著者
栗原 房江
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.906-910, 2016-11-25

はじめに 2001年7月,保健師助産師看護師法(以下,保助看法)における欠格事由が,絶対的から相対的「心身の障害により,保健師,助産師,看護師又は准看護師の業務を適正に行うことができない者として,厚生労働省令で定めるもの」へと改正されました。同法において心身の障害分類や程度は明記されていませんが,保助看法施行規則第一章 免許 第一条にて「視覚,聴覚,音声若しくは言語機能又は精神の機能の障害」と特定されています。これらは,主に保健師・助産師・看護師国家試験合格後の免許申請時に提出する診断書において記載を求められます。 2001年の改正以後,該当者の免許付与数は公開されておらず,長年,障害者欠格条項をなくす会および当事者により,公開が要望されてきました。その結果,2016年7月,過去3年分の免許付与件数の公開に至りました。また,2014年,当該診断書の様式が改訂されています。 日々学生に接する看護教員に,より深い理解を期待し,今回の免許付与件数公開をめぐる状況について解説します。
著者
鄭 柄貴 松尾 正文 芦田 雅士 大橋 明子 市橋 正光
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.773-775, 2003-08-01

19歳,女性.歯科にて抜歯後ショック症状があった.抜歯時に消毒に用いたイソジンのスクラッチテストが陽性であり,ポリビニルピロリドン(PVP)のスクラッチテストも100倍希釈まで陽性であった.数名の健常人では陰性であり,PVPによるⅠ型アレルギーと診断した.イソジン®の有効成分であるポビドンヨードはヨウ素とPVP より構成されている.PVPは安定,可溶,粘稠などの目的のために多くの製品に含まれる.とりわけ眼,口腔内など吸収が良く症状が誘発されやすい部位に用いる医薬品が多いので注意が必要である.
著者
市橋 則明
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.881, 2005-09-10

開運動連鎖(open kinetic chain;OKC)は,手や足を床面から離した非荷重位での運動として,閉運動連鎖(closed kinetic chain;CKC)は,手や足を床面に付けた荷重位での運動として使われることが多い. 具体的には,歩行中の遊脚相はOKCであり,立脚相はCKCである.また,ボールを蹴る足の動作はOKCであり,支持足の動作はCKCである.上肢では,手を振る動作はOKCであり,腕立て伏せはCKCである.
著者
篠原 正一 田中 亨
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1321-1323, 1963-10-20

第4中足骨の発育障害を基調とししばしば趾骨ことに基節骨の短縮を伴なう第4趾の変形として記載されている第4趾短縮症の1例を神中式手術を行ない治癒せしめたので報告する.
著者
山本 憲明 加藤 良枝
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.133-137, 1996-02-15

外傷性の眼窩先端症候群の1例を報告した。症例は59歳の男性で,2mの高さから転落して顔面を打撲し,2日後眼科に紹介された。初診時の左視力は光覚弁で,瞳孔は散大,眼瞼は下垂し眼球運動は全方向に高度に制限されていた。CT検査により蝶形骨大翼の単独骨折が判明した。受傷2日後から,副腎皮質ステロイド薬(ステロイド)のパルス療法を開始し,4日後に前頭開頭視神経管開放術が行われた。術後,左角膜の知覚低下および顔面の知覚異常が確認され眼窩先端症候群と診断された。1年後,視力は0.6に改善し,角膜の知覚低下は消失し顔面の知覚異常もほぼ消失。眼球運動も正常近くまで改善し,良好な予後を示した。
著者
堤 修一
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.683-693, 1970-05-15

I.新しい色ならべ法 色覚検査の理論的な方法は,色空間,色立体全般にわたる色覚異常の状態,主に形と程度を正しくつかまえていなければならない。 その検査結果から,たやすくその人の色彩判別能力,色彩作業能力がわかり,それをもとに,その能力にふさわしい適性職業が選ばれなければならない。
著者
中江 文
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.725-732, 2021-07-01

はじめに筆者が麻酔の臨床を学んだ当時,プロポフォールは眠らせる薬,つまり鎮静のための薬,フェンタニルは痛みをとる薬,つまり鎮痛のための薬と教わった。だから,麻酔中は鎮静度が足りないのか鎮痛が足りないのかを,血圧や心拍数といった限られたモニター上の数値から想像し,それぞれの薬の投与量を調節してきた。今思えば,そこに確固たる根拠があったわけではなく,その時一緒に仕事をするベテラン麻酔科医の嗜好に左右されていた。ある医師は「もっと寝かせないとだめだろう!」と言い,ある医師は「これは,侵害刺激がブロックできていない状態なので痛み止めだ!」と,それぞれの持論を展開していた。ここで不思議なのは,どちらのやり方を選択しても,それなりのゴールに到達できたということである。 なぜだろう?
著者
水谷 光 藤井 倫太郎 内田 恵 明智 龍男 山本 英一郎 松岡 豊
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.657-669, 2021-07-01

