著者
五味 玲
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.505-506, 2014-06-10

手術は弓を引くことに似る. 弓道の基本動作が「八節」である.「足踏み」「胴造り」「弓構え(ゆがまえ)」「打起し」「引分け」「会(かい)」「離れ」「残心」である. これを破裂脳動脈瘤の頚部クリッピング術にたとえてみたい.
著者
山本 祐
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.700, 2021-06-15

患者:66歳、女性。朝食後に休憩していたところ、突然右手の指に痛みが走った。手を見てみると右第3指全体が真紫に変色していたため、不安になり受診した。3週間前にも同様のエピソードがあったが、その際は第3指根部掌側のみが紫になり、1週間ほどで自然に軽快した。既往歴に特記すべきことはない。内服薬・喫煙歴はなし。寒い所で手指の色調が変化することはない。右第3指は全体に紫斑を認め、軽度腫脹している(図1)。手指冷感はなく、橈骨動脈拍動は良好に触知する。血液検査で血小板数は基準範囲内であり、凝固異常も認めない。
著者
鈴木 秀典
出版者
金原一郎記念医学医療振興財団
巻号頁・発行日
pp.452-453, 2019-10-15

大塚正徳博士は,神経伝達物質研究の進歩に大きく貢献した。特にサブスタンスPに関する研究は,ペプチド性物質が哺乳類の神経伝達物質であることを初めて明らかにした画期的な業績である。この研究はわが国でなされ,国内の神経科学研究の発展につながった。ファミリーペプチドの発見や受容体のクローニングなど,サブスタンスPに関連する世界的な成果がわが国から発信されている。
著者
江川 清文
出版者
協和企画
巻号頁・発行日
pp.656, 2021-07-01

“みずいぼ”にみられる「軟属腫小体」「軟属腫反応」と比較的新しい概念(用語)である「BOTEサイン」について述べる.いずれも“みずいぼ”の病態に深く関わるもので,よりよい“みずいぼ”診療を目指すにあたり必要な知識である. “みずいぼ”は伝染性軟属腫の俗称で,ポックスウイルス科に属する伝染性軟属腫ウイルスの感染により生じる.中心臍窩を有する表面平滑な小丘疹を臨床的特徴とし,小児の体幹や四肢に多発することが多い.ピンセットで内容を圧出する“みずいぼとり”が治療の主なものであるが,本法が疼痛や出血を伴うことや,“みずいぼ”が基本的に自然治癒する疾患であることから,随伴症状に対する以外特段の治療なしで経過をみることもある.“みずいぼとり”では粥状物が圧出されるが,この中に含まれる多量のウイルスの直接・関接接触や自家接種が他者への感染伝搬や悪化(多発)の原因になる.
著者
兼森 良和
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.2317-2320, 2004-12-15

麻痺性兎眼に対して下眼瞼瞼板の水平短縮と下眼瞼形成術を同時に行うKuhnt-Szymanowski法では,高度の下眼瞼下垂と外反がある場合には修正が不十分である。その改善法として,筆者の考案した下眼瞼皮膚切開線を側頭部の外側上方まで延長して外側上方に引き上げ,下眼瞼前葉を眼窩外側縁骨膜にanchor sutureで固定する骨膜固定法(Kuhnt-Szymanowski変法)を4例に行い,奏効した。この方法は特別な材料を必要とせず,高度の下眼瞼下垂と外反がある麻痺性兎眼に対して有効である。
著者
岩田 敏
出版者
ヴァン メディカル
巻号頁・発行日
pp.9-16, 2021-03-10

新型コロナウイルスワクチンのうちファイザー社/ビオンテック社,モデルナ社,アストラゼネカ社,ジョンソン&ジョンソン社/ヤンセン社などのワクチンは既に海外で承認され,国内にも導入あるいは導入されようとしている。接種に当たっては,被接種者との十分なリスクコミュニケーションをとり,各施設や地域では安全・円滑に接種できる体制を確保した上で,適切な方法で筋肉内に接種する必要がある。いずれのワクチンも長期的な有効性・安全性については明らかでないことから,注意深いフォローアップが必要である。
著者
星野 豊
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.455-457, 2020-05-25

事例 実習受入先の病院では、4種混合、結核およびB型肝炎の予防接種を済ませていることが学生の受け入れの要件になっています。学生に接種状況を確認したところ、未接種の学生が数名いました。それぞれ理由を尋ねると、「病原体をあえて注射するなど拒絶する」「隠れた副反応が怖いので接種したくない」「自費での接種は経済的に厳しいので、感染リスクは自己責任で負う」「自分の信じる宗教でワクチンを禁止している」などと言って、接種を拒否しています。予防接種をしない場合、実習未履修となって卒業ができなくなります。学校としてどのように指導すべきでしょうか。
著者
竹内 翔子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.936-937, 2018-12-25

