著者
中村 久美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<b>目的</b> 外部環境との応答性に関わる住生活には、①環境調整(温熱、光、空気環境の調節)、②防犯・監視(見守り)、③生活の豊かさにつながる知覚(眺め、自然や四季の変化の感受)、④コミュニティや景観形成(演出、表出による親しみ、通りの景観形成)の諸側面が存在する。もともと開放的で内外中間領域(縁側)を有する日本の住空間では、外の自然や周辺環境と親しむ住生活が存在したが、地球環境問題や地域コミュニティとの関係が問われる現代は、そのような住生活のあり方は重要である。現代における外部環境との応答性ある生活様式の再構築をめざし、まずは若年層の窓と窓周りの住生活の実態を明らかにする&nbsp;.<br>&nbsp;<b>方法</b> 女子大生151名を対象に、窓やカーテンの開閉など窓周りの住生活や自宅の窓周りの生活様態に関する質問紙調査を実施。<br><b>結果</b> 自宅開口部の様態を見ると、1年中雨戸や窓が締切の部屋がそれぞれ約2割、4割存在する。日差しの調節にすだれなどを活用している(4.5割)一方、天気の良い日中でもリビングの照明をつけている(4.5割)。内外中間領域のうち、ベランダ・バルコニーは7.5割が有しているが、縁側、テラス(ともに2割)を有する家は少ない。またそこでは物干し以外の住生活行為は特に行われていない場合が多い。学生自身の窓周りへの働きかけをみると、換気の習慣が定着していない学生が一定数存在し、厚いと感じたら窓を開けずにエアコンをつける者が1/3をしめる。「窓の外を眺める」「空模様を見る」ことを全くしない学生も2割存在する。そもそも自室の窓の方位を認識しない学生が多い。住空間への意識として窓や空間の開放性に関心のない学生ほど当然のことながら窓や窓周りへの働きかけはない。総じて外部環境への関心や窓を介した外との関係が希薄な学生が少なくない。
著者
中村 久美
出版者
天理大学
雑誌
天理大学学報 = Tenri University journal (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.77-92, 2017-02

オスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』の序文では,鏡がこの作品を読み解く鍵であることを暗示する文章が並ぶ。鏡自体,ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』や,ギリシャ神話のメドゥーサ退治に使われた鏡のように,一種魔術的な要素を持ち,虚像と実像の乖離を本来的に内包するものだが,この作品においては肖像画が鏡の役割を果たすというひねりを効かせており,「誠実」な人間と「真実」の人間という世紀末的対立を際立たせている。肖像画が魂の真実を映し出す時,鏡に映っているモノとはいったい何なのだろうか。本稿では夏目漱石の『幻影の盾』もヒントにしつつ,『ドリアン・グレイの肖像』を中心にワイルドにおける鏡と真実,ほんものとにせもののありようを探る。
著者
今井 範子 中村 久美
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.687-698, 1998-06-15
被引用文献数
5

This study analyzed the changes brought about to consciousness of residents concerning dwelling and other life conditions after the latest Hanshin-Awaji Earthquake, and we then intend to consider what life style should be. The residents we observed live in apartments owned by the Housing and Urban Development Corporation at five places in Kobe and its adjacent cities, Nishinomiya, Takarazuka and Amagasaki which were all disaster stricken by the earthquake. In this first paper we are to clarify difficult living conditions suffered by the residents just after the earthquake. The results are as follows: People were busily engaged from just after the earthquake in supplying drinking water, food and other daily necessities which had not been stored for emergency use. The most difficult problems was the shortage of life sustaining water. There were also other difficulties such as the inconvenience arising from the stoppage of elevators and feelings of insecurity and stress on the part of the residents dwelling at higher floors of high-rise apartments. It is necessary to consider the solutions for these problems on planning urban high-rise dwelling. Most older couples, older sigle people and families having school-age children took refuge in regional public shelters or stayed at home as they were anxious to keep close to their neighbourhood communities. Most people were provided with drinking water, food and other daily necessities, living space by their relatives and friends. On the whole enough support was not given by government bodies and volunteer groups. It is necessary to try to augment government support and to keep ready an emergency volunteer support system. Neighbourhood community play important role at emergency, providing such support as rescue activities, transportation and distribution of water, delivery of information, etc.
著者
米沢 昭一 畦地 速見 中村 久 鈴木 勝夫 二宮 幾代治
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.169-182, 1968

