著者
木村 拓也
出版者
東北大学
雑誌
教育情報学研究 (ISSN:13481983)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.67-99, 2006-03

本稿の目的は、戦後日本において「テストの専門家」が一体誰であったのかを、学力調査と入学者選抜を含んだ「大規模学力テスト」の関係者一覧を作成し、それを通史的に辿ることによって検討することである。「テストの専門家」は、戦後直後に「教科の専門家」「教育測定(テスト理論)の専門家」「サンプリングの専門家」の構成で出発し、「文部省全国学力調査」が開始される1956(昭和31)年頃には「教科の専門家」のみを指すものとなっていた。1972(昭和47)年以降、「教科の専門家」と並んで「テストの専門家」として名乗りを上げたのが「教育心理学者(教育評価論者)」であり、現在まで文部科学省の調査においてはこの付置が継続している。更に最近では、「情報処理の専門家」「付帯調査に関心を抱く教育社会学者」が「テストの専門家」に加わりつつあるといった新たな局面(フェイズ)を迎えている。最後に、現在の「テストの専門家」の付置が引き起こす諸問題を指摘することで、今後の「大規模学力テスト」に必要とされる人員構成が示唆された。
著者
木村 拓也
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.165-186, 2007-05-31 (Released:2018-07-01)
参考文献数
47
被引用文献数
1

The purpose of this paper is to reexamine the use of “Comprehensive and Multi-dimensional Evaluation” as the basis for University Entrance Examinations. Though the phrase “Comprehensive and Multi-dimensional Evaluation” itself was first articulated in the 1997 report of the Central Council for Education (Chuou Kyoiku Shingikai), the concept itself came into existence immediately after the postwar period. In fact, “comprehensive evaluation” was merely an excuse for avoiding having to add the score of Japanese Scholastic Aptitude Test (Shingaku Tekisei Kensa, used from 1947 to 1954) into the total score of the University Entrance Examination. Moreover, the term “multi-dimensional evaluation” appeared in the outline of the University Entrance Examination (Daigaku Nyugakusha Senbatsu Jisshi Youkou), as it is proposed in the first report of the National Council on Educational Reform (Rinji Kyoiku Shingikai) in 1985.In fact, the report of the Central Council for Education (Chuo Kyoiku Shingikai) in 1971 stated that “Comprehensive and Multi-dimensional Evaluation” was scientifically valid as a basis for University Entrance Examinations. The report is famous as the only report based on evidence, and is generally known as the “1971 Report” (Yonroku Toushin). In the interim report, the Central Council for Education stated that follow-up surveys by the National Institute for Education and the Educational Test Research Institute (Nouryoku Kaihatu Kenkyujyo) had proven that a “Comprehensive and Multi-dimensional Evaluation” could be a valid selection method for predicting a good Grade Point Average after entrance to university.However, the two surveys cited contained simple statistical errors. The first, survey by the National Institute for Education, failed to control for the “Selection Effect.” A “Selection Effect” is a “restriction in range problem,” caused by cutting off the distribution at the passing grade. As a result, there is a tendency to misunderstand the fact that, in actuality, academic achievement tests on University Entrance Examinations have little relationship with Grade Point Average after entering university. To tell the truth, this problem had been pointed out as early as 1924 by Japanese psychologists who were interested in Entrance Examinations. In the second survey, by the Educational Test Research Institute, the inevitable nature of multiple correlation coefficients was ignored. As the number of independent variable increases one by one, the multiple correlation coefficient necessarily reaches the maximum of 1. In this paper, the follow-up research data from the Educational Test Research Institute is recalculated using a multiple correlation coefficient adjusted for the degrees of freedom. The conclusion is different from that reached by the Central Council for Education.This demonstrates that there is absolutely no scientific ground for the use of “Comprehensive and Multi-dimensional Evaluation.” In other words, it is not necessarily correct that putting a lot of effort into University Entrance Examinations and using anything more than academic achievement tests as reference for University Entrance Examination will lead to more students gaining good grades after entering university. If this mismeasure of academic achievement is not properly recognized, the number of university students who cannot achieve even low basic competence level will surely increase.
著者
木村 拓也
出版者
東北大学大学院教育情報学研究部
雑誌
教育情報学研究 (ISSN:13481983)
巻号頁・発行日
no.4, pp.67-99, 2006-03

