著者
田口 菜月 升川 研人 青山 真帆 森田 達也 木澤 義之 恒藤 暁 志真 泰夫 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.193-200, 2023 (Released:2023-08-30)
参考文献数
15

【目的】緩和ケア病棟の質改善活動の実態と遺族調査のアウトカムとの関連を明らかにする.【方法】J-HOPE4に参加した187施設にアンケート調査を実施し,質改善活動実施状況と,施設を利用した遺族の全般的満足度,ケアの構造・プロセスの評価(CES),望ましい死の達成度(GDI),複雑性悲嘆(BGQ),抑うつ(PHQ-9)との関連を検討した.【結果】日本ホスピス緩和ケア協会の自施設評価共有プログラムへの参加,多職種カンファレンスの開催頻度・カンファレンス参加職種数が多い施設で全般的満足度やGDIが有意に高かった.遺族ケアを実施している施設で全般的満足度,CESが有意に高かった.遺族への電話を実施している施設でBGQが有意に低く,葬儀や通夜への参列を実施している施設でPHQ-9が有意に低かった.【結論】質改善活動を積極的に実施している施設では,緩和ケアの質が高く遺族の悲嘆や抑うつを軽減する可能性がある.
著者
宮川 裕美子 伊藤 怜子 升川 研人 宮下 光令 山極 哲也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.59-64, 2022 (Released:2022-05-24)
参考文献数
11

【目的】日本バプテスト病院ホスピス病棟において,チャプレンの司会により行っている「お別れ会」の実際を報告し,お別れ会に対する遺族の感想を記述する.【方法】遺族84名に対して,お別れ会の感想を質問紙票にて調査し,自由記述の内容分析を行った.【結果】回答者40名のうち,お別れ会を経験した遺族は15名であった.お別れ会の内容でよかった点として,[祈祷(祈り)],[スタッフの参加]などが抽出され,遺族はお別れ会を行うことによって,[区切り],[気持ちの平安],[心身の癒し]を感じ,[振り返りの機会]や,[心に残る特別な思い出]を得ていた.【考察】お別れ会は,遺族の気持ちの平安や喪失感の軽減の助けとなり,死別後の遺族の悲嘆の軽減につながる可能性が考えられた.本調査から得られた遺族の声をもとに,遺族の思いに寄り添った,より質の高い遺族ケアの実施や,今後のさらなる研究につなげていきたい.
著者
伊藤 怜子 清水 恵 佐藤 一樹 加藤 雅志 藤澤 大介 内藤 明美 森田 達也 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.135-146, 2020

<p>厚生労働省の受療行動調査におけるQuality of life (QOL)を評価する項目について,全国から無作為抽出した20〜79歳の一般市民2400名に対して郵送法による自記式質問紙調査を実施することにより,その国民標準値を作成することを目的とした.さらに,SF-8<sup>TM</sup>, Patient Health Questionnaire-9(PHQ-9), Eastern Cooperative Oncology Group Performance Status(ECOG-PS), Memorial Symptom Assessment Scale(MSAS)などとの関連も検討した.分析対象は978部(41.1%)で,性年齢階級別人口統計によって重み付けした40歳以上のQOL指標の標準値は,「体の苦痛がある」33%,「痛みがある」33%,「気持ちがつらい」23%,「歩くのが大変」15%,「介助が必要」3%であった.本研究結果は,今後,受療行動調査を用いて全国的かつ継続的に患者の療養生活の質を評価し解釈していくにあたり,重要な基礎データとなる.</p>
著者
的場 康徳 村田 久行 森田 達也 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.45-54, 2021 (Released:2021-02-16)
参考文献数
27