抗生物質を混合し, 化学療法剤として応用する傾向は近年盛んで, 国の内外を問わず, 特に動物薬において著るしい。これら混合抗生物質製剤の分離定量については, これまで, 各種試験菌のうち原株を使用して, 各種抗生物質と混合されたペニシリン (PC) の分離定量1)をはじめ, ジヒドロストレプトマイシン (DSM) 3), フラジオマイシソ (FM) 4), ロイコマイシン (LM) 4), クロルテトラサイクリン (CTC) 2)およびバシトラシン (BC) 3)についての試験をおこない, その成績は過去数回にわたつて, 目本化学療法学会に報告した。しかし, 試験菌原株のものつ抗生物質分離能力には, おのずから限度があるので, この限界を越えた高い濃度の抗生物質が混入されたばあい, 混合試料のままでは, 定量したい目的の抗生物質のみの力価を確実に証明することが不可能なばあいが生じてくる。<BR>このように, 混合抗生物質の濃度が増大したばあい, その混合抗生物質に対する試験菌の耐性度を上げることによつて, 目的とする抗生物質の分離は容易になるわけである。われわれは, このような意図に基づいて, 耐性という特殊能力をもつ試験菌の育成と, その応用方法に関する試験をすすめてきた。<BR>獲得させる耐性の程度は, 混入を予想される抗生物質の量によつて左右されるが, われわれは試験菌の活力が著るしく阻害されない限り, できるだけ高度の耐性を付与することにつとめた。しかし, 抗生物質の種類や, 試験菌によつて, 耐性がなかなか高まらないものと, 比較的早く高まるもの, または天井知らずの上昇性を示すものなどがある。また, ある程度高い耐性を付与しても, 普通寒天継代をつづけるとき, 急速に低下してしまうもの, または非常に安定しているものなどがある。<BR>われわれは, 高度の耐性を付与した, しかも安定性を兼ねそなえた4種のDSM耐性株について, DSMと混合する他の抗生物質の分離定量試験をおこない, 実用的に応用価値の高い成績を得たのでその概要を報告する。
著者
中村 久美
出版者
天理大学
雑誌
天理大学学報 (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.113-128, 2015-02

月と鏡はともに他者の像を反映するという相似の機能を担い,心理的にも互いに隣接する観念である。両者は地上の現実世界の反映であると同時に,異次元世界へと人を誘う扉でもあり,我々のなじみ深い世界にぽっかり空いた未知の世界,夢の世界への入り口である。しばしば絵画や文学作品の主題ともなり,重要な場面に欠かせない道具ともなる月と鏡であるが,これらは偶然というより,見かけの相似以上のつながりがあるのではないだろうか。西洋とわが国の文学作品を比較した時,その結びつきはより明らかになるが,東西の違いもまた浮かび上がる。月は西洋では不吉な事件の前兆となることが多く,日本では異界への入り口の象徴になることが多い。また鏡は西洋では現実の真実を現すのに使われ,日本では裏面の真実が語られる。
著者
中村 久美 今井 範子 牧野 唯
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.709-720, 2011-11-15 (Released:2013-09-05)
参考文献数
11
被引用文献数
1

We investigated how closets, which are considered to play a key role in establishing storage styles, are currently being used in homes.The ownership ratio of closets is 83%, which is an extremely high percentage. Most closets have an area smaller than a four-tatami-mat room, with the majority being located in bedrooms. When there is only one closet, it is used for various purposes such as storing seasonal goods, less frequently used non-daily goods, expendable supplies and clothing. Closets that accommodate household goods and those that store both household goods and non-daily goods are especially popular. In homes with two closets, they are generally used in one of two ways: one in which both are used for storing non-daily goods, the other in which non-daily goods are stored in one and household goods are stored in the other.The key to whether closets can be properly managed as storing systems largely depends on whether they are suitably located according to the type of goods to be stored in them, their location in the home and regular management of the goods stored in them.
著者
吉冨 郁 又吉 康俊 田村 尚 柴崎 誠一 内田 雅人 原西 保典 中村 久美子 岡 英男
出版者
日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.217-221, 2004-07-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
11
被引用文献数
1 5

