- 著者
-
和田 淑子
阿部 廣子
杉山 久仁子
- 出版者
- 一般社団法人日本調理科学会
- 雑誌
- 日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.1, pp.37-45, 1998-02-20
- 被引用文献数
-
2
高齢化社会を迎えて, 健康な高齢者が充実した食生活を送ることはきはめて重要なことであり, 高齢夫婦にとって快適な食事作りのための環境を整えることは, この問題の出発点となる最も基本的なことである。しかし, 高齢夫婦のみの世帯を対象とした食事作りに関する調査はあまり行われていないため, その実態を調査し, 学生家族世帯(一般世帯)との比較検討を行った。調査は横浜市金沢区在住の高齢夫婦世帯274, 本学学生世帯475を対象とし, 自己記入法によりアンケート形式で行った。調査結果は次の通りである。食事の摂り方に関しては夫婦一緒に朝食, 夕食を食べることが多く, 90%以上であった。食事作りを楽しいと感じる人が42%いるが, 献立を考えることと後片付けには負担を感じている。高齢になるほど料理への負担感は増す一方, 後片付けの負担感は減少する。また, 食事は和風献立が多くなり, 食事内容を決める際には配偶者の意見が大きい。食料品の買い物は, スーパー以外に個人商店を利用する割合も高く, 買い物の頻度は約半数が毎日だあったが, 75才以上の高齢者では, 2〜3日おきが70%を占めていた。買い物では値段より自分の好みを考慮する割合が高く, 惣菜の購入が比較的多いのが特徴である。また, 買い物では荷物が重い, 少量買えない, 表示が見づらいなど不満点も見られた。高齢夫婦世帯の外食の頻度は学生家族世帯に比べて高いが, 75歳以上ではその割合が減少し, 学生家族世帯と同程度となる。食事サービスへの関心は, 弁当・寿司などの即喫食の可能な宅配サービスに高かった。調理器具については高齢者の方が所有器具をよく利用していたが, 器具の使用に際して, 力が入らない, 操作が複雑, 表示が見えにくい, 器具が重いなどの取り扱い上の問題点が多かった。以上の結果から, 高齢者の自立した食事作りを支援するために検討を要する問題として, (1)食料品の買い物時における不都合な条件が軽減されるような販売面での配慮やサービスが望まれる, (2)調理の場において加齢と共に低下する身体機能に対応できる使いやすい器具のあり方に多くの課題があげられる。