- 著者
-
中尾 茂
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 奨励研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1996
東京大学地震研究所鋸山地殻変動観測所に設置された10器のボアホール歪計で観測された歪データを用いて,ボアホール歪計の地殻歪に対する応答を評価する目的で潮汐解析を行なった.まず,公衆回線を用いたテレメータで回収されるデータ以外のデータ回収を行なった.現地ではパーソナルコンピュータを用いてハードディスクにデータを記録している.潮汐解析はBAYTAP-G(Ishiguro et al.,1984)を用いて行なった.解析期間は1992年10月の観測開始から1995年1月のデータであり,計算は1月毎に潮汐の振幅,位相を計算した.歪計各成分とも振幅は【plus-minus】10%以内のばらつきはあるもののそれ以上の大きな振幅変化はなかった.位相については平均値の【plus-minus】5度以内のばらつきであった.10器の歪計のうち同じ成分を測っている歪計は2〜3器ある.M2分潮(周期12.42時間)の振幅は同じ方向の観測成分についても2倍〜7倍異なっており,位相については2〜3度以内で一致し予測値はGOTICの日本版であるLTD2(Sato and Hanada,1984)を一番細かいメッシュサイズが約1km四方の海岸線データを用いて計算した.観測値と比較すると振幅は予測値の35%〜400%の範囲であり,位相については予測値からの遅れが最大で41度,最小で1度であった.予測値と観測値との差異は予測値を計算するときに用いる海岸線データの細かさ,海洋潮汐モデルの正確さに原因があると考えられる.そこで,観測点近傍の海岸線データを30mメッシュで作成し,計算した.また,鋸山検潮所のデータを用いて計算した海洋潮汐の振幅,位相をも参考にして観測点近傍の海洋潮汐モデルを作成した.振幅は予測値と観測値の差が小さくなるが,位相は90度近く観測値とことなる.これは海洋潮汐荷重潮汐の振幅の見積もりが改善前と比べて小さいことが原因であり,観測点近傍の海洋潮汐モデルの見直しが必要である.