酢酸中毒の1例を経験した。患者は59歳の男性で,自殺目的で30%酢酸を約100ml経口摂取し,約30分後に当院救急部に搬送された。激しい腹痛と嘔吐があり,著明な溶血尿が認められた。無尿,呼吸困難,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation, DIC),ショックとなったため,翌日ICUに入室となった。入室後,人工呼吸と持続血液濾過透析(continuous hemodiafiltration, CHDF)を開始し,DICに対する治療を行った。上部消化管内視鏡検査では,腐食性胃食道炎が認められた。1ヵ月間のCHDFの後,腎機能は徐々に回復し,人工呼吸も2ヵ月で離脱できたが,遷延する難治性の下血に対し,約3ヵ月の集中治療を要した。酢酸中毒では局所組織障害だけでなく,溶血,DIC,腎機能障害,肝機能障害,ショック,多臓器不全などが起こるため,急性期の適切な治療が重要である。
著者
中村 久美
出版者
京都ノートルダム女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

戸建住宅および公団分譲集合住宅を対象に住み方調査を行った.その結果,選択的に保有,出納される生活用品の保有率の高さや,収納や出納状況に対して不都合を抱える世帯の多さ,中でも死蔵品の問題を明らかにする一方,戸建住宅における納戸保有率の高さと,それらが4畳未満の小室中心でほとんどが寝室近くや屋根裏などの寝室圏に設置されていることを明らかにした.以上より,持ち物の見直しなど,生活管理行為と集中収納空間の使いこなしによる収納様式の構築の必要性を指摘した.さらに集合住宅では,集住のメリットを活かしたモノの管理に関わる共用,循環のシステムも含めた収納様式の構築を提唱した。
著者
今井 範子 中村 久美
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.1223-1232, 1998-11-15
参考文献数
12
被引用文献数
2

In Part 3, we aim to clarify the actual conditions as well as the consciousness of storing provisions in preparation for disaster and what articles to be taken out in case of emergency. The results are as follows : The earthquake disaster made the majority of people aware of the necessity of preparing for emergency, and about half of those surveyed made it a point to store things for emergency evacuation : cash, bankbooks, personal seals, underwear, for example, in addition to torch, radio, food, and drinking water. Those emergency articles are normally kept in a bedroom for quick evacuation. It should be noted, however, that they are often stored in places that might prevent quick evacuation ; such is considered to result due to the limited space available for some households. Such being the case, it is recommended that each community should provide a common storage of emergency articles to supplement individual storage. It is further recommended that each community should get ready emergency items such as temporary toilets and first-aid and rescue kits.
著者
広沢 弘七郎 近藤 瑞香 渋谷 実 沼尾 智代子 中村 久子 村崎 芙蓉子 市川 智恵 奥瀬 登代 滝川 道子
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.219-219, 1963-05-25

第119回東京女子医科大学学会例会 昭和38年4月26日(金) 東京女子医科大学本部講堂
著者
中江 亮太 包清 博之 中村 久二
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.707-710, 2002-03-30
被引用文献数
3 2

本研究では,海浜緑地を対象に,周辺から訪れる住民と遠方から訪れる人々の来園者行動の特性把握を通じて,各々の来園目的に対応した環境諸要素の整備や管理に関する整備視点についての示唆を得ることを目的とした。博多湾の埋立地に設置された「みなと100年公園」を対象に,両者の来園目的や環境諸要素に対する認知特性などを捉えるため,来園状況調査とアンケート調査を計6回実施した。その結果,両者間で平日休日の来園者数や滞在時間に違いはみられず,海に係わらない来園目的が多く指摘され,海に対する認知では両者に違いがみられることなどを把握し,整備視点について検討した。