著者
上田 浩 門口 礼 森 幹彦 喜多 一
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.9-20, 2018-10-30

1つの情報モラル事例を,複数の視点から見る,小学校高学年を対象とした情報モラル指導手法を提案する.手法の特徴は,(1)情報モラル事例の中心的な登場人物に加え,加害者などを含めた複数の登場人物の視点から事例を見る物語を提示すること,(2)登場人物の相関図を示し,相関図から自由に視点別の物語を選択できるようにすることの2点である.提案手法に基づき,情報モラル指導用のWeb教材「情報モラルそうかんず」を開発した.教材を構成する物語は,言葉だけでは表現が困難な登場人物の心情や行動を表現するためにマンガを利用した.本論文では,開発した教材を用いて,小学校6年生の児童を対象に授業実践を行い,開発した教材を用いた授業案が構成可能であること,提案手法から期待される効果を検証した結果を報告する.提案手法の効果として,(1)学習者が加害者の視点から新たな知見を得られること,(2)相関図から自由に物語を選択させる手法が,学習者にとって有用なコンテンツの要素となりうることが明らかとなった.
著者
河村 一樹 立田 ルミ 喜多 一
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

情報プレースメントテスト(以下,IPTと略す)で必要となる知識・スキル体系について,10エリアすべてにおいて策定した。これによって,プレースメントテストの出題範囲とレベル度合を明らかにすることとした。その際には,情報処理学会一般情報教育委員会が策定したGEBOKとの関連についても考慮した。IPTを実施する際に,即本番とするのではなく,あらかじめ予備という形で進める(プレIPT)ことになった。そこで,プレIPTとして,エリア毎に10問作問し相互にレビューを行った。プレIPTのプラットホームとしては,Moodle,WebClass,BlackboardといったCMS,あるいは,大学独自のアンケートシステムとした。2017年4月の新学期に,科研費メンバーの本務校あるいは非常勤大学において,プレIPTを実施した。プレIPTを実施後,収集したデータをもとに大学毎に分析を行い,学会等で講演発表を行った。また,顕著となったいくつかの問題をクリアーするとともに,IPTの作問(各エリア20問ずつ)を行い,メンバーによるレビューを実施した。その上で,日経BP社により,IPTをシステム化(情報プレースメントテストシステム:IPTS)した。システム化においては,日経BP社が独自に開発したクラウドシステムあるいはMoodleのコースとして実装した。具体的には,10エリアから各5問(計50問)をランダムに抽出した上で,シャッフルして出題することとした。こうして,2018年度4月の新学期以降に,IPTを各大学で実施するための準備を終えた。
著者
斎藤 人志 田中 弓子 吉谷 新一郎 小坂 健夫 喜多 一郎 高島 茂樹
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.1015-1021, 2004-09-30 (Released:2010-09-24)
参考文献数
13
被引用文献数
4

