著者
ハヤシザキ カズヒコ
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.153-173, 2015-05-29 (Released:2016-07-19)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

本稿は,学校エスノグラフィの手法をもちいながら,フルサービス・コミュニティ・スクールや拡張学校の特徴を,米,イングランド,スコットランドの比較からあきらかにしようとするものである。これらの3カ国では,財団の支援や国の政策によって,貧困削減や社会的包摂をめざす学校におおきな投資をしている。そして学校がマネジメントを拡大したり,あるいは,チャリティと協力したりして,子ども・家庭・コミュニティに多様なサービスを提供している。この貧困削減をめざすコミュニティ・スクールは90年代の米国のうごきが今世紀になって世界各国にひろまったものであるが,イングランド・スコットランドではそれが国全体へとひろげられた。サービスの一部には日本になじみのものもあるが,歯科医療,警察常駐,ギャング離脱など米や英に独特のものもある。さらに,親やコミュニティにたいするサービスとして,成人学習や親のエンパワメントがあり,本稿では3国3校の事例をつうじて,成人学習の内容やエンパワメントの手法をあきらかにしている。これらのコミュニティ・スクールは社会的包摂につながるあらゆるニーズにこたえようとするものである。貧困そのものをなくしたり,社会の構造自体を変革したりするものではないものの,貧困の帰結をかえて人びとの人生を変革することがあり,まなぶべき点はおおい。
著者
林 鎭代 ハヤシ シズコ Hayashi Shizuyo
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
vol.12, pp.37-46, 2011-03-31

昔話は,子どもが好む児童文化の一つとして,長い間子どもに語り継がれ親しまれてきたものである。しかし,昔話には子どもが楽しむというだけでなく,大人が子どもに重要な様々な情報を知らせる方法の一つとしても活用されてきたのである。そうした意味からも,昔話に登場するものは,子どもに示すべき何かを象徴するという役割をもっているのである。 日本の昔話には,恐ろしい存在としての"鬼"が度々登場してくる。そして,韓国の昔話にも,日本の"鬼"と同じ姿を持つ"トッケビ"が登場している。しかし,"鬼"と"トッケビ"は,その性質が同じようには表現されていない。日本の"鬼"と韓国の"トッケビ"は,どのような象徴とされ,どのような意図を持って子どもに語られてきたかを考察した。Folk tales have been handed down to children, and attracted widespread popularity as a child culture children favor. However, folktales have been utilized not only as children's amusement, but also as one of the ways that adults make a variety of important information known to the children. From this eaning, what appears in folk tales has a role to symbolize something that should be shown to children. In Japanese folktales, "Oni" appears frequently as a terror. And also in Korean folk tales, "Tokkebi" a has the same form with Japanese "Oni". However, the characteristics of "Oni" and "Tokkebi" are not described in the same way. What Japanese "Oni" and Korean "Tokkebi" have symbolized and what adults have intended when they talk to children were considered.
著者
林田 治男 ハヤシダ ハルオ Haruo HAYASHIDA
雑誌
大阪産業大学経済論集
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.181-213, 2006-02-28

