著者
安達 一寿 中尾 茂子
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.11-20, 1995

一般情報処理教育におけるプログラミング学習での学生のつまずき箇所を,その学習過程から抽象化プロセスと構造化プロセスに大別し,学生のつまずき箇所からグルーピングを行い傾向を分析した.その結果,つまずき箇所が抽象化プロセスにある学生はプログラミング以外の要因による理解不足が見られ,コンピュータ親和度も低い.つまずき箇所が構造化プロセスにある学生は,意味論的知識に関わる部分では問題のモデル化ができ,コンピュータ親和度も高いことが明らかになった.
著者
安達 一寿 中尾 茂子
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.11-20, 1995-03-30 (Released:2017-06-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

一般情報処理教育におけるプログラミング学習での学生のつまずき箇所を,その学習過程から抽象化プロセスと構造化プロセスに大別し,学生のつまずき箇所からグルーピングを行い傾向を分析した.その結果,つまずき箇所が抽象化プロセスにある学生はプログラミング以外の要因による理解不足が見られ,コンピュータ親和度も低い.つまずき箇所が構造化プロセスにある学生は,意味論的知識に関わる部分では問題のモデル化ができ,コンピュータ親和度も高いことが明らかになった.
著者
中尾 茂 八木原 寛 平野 舟一郎 後藤 和彦 内田 和也 清水 洋
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

The earthquake (JMA Magnitude 7.1) occurred on November 14, 2015 in the area of west off Satsuma peninsula. The epicenter is located in Okinawa Trough where is in about 160 km west from Makurazaki City in Kagoshima Prefecture. This earthquake is one of the largest earthquakes in this area. Seismicity in this area is low in last twenty years. Two continuous GNSS sites are operated by Kagoshima University, one is UJIS site in Uji island which is 84 km to east from the epicenter and the other is MESM site in Meshima island which is 121 km north from the epicenter. At UJIS seismic observation is also operated by Kagoshima University and it is operated by Kyushu University at MESM. We went to those sites in order to get GNSS and seismic data because GNSS and seismic data are not telemetered at those sites. In this research, co-seismic crustal deformation and activity of aftershocks are reported.We relocated the main shock and aftershock until 10:00 on November 16. Length of aftershock area is about 60 km. Its Strike is the same of Okinawa Trough. The epicenter of the main shock is located at the south-west end of the aftershock area and maximum aftershock, which is occurred on November 15, is at north-east end. Activity of aftershock in northern part of aftershock area is high. However, in southern part it is low except aftermath of occurrence of the main shock.GNSS data analysis is by Bernese GNSS software Ver. 5.2 with CODE precise ephemeris. Daily site coordinates of UJIS and MESM are calculated with GEONET sites. Coseismic deformation is estimated by the difference between two days averages before and after the main shock. Displacement at UJIS and MESM is 0.82 cm and 0.65 cm, respectively. The theoretical coseismic deformation is estimated by a strike slip fault model (Okada, 1992). Fault length, strike, dip angle and fault position are estimated by the length of aftershock area. Fault width is assumed a half of the fault length. Amount of fault slip is estimated by the relationship between earthquake magnitude and moment (Sato, 1979). JMA moment magnitude 6.7 is used (JMA, 2015). Theoretical displacement at UJIS and MESM is 1.3 cm and 1.1 cm. Direction of observed displacement is coincident with that of theoretical displacement. However, amount of observed displacement is smaller than theoretical one.
著者
加藤 肇 中尾 茂 中田 悟史 佐藤 礼一郎 大西 守 田島 誉士
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.379-383, 2015

