著者
モロジャコフ ワシ―リー
出版者
拓殖大学国際日本文化研究所
雑誌
拓殖大学国際日本文化研究 = Journal of the Research Institute for Global Japanese Studies (ISSN:24336904)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.59-74, 2018-03-30

本論文では、満州事変前後を中心に、日本大陸政策・植民政策に対するフランス知識人の見方を調査・分析する。列強の政府と政治エリートが、満州への日本の拡大・進出を「侵略」と批判した時、欧米の世論とメディアはほとんど全て反日になった。フランス政府も日本の政策を非難したが、知識人の一部、主に右翼評論家は、日本の行動を支持、弁護していた。本論文は主に、中国国内の「無秩序」とソビエト・ロシアの「赤い侵略」を非難する一方、日本を「秩序の代表」と見なしたフランス人政治評論家・法学者の著作を検討する。
著者
モロジャコフ ワシ―リー
出版者
拓殖大学国際日本文化研究所
雑誌
拓殖大学国際日本文化研究 = Journal of the Research Institute for Global Japanese Studies (ISSN:24336904)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.37-59, 2023-03-25

本稿の目的は、一九四〇年の日本の仏印(インドシナ)進駐政策に対するヴィシー政権(フランス)の主役たちの意見と立場、その相互関係と決定の過程を解明することにある。本稿では、「政治」よりも、むしろ「政治家」にフォーカスした。そして、本稿では主な資料として、外交文書や新聞・雑誌の記事よりも、むしろ政治家たち― フランス国主席兼首相アンリ・フィリップ・ペタン元帥(Henri-Philippe Pétain; 一八五六~一九五一年)、外務大臣ポール・ボドゥアン(Paul Baudouin; 一八九四~一九六四年)、植民地大臣であったアルベール・リヴィエール(Albert Rivière; 一八九一~一九五三年)、アンリ・レムリ(Henry Lémery; 一八七四~一九七二年)とシャルル・プラトン海軍小将(Charles Platon;一八八六~一九四四年)の三人、国防大臣マキシム・ウェイガン陸軍上級大将(Maxime Weygand; 一八六七~一九六五年)、極東艦隊指揮官のちインドシナ総督ジャン・ドクー海軍中将(Jean Decoux; 一八八四~一九六三年)―のステートメント、ノート、日記、回想録を採用した。彼らはそれぞれ一流の知識人として、自身の専門的、総合的知識と分析能力に基づいて事情を把握、分析して、様々な方針を提案し、決定した。
著者
難波 光義 岩倉 敏夫 西村 理明 赤澤 宏平 松久 宗英 渥美 義仁 佐藤 譲 山内 敏正 日本糖尿病学会―糖尿病治療に関連した重症低血糖の調査委員会―
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.826-842, 2017-12-30 (Released:2017-12-30)
参考文献数
34
被引用文献数
6

