著者
小山 明日香 小柳 知代 野田 顕 西廣 淳 岡部 貴美子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.41-49, 2016 (Released:2016-10-03)
参考文献数
56

要旨 孤立化した半自然草地では、残存する草原性植物個体群の地域的絶滅が懸念されている。本研究は、都市近郊の孤立草地において地上植生および埋土種子の種数および種組成を評価することで、埋土種子による草原性植物個体群の維持、および埋土種子からの植生回復の可能性とその生物多様性保全上のリスクを検証することを目的とした。千葉県北総地域に位置するススキ・アズマネザサが優占する孤立草地において植生調査を行い、土壌を層別(上層0~5 cm、下層5~10 cm)に採取し発芽試験を行った。これらを全種、草原性/非草原性種および在来/外来種に分類し、地上植生、埋土種子上層および下層のそれぞれ間で種組成の類似度を算出した。結果、地上植生では草原性種が優占しており、外来種は種数、被度ともに小さかった。一方、埋土種子から出現した草原性種は地上植生より少なく、特に土壌下層からは数種(コナスビ、コシオガマ、ミツバツチグリなど)のみが確認された。対して外来種は埋土種子中で優占しており、特に土壌上層で種数および種子密度ともに高かった。種組成の類似度は、草原性種、外来種ともに地上植生―埋土種子間で低く、埋土種子上層―下層間で高かった。これらの結果から、孤立草地における草原性種においては、埋土種子からの新たな個体の更新により維持されている個体群は少ないことが予測された。また、長期的埋土種子の形成が確認された草原性種は数種であり、埋土種子からの個体群の回復可能性も限定的であると考えられた。さらに、埋土種子中には、地上植生では確認されていない種を含む多くの外来種が存在していた。これらの結果は、孤立草地における埋土種子を植生回復に活用する上での高いリスクを示しており、今後孤立化が進行することにより植生回復資源としての有効性がさらに低下すると考えられる。
著者
岡部 貴美子 牧野 俊一
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.73-84, 2002-11-25
参考文献数
22
被引用文献数
3 13

日本産キムネクマバチの成虫は雌雄共に、後体部第1節及び中胸部翅基部後方にアカリナリウムをもっていることが確認された。中胸部のアカリナリウムの開口部は、雌よりも雄の方が大きかった。後体部のアカリナリウムは、X. latipesなどで記録されている著しく陥入した空洞ではなく、細長い溝であった。キムネクマバチからは、クマバチコナダニ、コガタノクマバチコナダニ、ヒメクマバチカザリコナダニの3種の第二若虫が採集された。このうちクマバチコナダニとコガタノクマバチコナダニの個体数が圧倒的に多かった。3種のダニは、労働寄生あるいは寄主の巣の中のゴミを摂食する腐食者と考えられた。クマバチコナダニはそのほとんどが中胸部の毛に定着していたが、クマバチコナダニより体が小さなコガタノクマバチコナダニはアカリナリウム内や翅の基部に多かった。これはおそらくクマバチコナダニは体サイズが大きくアカリナリウムに入れないが、寄主の毛をつかめるためと思われた。更に、ハチとダニの相互作用の観点から、Xylocopa属のアカリナリウムの特徴について考察した。
著者
升屋 勇人 岡部 貴美子 神崎 菜摘
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集 日本菌学会第55回大会
巻号頁・発行日
pp.53, 2011 (Released:2012-02-23)

ラブルベニア目菌類におけるダニ類寄生菌は,同じラブルベニア綱のピキシディオフォラ目との繋がりを考える上で重要であるが、その実体についてはあまり知られていない.ダニ類への寄生が報告されているラブルベニア目は約64種であるが,その多くはRickia属である.一方、その生活史の中でクワガタに完全に便乗した生活を営んでいる便乗ダニの1群、クワガタナカセというグループには,以前からDimeromyces japonicusが知られていた.演者らはダニ類に便乗する菌類の調査の過程で,Dimeromyces属2種と所属不明の便乗菌1種を見出した.Dimeromyces japonicusはコクワガタ体表に生息するクワガタナカセHaitlingeria longilobataの体表に寄生していた.菌体は無色で部分的に褐色,雌個体は3層からなる托を持ち,それぞれの上端から1個の子嚢殻,1本の付属枝を生じ,基部に足を生じる.托の枝は根棒状で,先端に向かって太くなり,約10個の縦1列の細胞から成る.子嚢殻は先端部直下に彎曲した褐色の角状突起を有する.雄個体は長短2本の付属枝と造精器を有する.長い方の付属枝は雌個体のものと類似し,短い付属枝は数個の細胞から成る.Dimeromyces sp.はヒメオオクワガタムシ体表のコウチュウダニ科Canestriniidaeのダニ体表に寄生しており,D. japonicusと形態的に類似しているが,角状突起が短く,付属枝を生じる托が短い点で区別できる.所属不明種はサンゴ樹状に分枝した枝が発達した形態を有し,アルケスツヤクワガタ体表に便乗するCanestrinia spの後部に付着していた.形態的にはラブルベニア目の付属肢に類似するが,他に分類群を特定する手がかりとなる形態は認められず,場合によってはラブルベニア目ですらないかもしれない.いずれにしてもクワガタに便乗するダニ類には様々なラブルベニア目菌類が寄生することが明らかとなった.これらの便乗ダニは未記載種が多く,未だ十分に探索されていないため,同様に潜在的に様々なラブルベニア目菌類が節足動物便乗ダニ上で見つかる可能性が高い.
著者
岡部 貴美子 升屋 勇人 神崎 菜摘
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