絞拒性イレウスに対する術前診断は必ずしも容易ではないが, 最近の腹部超音波検査 (US) やCT, およびMRIなど種々の画像診断法の進歩, 普及により術前の正診率が著しく向上してきている。なかでもUSの診断上の利点としては, (1) 前処置なしに簡便に行えること, (2) 非侵襲的であること, (3) 繰り返し行えること, (4) 腸管の壁や内容および蠕動運動など腸管の情報とともに, 腹水の有無など腹腔内の情報がリアルタイムに得られること, (5) 任意の断面で観察できること, などがあげられる。とくにリアルタイムで情報が得られることから絞拒性イレウスと単純性イレウスの鑑別診断には極めて有用である。絞拒性イレウスのUS診断上の所見としては, 腸管壁の肥厚, 腸管の蠕動運動の消失, 高エコーを示す腸管内容, 腹水, 腸管壁内ガス像, およびpseudotumor signなどがあげられる。しかし, 施行者の技量や腸管内ガスの量により得られる情報量が大きく左右されることも事実である。したがって, より正確な診断のためには理学的所見はもとより, CTなど他の画像診断との併用による総合的な判断が重要になることはいうまでもない。本検査法を積極的に活用し, 経験を重ねていくことが重要であることを強調したい。
著者
喜多 一馬 池田 耕二
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>理学療法士の声かけは患者の意欲を向上させるといわれているが,その具体的な方法は明らかではない。声かけにはフレーミング効果という概念があり,それは意思決定場面において論理的に同値であっても表現方法(言い回し)の違いにより選好結果が変わるという概念である。我々はこのフレーミング効果に着目し,肯定的言い回しが一部の理学療法想定場面で患者の意欲を向上させることを示唆したが,ランダム化した研究的枠組みではなかった。本研究の目的は,理学療法想定場面でのフレーミング効果を意識した声かけが,患者の意欲に与える影響をランダム化した研究的枠組みで検証することである。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象者は,理学療法実施中の入院患者102名(男性31名,女性71名,年齢75±12.3歳)とした。方法は,紙面による回答方式とした。手順は,理学療法を進める上で重要となる1)トイレ練習,2)歩行練習,3)痛みへのリハビリ,4)理学療法全般に対する取り組み,5)退院に向けた取り組みの5つの場面を想定し,各場面における声かけの肯定的,否定的言い回しを作成した。次に,紙面には5つの場面ごとに肯定的,否定的のどちらかの言い回しをランダム化したうえで記載した。患者には紙面を無作為に選択させ,5つの場面にあるどちらかの言い回しを読み,意欲を感じるかどうかを5件法(やる気を失うからやる気が出るまで)によって回答させた。分析は回答を1~5点で点数化し,場面ごとに言い回し別の平均値を算出し,比較検討した。統計処理にはウィルコクソンの符号順位検定を採用し有意水準はp<0.05とした。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>各場面における肯定的,否定的な言い回しは結果的に51名ずつに分かれた。1)における肯定的言い回しの平均値は4.49±0.83,否定的言い回しの平均値は3.54±1.29であり,肯定的言い回しが有意に高かった。次に,3)では4.63±0.6,4.04±1.28,4)では4.51±0.88,3.75±1.26,5)では4.37±0.94,3.75±1.31の3項目についても肯定的言い回しは有意に高かった。一方,2)では4.55±0.64,4.26±1.15と有意な差は認められなかった。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>結果から,歩行練習を除き,トイレ練習,痛み,理学療法に対する取り組み,退院に対する理学療法想定場面において,肯定的な言い回しが,患者の意欲の向上に有効であることが示唆された。肯定的な言い回しは患者に肯定的な結果を直接想起させるため,患者の意欲が向上したと考えられる。歩行練習で言い回しに違いがみられなかったのは,すでに歩けるようになる等の説明を受けていたことが要因となり,意欲が左右されなかったと考えられる。以上より,いくつかの理学療法想定場面ではフレーミング効果を意識した肯定的な言い回しが,患者の意欲の向上に効果的であることが示唆された。今後はさらに声かけの言い回しやタイミング,患者の心身状態等にも着目し,有効な声かけや関係性作りについて知見を検討していきたい。</p>
著者
今井 正樹 上原 哲太郎 侯 書会 津田 侑 喜多 一
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.4, pp.1-6, 2011-05-05

情報漏洩対策機能としてユーザを特定可能な ID を電子透かしで文書に埋め込む電子文書管理システムがある.情報漏洩発生時に文書の流出元特定を容易にすることで,情報漏洩を心理的に抑止する.しかし,従来の方式で ID を符号化した場合,異なる ID を持つ文書を比較することにより ID の改竄が可能である.そこで本稿では結託耐性符号で符号化したユーザ ID を文書に埋め込む電子文書管理システムを提案する.文書形式として最も広く利用されている OOXML (Office Open XML) 形式の文書を対象として,相当量の情報が埋め込み可能な電子透かし手法を示し,ユーザ ID の消去を困難にした電子文書管理システムを設計する.There is a document management system witch prevent information leakages by embeding user identification in documents with digital watermark. It prevent users from information leakages by facilitating specification of the leakage source. But A comparation of same documents witch embeded different user IDs is enabled to attackeres to falsify the ID. This paper propose the document management system witch embeding user ID encoreded with anticollusion codes in documents. This system targeted OOXML (Office Open XML) documets because it is the most widely used in the world. This paper introduce the new large capacity watermark available in OOXML, and design the document management system enhaced preventation effect on information leakages.
著者
辻 仁志 喜多 一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.4, pp.1-9, 2014-11-29

