- 著者
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水内 俊雄
吉原 直樹
高木 彰彦
山野 正彦
野澤 秀樹
竹内 啓一
久武 哲也
水岡 不二雄
- 出版者
- 大阪市立大学
- 雑誌
- 基盤研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1995
本研究グループのテーマは次の3つに設定されていた。(1)地理思想、(2)地政学、(3)最近の地理学の理論的動向のキャッチアップであり、こうした成果を直ちに公刊するという課題を掲げていた。この、成果の公刊という点では、3年間の研究助成を通じ、『空間・社会・地理思想』を1号から3号まで刊行し、論説3本、フォーラム5本、翻訳22本を掲載したことを指摘しておきたい。本雑誌が人文地理学会に与えた影響は大きく、良書、良論文の翻訳が根づかないといわれた中で、欧米の地理学会を代表するハ-ヴェイ、ソジャ、グレゴリーを始め、多くの地理学者の近年の成果を翻訳し、他の諸学問において空間論へのまなざしが強くなっている中、地理学での理論的議論を深める基礎を提供したと考えている。特に、2号ではハ-ヴェイ特集、3号ではジェンダー地理学特集を組んだ。こうした翻訳のみならず、政治地理学と唯物論の関係、批判的地理学とは、社会問題に対する地理学の貢献、フ-コ-の空間論の地理学への影響、地政学研究の課題といった理論的研究動向が整理された。日本の地理思想での貢献として、福沢諭吉の地理的研究の書誌学的系譜が明らかにされ、日本の経済地理学の思想的動向と批判的地理学との関係も学史的に明らかにされた。海外に関してもIGUの地理思想史研究委員会の活動も学史的に明らかにされた。こうした本研究グループの活動を通じて、研究分担者によって『ドイツ景観論の生成』、『空間から場所へ』という2つの著書が公刊されたことも、その貢献として強調しておきたい。