サルモネラ・ティフィムリウム及び同ダブリンの不活化菌体抗原を主成分とし,エンドトキシン中和剤であるポリミキシンB硫酸塩を含む牛サルモネラ症不活化ワクチンを,健常なホルスタイン種育成牛8頭に接種した際の生体の反応を,臨床病理学的に観察した.ワクチン接種後に食欲の低下や一般状態の悪化は認められなかった.注射部位に一過性の腫脹及び硬結が認められた.血液検査所見では,ワクチン接種後24時間以内に,急性炎症の指標となるヘマトクリット値,血清総蛋白質濃度,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性値,クレアチンキナーゼ活性値及びシアル酸濃度の有意な上昇が認められた.一方,ワクチン接種後にエンドトキシンショックや過敏症反応を疑わせる臨床症状は認められなかった.免疫学的な有効性が認められて市販されている本ワクチンは,接種部位の局所的な急性炎症を起こすが,重篤な副反応を引き起こす可能性は低いと考えられた.
著者
清水 洋 松本 聡 酒井 慎一 岡田 知己 渡辺 俊樹 飯尾 能久 相澤 広記 松島 健 高橋 浩晃 中尾 茂 鈴木 康弘 後藤 秀昭 大倉 敬宏 山本 希 中道 治久 山中 浩明 神野 達夫 三宅 弘恵 纐纈 一起 浅野 公之 松島 信一 福岡 浩 若井 明彦 大井 昌弘 田村 圭子 木村 玲欧 井ノ口 宗成 前原 喜彦 赤星 朋比古 宇津木 充 上嶋 誠 王 功輝 ハザリカ ヘマンタ 矢田 俊文 高橋 和雄
出版者
九州大学
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2016-04-22

2016年熊本地震について、地震活動や地殻変動、活断層、火山活動への影響、地震災害の特徴などを調査した。その結果、熊本地震は布田川・日奈久断層帯の右横ずれ運動によって発生したが、複数の断層面と複雑な断層形状を持つことを明らかにした。また、建物被害や土砂災害の地盤との関係、特に、地盤の過剰間隙水圧が地すべりの発生要因であることを明らかにした。さらに、災害情報や災害過程、被災救援、エコノミークラス症候群などについての調査から、広域複合災害の問題点と対応策を提示した。
著者
七條 彰啓 中尾 茂 松島 健 大倉 敬宏
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学理学部紀要 = Reports of the Faculty of Science, Kagoshima University (ISSN:13456938)
巻号頁・発行日
no.52, pp.15-22, 2019-12-31

Position of block boundary around Kagoshima – Miyazaki/Kumamoto prefecture's border is investigated by using Block-Fault Model. Displacement velocity at each continuous GNSS site are estimated by least squares method. 37 block-fault models are made. Block rotation and fault deficit's rate are estimated using displacement velocities and ????2 are calculated. The boundary line from Akune, Kagoshima prefecture to Uchiumi of Miyazaki City, Miyazaki prefecture is the best model. The boundary plane is sloping to the south direction.
著者
高橋 浩晃 大園 真子 宮町 宏樹 谷岡 勇市郎 蓬田 清 吉澤 和範 中尾 茂 一柳 昌義 山口 照寛 ゴルディエフ エフゲニー ブイコフ ビクター ゲラシメンコ ミハイル シェスタコフ ニコライ ワシレンコ ニコライ プリトコフ アレキサンダ レビン ユーリ ワレンチン ミハイロフ コスティレフ ドミトリ チェブロフ ダニラ セロベトニコフ セルゲイ
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ロシア極東地域から中国東北部を含むアジア北東地域のテクトニクスの解明を目指し,地震とGNSS観測を実施した.2011年東北地方太平洋沖地震による広域的な余効地殻変動が観測され,ロシア沿海州地方は地震時変動を上回る変位が得られた.ロシア極東地域に展開した広帯域地震観測網のデータから,当該地域の上部マントル地震波速度構造を明らかにし日本海下に低速度異常を確認した.上部マントルの粘弾性構造の推定から,日本列島周辺で繰り返し発生する巨大地震がアジア北東地域に長期的な余効変動を引き起こしてきた事実を明らかにした.また当該地域の特徴的な地震活動を明らかにした.
著者
笠原 稔 宮町 宏樹 日置 幸介 中川 光弘 勝俣 啓 高橋 浩晃 中尾 茂 木股 文昭 加藤 照之
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