本稿の目的は、戦後日本において「テストの専門家」が一体誰であったのかを、学力調査と入学者選抜を含んだ「大規模学力テスト」の関係者一覧を作成し、それを通史的に辿ることによって検討することである。「テストの専門家」は、戦後直後に「教科の専門家」「教育測定(テスト理論)の専門家」「サンプリングの専門家」の構成で出発し、「文部省全国学力調査」が開始される1956(昭和31)年頃には「教科の専門家」のみを指すものとなっていた。1972(昭和47)年以降、「教科の専門家」と並んで「テストの専門家」として名乗りを上げたのが「教育心理学者(教育評価論者)」であり、現在まで文部科学省の調査においてはこの付置が継続している。更に最近では、「情報処理の専門家」「付帯調査に関心を抱く教育社会学者」が「テストの専門家」に加わりつつあるといった新たな局面(フェイズ)を迎えている。最後に、現在の「テストの専門家」の付置が引き起こす諸問題を指摘することで、今後の「大規模学力テスト」に必要とされる人員構成が示唆された。
著者
木村 拓也 Lauro Augusto Cescon Matteo Zanfi Chiara Pinna Antonio Daniele 福澤 正洋
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.1883-1891, 2008-11-01
参考文献数
21

イタリアのボローニア大学S'Orsola-Malpighi附属病院で過去7年間に脳死ドナーから成人の小腸単独移植を28例(29移植)に行ったので報告する.方法:原疾患は短腸症候群と小腸機能不全が29移植中27移植(93%)で,移植の適応としては中心静脈アクセスの確保不能,中心静脈栄養に関連した合併症(繰り返す感染症,肝機能障害)が20例(69%)を占めた.免疫抑制剤はdaclizumab,alemtuzumab,antithymocyte globulinのいずれかをinductionに用い,tacrolimusを維持に用いた.Daclizumab投与例ではプレドニゾロンも併用した.結果:患者/グラフトの5年生存率は74%/71%であった.拒絶反応は13例に認め,全例にステロイドパルス療法を,2例にはOKT3を追加投与したが,1例は回復せず,graftの摘出を要した.6例死亡したが(中央値:400日)敗血症3例,アスペルギルス肺炎2例,CMV腸炎による多発穿孔1例とすべて感染症関連であった.生存例22例中19例は中心静脈栄養を必要とせず,経口摂取で生活し,生活の質が保たれていた.考察:成人の小腸単独移植は,induction therapyの導入や適応の選択などで他の臓器移植とほぼ同じ生存率を得ることが可能となってきた.小腸移植は小腸機能不全や短腸症候群患者における有用な選択枝となりえるが,拒絶反応,感染症で失う症例も多く,さらなる工夫が必要である.
著者
木村 拓也 荒井 克弘 大塚 雄作 林 洋一郎 西郡 大 立脇 洋介 中世古 貴彦 竹熊 尚夫 花井 渉 田中 光晴 渡辺 雅幸 牧 貴愛 関口 洋平
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究は,大学入学者選抜統一試験が、高等教育の大衆化・国際化・情報化という大きな変化の中で、如何に制度としての公平性・公正性を担保しているのかについて学際共同研究を行うものである。資格試験制度と選抜試験制度とがモザイク状に混在するアジア各国の大学入試制度に着目し、時代の変化と共に制度設計が益々困難となりつつある、大学入学者選抜統一試験に焦点を当てる。本研究では、教育計画論の立場から大衆化に代表される変化の中での大学入学者選抜統一試験の課題を理論的に精査し、比較教育学の立場からその制度変容(改革経緯)と制度設計の具体を精査し、社会心理学の立場から受験生の納得感を公正知覚の観点で計量分析を行う。
著者
山田 政寛 岡本 剛 島田 敬士 木村 拓也 大久保 文哉 小島 健太郎 緒方 広明
出版者
九州大学基幹教育院
雑誌
基幹教育紀要 = Bulletin of kikan education (ISSN:21892571)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.61-72, 2016