糖尿病に対する薬物治療の進歩の一方で,患者の高齢化などを背景とした低血糖リスクの増大が憂慮されている.このため,わが国の糖尿病実臨床における治療に関連した重症低血糖の調査を行った.日本糖尿病学会学術調査研究等倫理審査委員会の承認のもと,2015年7月に同学会認定教育施設631施設の研修責任者に対して調査への参加を依頼した.参加意思を表明した施設には,倫理審査の必要書類を送付し,各施設の倫理審査委員会での承認後,Web登録システム(症例データは匿名・非連結)を利用してデータ登録を依頼した.本調査研究は,同学会学術調査研究委員会の予算で行った.施設実態調査(施設データ)および,個々の症例から同意取得後に症例調査(症例データ)を実施した.重症低血糖の定義は,『自己のみでは対処できない低血糖症状があり,発症・発見・受診時の静脈血漿血糖値が60 mg/dL未満(毛細管全血50 mg/dL未満)が明らかにされていることが望ましい』とし,調査期間は2014年4月1日から2015年3月31日としたが,施設データは193施設から,症例データはそのうち113施設から総数798症例の登録があった.回答を得た193施設中,149施設(77.2 %)に救急部が併設されており,1施設あたりの同部への年間総救急搬送件数(中央値)は4962件,このうち重症低血糖は17.0件(0.34 %)をしめた.回答施設における重症低血糖による年間受診総数は2237人であり,1施設あたり6.5人であった.重症低血糖による年間入院総数は1171人で,1施設あたり4.0人であり,重症低血糖による年間受診数の52.3 %を占めていた.798例の症例データをまとめると,病型は1型240人,2型480人,その他78人,年齢は1型54.0(41.0-67.0)歳,2型77.0(68.0-83.0)歳であり,2型が有意に高齢で(P < 0.001),BMIは1型では21.3(18.9-24.0)kg/m2,2型では22.0(19.5-24.8)kg/m2で,2型の方が高値であった(P = 0.003).推算糸球体濾過量(eGFR)は1型73.3(53.5-91.1)mL/min/1.73 m2,2型50.6(31.8-71.1)mL/min/1.73 m2となり,2型の方が低値であった(P < 0.001).重症低血糖発生時点のHbA1cは全体で7.0(6.3-8.1)%,1型7.5(6.9-8.6)%,2型6.8(6.1-7.6)%であり2型で低値であった(P < 0.001).重症低血糖の前駆症状の有無に関しては全体で有35.5 %,無35.6 %,不明28.9 %,前駆症状の発現率は1型で41.0 %,2型で56.9 %となり,1型の方が前駆症状の発現率は低かった(P < 0.001).2型の治療薬はインスリン使用群(SU薬併用29人含む)292人(60.8 %),SU薬群(インスリン未使用)159人(33.1 %),インスリン・SU薬未使用群29人(6.0 %)であった.調査対象798例のうち296例(37.2 %)は,過去にも重症低血糖で救急受診した既往を有していた.以上のようにわが国の糖尿病治療に関連する重症低血糖の実態が初めて明らかになった.今後は重症低血糖の高リスク者や既往者に対し,低血糖の教育と治療の適正化による発症予防対策が急務であることが明確となった.
著者
モロジャコフ ワシ―リー
出版者
拓殖大学国際日本文化研究所
雑誌
拓殖大学国際日本文化研究 = Journal of the Research Institute for Global Japanese Studies (ISSN:24336904)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.33-55, 2019-03-29

本論文は、満州事変以後、日本の大陸政策・植民地政策に対するフランス知識人の見解を調査・分析するものである。列強の政府と政治エリートたちが、満州での日本の行為を「侵略」と非難した際、欧米の世論とメディアはほとんど全て反日になった。フランス政府と政界もまた日本の政策を非難したが、知識人の見解は分かれた。その一部は日本の行動を弁護し、他の一部は国際連盟と中国の反日政策を支持した。本論文では、この二つの派閥それぞれについて、フランス人政治評論家・法学者等の著作を検討する。
著者
田中 さき Tung―Yuan Ho 長尾 誠也 松中 哲也 Rodrigo Mundo 井上 睦夫 谷内 由貴子 黒田 寛 熊本 雄一郎 滝川 哲太郎 守田 晶哉
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2021

<p>化石燃料やバイオマスの不完全燃焼、および原油を起源とする多環芳香族炭化水素類(PAHs)は、発癌性や変異原性をもつ有害有機物である。東アジア縁辺海と周辺海域において、PAHsの動態や生態リスクに関する研究が必要とされている。本研究は日本近海を中心とした北太平洋における広域的なPAHs水平分布を明らかにすると共に2017年以降のPAHs経年変動を解析した。各緯度帯における平均Σ14PAHs(粒子態+溶存態)は、基本的に中緯度域で高く、高緯度域で低くなる傾向を示した。沿岸海域では燃焼起源PAHsの寄与が高かったのに対し、外洋海域では原油起源PAHsの寄与が高かった。一方、2020年における日本海のΣ14PAHsは、2019年と比べ有意に低下した。塩分や海水シミュレーションの結果を基にすると、2020年における日本海のPAHs濃度減少は、黒潮系海水のPAHs濃度低下と、PAHs濃度の高い浅層海水の寄与の低下によって引き起こされた可能性が示唆された。</p>
著者
植村 立 三嶋 悟 中村 光樹 浅海 竜司 加藤 大和 狩野 彰宏 Jin―Ping Chen Chuan―Chou Shen
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2021