ユーラシアプレートと北米プレートの衝突帯には、2つの巨大プレートとは独自の変動をするオホーツクプレートとアムールプレートの存在が提案されてきた。そこで、実際の観測の手薄な場所でもあったこの地域での境界域テクトニクスを検討するために、想定アムールプレート内のGPS観測により確認することと、この地域での地震観測の充実を意図して、この研究計画は進められた。1995年以来進めてきた日口科学技術協力の一環として、この地域での共同研究の推進に関するロシア科学アカデミーと日本側大学連合との合意を元に、2002年から2004年の計画で、GPSの可能な限りの多点化と連続観測を主として極東ロシアでの観測を進めてきた。また、地震観測は、サハリン島の衝突境界としての特徴を明らかにするために、南サハリン地域での高感度高密度観測を推進してきた。結果として、アムールプレートの動きは想定していたほど単純なものではなく、計画の3年間では結論付けられなかったが、その後の日口での観測継続の結果、サハリンでの短縮はかなり明瞭ながら、その原因をアムールプレートの東進とするには、まだ難しいということになっている。今後、ロシア側の観測網の充実が図られつつあり、その解決も時間の問題であろう。一方、サハリンを含む、日本海東縁部に相当する、2つのプレートの衝突帯と想定される場所での地震活動は高く、2000年8月のウグレゴルスク南方地震の後も、中越地震、留萌支庁南部地震、能登半島沖地震、そしてネベリスク地震、と引き続き、これらの地震発生帯が、2つのプレートの衝突境界域であることを示していると思われる。また、南サハリンでは、高感度高密度地震観測が続けられ、明瞭な南北延長の地震活動帯が認識できるようになってきた。これらは、北海道の地震活動帯の延長と考えられ、今後より一層、衝突帯のテクトニクスを考える上でのデータを提供できたものと評価できる。
著者
中尾 茂
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

東京大学地震研究所鋸山地殻変動観測所に設置された10器のボアホール歪計で観測された歪データを用いて,ボアホール歪計の地殻歪に対する応答を評価する目的で潮汐解析を行なった.まず,公衆回線を用いたテレメータで回収されるデータ以外のデータ回収を行なった.現地ではパーソナルコンピュータを用いてハードディスクにデータを記録している.潮汐解析はBAYTAP-G(Ishiguro et al.,1984)を用いて行なった.解析期間は1992年10月の観測開始から1995年1月のデータであり,計算は1月毎に潮汐の振幅,位相を計算した.歪計各成分とも振幅は【plus-minus】10%以内のばらつきはあるもののそれ以上の大きな振幅変化はなかった.位相については平均値の【plus-minus】5度以内のばらつきであった.10器の歪計のうち同じ成分を測っている歪計は2〜3器ある.M2分潮(周期12.42時間)の振幅は同じ方向の観測成分についても2倍〜7倍異なっており,位相については2〜3度以内で一致し予測値はGOTICの日本版であるLTD2(Sato and Hanada,1984)を一番細かいメッシュサイズが約1km四方の海岸線データを用いて計算した.観測値と比較すると振幅は予測値の35%〜400%の範囲であり,位相については予測値からの遅れが最大で41度,最小で1度であった.予測値と観測値との差異は予測値を計算するときに用いる海岸線データの細かさ,海洋潮汐モデルの正確さに原因があると考えられる.そこで,観測点近傍の海岸線データを30mメッシュで作成し,計算した.また,鋸山検潮所のデータを用いて計算した海洋潮汐の振幅,位相をも参考にして観測点近傍の海洋潮汐モデルを作成した.振幅は予測値と観測値の差が小さくなるが,位相は90度近く観測値とことなる.これは海洋潮汐荷重潮汐の振幅の見積もりが改善前と比べて小さいことが原因であり,観測点近傍の海洋潮汐モデルの見直しが必要である.
著者
堀 貞喜 石田 瑞穂 青井 真 井上 公 大久保 正 岡田 義光 小原 一成 笠原 敬司 木村 尚紀 熊谷 博之 汐見 勝彦 関口 渉次 根岸 弘明 野口 伸一 松本 拓己 山水 史生 藤原 広行 功刀 卓 浅野 陽一 関根 秀太郎 廣瀬 仁 松原 誠 安逹 繁樹 伊藤 喜宏 針生 義勝 松林 弘智 松村 稔 宮川 幸治 山品 匡史 坂無 雅子 雷 楓 伊東 明彦 岩田 知孝 ト部 卓 川勝 均 木下 繁夫 工藤 一嘉 纐纈 一起 佐藤 春夫 佐藤 比呂志 武井 恵雄 中尾 茂 平田 直 平原 和朗 堀家 正則 松澤 暢 山北 聡 綿田 辰吾 山野 誠
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
防災科学技術研究所年報 (ISSN:09186441)
巻号頁・発行日
vol.15, pp."I-12"-"I-16", 2004-09-06

