著者
山本 晋一郎 大元 謙治 井手口 清治 山本 亮輔 三井 康裕 島原 将精 井口 泰孝 大海 庸世 高取 敬子
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.91, no.7, pp.1205-1209, 1994 (Released:2008-02-26)
参考文献数
10

こむら返りを伴う肝硬変患者35例にタウリン1日3g,4週間投与を行った.症状の軽快は22例(62.9%)に認められた.8例にタウリン投与前後の血中タウリン濃度を測定した.投与前血中タウリン濃度は54.1±20.7nmol/mlに対し,投与4週後は125.1±59.1nmol/mlと前値の2.3倍となり,有意の増加が認められた.血中タウリン濃度の増加に伴い症状は軽快し,両者の間に一定の相関が示唆された.こむら返りを伴わない肝硬変10例における血中タウリン濃度は81.0±16.7nmol/mlと,こむら返りを伴う肝硬変患者に比して有意の高値を示した.タウリン投与後経時的に血中タウリン濃度を測定しえた例で,血中タウリン濃度は投与1週目にピークを示し,投与中前値の2~5倍の濃度に保たれていた.
著者
池田 弘 味埜 泰明 高橋 泰 井口 泰孝 井口 大助 藤田 浩二 大重 和樹
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.467-473, 2022 (Released:2022-07-28)
参考文献数
28

症例は85 歳,男性.糖尿病による慢性腎不全で血液透析導入となり,透析歴は2.7 年であった.高血圧,気管支喘息の合併あり.初発症状は発熱のみで,SARS-CoV-2 抗原検査の陽性が判明し入院となった.肺CT で両肺にすりガラス影が散在していた.第2 病日に酸素投与が必要となり,レムデシビル,デキサメサゾン,ファビピラビルの投与を開始したところ肺炎は改善した.第14 病日のCT ですりガラス影は改善するも左上区に新たな結節影が出現し,第27 病日には空洞を伴う陰影に変化した.第28 病日の血清ガラクトマンナン抗原(GM)が2.5(ODI)と陽性で,肺アスペルギルス症(PA)と診断し,第36 病日からボリコナゾールの投与を開始した.血清GM 抗原の低下とともに空洞病変は改善した.血液透析患者でCOVID-19 急性期に空洞を伴う非典型的な肺病変が出現した場合,PA を疑う必要がある.
著者
井口 泰
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.8-28, 2016 (Released:2018-06-11)
参考文献数
41
被引用文献数
1

地球規模の気候変動などグローバルリスクの高まり,地域の経済統合の進展や各国における所得・富の格差の拡大などを背景に,国際的な人の移動は増加傾向をたどる可能性がある。本稿は,これらの情勢を踏まえて,わが国の外国人労働者問題の現状を,社会政策との関連において整理し,将来を展望することを目的とする。 わが国の外国人労働者問題の経緯と制度・政策の改革の現段階を詳細に考察すると,1990年に発足した現在の国の制度的枠組みは,依然として出入国管理政策に偏り,外国人を受入国・社会に統合する政策の多くは,自治体の取り組みに依存する。こうしたなかで,1)アジアでは,急速な少子高齢化と若年人口の移動により,高度人材のみならず,ミドル・スキル職種を中心に低技能職種に至る多様な労働需給ミスマッチが発生している。日本でも,就労する外国人労働者のうち,就労目的で入国した者は3割に達せず,在留する外国人の言語習得や資格取得の支援の必要性が大きい。2)アジアの新興国経済が台頭するなか,次第に先進国から新興国への人材移動が高まってきた。日本でも,今世紀になって外国人人材の流出傾向が強まったが,アジアからの留学生増加が人材流出を補ってきた。3)アジアでは,若年者の地方から大都市への移動が進んでいる。日本では,若年人口の減少する地方都市で,外国人人口比率が高まり,永住権を有する外国人が在留外国人全体のが半数に達し,外国人二世・三世を受入国社会に統合する施策の重要性が高まっている。4)アジアでも,ASEAN共同体の発足に伴い,外国人の人権確保が重要課題として取り上げられた。ところが,日本では外国人差別の禁止などに関する法制度整備の進展は遅い。 難民の増加などで国際移動が高まるなか,わが国の現行政策の枠組みをこのまま維持していては,外国人が安定した就業・生活を享受できず,労働需給ミスマッチを緩和することも難しい。在留する外国人と子どもたちが社会の底辺層を形成するリスクを高めないよう,入管政策と統合政策を二本柱とする包括的な外国人政策への転換が急務である。
著者
井口 泰 西村 聡 藤野 敦子 志甫 啓
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
經濟研究 (ISSN:00229733)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.204-212, 2002
被引用文献数
1

