著者
上田 忠子 上田 厚 青山 公治
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.951-959, 1992-11-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
28

農業従事者の農薬による健康障害の実態とその関与因子を明らかにするために, 南九州地区農業従事者, 男子178名, 女子232名を対象に面接調査を実施した。対象者は同時に多項目検診を受けた。その結果, 農薬による健康障害の経験を訴えた者は, 対象者の30.7%で, 性別には有意差はなかった。経営作目の組合わせ別にみると,「柑橘が主」が最も高率 (72.7%) で, ついで「米+柑橘」,「米+砂糖きび+甘藷」などであった。臨床症状は皮膚かぶれが最も多く (39.7%), 原因農薬としては, ダイホルタン (21.4%), ランネート (12.7%) があげられた。障害の発生は, 年間の農薬散布回数, 1日の散布時間, 農薬取扱い年数と有意な正の相関が認められた。農薬に関する意識調査によれば, 農薬の毒性等に関する知識はあるものの, 実際の安全な使用に関する対策は極めて不備な状態にあった。また, 農薬の効果に懐疑的な者や, 農薬の害に不安を感じている者に障害の発生が高率であった。今回の成績は, 農薬の安全使用に関しては更に効果的な教育が必要であり, 一方, 農薬に頼らない農業のあり方も考究すべきであることを示唆するものと思われた。
著者
河原田 一司 是石 裕子 労 昕甜 上田 忠佳 住田 能弘 大津 見枝子 明石 英雄 出澤 真理 Luc GAILHOUSTE 落谷 孝広
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第42回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-202, 2015 (Released:2015-08-03)

【背景/目的】近年、ヒト初代肝細胞に替わる細胞として、多能性幹細胞から分化誘導・成熟化した肝細胞の利用が検討されている。我々は、間葉系組織に存在する多能性幹細胞「Muse細胞」に注目し、効率的な肝前駆細胞への分化誘導法を検討した。一方、我々はこれまでに、肝臓の成熟過程に関与するmicroRNAを網羅的に解析した結果、microRNA-148a(miR-148a)が肝細胞の成熟化を促進することを明らかにしている。そこで、Muse細胞を肝前駆細胞へ分化誘導し、得られた肝前駆細胞にmiR-148aを作用させ、肝細胞の成熟化を試みた。【方法】ヒト骨髄由来間葉系細胞からSSEA3陽性のMuse細胞を単離した。Muse細胞に発現する遺伝子Xを抑制し、分化誘導因子と組み合わせ肝前駆細胞への分化誘導を試みた。次に、分化誘導した肝前駆細胞にmiR-148aを作用させ成熟化させた。Muse細胞由来肝細胞にCYP酵素誘導剤を添加し、酵素誘導能を評価した。【結果】Muse細胞に発現する遺伝子Xを抑制することで、AFP、ALB、CK18、CK19陽性の肝前駆細胞への分化誘導を確認した。また、Muse細胞由来肝前駆細胞にmiR-148aを作用させることにより、肝特異的遺伝子の発現量は上昇し、miR-148aによる成熟化の促進を認めた。以上の結果から、肝細胞を誘導する出発の幹細胞として、Muse細胞の有用性が示唆された。今後は、フェノバルビタールやリファンピシンによるCYP2B6やCYP3A4誘導能のデータを得ることで肝毒性・薬物動態評価系への応用性を検討する予定である。
著者
上田 厚 青山 公治 藤田 委由 上田 忠子 萬田 芙美 松下 敏夫 野村 茂
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.55-66, 1986-05-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

菊栽培従事者の男子47%, 女子62%に, 作業に関連した鼻, 呼吸器症状および皮膚症状がみられた。前者は選花作業時'後者は農薬散布時に自覚されることが多いようであった。菊および農薬に対するパッチテスト, プリげクテスト'血清免疫グロブリン値測定, 鼻汁検査などにより, 前者の症状は即時型, 後者は遅延型アレルギーの関与が示唆された。また, これらのアレルギー学的検査所見の有無と, 菊および農薬の暴露量には若干の関連が認められた。アレルギー所見は, 菊の品種別では, 大芳花に最も高率で'ついでステッフマン, 金盃, 寒山陽などであったが'主として大輸株に即時型'小菊株に遅延型の症状が集積している傾向を認めた。しかしながら, 各品種と検査所見との関連をφ係数で検討すると'アレルギー学的検査所見との関連のとくに著しい品種は検出されなかった。また'皮膚症状については, パッチテスト成績などよりみて, 菊よりもむしろ農薬の関与が強いと思われる成績が得られた。このように, 菊栽培従事者の多くは, 作業に伴い菊や農薬の慢性的な暴露を受け, それに感作された状態にあることが確かめられた。さらに, それらによるアレルギー症状は, その他の作業環境における種々のallergenに様々に修飾されて発現するものであることが示唆された。
著者
小槻 日吉三 市川 善康 上田 忠治 中野 啓二
出版者
高知大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

