著者
小口 彦太
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
vol.32, pp.1-48, 2022-03-15

1990 年代に入るや,鄧小平の「南巡講話」を突破口にして,中国の市場経済が本格的に始動し始め,これと符節を合わせて統一契約法が1999 年に制定された。この法律は中国内の市場経済を媒介するための基本法としてだけでなく,国内市場と国外市場を繋ぐ[接軌=レールを繋ぐ]ことを目的として制定されたものであり,したがって立法時にあって最新の国際的契約立法・思想を参照したきわめて先進的契約法であった。しかし,この法は2020 年の民法典の編纂にともない,その法典の中の一編として組み込まれることになった。しかし,そのことは統一契約法の諸規定がそのまま機械的に民法典の中に移し替えられたことを意味しない。統一契約法中の7ヵ条が削除され,26ヵ条が新設され,ほぼ無修正のまま民法典に継承された条文は僅か21.7%に止まった。このことは,統一契約法から民法典契約編への移行がきわめて大掛かりな作業であったことを意味している。そして,注目すべきことは,民法典編纂を契機として本格的注釈書が刊行されたことである。本稿は,民法典編纂に伴う「契約法」から「契約編」への条文の改変の在り様を逐条的に示し,あわせて法解釈論上興味あると思われる条文につき王利明主編『中国民法典釈評』合同編通則およびその他の注釈を【注記】の形で書き込んだものである。もとより本稿での注記はきわめて限られたものであり,今後これを拡充すると同時に,各条文の解釈に関する学説と裁判例の渉猟に努めたい。こうした作業を行う目的は二点あり,その一は,中国ビジネスに携わっている実務者にできるだけ正確な中国契約法の情報を提供することであり,その二は,比較法的関心であり,中国法と日本法の条文上および解釈論上の「ズレ」に着目して,何故このような「ズレ」が生ずるのか,その社会的要因は何なのかという問いを究明することである。
著者
尾関 日向 酒向 慎司
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:21888752)
巻号頁・発行日
vol.2021-MUS-132, no.23, pp.1-5, 2021-09-09

ポピュラー音楽の制作では,マスタリングの際に曲の音量レベルを過剰に高めようとする傾向がみられる.しかし,このようにして作られたダイナミクスの小さな曲は,近年のリスニングスタイルに適していないことが多いと考えられる.そこで本研究では,ラウドなポピュラー楽曲のスペクトログラムからマスタリング前のラウドネスを推定することで,ダイナミクスの復元を目的とする.
著者
庄司 ユリ子
出版者
相愛女子短期大学
雑誌
相愛女子短期大学研究論集 (ISSN:09103546)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.107-127, 1989-03
著者
友田 孝興
出版者
大谷学会
雑誌
大谷学報 = THE OTANI GAKUHO (ISSN:02876027)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.p28-39, 1980-11
著者
粂川 定一 S. Kumekawa
雑誌
西京大學學術報告. 人文 = The scientific reports of Saikyo University. Humanistic science
巻号頁・発行日
vol.2, pp.27-43, 1952-12-20

「玉梓の」は「使」及び「妹」の枕詞として用ゐられ,時として「人」や「言(こと)」の上にも現はれる。併し「使」や「妹」にかかる理由に就いてはまだ定説がないし,「人」や「言」と接する場合は枕詞ではなくて,「使」の代語であると見るのが現状である。よつて「玉梓」の語義を探り,「使」や「妹」にかかる理由を考へ,更に「人」や「言」との關係に就いても觸れてみたいと思ふ。
著者
片岡 修 長岡 拓也 Osamu Kataoka Takuya Nagaoka
出版者
関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部
雑誌
研究論集 = Journal of Inquiry and Research (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.69-88, 2015-03