今月は,手術室でどう麻酔するかではなく,外来での術前診察について考えてみたい。麻酔科診療における術前診察の重要性は,改めて述べるまでもない。身体面だけではなく,精神的もしくは心理的な困難をもつ患者も少なからずいる。そもそも,手術前の患者は誰もが不安を抱えている。われわれ麻酔科医の言動次第で患者の不安をさらに膨らませてしまうかもしれないし,うまく対応すれば患者の不安を和らげることだってできるかもしれない。今日の術前診察にこのような患者が来たら,読者はどのように診察を進めるだろうか? 一緒に考えていただきたい。
著者
嶋 聡子 磯田 憲一 水谷 仁
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.145-147, 2005-04-01

要約 近年,身のまわりの化学物質の種類の増加やオフィス,住宅における建材の変化,気密性の増強などに伴い,種々の症状を訴える人が増加し社会問題となっている.これらの病態に対して化学物質過敏症(multiple chemical sensitivity;MCS)という概念が提唱され,基礎および臨床面からその対応が迫られている.MCSの最大の原因物質としてホルムアルデヒド(FA)が問題視されているが1),本稿では多量の新製品パーソナルコンピュータ(PC)を設置した室内で新たにアレルギー様症状を呈した1例を提示する.そして,FA室内濃度の測定結果を踏まえ,PCから排出されたFAと関係すると考えられたため,新たにPCアレルギーという概念を提唱するとともに,今後FAも含めMCSのさらなる解明とPCを含めた環境基準の設定を期待する.
著者
濱田 一壽 山中 芳 内山 善康 三笠 元彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.986-989, 2015-10-25

はじめに リバース型人工肩関節の原型は,腱板機能障害に伴って肩関節が破壊された症例に対して1980年代にフランスで開発された.その後,改良が加えられ2002年から欧米で,またアジア諸国では韓国(2006年認可),中国(2008年認可),香港(2011年認可)で使用されている.その術後成績は近年良好になり,術後10年のsurvival rateは65歳未満の症例で76%2),65歳以上を加えると89%と安定した成績が得られている3).わが国では,髙岸憲二委員長をはじめ日本整形外科学会リバース型人工肩関節ガイドライン策定委員会の先生方のご努力で,厚生労働省からのさまざまな要求をクリアして,2014年4月からようやく使用できるようになった.この手術は日本整形外科学会が作成したガイドラインに沿って行われており16),以下にこのガイドラインから絶対的適応を抜粋する.
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.82-83, 1971-07-01

日本医師会(武見太郎会長・会員8万7000人)は,政府の医療行政を不満として7月1日から‘保険医総辞退’に突入した.医師会は今回の総辞退の理由としで,昭和36年に政府が約束した医療保険の抜本改正が実現されていないこと,政府の低医療費政策,関係審議会の無能力などをあげている. 一方,政府は7月の内閣改造で斎藤昇氏を新厚相にたて精力的に事態の収拾に努めているが,7月13,20,27日の斎藤・武見会談と,28日の佐藤首相・斎藤厚相・武見会長の三者会談で事態の収拾策がまとまり,保険医総辞退問題は解決した.今後は中医協の場などで日本の医療ビジョンの具体策が審譲され,国民の合意が求められることになる.
著者
新井 郷子 宮崎 徹
出版者
金原一郎記念医学医療振興財団
巻号頁・発行日
pp.148-154, 2019-04-15

