著者
成田 真由美 川本 思心
出版者
科学技術コミュニケーション教育研究部門 : CoSTEP
雑誌
CoSTEP Report
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, 2022-04

北海道では、過去に「研究のため」と称して大量のアイヌ遺骨を、アイヌの方々が管理する墓地から発掘・収集することを容認する社会的な環境があった。差別と偏見に抑圧されたアイヌ民族は、1970年代から一部のアイヌの方々が中心になり、自らのアイデンティティを確立しようとする「アイヌ民族活動」を展開する。しかし、現在も姿を変えて差別や偏見は残っていると言わざるを得ない。私は、CoSTEP研修科に所属し、アイヌ遺骨を巡る諸問題に関して関係者へのインタビューを通じて、過去の研究が現在にもたらした「負の側面」に、それぞれの立場で、どのように向き合っているのか伺うことにした(成田・川本2020;2021)。本稿はアイヌ遺骨問題に関する関係者インタビューの第3弾となる(成田・川本2022a;2022b)。私にできることを探す第1歩とするために。このレポートでは、北海道に居住しているアイヌ民族を主な構成員とした公益社団法人北海道アイヌ協会(以下、「北海道アイヌ協会」)の事務局長を2015年に定年退職した竹内渉氏に行ったインタビューについて報告する。竹内氏は「アイヌ民族解放運動」を牽引したアイヌ解放同盟の結城庄司代表(1938-1983)の行動を間近に見ており、その思想も理解されている。また、竹内氏は非アイヌであるが、現在もアイヌ・コミュニティの一員として生活されており、非アイヌがアイヌの抱える問題の解決にどのように協働できるか、または求められるものは何かなどもお伺いした。まず第1章でインタビューおよび公開までの概要を説明した。続く第2章では、インタビューの概要を記載した。そして第3章ではインタビューの詳細を大まかな内容ごとに節に分けて掲載した。第4章ではインタビューで触れた事例や団体の概要を補記した。
著者
大槻 久
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.4-14, 2019-12-20 (Released:2020-04-08)
参考文献数
18

ヒトが地球上でこれほどまでに繁栄するに至った理由の一つは,ヒトが高い社会性を持ち協力を達成してきたからだと考えられている.ではヒトを一つの生物種と捉えた時,協力の進化を促した要因とは何だったのだろうか? そして他の生物種との違いは何だったのだろうか? 本稿では前半で生物一般における協力の姿を概説し,後半では人類史を振り返ることでヒトの協力の進化的起源について現段階で知られていることを解説したい.