地震調査研究推進本部の総合基本施策(「地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策(平成11年4月23日)」)、及び調査観測計画(「地震に関する基盤的調査観測計画(平成9年8月29日)」、「地震に関する基盤的調査観測計画の見直しと重点的な調査観測体制の整備(平成13年8月28日)」、「地震に関する基盤的調査観測等の結果の流通・公開について(平成14年8月26日)」)等に基づき、高感度・広帯域地震観測施設と強震観測施設を整備し、観測網の維持・管理・運用を行う。これら基盤的観測網と防災科研の在来地震観測網から得られるデータの収集・処理を行い、気象庁、大学等のデータと合わせて蓄積・流通・公開を行う。また、防災科研が海外に整備した観測施設についても、円滑な維持・管理とともに、観測方式の高度化を行いつつ、データの収集・処理・蓄積・公開を行う。さらに、各観測網から得られるデータを用いて、高度な地殻活動のモニタリングを実施し、地震活動状況の推移を判断するための研究成果を創出する。
著者
徳永 正二郎 FRIEDEN Jeff 池間 誠 ANDERSON Kym NOORDIN Sopi EATON Jonath WONG John 大野 健一 中本 悟 PAULEY Louis 中尾 茂夫 DEKLE Robert 高坂 章 UNGER Daniel 花崎 正晴 FRANKEL Jeff ARIFF Mohame PAULY Louis LINCOLN Edwa KIM Chang So 楊 秀吉 桜井 真
出版者
九州大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

本研究では、(1)日本、アジアNIEs、ASEAN、中国へと連鎖したアジア経済のダイナミックな発展とそれに平行して現実性を持ちはじめた太平洋両岸の地域経済圈形成(「北米自由貿易協定」を軸としたアメリカ大陸自由貿易圈形成並びに「東アジア経済協議体(East Asia Economic Caucus)」にみられるアジア経済圏形成)の動きがみられるが、それら両者はどのような相関性および相互作用を持っているか、(2)アジア地域経済において日本・アジアNIEs、ASEAN、中国を中心に相互依存の関係が深化拡大しているが、そのプロセスでアジア諸国、日本、米国において経済・通商政策に変化がみられるかどうか、また発展の程度や立場を異にする諸国経済の経済・通商・投資・金融政策相互の間にいかなる軋轢や収歛(convergence)がみられるか、(3)アジア及び北米における地域主義の台頭が日米の政治・経済関係にどのような影響を及ぼし、日米関係がいかなる方向に変容しつつあるか、という設問の上で、調査研究を進めてきた。この作業は、アジア経済の成長と日米関係の変容という二つの(複眼的)分析視角のもとで、ポスト冷戦期の世界経済秩序を展望することを意図している。初年度(1993年度)には、アジアと北米の地域主義に焦点を当て、その問題を軸に(1)地域経済の発展とアジア太平洋地域経済秩序、(2)アジア太平洋経済における日本と米国、(3)アジア太平洋地域経済の発展-課題と展望という3つのセッションに分かれて調査研究した(九州大学にてワークショップを開催し、Asian Economic Dynamism and New Asia-Pacific Economic Orderとして刊行)。次年度(1994年度)には、東南アジアにおける実態調査を行い、ポスト冷戦期という政治的経済的世界システムの再編過程で発生している通商・金融・援助等多岐にわたる日米間の経済的摩擦がアジアの成長とどのように関係しているか、またアジアにおける地域主義の実態について分析した(タイ王国チュラロンコン大学経済学部及び国際経済研究所の協力で、本プロジェクトの共同研究者とチュラロンコン大学、タマサート大学その他研究機関の研究者とが一堂に会してワークショップを開催した)。本年度(1995年度)の研究テーマは、初年度と次年度の研究成果を踏まえて、「アジアにおける経済成長、社会経済的変容及び地域主義」を日米双方の立場から調査研究した。この調査には、アジア金融市場及びアジア域内資金フローの研究に業績をあげている奥田英信(一橋大学講師)、ベトナムやラオスなどインドシナ半島の社会経済問題のエキスパートであるモンテス(Manuel F.Montes;ハワイ東西センター研究員)、日本研究のエキスパートであるモリソン(Charles Morrison;ハワイ東西センター)、韓国の対外経済研究の第一人者であるリ-(Lee H.Chun;ハワイ大学韓国研究所所長)及び米国における日本研究の先導者モチヅキ(Michael M.Mochizuki;ブルッキングズ研究所主任研究員)を研究協力者として招き、ハワイ東西センターでワークショップを開催した。これは、角度を変えてみれば、アジア地域の社会経済的発展を日米関係を通して調査研究することであり、アジア太平洋の新しい経済秩序を構成する二つのファクター(すなわち、「アジアの成長・社会経済の変容・地域主義」という古いシステムを破壊するファクターと「日米基軸」という伝統的ファクター)の相関性と相互作用について認識を深めることにつながった。1994年度及び1995年度の研究成果は、初年度同様公刊の予定である。
著者
加藤 照之 CATAPANG Her KOSHIBA Frit PARK PilーHo FEIR Remato GERASIMENKO ミハエル BEAVAN John 小竹 美子 平原 和郎 中尾 茂 笠原 稔 GERASIMENKO Michael D HERBERT Cata FRITZ Koshib PILーHO Park RENATO.B. Fe MICHAEL Gera JOHN Beavam FEIR B. Ren
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