Research Question 妊娠中の会陰マッサージは,分娩時の会陰裂傷のリスクを減少させるのか,させないのか。 Answer 初産婦が妊娠34週以降に会陰マッサージを実施した場合,実施しなかった場合と比較して縫合が必要な会陰損傷や会陰切開のリスクが減少した。経産婦においては,会陰損傷のリスクは減少しなかったものの,会陰マッサージを実施したほうが産後3か月の時点での会陰部の痛みが少なかった。さらに1週間あたりの会陰マッサージの回数別で比較した結果,1.5回/週未満の場合のみ縫合が必要な会陰損傷や会陰切開のリスクが減少した。 このレビューの結論では,妊娠中の会陰マッサージは会陰損傷(特に会陰切開)のリスクの減少や会陰部の痛みに効果があり,女性の受け入れも良好であるため,利点や具体的な方法を妊娠中の女性に提供するべきとしている。
著者
諸星 成美 京極 真
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.273-280, 2021-06-15

要旨:本研究は,身体障害を有する地域在住高齢者の作業的挑戦の特性をクラス分類し,作業参加,抑うつ,人格特性との関連性を検証した.データ収集は,調査用紙を用いて対象者から回答を得た.分析は,記述統計量の算出,潜在クラス分析,多項ロジスティック回帰分析を実施した.結果,作業的挑戦には,肯定的な作業的挑戦,危うい作業的挑戦,否定的な作業的挑戦の3つの特性があることがわかった.そして,肯定的な作業的挑戦に影響を与える因子には,生産的活動やセルフ・ケアへの作業参加,抑うつの身体症状やポジティブ感情,協調性や勤勉性の人格特性があった.本研究により,作業的挑戦への介入のための解釈可能性が広がると考えられる.
著者
前田 耕太郎 花井 恒一 佐藤 美信 升森 宏次 小出 欽和 松岡 宏 勝野 秀稔 野呂 智仁 本多 克行 塩田 規帆 遠藤 智美 松岡 伸司
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1496-1499, 2011-11-20

【ポイント】 ◆フルニエ症候群は会陰部,外陰部に発生する激症壊死性感染症で,急速に進行する予後不良な疾患である. ◆多くは糖尿病やアルコール中毒などの合併症を持ち,肛門周囲膿瘍などの直腸肛門・泌尿器科疾患に起因する. ◆早期診断,早期の壊死部除去,十分な排膿,ドレナージ,適切な抗菌薬投与,栄養管理が必要である.
著者
津野田 雅敏
出版者
メジカルビュー社
巻号頁・発行日
pp.292-293, 2017-03-26

1.大動脈瘤の多くは無症状だが,大きくなると胸背部痛や腹痛などの症状が出現して最終的には破裂する。破裂リスクの予測因子として最も重要なのは瘤径(最大短径)であり,腹部大動脈で5.5cm以上,上行大動脈で6cm以上,下行大動脈で7cm以上になると破裂の危険性が高くなる2.症状が出現した段階では,すでに破裂の危険性が高まっている状態であり切迫破裂が疑われる。切迫破裂のCTサインとしてはhyperattenuatingcrescentsignなどが有名だが短期的な陽性適中率は必ずしも高くはなく,症状や瘤径,経時的な変化などを併せて診断することが重要である3.大動脈瘤破裂には一般的なfrankruptureと,慢性的な経過を示すことの多いcontainedruptureがある。典型的なfrankruptureではCT診断に迷うことは少ないが,特殊な破裂様式の場合には注意が必要である。慢性的な経過を示すcontainedruptureのCTサインとしてはdrapedaortasignがある
著者
宮﨑 景
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.820-825, 2020-05-10

Point◎スクリーニングはプロセスである.◎スクリーニングの評価としてWilson基準やFrame & Carlsonの基準が有名であるが,最近では潜在的な利益と害の大きさのバランスを比較する基準が推奨されている.◎スクリーニングの害として,スクリーニング検査による負担,偽陽性,陰性ラベリング効果,過剰診断とヒューマン・シールド,偶発的腫瘍について知っておくとよい.◎健診には定期健康診断,特定健康診査,一般健康診査があり,一方代表的な検診である癌検診は対策型癌検診と任意型癌検診に分けられる.◎人間ドックの多くの項目は,規定もなく任意に定められている.
著者
原田紗希 西田承平 小林亮 鈴木昭夫 伊藤善規
出版者
医薬ジャーナル社
巻号頁・発行日
pp.687-692, 2017-02-01