今夏の調査に基づき、(1)確認したシャウテレウル王朝期の遺跡を検討し、(2)ナン・マドール遺跡の調査成果とユネスコ世界文化遺産登録申請の進捗状況を紹介し、(3)今後の課題を明確にした。 ナン・マドール遺跡に隣接するテムエン島内で、3種の祭祀遺構を確認した。テムエン島だけでなくポーンペイ島各地に築かれた同類の遺構との比較研究から、ナン・マドールを基盤にポーンペイ全島を統一したシャウテレウル王朝の支配構造を理解する上で重要な考古学資料となった。 ナン・マドール遺跡については、ユネスコ世界文化遺産登録のために実施した2011年の現状調査に始まり、その後、現地政府の関係機関、土地所有者、観光や環境や文化財関連の専門家らによるワークショップが開催されてきた。2015年2月の申請に向けて書類作成のための協同作業が進行中である。本調査の採集情報が申請書の基礎資料となることは確実である。
著者
中島 恭子 Burke-Gaffney Brian
出版者
長崎総合科学大学附属図書館運営委員会
雑誌
長崎総合科学大学紀要 = Bulletin of the Nagasaki Institute of Applied Science (ISSN:24239976)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.65-76, 2017-02-03

In October 1860, little more than a year after the opening of Japan’s doors in the wake of the Ansei Five-Power Treaties, Nagasaki British Consul George S. Morrison engaged Swiss photographer Pierre Rossier to take several photographs of Nagasaki Harbor, including the proposed site of the Nagasaki Foreign Settlement. The first taken in Japan, the panoramic photographs provide invaluable insights into the scenery of Nagasaki as it emerged from the long period of national isolation. This paper presents the photographs and the entire letter sent by Morrison to British authorities describing the scenes captured in the photographs. For the first time, it also provides a concise Japanese translation of the letter, a foothold for further research in the field.
著者
山下 奨
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 = JOURNAL OF ATOMI UNIVERSITY FACULTY OF MANAGEMENT (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
no.29, pp.81-92, 2020-01

連結会計または企業結合会計の基準設定においては、在外子会社の換算については言及されることはあまりなかった。本稿では、外貨建のれんの帰属をめぐる議論をもとに、のれんの帰属と連結基礎概念の関係等を検討している。外貨換算会計の先行研究においては、のれんが在外子会社の資産であれば決算日レートで換算、のれんが親会社の資産であれば取引日レートで換算という外貨換算会計固有の結びつきと、経済的単一体説によればのれんは子会社の資産、親会社説によればのれんは親会社の資産という連結会計における結びつきが暗黙裡に結合的に議論されており、外貨換算会計と連結会計の重なり合う領域において、議論が錯綜しているようにみられた。本稿では、後者の連結会計における結びつきについて、親会社説によっても子会社の資産との結びつきの可能性があることを示している。さらに、親会社の資産とする場合には、非支配株主に帰属するのれんを認識しようとする全部のれん方式と矛盾があるように考えられること、のれんを子会社の資産とすることは、経済的単一体説から導かれるとされる全部のれん方式とも整合的であることを指摘している。のれんが子会社の資産であることと整合的な他の会計処理として、プッシュダウン会計を示している。
著者
鈴木 由美 小川 久貴子
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.74-88, 2018-03-31

目的:国内の医療施設に勤務する助産師の就業継続に影響する要因を抽出し,研究の動向と現状を把握し,今後の課題を検討する.方法:医学中央雑誌WEB 版にて「助産師」「就業継続」の文献検索.結果:58 件が抽出された.内容分析をした結果,衛生要因,院内助産・助産師外来および産科混合病棟の外的要因,帰属感,年齢,経験,ワークライフバランス,アイデンティティなどの内的要因で構成されていた.考察:衛生要因は職務満足には直接影響しないが,人間関係は就業継続に影響する.院内助産など管理者や医師との人的環境も影響する.中堅では職務上の役割荷重,ライフイベント等による過重負荷があるが,助産師においては出産,育児はキャリアとして捉えられる.妊産婦などとの関わりから施設への帰属感が生まれるのも他の看護職とは異なる.結論:医師,管理者との協働も含めて人的環境が就業継続への影響要因となっていた.研究動向として職務満足度が高いベテラン群対象の研究が少ない.