我が国の鉄道建設が具体化したのは,明治2年末の英国人;レイとの100万ポンドの借款契約とそれに基く建設計画である。この契約においては,外国人の雇用権,必要資材の購入権,組織の指揮命令権など悉くレイの手中にあった。幕末混乱期に外国奉行;小笠原長行が,米国人;ポートマンへ鉄道敷設権を付与した問題の処理に当って,維新政府担当者が日本側自主権の確保に苦心しながら交渉していたのと対照的である。錯雑した状況の中で,日本政府はレイが指名した代理人;トロートマンとの面会拒否,建設資金の「ロンドンでの公募」を廉にしたレイ契約の破棄宣告,オリエンタル銀行への問題処理の委託およびレイ契約の代理継承という一連の行動によって,徐々に鉄道建設・運営に関する管轄権,および外国人の雇用権を確保していった。これらの過程のうち本稿では,レイ借款が解約されていく状況を中心にその理由を明示しつつ詳述する。前兆として1870年4月(明治3年)からの,トロートマンへの異様な応対や,4月の英国公使;パークスの書簡から,その気配が察知できる。6月時点での「公募」情報入手後の日本政府の行動は,実に水際立っていた。レイがロンドンで「関税と鉄道収入を担保に」「300万ではなく100万ポンドを」(計画路線全体の建設資金としては300万ポンド程度必要で,100万にポンドに対しては担保が過大である)「公募」(少数の有力な資本家から内輪にではなく)したこと,および日本政府へは12%で貸付け,英国では9%で募集したことが資金提供者と建設担当者という二重の地位を使い分けた背信行為であることを論拠として日本側は解約を主張した。自主権の確保という重要な点は,表立って議論されていない。自主権確保を前面に押し出して解約あるいは契約内容の変更を要請しても,日本側に勝ち目はほとんどなかった。最終的にレイとは示談が成立し,オリエンタル銀行がその任務を引き継ぎ,鉄道建設に当たっていくこととなった。
著者
早矢仕 有子 ハヤシ ユウコ Yuko Hayashi
雑誌
札幌法学
巻号頁・発行日
vol.26, no.1/2, pp.171-188, 2015-03 (Released:2015-04-29)
著者
林 左和子 ハヤシ サワコ Sawako HAYASHI
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 = Shizuoka University of Art and Culture bulletin
巻号頁・発行日
vol.16, pp.71-78, 2016-03-31

「布の絵本」は「絵本」+「遊具or 教具」であるといわれる。図書館資料としての「布の絵本」を考えた時、必要な要素は何であるかを、「絵本」としての要素と「遊具or教具」としての要素にわけて考えた。 「絵本」を考えた時、市販されている絵本は様々な人がかかわって生み出されたものであることが重要な要素の一つであると考えた。図書館員は、製作者と利用者をつなぐ、編集者としての役割を果たすことができる。そのためには、それぞれの利用者の反応を知り、さらに図書館間での情報共有にも努める必要がある。それによって、「布の絵本」をさらに発展させることができると考える。 "Clothe picture book" is "picture book" and toy (or teaching material) for children with disabilities. I discuss a requirement of a "clothe picture book "for library materials. As one of the elememts of picture book is product of collaboration. It is able to play a role of editor for librarian. Then librarian make an effort to watch a reaction of user. I think that cumulated knowledge of librarian is support to development "clothe picture book".
著者
安藤 純子 加藤 重子 今坂 鈴江 岡平 美佐子 讃井 真理 林 君江 日川 幸江 Ando Junko Kato Shigeko Imasaka Suzue Okahira Misako Sanai Mari Hayashi Kimie Higawa Yukie アンドウ ジュンコ カトウ シゲコ イマサカ スズエ オカヒラ ミサコ サナイ マリ ハヤシ キミエ ヒガワ ユキエ
出版者
広島文化学園大学看護学部
雑誌
看護学統合研究 (ISSN:13460692)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.1-7, 2010-03

日本は,超高齢社会を迎え,高齢者の人口増に伴い医療費高騰の問題があげられる。このような社会背景の中で,本学部の老年・地域看護学領域で嚥下障害のある人のために開発されたソフト食の紹介を地域住民に対し3年間にわたり取り組んだ。地域の参加者にソフト食に対する意識を検討することを目的にアンケート調査を行なった。研究参加者は,ソフト食紹介の地域交流事業の参加者のうち,82名であった。説明内容の理解度は,回数を重ねるごとにわかりやすくなっている傾向があり,発達段階の影響を受けないことがわかった。美味しさに対しては,ソフト食のメニューの影響を受けること,また成人期の人に比べて老年期の人が美味しかったと思ったことがわかった。ソフト食の飲み込みやすさは,ソフト食のメニュー,発達段階の影響を受けることがわかった。このことから,地域住民のソフト食に対する意識が変化してきており,ソフト食は,老年期の人にとって美味しく,食べやすいことがわかった。また,介護者は「母親の食事に活かしたい」という意見もあった。
著者
林 潔 ハヤシ キヨシ Kiyoshi HAYASHI
雑誌
白梅学園短期大学紀要
巻号頁・発行日
vol.15, pp.17-28, 1979

学校カウンセリングについて,この分野で先駆的役割をはたしているアメリカと,戦後教育の中にとり入れたオーストラリアとを対比して考える。そしてわが国のこの分野の方向について考えたい。