本研究は、高効率な官能基変換プロセス実現のために、超高圧反応場の有用性を明らかにするとともに、そこから得られる情報を最大限に活用し、革新的な有機合成反応の開発に繋げることにある。その結果、以下の成果を得ることに成功した。1.アセタール類の無触媒的シアノ化反応の開発:アセタール類のシアノ化反応は、通常ルイス酸触媒存在下、アセタールとシアノ化剤との組み合わせで行われる。これに対し、Me_3SiCNをシアノ化剤とし、ニトロメタン溶媒中高圧反応を行うと、無触媒でも望むシアノ化反応がきれいに進行することを見つけた。2.アントラキノン類の高圧縮合反応を基軸とするステントリンの直接合成:我々は、ペリレンキノン系色素の構造と生理活性に興味をもちそれらの合成研究を行っている。今回、アントラキノン誘導体の二量化反応による直接的な合成を検討し、アルカリ条件下、過剰のヒドロキノンを加え高圧反応を行うと、目的とするジメチルステントリンCが好牧率で得られることを見つけた。3.尿素類の高圧縮合反応を基軸とするBiginelliタイプの多成分連結反応:Biginelli反応は尿素と活性メチレン化合物、アルデヒドとの3成分連結反応として、ジヒドロピリミジノン系化合物合成の重要な反応である。今回、低反応性ケトンを基質として、脱水剤となる(MeO)_4Si及び酸触媒存在下高圧縮合反応を行うと、期待する多成分連結生成物が牧率よく得られることを見つけた。4.新規屋根型キラルアリールプロリン触媒の開発:有機不斉触媒の開発と利用を目的とした合成研究の一環として、アントラセンのDiels-Alder反応を出発とする新規屋根型キラルアリールプロリン触媒を分子設計した。この計画を実行に移すため、アントラセンと無水マレイン酸とのDiels-Alder付加物を出発として、光学分割を経由する方法で不斉触媒の開発を行った。
著者
上田 厚 二塚 信 上田 忠子 有松 徳樹 上野 達郎 永野 恵 野村 茂
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.32-44, 1984-01-20
被引用文献数
2

い草農民は,収穫期に短期間ながら高濃度,以後の畳表製織工程により年間を通じ比較的低濃度の染土じん暴露を受ける.染土は,遊離けい酸含量15〜25%の粘土性の粉体で,収穫時にい草泥染として用いられる.い草農民には,約20年間の作業によりその20%にじん肺所見が認められるようになるが,そのX線写真上の症度や肺機能障害の程度は比較的軽度の者が多く,一般に,い草作業者のじん肺は比較的予後の良いものとされている.このことは,染土の生体作用に関する実験的研究によっても裏付けられているが,作業環境の改善はこの10年間でようやく着手された段階であり,作業者が裸手にて発じん源たる乾燥束を取り扱う作業形態よりみて,い草農民の染土じん吸入量は相当量に達しているものと思われ,今後の作業の状況如何ではより重篤な症例の出現する可能性は否定できない.また,かかる緩徐な線維形成をきたす粉体の吸入によるじん肺について長期にわたって追跡した例はほとんどみられない.かかる見地より,著者らは,1970年に調査されたい草農民の対象者を,1980年に再び健診し,この10年間の胸部X線写真所見およびその他の呼吸器所見の変化の様態を観察し,それが作業者の粉じん暴露の実態といかなる関連を持つかを検討した.対象者は男子51名(58.6±5.3歳),女子37名(54.4±38歳)で,前回と同様,胸部X線直接撮影,BMRCによる問診,肺機能検査,その他の内科的検査で,胸部X線像については,同一対象者の前回と今回の写真をともに,1978年版じん肺標準写真(労働省)を参照して同時に読影した.1980年のX線像では,12階尺度1/0以上が,男子49.0%,女子62.2%に認められ,1970年(男子25.5%,女子21.6%)に比し有意な増加を示した(p<0.01).所見は,小粒状影を混えるが不整形陰影を主とし,中下肺野に強く認められた.また,尺度の進展例は男子62.7%,女子67.6%であった.呼吸器自覚症状の有症率は,男子43.1%,女子41.4%で,前回と今回で有意な差異をみないが,男女ともにぜい鳴の有症率が増加の傾向にあった.肺機能検査では,男子19.6%,女子18.9%に一秒率の低下をみ,より深部気管支領域の障害を示す%MMFの低下(80%以下)を,男子51.0%,女子40.5%に認めた.X線写真有所見者やその進展例に,必ずしも,肺機能異常や呼吸器自覚症状有症率が高い傾向は認められないが,これらのおのおのの検査の有所見者は,正常者に比し,い草経営面積,年間畳表生産量あるいは染土じん暴露指数〔Exposure Index=(い草面積×年数)+1/5(年間畳表生産枚数×年数)〕が高値を示し,有症率と作業量との関連か認められた.これらの成績よりみて,以下の3点がい草農民のじん肺に関し重要であると思われる.1)い草作業者のじん肺の本態は,染土じんの吸入,沈着に伴う,とくに細気管支領域および肺胞壁の炎症性病変を主とするもので,さらに,い草自体の有機じんとしての関与も無視しえないものがある.2)い草作業者のじん肺の進展性はそれほど著しいものではないが,作業者には,X線写真上のじん肺所見のみならず,肺機能低下や呼吸器自覚症状が広範に出現し,さらに,それらの有症率には染土じん吸入量との関連が認められる.3)一般に,い草作業者の呼吸器障害の程度や頻度は,女子に高い傾向を認めるが,これは,とくにこの10年間のい草労働に占める女子の労働配分の相対的な上昇に対応している.したがって,本研究により,い草農民のじん肺所見は,畳表製品化作業に伴う長期の染土じん吸入に起因するものであり,今後とも,定期的なじん肺健診と適切な粉じん環境の衛生工学的改善が必要とすることが示唆された.