Higher educational organizations are required to improve educational quality recently in order to faster active life-long learners, and take several educational methods for that purpose such as the establishment of learning support out of class settings for active learning. Portfolio, in particular, e-portfolio is one of the helpful tools to promote the reflecting and planning of learner's learning outcome, which play an important role in the promotion of active learning. £-portfolio allows learner to store, manage, access, and maintain their learning outcome using electric devices, on the other hand, it has the functional limitations such as handwriting and annotations. However, the difference of learner's perceived effects on their learning is under the discussion, due to the lack of the findings about comparative research between e-portfolio types. This research aims to investigate the differences of the learner's perceived effects on their learning with between paper-based and e-portfolios. The findings reveal that paper-based portfolio was more effective than e-portfolio, in terms of the instructor's presence and the perceived ease of the access to the feedback from instructors. The perceived effects of e-portfolio in terms of the management and access ware superior to that of paper-based portfolio.
著者
木村 拓也 西郡 大 山田 礼子
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:13440063)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.189-214, 2009

<p> 本研究は,国際的に通用する「学士」水準の維持・向上が求められて行く中で必要とされる「大学教育効果」の測定方法論について検討したものである.本研究では,サンプルサイズ,多量の質問項目,従属変数にまつわる追跡調査と大学生調査が孕む構造的問題について,潜在クラス分析を用いることでその解決を試みた.まず,大学入学前後の状況を表した「高大接続情報」を用いて,潜在クラス分析を行い,5つの学生群にクラス分けした上で,学生の各クラスへの帰属確率を求めた.次に,因子分析によって,多量の質問項目をカテゴリー化して因子得点を求め,各学生群の帰属確率との間でノンパラメトリック回帰分析を行った.こうした分析方法により,各大学が学生の特徴に応じた「学士課程教育の構築」に資する基礎情報を過誤なく獲得する可能性を提示することができた.</p>
著者
吉本 圭一 亀野 淳 稲永 由紀 塚原 修一 村澤 昌崇 椿 明美 藤墳 智一 江藤 智佐子 酒井 佳世 木村 拓也 志田 秀史 三好 登 川俣 美砂子 飯吉 弘子 濱中 義隆 新谷 康浩 伊藤 一統 松高 政 坂野 慎二 長谷川 祐介 沼口 博 内田 由理子 安部 恵美子 渡辺 達雄 永田 萬享 飯田 直弘 舘 昭 小方 直幸 伊藤 友子 立石 和子 有本 章 赤司 泰義 秋永 雄一 佐藤 弘毅 杉本 和弘 竹熊 尚夫 ジョイス 幸子 吉川 裕美子 菅野 国弘 TEICHER Ulrich LE MOUILLOUR Isabelle SCHOMBURG Harald 石 偉平
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、ユニバーサル化した第三段階教育システムを対象とし、大学型・非大学型の教育プログラム単位での機能的分化と質保証のあり方を探究した。教育の目的・方法・統制の観点で、学術型とキャリア・職業型の教育を実証的に把握した。(1)共同IR型卒業生調査から学修成果の修得と活用、コンピテンシーの必要と修得という2つのベクトルがみられた。(2)非大学型教員調査の結果から機関の職業・地域志向性と個人の研究志向性との葛藤がみられた。(3)WILなどカリキュラム調査から教育高度化と内外ステークホルダー関与の方向性について、分野別の特徴を把握した。(4)国家学位資格枠組(NQF)から日本への示唆が得られた。
著者
山田 礼子 木村 拓也 井ノ上 憲司 森 利枝 舘 昭 吉田 文 西郡 大 園月 勝博 相原 総一郎 沖 清豪 杉谷 祐美子 田中 正弘 安野 舞子 渡辺 達雄
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究の成果は、(1)KCSS(韓国版大学生調査)を24年に実施し、日韓のデータ結合により分析、(2)日本では、平成25年まで、延べ866大学・短大から約14万人がJFS、JCSSとJJCSSに参加するなど標準的調査が根付いた。(3)24年には中国版CSSが試行され、25年には、上海市で中国版CSSの実施へと進展し日本発の標準的調査のアジアでの展開への基盤が形成されつつある。(4)2014年末までに、14万人のデータを格納し、参加大学が利用できるデータベースを開発、(5)日本のカレッジ・インパクト研究を下記で示す理論モデルにまとめたという5点が挙げられる。
著者
木村 拓也
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