<p>東アジア地域においては、最終退氷期の温暖化の開始タイミング及び気温変動の大きさについて統一的な見解は得られていない。石筍は正確な年代測定ができる点で重要な陸域の古気候アーカイブである。一方で、石筍の炭酸カルシムの酸素同位体比は、滴下水と温度の2つの要因に影響されるために定量的な解釈が困難である。本研究では、東アジア地域の最終退氷期における温暖化のタイミングと気候変動を定量的に復元するため、南大東島で採取された石筍の流体包有物の水の酸素・水素同位体比分析を行った。また、独立した手法により気温復元の妥当性を検証するため、炭酸カルシウムの二重置換同位体比を用いたClumped isotope の分析を行った。本発表では、Heinrich stadial 1 (H1)からBølling-Allerød(BA)期への温度変化とタイミングについて議論する。</p>
著者
モロジャコフ ワシ―リー
出版者
拓殖大学国際日本文化研究所
雑誌
拓殖大学国際日本文化研究 = Journal of the Research Institute for Global Japanese Studies (ISSN:24336904)
巻号頁・発行日
no.3, pp.45-66, 2020-03-25

本論文は、支那事変を中心にして、日本の大陸政策・植民地政策に対するフランス知識人の見解を調査・分析するものである。列強の政府と政治エリートたちが、満州・中国での日本の行為を「侵略」と非難した際、欧米の世論とメディアはほとんど全て反日になった。フランス政府と政界も日本の政策を非難したが、知識人の見解は分かれた。その一部は日本の行動を弁護し、支持した。本論文では、この二つの派閥それぞれについて、フランス人政治評論家・作家の著作を検討する。
著者
クリスチャン ジェン―レンデュ 吉田 実
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.1193-1197, 2015

製紙メーカーは多くの品質的な課題に取り組む一方,生産コスト削減のため様々なアプローチを行っている。このような今日の製紙業界の課題に対する新たな解決策として,BASF社は革新的な生産性向上剤ゼロレックスを提案する。<br>ゼロレックスはポリビニルアミンをベースにした製品である。あらゆる紙,板紙に容易に適用でき,抄紙工程のトータルコスト削減に大きく寄与できる。本製品は海外で多くの採用実績があり,アジア地域においても既に20社以上の採用実績がある。本製品はカチオン電荷を有するビニルアミン基とビニルホルムアミド基をあわせもつ。ビニルアミン基により疎水性物質を繊維に定着させ,ビニルホルムアミド基の存在により水素結合が増強し紙力が増大する。<br>本製品を抄紙工程に適用することによりわずか1製品で,定着,ろ水,歩留りの改善に加え紙力の向上も可能となる。それによって古紙のような安価な原料や填料の使用を増やすことができ,紙切れの減少,蒸気使用量削減,抄速アップといった生産性の向上が期待できる。このように本製品でマシンを最適化することによって,抄紙工程のトータルコストの削減が可能となる。
著者
大嶺 佳菜子 植村 立 眞坂 昂佑 浅海 竜司 Chuan―Chou Shen
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

<p> 日本においてはウラン濃度の低さからU/Th年代を適用できる石筍試料は少なく、完新世を含む石筍のデータには数百年の年代誤差がある (Sone et al., 2013)。そこで、本研究ではU/Th年代法によって絶対年代を決定することができると予測される沖縄県南大東島の石筍 (HSN1、全長246 mm) の年代測定と炭酸カルシウム、流体包有物の同位体比測定を行い、降水同位体比変動の復元を行った。試料のU/Th年代は、国立台湾大学で18点測定した。HSN1はウラン濃度が高く、<sup>232</sup>Th濃度が低いためにU/Th年代が高精度に決定できた。年代は6000±62から7362±44年であり、年代モデルは全長にわたって±60年の精度で決定することができた。成長速度は比較的早く(180μm/yr)、連続的に成長していた。</p>
著者
竹村 恵二 別府―万年山断層帯(大分平野―由布院断層帯東部) 調査観測研究グループ
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