昆虫と共生する微小生物の生物多様性は、森林タイプなどの生態系の 多様性と明確な相関関係を示さず、共生生物の種の多様性と相関していた。これは微小生物が パッチ状の生息地を利用するため便乗寄主を利用しており、マクロハビタットの差などの影響 は顕在化しにくいためと考えられた。これらのことから便乗性の微小生物の多様性保全には、 便乗寄主の生息場所の保全が重要であると考えられる。
著者
小山 明日香 岡部 貴美子
出版者
国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所
雑誌
森林総合研究所研究報告 (ISSN:09164405)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.61-76, 2017 (Released:2018-01-01)
参考文献数
108

生物多様性オフセットは、開発事業等による生物多様性や生態系への負の影響を回避、最小化、修復した後、なお残る残存影響に対し代償措置を行う制度である。既に多くの諸外国で法制度化されており、国内でも愛知目標を達成する生物多様性保全の具体策として期待される。生物多様性オフセットは開発行為により失われる生物多様性損失とオフセット行為による獲得を同等にする「ノーネットロス」の達成を原則としている。しかしながら生物多様性オフセットによるノーネットロスの達成には様々な理論、技術、実践上の課題がある。本総説は、生態学的観点から生物多様性ノーネットロスを達成する上での要点、特に1)生物多様性の計測および生態学的同等性の評価、2)保全効果の追加性、3)オフセット実施における不確実性および失敗リスク、および 4)オフセットの限界とミティゲーション・ヒエラルキーの順守、について整理して概説した。さらに、本制度を日本の生物多様性保全策として導入することを想定し、国内の二次的生態系の特徴を考慮した具体的課題として、オフセット地選定における地域的枠組み、および開発・オフセット地として期待される劣化した里山生態系の活用可能性を検討した。
著者
前田 太郎 坂本 佳子 岡部 貴美子 滝 久智 芳山 三喜雄 五箇 公一 木村 澄
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.109-126, 2015
被引用文献数
4

2010年頃から,飛べないニホンミツバチApis cerana japonica Rad. が巣の周辺を這いまわり,多くのコロニーが消滅していく事例が日本各地で見られるようになった。その症状が,セイヨウミツバチAp. mellifera L. で報告されているアカリンダニ症と酷似していることから,原因としてミツバチに寄生するアカリンダニAcarapis woodi (Rennie)の寄生が疑われた。しかし,実際にアカリンダニの存在を確認した例は少なく,2013年3月までの公式報告はわずか4件のみであった(農林水産省,2014)。前田(2015)の2013年度の調査によると,すでに日本の広い範囲でニホンミツバチがアカリンダニに寄生されており,今後さらに寄生地域が拡大していくことが懸念される。アカリンダニの生態や防除法に関しては,ヨーロッパやアメリカを中心に,セイヨウミツバチを用いた研究調査が行われてきたが,日本ではアカリンダニについて正確な情報が十分知られておらず,現状の把握と対策が遅れている状況にある。
著者
岡部 貴美子
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本森林学会誌 = Journal of the Japanese Forest Society (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.91, no.6, pp.461-468, 2009-12-01
被引用文献数
1 2 1

キクイムシとダニの相互関係は, ダニによる便乗, 寄生, 捕食, および (便乗以外の) 片利共生や相利共生などである。最も歴史が長く一般的な関係はダニが移動分散のために他の生き物にヒッチハイクする便乗であり, 寄生をはじめとするより長期的な共生関係が進化したものと考えられた。共生や捕食などの相互関係は, トゲダニ, ケダニ, コナダニ, ササラダニの4亜目に認められ, それぞれ独立に始まったと考えられた。捕食性のダニはキクイムシ未成熟ステージのほか, 他の昆虫や線虫も摂食するものが多く, 餌としての選好性は低かった。キクイムシの卵や幼虫を捕食または捕食寄生するダニがキクイムシに便乗することが普通であり, ダニによる個体群動態へのインパクトは低いものと予想された。これまでに知られているキクイムシとダニの相利共生は直接的ではなく, 菌や線虫, 他種のダニなどを介した間接的なものであることが示唆されている。これらのことからキクイムシとダニおよびその他の微生物を含む相互関係は, ハビタットの共有が起点となっていると考える。
著者
五箇 公一 岡部 貴美子 丹羽 里美 米田 昌浩
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.47-50, 2000-02-25
被引用文献数
11 30

The endoparasitic mite Locustacarus buchneri Stammer 1951 (Podapolipidae) was found in commercially introduced colonies of the European bumblebee, Bombus terrestris. The average infestation rate of colonies (n=367) from the Netherlands and Belgium was 20%. Urgent investigation of the infectivity and pathogenicity of this mite to Japanese native bumblebees and the geographic distribution of this mite in Japan is required.
著者
五箇 公一 岡部 貴美子 丹羽 里美 米田 昌浩
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.47-50, 2000 (Released:2002-10-31)
参考文献数
15
被引用文献数
33 30

The endoparasitic mite Locustacarus buchneri Stammer 1951 (Podapolipidae) was found in commercially introduced colonies of the European bumblebee, Bombus terrestris. The average infestation rate of colonies (n=367) from the Netherlands and Belgium was 20%. Urgent investigation of the infectivity and pathogenicity of this mite to Japanese native bumblebees and the geographic distribution of this mite in Japan is required.