日本の新学習指導要領では,中学校の教科 「技術・家庭」 の技術分野で,「プログラムによる計測・制御」 が必修化されるなど,プログラミング教育は重要な研究対象であるが,初学者には様々な躓きがあり多くの支援が必要である.教育の負担を減らしつつ,学習効果を高めるためには,生徒が自立的にプログラミングを学習でき,プログラミングを行える能力を習得することが望ましい.本研究では,Raspberry Pi を活用する形で,「プログラムによる計測・制御」 の学習を目的に,写経型学習という手法を用いたプログラミング教育の教材の開発を行う.この手法を用いた教材を利用することで,初学者の学習効率を向上させ,教員がプログラミングを教える難しさを軽減できると考えられる.作成した教材を普通科高等学校での課外活動で試用することで評価を行う.Education of computer programming is an important research issue in general education as well as vocational education. For example, in Japanese new course of study for junior high-schools, instrumentation and control using computer programming has been changed from an optional unit to a compulsory one in the subject "Technology and Home Economics." However, novices of computer programming face various difficulties in their learning, and effective and efficient teaching must be pursued by making learning of computer programming independent as much as possible. In this paper, the authors have developed learning materials for "instrumentation and control using computer programming" using Raspberry PI. For development of the material, "Shakyo-style" learning is adopted so as to raise efficiency of learning by novices. The developed material is used and evaluated in extracurricular activities in a senior high-school.
著者
岡本 雅子 村上 正行 吉川 直人 喜多 一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.35-45, 2013

プログラミングの学習では,サンプルプログラムを使って,プログラムの記述(命令)とその実行結果(動作)から各処理概念を学んでいく経験学習の方略が用いられる.しかしながら,各命令と動作の関係そのものを暗記するだけで,概念あるいは機能の理解といった段階にまで到達していない学習者が散見される.こうした事例に関し,本研究では,「現在使用されているカリキュラムや教材が,経験学習の構造的特性に合致していない」ことが,理解を妨げている要因の一つであるのではないかと考えた.そこで,経験学習を構成する「対象の認知と現象の把握」の過程に注目し,プログラムと動作の関係を視覚的に「顕在化」することに配慮したカリキュラムおよび教材を開発した.また,これらを評価するため,授業において運用を試みた結果,視覚的顕在化の側面において受講生への効果を確認するとともに開発した教材およびカリキュラムの有効性が示唆された.
著者
喜多 一 森 幹彦 辻 高明 松井 啓之 大橋 俊夫
出版者
一般社団法人国際P2M学会
雑誌
国際プロジェクト・プログラムマネジメント学会誌
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.83-91, 2008-12-26
被引用文献数
1

近年、情報の生産、流通に関しては個々のエンドユーザが同時に生産者たり得る状況が出現している。このような流れは、具体物の伴う「ものづくり」の世界でも生まれ始めており、大量生産が中心の従来のものづくりのほかに、情報技術の高度化、普及に伴って多様なものづくりの形態が生じつつある。本稿では情報技術がもたらすこのようなインパクトについて、Webを活用したBTO型のマスカスタマイゼーションから、MITのFablabプロジェクトに見られるパーソナルファブリケーションまで様々なモデルを、背景となる技術的、社会経済的動向を踏まえて概観するとともに、筆者らが行っている諏訪・岡谷地域の工業集積との連携による利用者参加のものづくりを紹介し、そこでの課題について考察する。
著者
喜多 一 森 幹彦 辻 高明 松井 啓之 大橋 俊夫
出版者
一般社団法人国際P2M学会
雑誌
研究発表大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.108-117, 2008-04-26

近年,情報の生産,流通に関しては個々のエンドユーザが同時に生産者たり得る状況が出現している.このような流れは,具体物の伴う「ものづくり」の世界でも生まれ始めており,機械による大量生産が中心の従来のものづくりのほかに,情報技術の高度化,普及に伴って多様なものづくりの形態が生じつつある.本稿では情報技術がもたらすこのようなインパクトについて,Webを活用したBTO型のマスカスタマイゼーションから,MITのFablabプロジェクトに見られるエンドユーザ自身によるものづくりまでを,その背景となる技術的,社会経済的動向を踏まえて概観するとともに,筆者らが行っている中小企業集積との連携による利用者参加のものづくりを紹介するとともに,そこでの課題について考察する.