Apoptosis inhibitor of macrophage(AIM,遺伝子名CD5L)は,体内を循環する血中タンパク質であり,これまでに,肥満や脂肪肝の抑制機能や,近年では,急性腎障害や真菌性腹膜炎などの組織障害を伴う疾患の治癒を促進することが見いだされている。血中でAIMはそのほとんどが免疫グロブリンM(immunoglobulin M;IgM)に結合して安定化しており,AIMの体内量や活性の調節はIgMによるところが大きい。健常時はIgMに結合しているAIMは,特定の疾患時にIgMから解離することで可動性が増すと共に,活性状態が最大化される。すなわち,IgMは抗体としての役割だけでなく,AIMのキャリアとしての重要な任務を果たしているといえる。しかしながら,AIMがどのような結合様式でIgMと複合体を形成し,そして如何なるメカニズムで解離が誘導されるのか,その調節機構については未知であった。今回筆者らは,AIMとIgMの結合について,両者の複合体を電子顕微鏡で解析し,構造を視覚的に明らかにすることに成功した。この発見は,AIMとIgMの複合体形成の機序だけでなく,IgMの構造そのものに関しても免疫学の教科書を書き換えるほどの発見をもたらした。本稿では,AIMのIgMとの結合・解離に関する新しい知見をベースに,これまでに蓄積された,疾患におけるAIMの機能や,治療・診断応用における可能性を紹介する。
著者
朝倉 京子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1120-1125, 2005-11-01

「ケア/ケアリング」概念は,多くの看護理論で採用され,支持を集めてきました. しかし,“女性性”を含意するこの概念にからめとられてしまうことは,看護師の専門職性の否定につながりかねません.この危機の打開に向けた視点を紹介します. はじめに 看護の領域において,「ケア」という言葉はどのような意味で使われているだろうか. 筆者が約10年前に勤務していた病棟では,「ケア」は単に身体の保清にかかわる援助行為という意味で使われていた.たとえば,看護師同士で「今日のケア,終わった?」という会話が頻繁に交わされていたのであるが,それは「今日のあなたの受け持ち患者に予定していた保清の援助は終わったか」という意味を示していた. 看護学においては,1980年代以降,ケア/ケアリング概念を中心に看護現象を説明する理論が多く出版され,ケア/ケアリングは,看護学におけるひとつのブームとなった.たとえば,これらの理論には,ワトソン1~4),ベナーとルーベル5),レイニンガー6),ローチ7)などの理論がある.これらの理論では,ケア/ケアリング概念は,人間の基本的な存在様式との意味合いを含めながら,気遣い,気配り,配慮,愛,あるいは思いやりなどの言葉と互換的に用いられている.このように,現代看護学におけるケア/ケアリング概念とは,哲学的な意味合いをもち,その内包が規定されないままの多義的な概念として普及している. 以上のようなケア/ケアリング概念を読み解く鍵のひとつに,ジェンダー概念があると筆者は考えている. 本稿では,まずこのジェンダー概念について理解したうえで,現代看護学におけるケア/ケアリング概念の理論的背景についてジェンダーの視点から分析し,看護師に対するケア/ケアリングの要請の危うさについて考察したい.さらに,ジェンダー概念を導入することによって,看護の実践領域および看護学をどのように変革できるのか,その可能性を探りたいと思う.
著者
稲津 美穂子 四津 里英 玉木 毅 的野 多加志 加藤 康幸 林 利彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.988-991, 2015-12-01

要約 21歳,女性.東アフリカ・ウガンダ共和国に2週間滞在した.帰国から10日後,右母趾爪郭の疼痛,皮疹に気づいた.右母趾爪郭に径5mm大の緊満性の黄白調小結節が1か所あり,粟粒大の黒色点が透見された.臨床所見,スナノミ症の流行地への渡航歴より,スナノミ症を疑い摘出した.実体顕微鏡にて虫体,虫卵の充満した卵巣が確認され,虫体はTunga penetransと同定された.当院では,2009年10月〜2013年10月の4年間に,自験例を含め計6例のスナノミ症患者が受診している.グローバル化に伴い,日本でも今後症例数の増加が予想される.
著者
鴫田 賢次郎 青山 大輝
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.784-785, 2021-05-24

大腸憩室出血の部位同定 大腸憩室出血の内視鏡診断には,SRH(stigmata of recent hemorrhage)を捉えることが必要である(Fig.1).SRHとは活動性出血,非出血性露出血管,除去によって活動性出血もしくは露出血管を伴う凝血塊付着などの所見を指す.憩室出血は間欠的な動脈出血を来すという疾患特性から,特に自然止血後に膨大な数の憩室の中から責任憩室を見つけ出すのは容易ではない.SRH同定率を上げるためには,内視鏡検査を行うタイミングや検査時の工夫,経口洗浄剤による前処置,造影CT併用など個々のケースに見合った選択をする必要がある.
著者
出澤 真理
出版者
南江堂
巻号頁・発行日
pp.1311-1314, 2019-06-01

