著者
亀野 淳
出版者
Hokkaido Sociological Association
雑誌
現代社会学研究 (ISSN:09151214)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-15, 2005

本稿は日本的雇用システムの変化が若年雇用や学歴・学校歴に及ぼす影響について考察したものである。<BR>日本的雇用システムの変化は,そのメリットを否定したわけではなく,むしろメリットを維持するための修正とみるべきである。変化の方向性としては,新規学卒者の採用人数の絞込み,遅い選抜方法の見直し,人材育成における対象者の絞込みや自己啓発への期待などがあげられる。新規学卒者の採用人数の絞込みは,単純に若年者の雇用環境の悪化だけではなく学歴や学校歴による格差が大きくなると見込まれる。また遅い選抜方法の見直しは,選考基準として学校歴がより重視される傾向になると見込まれる。さらに人材育成における対象者の絞込みや自己啓発への期待は,ビジネススクールなどの専門職大学院の対する社会的ニーズは高まると予想されるが,大卒者の相対的地位の低下を招き新たな若年者の雇用問題を発生させるおそれもある。<BR>このように日本的雇用システムの変化は,若年者の雇用環境の悪化や学歴・学校歴による格差を拡大させるおそれがある。したがって今後は正規社員と非正規社員の処遇格差の是正や非正規社員に対する人材育成やマネジメントの必要性が高まる。
著者
亀野 淳
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.137, pp.259-270, 2020-12-23

本稿においては,インターンシップやアルバイトを就職希望者(学生)の能力把握(企業側の視点)や企業・業種の実情把握(学生側の視点)などに利用するという直接的効果に着目し,企業に対するアンケート調査を実施した。その結果,①新規学卒者の採用にあたっては,能力把握の方法として「面接」が最も重要視されており,インターンシップやアルバイトは少ないが,これらの方法の評価としては,面接よりもインターンシップ経験の方がその有効性を企業が認識していること,②こうした有効性の認識もあり,多くの企業が採用目的でインターンシップを実施しているが,当初の目的を十分に達成しているとは必ずしもいえないこと,③平均すると,企業は新卒採用の2.4倍程度の学生をインターンシップ学生として受け入れ,そのうち,6.4%程度を実際に採用している。新卒採用者全体でみると,約7人に1人をインターンシップ経由で採用していることなどが明らかになった。
著者
亀野 淳
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.134, pp.131-143, 2019-06-27

インターンシップやアルバイトが学生の能力把握や企業の実情把握に結びつくという効果に着目し,就職が内定している大学生に対するアンケート調査を実施した結果,以下の点が明らかになった。①多くの大学生がインターンシップやアルバイトを経験しているものの,インターンシップ先に就職を予定している学生は,インターンシップ経験学生の約3割であるが,そのインターンシップの約半数はいわゆるワンデイインターンシップであり,また,アルバイト先に就職を予定している学生はアルバイト経験学生のわずか5%となっていること,②インターンシップ先に就職が内定している学生の特徴として,大学所在地別が地方圏であることや,大企業に就職が内定している学生が多くなっていること,③アルバイト先に就職が内定している学生の特徴として,男性や「卸売業,小売業」に就職が内定している学生が多くなっていること,などが明らかになった。
著者
亀野 淳
出版者
北海道大学高等教育推進機構
雑誌
高等教育ジャーナル : 高等教育と生涯学習 (ISSN:13419374)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.137-144, 2017-03

This study revealed the relationship between generic skills of Hokkaido University students and their academic performance and employment. A progress report on generic skills (PROG) was used as a way of measuring these skills quantitatively and its results were linked with data obtained in a questionnaire survey on their career awareness. The findings included the following. (1) Although the literacy of Hokkaido University students was found to be high, their competency was found to be at roughly the same level as the national average. (2) Although no clear relationship was found between competency and academic performance, prospective employers tended to report higher satisfaction with students who had higher competency scores. (3) Although the competency score was high for students who were trying to act proactively and spontaneously, who were making efforts toward definite goals or who had high interest in other conntries, no relationship was found between competency and their enthusiasm in studies, club activities or part-time jobs.
著者
吉本 圭一 亀野 淳 稲永 由紀 塚原 修一 村澤 昌崇 椿 明美 藤墳 智一 江藤 智佐子 酒井 佳世 木村 拓也 志田 秀史 三好 登 川俣 美砂子 飯吉 弘子 濱中 義隆 新谷 康浩 伊藤 一統 松高 政 坂野 慎二 長谷川 祐介 沼口 博 内田 由理子 安部 恵美子 渡辺 達雄 永田 萬享 飯田 直弘 舘 昭 小方 直幸 伊藤 友子 立石 和子 有本 章 赤司 泰義 秋永 雄一 佐藤 弘毅 杉本 和弘 竹熊 尚夫 ジョイス 幸子 吉川 裕美子 菅野 国弘 TEICHER Ulrich LE MOUILLOUR Isabelle SCHOMBURG Harald 石 偉平
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、ユニバーサル化した第三段階教育システムを対象とし、大学型・非大学型の教育プログラム単位での機能的分化と質保証のあり方を探究した。教育の目的・方法・統制の観点で、学術型とキャリア・職業型の教育を実証的に把握した。(1)共同IR型卒業生調査から学修成果の修得と活用、コンピテンシーの必要と修得という2つのベクトルがみられた。(2)非大学型教員調査の結果から機関の職業・地域志向性と個人の研究志向性との葛藤がみられた。(3)WILなどカリキュラム調査から教育高度化と内外ステークホルダー関与の方向性について、分野別の特徴を把握した。(4)国家学位資格枠組(NQF)から日本への示唆が得られた。
著者
亀野 淳
出版者
北海道大学大学院教育学研究科
雑誌
北海道大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13457543)
巻号頁・発行日
vol.98, pp.103-112, 2006-06-30

フィンランドは,90年代前半の低迷を脱出し,順調な経済発展をみせている。特に,IT を中心とする産業・雇用創出が顕著であるとともに,国際競争力などにおいても世界トップレベルである。この要因の一つとして,多様な高等教育における人材育成のあり方によるところも大きいと考える。本論文では,同国で実施したインタビュー調査をもとに,人材育成における高等教育機関の役割,高等教育機関と企業,産業界の関係等について考察した。その結果,アカデミックな大学に加え実務的なPolytechnicの存在,柔軟なMBAコースの運営,学生(労働者)が教育機関と企業を行き来することによる高等教育機関と企業,産業界の連携の強さなどによるところが大きいと考えられる。