医療過誤の減少に向けてさまざまな取り組みが行われており,薬剤師はその職能を生かして医療安全に貢献することがさらに強く求められている。薬剤に関連する過誤(メディケーションエラー)は最も典型的な医療過誤であり,指示伝達ミス等のコミュニケーションエラーは過誤の主な発生原因の一つである。実際に岐阜大学医学部附属病院において発生したメディケーションエラーを解析したところ,インスリンスライディングスケール(SSI)に関連する過誤の多くに,指示伝達ミス等のコミュニケーションエラーが関与していた。そこでSSIに関連する過誤の減少を目指して,薬剤部,糖尿病代謝内科および医療安全管理室が協働で院内統一の指示記載様式(テンプレート)を作成した。本報告ではSSIの院内統一テンプレート導入までの経緯と導入後の効果について紹介する。
著者
清水 郁夫
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.635-636, 2019-04-10

診療背景 卒後5年目の糖尿病内科医が担当した症例.症例 75歳男性.
著者
吉岡 奈月 井上 瑶子 小島 隆浩 犬尾 千聡
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.392-397, 2019-05-25

はじめに 近年,新生児のスキンケア方法について,さまざまな方法が検討されている1−3)。アレルギー疾患のハイリスク群ではない一般集団の1カ月健診において,皮膚の異常所見を4割近く認めたこと3)や,新生児の皮膚ケアについて不安を抱いている母親が約3割いたこと4)が報告されており,新生児のスキンケア方法は改善が望まれる状況にある。しかし標準的なスキンケアの方法は定まっておらず,方法の選択は各施設に委ねられているのが現状である5)。 新生児の従来の一般的な沐浴方法は,児を片手で保持しながらもう一方の手で洗浄し,桶に汲んだお湯で石鹸を流すといった方法である6−9)。具体的には,まず沐浴槽にお湯をため児に沐浴布をかけ,頸部と臀部を保持し湯の中に入れる。仰臥位の姿勢を片手で保持し,もう片手に洗浄剤をつけて顔,頭髪,胸腹部,四肢の順に洗う。次に腹臥位の姿勢にし,背部を洗い,再度仰臥位にしたら陰部を洗う。最後に児を沐浴槽より持ち上げてかけ湯をするといった方法である。 新生児の沐浴では,頸部や腋窩などの皮膚の重なり合う部分は,汚れや石鹸成分が落ちにくく皮疹の原因となりやすいため十分に洗い流す必要があると言われている7)。しかし,従来の沐浴方法のように沐浴槽につかりながら洗浄する場合,片手で児を洗浄するため皮膚の重なり合う部分を丁寧に洗浄することは困難である。 また産後入院中の母親に対する調査では,沐浴方法について不安を感じる初産婦は33%,経産婦は25%であった10)。母親にとって従来の沐浴方法のように,片手で保持し,もう一方の手で洗浄する方法は容易ではない。沐浴指導内容を検討する際には,児の安全性や養育者にとって難しい手技ではないという視点も重要である。 この30年間のわが国の入浴に関する環境は大きく変化している。家庭のシャワーの普及率は1985年に70%,2005年にはほぼ100%となり11),どの家庭でも新生児の沐浴にシャワーを利用することが可能になった。かけ湯よりシャワーで洗浄剤を流す方が退院後の生活環境に類似しており,手順が少なく実施しやすいと考えられる。 アレルギー疾患のハイリスク児に対して保湿剤を毎日塗布することでアトピー性皮膚炎の症状出現率が有意に低下したことをHorimukaiら12),Simpsonら13)が相次いで報告した。またヨーロッパの正常新生児のスキンケアの勧告14)では,適切な組成の保湿剤は皮膚バリア機能を良好に保つため,一般集団の新生児に対しても保湿剤の塗布を推奨している。 以上より,養育者が不安なく丁寧に洗い,洗浄剤を十分に流し,保湿剤塗布をするスキンケアが,1カ月健診における皮膚状態に良好な影響を与えるのではないかと考えた。 A病院ではこのような背景を元に,2015年から児を寝かせた状態で両手を用いて洗い,洗浄成分をシャワーで流し,保湿剤塗布を行う沐浴指導内容に変更した。そこで,1カ月健診における皮膚異常の有症率を変更前と変更後で比較し検討した。
著者
志貴 美麗 遠藤 元宏 大江 真司
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.176-179, 2016-02-01