<はじめに>文部科学省の活断層帯の重点的な調査観測として、2014年度(平成26年度)から3年間の計画で、別府―万年山断層帯(大分平野―由布院断層帯東部)の調査観測を実施した。本研究では既存の調査結果を基礎として、ボーリング調査、トレンチ調査、海域音波探査、自然地震観測、人工地震探査、電磁気探査、重力探査、水位変動観測、アレイ微動観測、等を行った。これらの調査観測の成果に基づいて、活断層の基本的な特性である位置や活動履歴、平均変位速度等を断層帯全体で陸域・海域・伏在平野域において包括的に評価することにより、活断層の基本情報の高度化、さらに自然地震探査や電磁気探査によって地震発生層の媒質の不均質性を探り、既往の地下構造観測情報と比較しながら、浅部構造観測調査も含め震源断層形状の高度化を試みている。また本対象断層帯に位置し、当該断層が活動した場合に大きな揺れに見舞われる可能性が高い大分平野および別府扇状地等の地下構造モデルの高度化を図るとともに、その地下構造モデルと震源断層モデルに基づいた強震動予測を行う」ことを目的とした。26年度調査に関しては、竹村ほか(2015)により、27年度調査に関しては、竹村ほか(2016)により、地球惑星科学連合大会で報告した。26年度報告・27年度報告は文部科学省ホームページに掲載されているので、参照されたい。<28年度の調査>研究グループは、京都大学理学研究科・九州大学理学研究院・産業技術総合研究所を主体として関連研究者からなる。3つのサブテーマに区分し、研究を遂行した。サブテーマ1:活断層の活動区間を正確に把握するための詳細位置・形状等の調査と断層活動履歴や平均変位速度の解明のための調査観測。サブテーマ2:断層帯の三次元的形状・断層帯周辺の地殻構造の解明のための調査観測。サブテーマ3:地下構造モデルの高度化及び強震動シミュレーションによる断層帯周辺における強震動予測の高度化のための研究。28年度実施した下記の項目のうち、主にサブ1およびサブ2の結果について報告する。<サブテーマ1>平成28年度は、既存の地形・地質情報・歴史資料の収集・整理を継続・実施した。陸域では、空中写真判読・地表踏査により、海域では、海底地形調査および音波探査の解析作業を継続し、位置や分布を明らかにした。湾内での堆積物採取を実施し、地震時イベント堆積物の分析・解析を実施した。大分平野では、ボーリングデータ等の既存の資料を用いた解析を進め、群列ボーリング掘削調査等を行った。<サブテーマ2>自然地震観測結果や電磁気探査に基づいて、断層帯及び周辺の地殻上部の不均質構造を明らかにするとともに、平野部で人工地震探査を実施した。また、重力探査・地下水調査等やボーリング等のデータ解析から、平野基盤形状の推定と断層との関係の調査を行った。小断層解析等も用いて、本地域の応力の時間的推移をシミュレーションも含めて推定する。これらの調査を踏まえて、震源断層形状及び地殻構造の解明を進めた。<サブテーマ3>28年度は地震波干渉法による速度構造推定のための連続微動観測や、大分県内の震度観測点における微動観測および大分平野における臨時強震観測を実施し、深部および浅部地下構造モデルを作成・評価した。震源モデルについては,他サブテーマの成果を用いて断層形状を設定し,動力学的シミュレーションにより破壊過程を検討した。構築した地下構造モデルを用いて、強震動シミュレーションを実施し、想定される強震動を求めた。講演では、主にサブ1およびサブ2の結果について報告する。
著者
大嶺 佳菜子 植村 立 眞坂 昂佑 浅海 竜司 Chuan―Chou Shen Mahjoor Ahmad Lone
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2016年度日本地球化学会第63回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.54, 2016 (Released:2016-11-09)

石筍の炭酸カルシウムの酸素安定同位体比は降水変動を反映していると考えられているが、定量的な解釈は容易ではない。石筍に含まれる流体包有物の水の酸素・水素安定同位体比は、過去の降水の同位体比変動そのものを復元できる可能性が高い。本研究では、沖縄県南大東島の石筍の年代測定、各種安定同位体比測定を行い、完新世の降水同位体比変動と気温変動の復元を行った。試料は、沖縄県南大東島星野洞の石筍 (HSN1) を用いた。HSN1の年代は約6,000-8,000年であった。成長速度が早く、高時間分解能での気候復元が可能である。炭酸カルシウムの酸素安定同位体比の数百年スケールの変動は、太陽活動の指標である大気のδ14Cの変動パターンと類似していた。