雇用面からみた世代間利害不均衡の概念を確立し,その調整を図ることは,人口の少子・高齢化の下で,合理的な政策決定を促す上で重要である.雇用面からみた世代間利害調整に関し,これまで実施した理論・実証的研究の主要成果は次の通りである.①1990年代において,高齢者の雇用保障が若年者の失業を増加させるとの仮説は,マクロ・ミクロの両面から支持できない,②日本の育児の「機会費用」は欧米諸国と比較し非常に高く,このまま女性修業を拡大すれば少子化を促進し,世代間利害の不均衡を拡大しかねない,③労働時間短縮や柔軟化は,家計内分業や出生率の改善にプラスに作用し,世代間利害調整に貢献できる,④「地域統合」の枠組みで人材の国際移動を促進すれば,「頭脳流出」のリスクを抑制し,大量移民受け入れを回避し,世代間利害調整にも効果がある.総じて,世代間利害調整の視点から,少子・高齢化対策と外国人労働者政策の合理的な組み合わせを構想する必要がある.The authors try to establish a concept of "disequilibrium of inter-generational interests" in the field of employment and to explore possibilities to coordinate them. The main empirical findings are : 1) there is no empirical evidence that employment security of the elderly is creating more unemployment of the youth in Japan during the 1990s, 2) the "opportunity cost" of bearing children in Japan is extraordinarily high among the developed countries. 3) shortening of working hours may contribute to improvement of the division of labor within the family and to improve the rate of birth, 4) facilitating movement of the highly skilled via "regional integration" may reduce risks of "brain drain", avoid mass-immigration and facilitate coordination of inter-generational interests.
著者
加藤 周一 井口 泰孝 萬谷 志郎
出版者
社団法人日本鉄鋼協会
雑誌
鐵と鋼 : 日本鐡鋼協會々誌 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.253-259, 1992-02-01
被引用文献数
1

Deoxidation of liquid iron with barium was studied in the temperature range from 1600 to 1700℃. Barium and oxygen dissolved in liquid iron were brought into equilibrium in presence of pure barium oxide in the lime crucible under the inert gas atmosphere of argon. The equilibrium constant and standard free energy of the deoxidation reaction "BaO(s)=<Ba>___-(%)+O__-(%)" were obtained as follows : logK=-9980/T-1.82 (±0.11) △G°=191000+34.9T(J) (±4 kJ) The temperature dependences of the interaction parameters were expressed by the following equations : e^<Ba>_O=27.1-1.48×10^5/T e^O_<Ba>=233-1.27×10^6/T The standard free energy of solution of barium in liquid iron and the activity coefficient of barium in the infinite dilute liquid iron solution refered to pure barium (γ°_<Ba>) were calculated and discussed.
著者
井口 泰泉
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設)
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

ミジンコ類(枝角目甲殻類)は世界中の淡水に生息し、扱い易いことから生態学の研究に用いられてきた。我々は化学物質などの環境要因に応答する遺伝子を網羅的に解析するエコ(トキシコ)ゲノミクスを開始しているが、今後詳細に遺伝子機能解析を進めるには、導入遺伝子の発現を自在に制御することが必要不可欠である。本研究では遺伝的な交配実験系の開発について解析を行い、ミジンコは、複数の外部環境シグナルを統合して、単為生殖と有性生殖を切り替えることが分かった。また遺伝子導入法に改良を加えてその効率化を行った。これらの知見は、今後トランスジェニックミジンコ作出するための基礎的な知見として応用可能である。
著者
井口 泰
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.8-28, 2016