西太平洋地域は収束するプレート境界が複雑に入り組み、多くの海盆やトラフがあって地震や火山噴火の活動の盛んな地域である。この地域のプレート運動とその境界の非剛体的変形を検出して監視することにより各種の地殻活動の予測に役立てられると同時にプレート運動の機構がより詳しく明らかにされると期待される。最近のGPSによる基線解析では1000kmを1cmの精度で計測することが可能である。そこで本研究では、これまでの日米科学協力事業等による基礎調査をふまえて西太平洋地域にGPS連続観測網を構築した短期間の観測研究により当該地域の変位場を明らかにすることを目的とした。本研究では、IGS(国際GPSサービス機構)のグローバル観測網の手薄な地域に観測点を建設して資料を蓄積すると同時にIGSによるデータを取り込みながら得られたデータを解析して観測点の速度ベクトルを算出するという観測と解析を並行して実施するという方式をとった。平成7年度には気象研究所と共同で南鳥島に連続観測点を建設したのを手始めに、トラック島、マニラ、大田、ウラジオストックに観測点を建設しいずれも現地収録方式により観測を開始した。また、平成8年度にはポートモレスビ-に観測点を建設した。これにより、別途設置した石垣島とパラオとを合わせ8点のGPS連続観測点を建設し、IGSの他の観測点と合わせ西太平洋に1000kmスケールのGPS連続観測網を建設することができた。この観測網から取得できた1995年7月からのデータを用いて基線解析を実施しつつある。ここでは最高精度による基線解析を実施するため新たにfiducial freeによる解析方法を考案した。この方法ではIGSグローバルサイトの観測点を取り込み、観測網全体がバイアスを持たないようにしたうえ、どの観測点も固定しないで解くという方法を用いる。ソフトウェアはBernese software Ver.4.0を用い、IGS精密暦を使って解析を実施した。こようにすると、座標の絶対値は正確には求められないが、基線は正確に求められる。このようにして基線を求めた上でHeki(1996)によるつくば(TSKB)の速度を与えて固定し、全観測点の位置座標を決定する。このような解析を毎日のデータについて実施し、各観測点の時系列を得た上で直線近似によって速度ベクトルを求める。求めた速度ベクトルをマップにまとめたところいくつかの新しい事実が判明しつつある。1)マニラの観測点は北西に約4cm/yrの速度で移動しつつあり、フィリピン海プレートによる圧縮の影響が顕著である。2)石垣の観測点は南南東へ約6cm/yrで移動しつつあり、フィリピン海プレートが押している影響は見られない。このプレート境界はむしろカップリングは弱く、背孤である沖縄トラフが拡大しつつあるのを見ているものと考えられる。3)グアムはフィリピン海プレートないにあるにも関わらず、その変位速度は剛体的変位から考えると速度が小さすぎる。マリアナトラフの拡大の影響を受けているものと考えられる。4)大田、上海、イルク-ツク等の東アジアの観測点はすべてヨーロッパに対して東向きの変位を持ち、インドプレートの北方への衝突による大陸地殻の東への押し出しの影響を見ているものと考えられる。以上を要するに、本研究によって西太平洋地域にはじめてGPSの連続観測網が構築され、テクトニクス研究の基礎を築くことができたと同時に、日本の南西諸島,フィリピン,マリアナ諸島などにおいて従来の剛体的プレートモデルでは説明できないようなプレート境界部における非剛体的変位が明らかになりつつある。このことをふまえ、今後もこの地域にGPS観測点を増強すると共にその観測領域を東アジアに拡げ,当該地域のテクトニクスを明らかにすべく観測研究を強化する予定である。また、本観測網は「海半球ネットワークプロジェクト」(新プログラム:研究代表者 深尾良夫)に引き継がれ、引き続き観測を続行する予定である。