著者
和泉 潔 山下 倫久 車谷 浩一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.725, pp.53-58, 2004-03-09

本研究では,資源選択を簡略化したマイノリティーモデルと呼ばれるモデルを用いて,資源割り当て問題の分類を行った.学習の効率性と正確さの異なるエージェントを3種類用意して,獲得した利得の比較を行った.その結果,システムの複雑性と学習への時間的制約という2つの条件に応じて,4つの領域が存在することが分かった.そして,それらの領域にしたがって,実際の資源割り当て問題を分類できた.実際の資源割り当て問題が属する領域に応じて,モデル化を行うときにエージェントの持つべき特徴が分かった.
著者
和泉 潔 池田 竜一 山本 仁志 諏訪 博彦 岡田 勇 磯崎 直樹 服部 進
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.12, pp.2877-2887, 2013-12-01

本研究では,構成論的なアプローチに基づくエージェントベースの社会シミュレーション研究の新たな方法論,可能世界ブラウザを提唱した.更に,実際の購買データに基づいたシミュレーションによる購買ターゲットの特定を題材にして,可能世界ブラウザを応用した結果を紹介した.顧客の購買行動をエージェントベースモデルに組み込んだシミュレーションモデルを作成した.そしてユーザが目的となるようなケースを作り出す.特定ケースでのエージェントの購買行動パターンの特徴を分析することで,目的の達成に大きく関係している購買行動パターンを特定し,更にその成分の組合せから具体的な消費者像の推定を行うことで顧客ターゲティングにつなげることができた.
著者
和泉 潔 後藤卓 松井 藤五郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.3309-3315, 2011-12-15

本研究は,金融実務家から要望が高い,数週間以上の長期的でしかも個別銘柄より広範な市場分析に,テキストマイニング技術で挑戦した.長期市場分析に有効なテキスト情報として,経済の専門家や金融機関がWeb上に発行するマーケットリポートを分析対象とした.そのために,定期的に発行されるテキストデータから時間的な特徴の変化を抽出し,テキストに関連する外部の時系列データとの関係性を見つけるテキストマイニング技術を新たに開発した.本技術を用いて実際に経済市場分析を試み,実際の市場動向をどの程度説明しているのかについて検証を行った.日本国債の2年物,5年物,10年物で運用テストを行った結果,既存のサポートベクタ回帰や計量経済モデルと比べて,どの市場でも安定して,ほぼ最高水準の運用益をあげることができた.
著者
草田 裕紀 水田 孝信 早川 聡 和泉 潔 吉村 忍
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.28, 2014

本研究では人工市場を用いて高頻度取引を行うマーケットメーカーが株式市場の出来高に与える影響の分析を行った。近年高頻度取引や代替市場の増加による株式市場の複雑化が指摘されており、本研究では2市場間の出来高シェアの関係に着目してマーケットメーカーの影響を検証した。検証の結果、マーケットメーカーのスプレッドはマーケットスプレッド以下の値でも2市場間の出来高シェアの変化に影響を与えることを明らかにした。
著者
和泉 潔
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告知能と複雑系(ICS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.8, pp.87-92, 2003-01-29

本研究では マイノリティーゲームと呼ばれるゲーム理論的な題材にして 効率性と正確さの異なるエージェントを3種類用意して 獲得した利得の比較を行った.その結果,環境の挙動の複雑度が低いときは 他人モデルの学習スピードが遅いときに少ない情報で単純な学習を行うエージェントの利得が高く 速いときには全ての情報を使って正確な学習を行うエージェントの利得が高かった.しかし 環境変化の複雑度が高くなるにつれ 中間的な効率性と正確さの学習を行うエージェントの利得が高くなった.In this paper, we constructed three types of agents, which are different in efficiency and accuracy of learning. They were compared using acquired payoff in a game-theoretic situation that is called Minority game. As a result, when the complexity of environmental change is low and the learning speed of others' models is high, agents that used simpler learning method with little infomation got thgher payoff, and when the learning speed of others' models is low, agents that used accurate learning method with full information got higher payoff. When the complexity of environmental change is higher, agents that used intermediate learning method got higher payoff.
著者
和泉 潔 橋本 康弘 鳥海 不二夫 山本 仁志 諏訪 博彦 岡田 勇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.211, pp.13-18, 2009-09-18

So-net SNS(β版)において,アクティブに稼動するSNSの中からのべ約1,200個のSNSを抽出し,決定木分析を用いて成長するSNSの判別を行なった.その結果,高い精度で判別可能であることが明らかとなった.決定木を生成する際に用いる変数に,ネットワーク構造に関する変数を導入したところ,判別能力が向上することが確認された.この結果より,ネットワーク構造がSNSの成長に影響を与えていることが示唆された.さらに,高成長したSNSの特徴分析を行ない,4つのパターンに分類しそれぞれの特徴を明らかにした.代表的な二つのSNSについてコミュニティ構造の推移を分析することによって,SNSのより詳細な違いが分析できる可能性が示唆された.
著者
八木 勲 水田 孝信 和泉 潔
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.2388-2398, 2012-11-15