<p> 地球規模の気候変動などグローバルリスクの高まり,地域の経済統合の進展や各国における所得・富の格差の拡大などを背景に,国際的な人の移動は増加傾向をたどる可能性がある。本稿は,これらの情勢を踏まえて,わが国の外国人労働者問題の現状を,社会政策との関連において整理し,将来を展望することを目的とする。 わが国の外国人労働者問題の経緯と制度・政策の改革の現段階を詳細に考察すると,1990年に発足した現在の国の制度的枠組みは,依然として出入国管理政策に偏り,外国人を受入国・社会に統合する政策の多くは,自治体の取り組みに依存する。こうしたなかで,1)アジアでは,急速な少子高齢化と若年人口の移動により,高度人材のみならず,ミドル・スキル職種を中心に低技能職種に至る多様な労働需給ミスマッチが発生している。日本でも,就労する外国人労働者のうち,就労目的で入国した者は3割に達せず,在留する外国人の言語習得や資格取得の支援の必要性が大きい。2)アジアの新興国経済が台頭するなか,次第に先進国から新興国への人材移動が高まってきた。日本でも,今世紀になって外国人人材の流出傾向が強まったが,アジアからの留学生増加が人材流出を補ってきた。3)アジアでは,若年者の地方から大都市への移動が進んでいる。日本では,若年人口の減少する地方都市で,外国人人口比率が高まり,永住権を有する外国人が在留外国人全体のが半数に達し,外国人二世・三世を受入国社会に統合する施策の重要性が高まっている。4)アジアでも,ASEAN共同体の発足に伴い,外国人の人権確保が重要課題として取り上げられた。ところが,日本では外国人差別の禁止などに関する法制度整備の進展は遅い。 難民の増加などで国際移動が高まるなか,わが国の現行政策の枠組みをこのまま維持していては,外国人が安定した就業・生活を享受できず,労働需給ミスマッチを緩和することも難しい。在留する外国人と子どもたちが社会の底辺層を形成するリスクを高めないよう,入管政策と統合政策を二本柱とする包括的な外国人政策への転換が急務である。</p>
著者
萬谷 志郎 井口 泰孝 本多 弘 石塚 晴彦
出版者
The Iron and Steel Institute of Japan
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.71, no.7, pp.846-852, 1985-05-01 (Released:2010-01-19)
参考文献数
18
被引用文献数
2 3

The heat of mixing of silica(β-cristobalite) with liquid wustite melted in an iron vessel has been directly measured at 1420°C by the modified isoperibol calorimeter(iso-thermal jacket type). Mixing of solid silica with liquid wustite is an exothermic reaction and the measured heat, ΔHFetO(l)-SiO2(β-cristobalite), is about-900cal/mol at the fayalite composition. Heats of mixing of liquid silica with liquid wustite, ΔHMFetO(l)-SiO2(l), are obtained by the combination of this direct measured results and heat of fusion of SiO2 in the reference. This result is discussed in comparison with the estimated values by the thermochemical data and by the assumption of the regular solution.
著者
堀口 敏宏 太田 康彦 森下 文浩 井口 泰泉
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

イボニシから脊椎動物のRARとアミノ酸配列の相同性が比較的高いRAR様配列(イボニシRAR)が単離された。All-trans レチノイン酸(ATRA)添加時のウエスタンブロットにより、イボニシRARタンパクは発現したが、転写活性は誘導されなかった。イボニシRARとヒトRARαのリガンド結合部位を融合させATRA, 9-cis レチノイン酸, 13-cis レチノイン酸, All-trans レチノール添加時でもイボニシRARの転写活性は誘導されず、イボニシRARのDNA結合部位をヒトRARαリガンド結合部位と融合させると転写活性が誘導された。イボニシRARとRXRは相互作用すると考えられた。
著者
堀口 敏宏 太田 康彦 井口 泰泉 森下 文浩
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

イボニシ(Thais clavigera)を中心に、RXRに関する生物学的特徴と、ペニス及び輸精管の分化・成長・形態形成との関係を解析した。イボニシRXRには2つのアイソフォームが存在し、両者で転写活性能が異なること、並びに9-cisレチノイン酸(9cRA)、トリブチルスズ(TBT)及びトリフェニルスズ(TPT)により転写活性の誘導がみられることなどを明らかにした。イボニシとバイ(Babylonia japonica)における生殖腺の分化及び生殖輸管の発達を組織学的に調べ、明らかにした。イボニシの神経ペプチドに関する基礎知見を得た。イボニシとバイにおける脊椎動物様ステロイドの検出を試みるとともに、ステロイド受容体が見出されないこと、アロマターゼ阻害剤とテストステロンでインポセックスの発症・増進が見られないことを明らかにした。
著者
井口 泰泉
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

周生期のマウスへのエストロゲン投与に、生殖器官に不可逆的な影響が現れる。この誘導には主としてエストロゲン受容体αが関与していることが明らかとなった。さらに、卵巣非依存の細胞増殖を示す膣で不可逆的に高発現している遺伝子を同定した。これらの遺伝子のメチル化状態を調べたところ、細胞増殖に関連する遺伝子のメチル化状態には差が認められなかったが、エストロゲン受容体αの活性を制御すると思われる遺伝子のメチル化状態が高く、この遺伝子の発現は低下していたことから、卵巣非依存の細胞増殖を示す膣ではエストロゲン受容体の働きを抑制する遺伝子にメチル化が入り、この遺伝子の発現が低下することにより、恒久的なエストロゲン受容体αの活性化、リン酸化が起こり、細胞増殖関連の遺伝子が恒久的に発現し、卵巣非依存の細胞増殖が起こっていると考えられる。