Summary▪Muse細胞は腫瘍性をもたない生体内多能性修復幹細胞であり,骨髄,末梢血,各臓器の結合組織に分布し,組織恒常性に関わっている.▪点滴投与で傷害部位に集積するので,外科的手術による投与は不要である.▪傷害組織に集積すると,同時多発的に組織を構成する複数の細胞種に分化することで修復する.「場の論理」に応じて分化するので,投与前の分化誘導を必要としない.▪他家Muse細胞の利用においてヒト白血球抗原(HLA)適合や長期間にわたる免疫抑制薬投与を必要としない.脳梗塞,心筋梗塞,表皮水疱症で「他家Muse細胞の点滴による治験」が進められている.
著者
竹中 裕人 神谷 光広 杉浦 英志 西浜 かすり 鈴木 惇也 伊藤 敦貴 佐橋 魁 花村 俊太朗
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.929-936, 2021-07-25

背景:腰部脊柱管狭窄症(lumbar spinal stenosis:LSS)術後の下肢しびれ(lower leg numbness)と歩行能力の関連を明らかにすること. 対象と方法:LSS術後77例を後ろ向きに調査した.術後6分間歩行距離(6 minute walk distance:6MWD)に術後下肢しびれが関連するかを多変量解析で検討した. 結果:術後6MWDと有意な関連因子は,年齢,術式,術前硬膜管面積最小値,術前6MWDであったが,術後下肢しびれの残存は有意な関連因子ではなかった. まとめ:本研究の結果は,LSS術前に術後経過を説明する際や予後予測に役立ち,術前歩行能力向上の必要性を示唆している.
著者
ツネカズ ユゲ
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.635-644, 1961-05-15

1.ボゥスイ〜ブンピツロンノハッテンノケィカ ボゥスイガモゥヨゥタイノブンピツニヨッテツクラレルトイゥカンガエハヒジョゥニフルクカラアッタ23)。Boucheron (1883)ハモウヨウタイヲゼンゴノ2ツノブブンニワケ,ゼンブハボゥスイヲ,コゥブハショゥシタイヲブンピツスルトシタ。Treacher—Collins (1890),Nicati (1890),Mawas(1910)ナド,イズレモブンピツニヨルボゥスイサンセィノカンガエヲシジシテイル。Mawasハブンピツカリユゥヲサエミイダシタトイゥ。ミトコンドリアガセンサイホゥノブンピツキノゥニフカイカンケィガアルトカンガエラレ,マタGolgiブッシツ(Golgi〜シナイモウソウチ)トサイホウノブンピツキノゥトノカンレンガモンダイニサレルニオヨビ,コノホゥメンカラモモゥヨゥタイノボゥスイブンピツキノウガケンキュウセラレタ。Seidel (1918—1920) Carrere (1923),Albrich (1923),Stella (1923),D'amico (1928) Farina (1928),Rotschin (1929)ナドハミトコンドリアノモゥヨウタイノブンピツキノウニタイスルカンヨヲミトメ,モウヨゥタイヲOcular—glandトミナシタ。サイホゥナイクゥホゥノピロカルピンニヨルゾゥカ(Seidel),ゼンボウセンシニヨルソノゾゥリョゥ(Carrere)モカンサツサレテイル。
著者
ツネカズ ユゲ
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.721-732, 1961-06-15

8.カクサンノボゥスイサンセイニタイスルカンヨ ボウスイハ,カクマク,スイショウタイノホカニコウサイオヨビモウヨウタイニヨッテトリマカレテイル。 コゥサイデハボゥスイハカコゥヲトォシテチョクセツニコウサイノジッシツニセッシ,モウヨウタイデハ,コトニモゥヨゥタイトッキデハ,ジョゥヒノマシタニタクサンノケッカンガブンプシテイテチョウドジンゾゥノシキュウタイガウスイナイヒサイホウヲヘダテテハイセツカンクゥニセッシテイルノトニテイル。シカシシキソジョウヒトケッカントノアイダニハウスイケッゴウシキ(ウサギ)マタハガイキヨウカイマク(ヒト)ガアル(Holmbe—rg13)。
著者
広石 拓司
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.78-82, 2021-01-15

新型コロナウイルス感染予防のために、地域での活動やイベントの多くが中止や延期になったことは、「地域のつながり」や「高齢者の健康」などに影響を与えている。筆者は、東京都の地域包括ケアシステムにおける生活支援コーディネーター向けの研修や活動支援、千代田区など都心部のコミュニティ醸成に携わっており、数多くの地域づくりの現場の声を聴いてきた。それを踏まえて、COVID-19が「地域」に与えた影響と今後のあり方と、そのなかで専門職に求められることの一考察を行いたい。