師では,態度・実践得点が高く(p<0.01),職位や委員会の所属が標準予防策の知識・態度・実践に影響を及ぼすと考えられる.研修会に参加している看護師は,知識・態度・実践得点が高く(p<0.01)教育の重要性が示唆された.
著者
高橋 阿貴 加藤 克紀 牧野 順四郎
出版者
日本動物心理学会
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.73-85, 2004-12-25
被引用文献数
3

本研究では,高・低活動系マウスとその基礎集団であるICR,そして5系統の近交系マウス(BALB,C3H,CBA,DBA,C57BL,ICR)のオープンフィールド行動について検討した。高・低活動系は,他の近交系と比較しても,十分に高活動あるいは低活動であったが,脱糞数には差がなかった。11種の行動項目に基づく行動観察データに主成分分析を適用した結果,4つの主成分が得られ,それらにより全体分散の64%が説明された。第1,第2主成分に基づいて系統比較を行ったところ,オープンフィールド行動の時間的変化には,遺伝的背景の異なる4つの側面(初期値,テスト前半と後半の行動変化,終了値)がある可能性が示唆された。高・低活動系は第1主成分については対照的であったが,第2主成分についてはよく似ており,活動量や脱糞数が大きく異なるBALBとC57BLにおいても同様の傾向が認められたことから,第2主成分はいわゆる「活動性」や「情動反応性」とは独立した特性を示しているようであった。また,高活動系のオープンフィールド行動は基礎集団であるICRとほとんど違いがなく,選択交配による遺伝的変異は主に低活動系において生じたことが明らかとなった。
著者
吉岡 和晃
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究において申請者らは、発生期・生後の生理的および病的(虚血、腫瘍)血管新生ならびに血管恒常性維持にクラスII型PI3K-C2αが重要な役割を果たすことを明らかにした。内皮細胞においてC2αをノックダウンすると、エンドソーム輸送の障害、VE-カドヘリンの配送異常が引き起こされた。C2αヘテロ欠損マウスでは、アンジオテンシンII投与に対する解離性大動脈瘤形成の発症率上昇が見られた。以上のことから、C2αは血管内皮細胞において、小胞輸送の制御を介した物質輸送及びエンドソーム上でのシグナル伝達に必須であり、これらの作用により血管形成と血管の健全性維持に重要な役割を担うことが明らかになった。