著者
飯吉 弘子
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.438-451, 2009

日本の大学における学士課程教育の全専攻分野共通の学習成果である「学士力」の議論を深めるためには、21世紀型の「教養ある人間」像と、彼らが持つべき「教養」とは何か、大学はその育成をどのように担うべきかという問題を考える必要がある。(1)「教養ある人間」像の普遍性とその時代変化に伴う差異の考察、(2)米国AAC&U(やOECD)と日本の21世紀認識や教養教育の方向性の確認、(3)産業社会的・職業的文脈と教養教育の変化と両者の関係の分析を行い、それらから(4)21世紀の教養教育のあり方を考察し、今後の教育実践への仮説的提案を行った。
著者
飯吉 弘子
出版者
大阪市立大学大学教育研究センター
雑誌
大学教育 (ISSN:13492152)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-11, 2019-10

本稿では、日本経団連の、主に2000年代後半以降2011年までの、大学卒・大学院修了の企業内高度ICT人材に対する(1)要求内容と(2)高度ICT人材という文脈からの要求が2011年の提言以降見られなくなった理由および、(3)高度ICT人材へと将来成長し活躍できる人材に向けた大学(院)での産学連携での実践や教育要求を確認するとともに、(4)今後の大学(院)教育のあり方を考察した。(1)日本経団連は、2011年の提言で、高度ICT人材を2類型(ICTゼネラリストとICTスペシャリスト)に分けて論じ、それまでに比してより幅広く明確に具体的に、求める人材像や能力・スキルを示すようになった。とくにゼネラリストには、ICT分野に限らない幅広い業種・分野でICTのスキル・知識を用いつつ、より高次の能力・資質・視野等を備え、課題を解決していくことが求められている。(2)なお、2011年の提言以降高度ICT人材に特化した要求は行われていないが、これは、産業界の要求が、ICTゼネラリストの議論や「グローバル・クリエイティブリーダー」育成プログラムへの期待に見られるような、2010年代後半以降活発化するSociety5.0に向けた議論等へと発展・変質していったためと考えられる。(3)一方、人材育成実践においては、大学院修士課程では、2000年代後半以降現在に至るまで産学連携で高度ICT人材育プログラムが展開されている。大学(院)新卒者へは、ICT分野の基礎知識・理解等の他に、幅広い分野の基礎知識や、汎用性のあるより高次の能力・スキル等の基礎を獲得させるための、産学連携による実践的教育の実施拡大とともに、他大学学生や社会人の受入れ等も提案されていた。 (4)高度ICT人材や今後の知識基盤社会や第4次産業革命時代に活躍出来る人間育成のためには、大学の本来的教育目標・学修成果達成の重要性の再認識と、多様な他者が多様な学問・視野・文脈を持ち寄り学び合う「学びの協働体」としての大学(教養)教育の場の可能性があると考えられる。
著者
吉本 圭一 亀野 淳 稲永 由紀 塚原 修一 村澤 昌崇 椿 明美 藤墳 智一 江藤 智佐子 酒井 佳世 木村 拓也 志田 秀史 三好 登 川俣 美砂子 飯吉 弘子 濱中 義隆 新谷 康浩 伊藤 一統 松高 政 坂野 慎二 長谷川 祐介 沼口 博 内田 由理子 安部 恵美子 渡辺 達雄 永田 萬享 飯田 直弘 舘 昭 小方 直幸 伊藤 友子 立石 和子 有本 章 赤司 泰義 秋永 雄一 佐藤 弘毅 杉本 和弘 竹熊 尚夫 ジョイス 幸子 吉川 裕美子 菅野 国弘 TEICHER Ulrich LE MOUILLOUR Isabelle SCHOMBURG Harald 石 偉平
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、ユニバーサル化した第三段階教育システムを対象とし、大学型・非大学型の教育プログラム単位での機能的分化と質保証のあり方を探究した。教育の目的・方法・統制の観点で、学術型とキャリア・職業型の教育を実証的に把握した。(1)共同IR型卒業生調査から学修成果の修得と活用、コンピテンシーの必要と修得という2つのベクトルがみられた。(2)非大学型教員調査の結果から機関の職業・地域志向性と個人の研究志向性との葛藤がみられた。(3)WILなどカリキュラム調査から教育高度化と内外ステークホルダー関与の方向性について、分野別の特徴を把握した。(4)国家学位資格枠組(NQF)から日本への示唆が得られた。
著者
飯吉 弘子 渡邊 席子 西垣 順子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

学生の「思考力(自分で考える力)」とその育成に焦点を当て、(A)「育成対象(思考力自体と学生の発達意識)」と(B)「育成主体(大学教員とその教育実践)」両面の文献調査・言説分析・質問紙調査の量的質的分析・ナラティヴ調査・実践事例研究等の各種調査分析を通して、「大学教育が担うべき思考力育成とその教育実践と教育の評価のあり方」の総合的研究を行い、批判的に思考する「態度」育成の重要性やその教育実践事例分類、学生の発達意識や教員の意識における思考力育成の可能性や重要性の認識分析、カリキュラムと教育の評価のあり方分析等を行い、批判的に思考する能力や態度の育成のあり方の方向性と可能性を考察した。