- 著者
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大峰 真理
- 出版者
- 社会経済史学会
- 雑誌
- 社会経済史学 (ISSN:00380113)
- 巻号頁・発行日
- vol.79, no.1, pp.63-83, 2013
18世紀ナントがフランス第一の奴隷貿易港であり,王国を代表する国際商業都市であったことは,比較的よく知られている。なかでも世紀後半については,シャン・メイェールが史料「船乗り登録簿」(のちの分類名「船舶艤装申告書」)を分析して,奴隷貿易の進展を明示するとともに,ヨーロッパ沿岸貿易とアンティル諸島直行貿易の安定した成長を実証した。メイェールによる精緻な研究成果は,その後のナント海運史研究者と奴隷貿易・制度史研究者に受容され続けている。しかし彼がおこなった「18世紀前半は,記録の欠落が深刻である」という断定的な指摘は,世紀前半にかかわる史料調査と実証研究を限定してしまった。本稿は,筆者自身によるおよそ5年間の史料調査の結果『船舶艤装申告書一覧1694-1744年ロワール=アトランティック県文書館(フランス・ナント)Serie 120 J』(千葉大学,2011年)をもとに,記録情報を数量化し,最初の分析を試みて,研究史の欠落を補完しようとするものである。その結果は,18世紀前半ナント海運業の基軸分野の所在を明らかにするとともに,今後の歴史研究の展望を示唆するだろう。