企業不祥事や自然災害の影響でファンダメンタルズが急激に悪化し,その企業の株価が暴落することがある.その直後,株価が反発することも経験的に知られている(リバーサル現象).これまでの実証研究では,リバーサル現象の発生要因はオーバリアクション仮説が有力視されているものの,定量的な評価は行われておらず,はっきりとした結論は出ていない.本研究では,価格決定方式の1つである板寄せ方式を採用した人工市場を用いて,理論株価急落を原因とする株式市場の暴落に対して,オーバリアクション仮説を考慮せずにリバーサル現象が発生することを確認した.そして,リバーサル現象発生時の取引価格決定メカニズムを分析し,エージェントの予想株価のばらつきと注文の需給関係の偏りによってリバーサル現象が引き起こされることを突きとめた.一方,ザラ場方式を採用した人工市場を用いると,リバーサル現象が必ずしも起こるとは限らないことが判明した.その結果,板寄せ方式を採用した市場の方が,ザラ場方式を採用した市場よりもリバーサル現象が発生する可能性が高いと考えられる.
著者
後藤 卓 松井 藤五郎 和泉 潔
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.26, 2012

金融市場において,国債や企業向け貸出のヘッジ手段としてCDSが幅広く用いられるようになってきたが,依然として,アジアを中心にCDSマーケットのない国や企業が存在する.これに対し,状況が似ている他の国や企業のCDSを用いてヘッジするプロキシヘッジの取組がなされているが,その際において,最適なヘッジ比率設定が課題となっている.本論文では,複利型強化学習を用いて最適ヘッジ比率を学習する手法を提案する.
著者
松井 藤五郎 後藤 卓 和泉 潔 陳 ユ
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.26, 2012

本論文では,複利型強化学習における投資比率パラメーターをオンライン勾配法を用いて最適化する方法について述べる.また,実験によりその有効性を確認する.
著者
和泉 潔 松尾 豊
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

テキストマイニングによる動向分析手法の開発、人工市場シミュレーションソフトウェアの開発、実データによるシステム評価の3つの研究要素について、当該研究期間において下記の研究実績が得られた。以下の内容について海外および国内の学術誌での研究成果の発表を行った。本分野の発展および人事養成のため、新規国際および国内研究集会の設立に貢献した。1.テキストマイニングによる動向分析手法の開発:経済新聞記事データを用いて、テキストマイニング(関連用語のカテゴリ分類、各単語やカテゴリの頻度及び共起関係の分類)を実行して人工市場シミュレーションの入力データを作成するプログラムを構築した。分析手法の性能評価のために、国際金融情報センターの発行した解説記事による経済動向分析を行った。同じテキストデータで金融関係者が判別した結果と比較したところ、訓練データに対する正答率のテストでは平均92.2%、外部データに対する交差検定テストでは平均71.9%の高い精度を示すことができた。2.人工市場シミュレーションソフトウェアの開発経済動向分析結果を入力として受け取る人工市場シミュレーションを行うプログラムの作成を行った。テキストマイニングプログラムと連携し統合的なシミュレーションを行うためのデータ連携手法を開発した。実際のテキストデータと市場データを用いて実証実験を行った結果、100試行の平均で約67%の価格変動をシミュレーションにより再現することに成功した。3.実データによるシステム評価前述のテキストマイニングプログラミングと人工市場シミュレーションを統合した意思決定支援システムを構築した。システム評価のために実際のテキストデータと市場データを用いて、市場安定化のための行動方略を提示させたところ、実際の市場価格の分散を70%以上低減することができる方略を示すことができた。
著者
和泉 潔 植田 一博 中西 晶洋 大勝 孝司
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.416-417, 1997-09-24

「人間は複雑な社会システムの中で, いかに学習を行なうのか」という問題は, 認知科学や人工知能の分野で, 従来の方向性に対する反省として, 重大な課題となっている。また, 経済学の分野の方でも, 最近, 従来の経済理論における人間の学習に対する過度の理想化に対し強い批判が行なわれている。本研究の目的は, 上述の課題に対する解答への新しいアプローチを, 近年, 市場の激しい変動を経験した外国為替市場(以下, 外為市場)を一つのケーススタディとして, 提出することである。すなわち, 各々の市場参加者が相互作用しながら学習していくような新しい外為市場のモデルを構築する。本稿では既に我々が構築したモデルの概要と本モデルを用いて1995年の急激な円高の分析した結果を報告する。
著者
和泉 潔 後藤 卓 松井 藤五郎
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.24, 2010

定期的に発表され決まった形式を持つテキスト情報を対象とした長期市場動向分析のためのテキストマイニング手法を、実データによる運用テストで評価する手法を開発した。2008年1月から2009年5月の1年5カ月間の国債市場で評価したところ、年率平均に換算して、4.9%~88.05%の高いリターン成績を示すことができた。
著者
和泉 潔
出版者
日本シミュレーション学会
雑誌
シミュレーション (ISSN:02859947)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.183-190, 2004-09-15
被引用文献数
2

This paper introduces an artificial market approach, a new agent-based simulation approach of financial markets, and overviews artificial market researches that test economic theories of financial markets. First, we introduce our study that rethought efficient market hypothesis from a viewpoint of complexity of market participants' prediction methods and market price's dynamics, and examined the hypothesis using simulation results of our artificial market model. Then, we review other artificial market studies. Finally, we show some future directions of artificial market studies and their requirements.