テストによる品質保証が教育において求められている中で、「テストの専門家」は戦後減少の一途を辿り、「テストの専門家」の供給源も1 大学と限定されてきた現状が明らかとなった。結果、日本の公的テストを支える人材は限られており、少数の者の労苦と彼らのマンパワーに支えられている現状が浮き彫りになった。テスト学会会員対象に行った調査では、多種多様な分野からの参入が浮き彫りになり、様々なレベルでの「テストの専門家」の養成に努めなければならない事態であることが確認された。
著者
木村 拓也
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

近年、高等教育の質的保証が求められてくる中、今後、継続的な大学生調査が学内外で行われることを前提とし、学内外での調査同士の結果を比較可能なように等化したり、異なる年度に行われた調査を等化したりして、学習成果の経年変化を統計的に妥当な方法で検証できるようなアセスメント・モデルを構築した。試みに、大学満足度を例に、その経年変化及び学年毎の変化する満足度の状況を明らかにした。その結果、全国的な傾向として、満足度が1年次から2年次に向けて落ち込むことが分かった。ただし、1年次には、大学満足度が低くとも、学年進行が進むにつれて上がっていく大学も見られた。
著者
木村 拓也 Takuya KIMURA 京都大学経済研究所 Institute of Economic Research Kyoto University
出版者
東洋館出版社
雑誌
教育社会学研究 = The journal of educational sociology (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.165-186, 2007-05-31

The purpose of this paper is to reexamine the use of "Comprehensive and Multi-dimensional Evaluation" as the basis for University Entrance Examinations. Though the phrase "Comprehensive and Multi-dimensional Evaluation" itself was first articulated in the 1997 report of the Central Council for Education (Chuou Kyoiku Shingikai), the concept itself came into existence immediately after the postwar period. In fact, "comprehensive evaluation" was merely an excuse for avoiding having to add the score of Japanese Scholastic Aptitude Test (Shingaku Tekisei Kensa, used from 1947 to 1954) into the total score of the University Entrance Examination. Moreover, the term "multi-dimensional evaluation" appeared in the outline of the University Entrance Examination (Daigaku Nyugakusha Senbatsu Jisshi Youkou), as it is proposed in the first report of the National Council on Educational Reform (Rinji Kyoiku Shingikai) in 1985. In fact, the report of the Central Council for Education (Chuo Kyoiku Shingikai) in 1971 stated that "Comprehensive and Multi-dimensional Evaluation" was scientifically valid as a basis for University Entrance Examinations. The report is famous as the only report based on evidence, and is generally known as the "1971 Report" (Yonroku Toushin). In the interim report, the Central Council for Education stated that follow-up surveys by the National Institute for Education and the Educational Test Research Institute (Nouryoku Kaihatu Kenkyujyo) had proven that a "Comprehensive and Multi-dimensional Evaluation" could be a valid selection method for predicting a good Grade Point Average after entrance to university. However, the two surveys cited contained simple statistical errors. The first, survey by the National Institute for Education, failed to control for the "Selection Effect." A "Selection Effect" is a "restriction in range problem," caused by cutting off the distribution at the passing grade. As a result, there is a tendency to misunderstand the fact that, in actuality, academic achievement tests on University Entrance Examinations have little relationship with Grade Point Average after entering university. To tell the truth, this problem had been pointed out as early as 1924 by Japanese psychologists who were interested in Entrance Examinations. In the second survey, by the Educational Test Research Institute, the inevitable nature of multiple correlation coefficients was ignored. As the number of independent variable increases one by one, the multiple correlation coefficient necessarily reaches the maximum of 1. In this paper, the follow-up research data from the Educational Test Research Institute is recalculated using a multiple correlation coefficient adjusted for the degrees of freedom. The conclusion is different from that reached by the Central Council for Education. This demonstrates that there is absolutely no scientific ground for the use of "Comprehensive and Multi-dimensional Evaluation." In other words, it is not necessarily correct that putting a lot of effort into University Entrance Examinations and using anything more than academic achievement tests as reference for University Entrance Examination will lead to more students gaining good grades after entering university. If this mismeasure of academic achievement is not properly recognized, the number of university students who cannot achieve even low basic competence level will surely increase.