82歳女。数年前より限局皮膚硬化型強皮症に対してプレドニゾロン、抗血栓薬内服による加療中であった。2013年10月、右第1趾化膿性爪囲炎のため当科を初診し、側爪郭にコットンパッキングを施行し、抗菌薬の内服を開始したが徐々に潰瘍化し、周囲に紫斑が拡大したため、11月入院となった。採血にてCRP高値を認めたため、抗菌薬の内服を継続し、足趾の潰瘍にはトラフェルミンスプレーとアルプロスタジル、アルファデクス軟膏の外用、血管拡張剤の点滴を開始した。しかし、潰瘍は黒色化し、間質性肺炎の悪化、MRSA肺炎・心不全を併発し、12月に死亡した。
著者
和泉 徹 小幡 裕明 阿部 暁
出版者
メジカルビュー社
巻号頁・発行日
pp.552-557, 2020-06-09

フレイルを伴う傘寿者(80歳以上の超高齢者)のための心不全リハビリの適応・実際・成果・意義について概説する。独歩リハビリは,地域包括ケア社会における心不全傘寿者の地域連携を図る有力な方策である。
著者
屋宜 晃 設楽 哲也 岡本 牧人 佐野 肇 樋口 彰宏
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.955-959, 1987-11-20

I.はじめに インフルエンザワクチンは広範な接種が行われているにもかかわらず副作用の報告は少なく,とくにHAワクチンに変更してからは安全なワクチンといわれている。しかし稀ながら神経系の副作用の報告は散見され,とくに米国で多発したGuillain-Barré症候群の例は有名である1〜3)。最近われわれはインフルエンザワクチン接種後に生じた興味ある突発性難聴2症例を経験したので,若干の文献的考察も加え報告する。
著者
岩﨑 公平
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.511, 2002-06-01

●母なる地球 宇宙の無数にある惑星の中で,地球のように水のある惑星は数少ない.誰かの恋心と違って,水はあらゆる物質の中でも一番熱しにくく冷めにくい.水は優れた温度調節機能を持っている.地球表面の最高温度は40℃,最低温度は−30℃程度で温度差は高々70℃だ.比べて,お隣の水のほとんどない火星は最高が25℃,最低が−120℃と温度差は地球の2倍の145℃もある.母なる地球の海・湖・川の水,水蒸気は,体液だ.
著者
神田橋 條治
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.486-491, 1970-06-15

Ⅰ.まえがき 境界例患者の精神力動とその問題点については,他の論者によって述べられるところであろうし,また研究の歴史的発展についても詳細に述べられるであろうからここでは触れない。ただ,これまでのさまざまな研究で得られた結果を,治療,ことに精神療法という角度からまとめると,ほぼ次に述べる4つの点に要約できるであろうと考える。すなわち,1)境界例は,一般の神経症とは異なった重大な性格障害をもっている6)(自我歪曲)。いいかえれば,より早期の人格形成期に問題がある。2)そのため,精神療法に必要な,いわゆる治療同盟ができにくいし,また,しばしば激しい破壊的な行動化を起こしたり,精神病状態をあらわしたりする。3)したがって,一般の神経症の治療に用いられるような,自己の心的内界に対決させ洞察に導く技法は時に危険である。陽性感情転移を育てながら,現実指向的なアプローチを行なってゆくべきである。4)また,境界例の精神力動は思春期心性との関連を含んでいる。すなわち,一方に家庭からの分離,独立,他方に社会における自己の位置づけ,自己評価などの問題をもっており,これらが治療の中で重要な問題となる8)。 こうした結論がもたらされるに至った先人の治療的経験と理論的発展については,小此木7),河合2)によりすでに詳細に報告がなされているので,それを繰り返すことはさけて,ややちがった態度で,この特集のわたくしの役割にかかわってみようと考える。それは,「理論づけ,体系化したい」欲求を抑え,境界例患者の治療を試みてきた経験の中でのわたくしの主観的な「感じ」をできるだけありのままに述べてみることである。そうした試みをするのは,境界例の治療それ自体まだ発展の途上にあり,次の発展のためには,治療者と患者とのかかわりの場の中で動いている「何か」がとらえられねばならないと考えるからであり,また,境界例の治療においては,一見客観的な理論も,その中に治療者の逆転移を含んでいる場合が多く,外見の客観性が立派であればあるだけ,新しい発展を妨げる危険が大きいと「感じ」はじめているからである。したがって,これから,患者を語りながら同時にわたくし自身を語り,そこに新しい客観性のよりどころを求めたいと思うのである。