【目的】スピリチュアルケア(SPC)の実践力の習得を目的とした研修の医師での効果を測る.【方法】自記式質問法により,教育介入前,直後,3カ月後,6カ月後に測定.【結果】医師30名が研修を修了.すべての主要評価項目が有意に改善し,その効果は介入6カ月間持続(すべてP=0.0001).スピリチュアルペイン(SPP)を訴える患者とのコミュニケーションの自信が高まり(6カ月後の効果量(Effect Size=1.3),SPCの実践の自己評価が高まり(ES=1.2),SPPを訴えられたときの無力感が軽減し(ES=0.8),SPCの経験を肯定的に捉えるようになり(ES=0.8),SPPを訴える患者にすすんで関わりたいと思うようになった(ES=0.4).96〜100%の医師が,SPCの概念理解と実際にSPCの方法を知ることについて本研修が「とても役に立った」または「役に立った」と評価した.
著者
橋本 孝太郎 佐藤 一樹 内海 純子 出水 明 藤本 肇 森井 正智 佐々木 琴美 宮下 光令 鈴木 雅夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.153-161, 2015 (Released:2015-03-05)
参考文献数
14
被引用文献数
4 6

【目的】在宅緩和ケアを受けた終末期がん患者の現状と診療実態を調査すること.【方法】在宅緩和ケアを専門的に提供する6診療所(在宅特化型診療所)から在宅診療を受け,2012年1~6月に死亡または診療中止したがん患者352名を対象として,診療録調査を実施した.【結果】対がん治療終了後に在宅診療を開始した290名の有効回答が得られた.男性165名(57%),年齢は平均72±13歳.訪問看護を238名(98%),訪問介護を95名(39%)が利用し,死亡または診療中止前1カ月間に,輸液療法を72名(30%),強オピオイド鎮痛薬投与を127名(52%)の患者が受けていた.転帰は自宅死亡242名(83%),在宅診療中止48名(17%)であり,中止の理由は,患者の身体的問題と並んで,家族の精神的・身体的な問題が多かった.【結論】在宅特化型診療所における在宅緩和ケアの現状と診療実態が明らかとなった.
著者
中里 和弘 塩崎 麻里子 平井 啓 森田 達也 多田羅 竜平 市原 香織 佐藤 眞一 清水 恵 恒藤 暁 志真 泰夫 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.263-271, 2018 (Released:2018-08-21)
参考文献数
31

【目的】1)緩和ケア病棟における患者と家族間の思いの言語化を支える家族支援(家族へのバーバルコミュニケーション支援)の有無と評価,2)家族へのバーバルコミュニケーション支援と「患者と家族との良好な関係性」および「ケアの全般的満足度」との関連を検討した.【方法】全国の緩和ケア病棟103施設における死亡患者の遺族968名に質問紙調査を実施した.【結果】536名を分析対象とした.支援を受けた遺族の割合は内容によって差がみられたが,評価は概ね高かった.重回帰分析の結果,患者と家族との良好な関係性では,全8つの支援で有意な正の関連が認められた.ケアの全般的満足度では,4つの支援(家族から患者への言語化の具体的提案,家族の思いを患者に伝える,患者の聴覚機能保持の保証,患者の思いを推察した家族への言葉かけ)で有意な正の関連が認められた(p<0.05).【結論】家族へのバーバルコミュニケーション支援の意義が示唆された.
著者
米永 裕紀 青山 真帆 森谷 優香 五十嵐 尚子 升川 研人 森田 達也 木澤 義之 恒藤 暁 志真 泰夫 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.235-243, 2018 (Released:2018-08-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1

緩和ケアの質や遺族の悲嘆や抑うつの程度に地域差があるかを目的とし,2014年と2016年に実施された全国遺族調査のデータの二次解析を行った.ケアの構造・プロセスはCare Evaluation Scale(CES),ケアのアウトカムはGood Death Inventory(GDI),悲嘆はBrief Grief Questionnaire(BGQ),うつはPatient Health Questionnaire 9(PHQ-9)で評価した.関東をリファレンスとし対象者背景で調整し,比較した.CESとGDIは調整後も九州・沖縄で有意に高かった(p<0.05).BGQは調整後も中部,近畿,中国,九州・沖縄地方で有意に低かった(p<0.05).PHQ-9は調整後,有意差はなかった.いずれのアウトカムも効果量は小さく地域差がほぼないと考えられ,ケアの提供体制は地域で大きく変わらないことが示された.
著者
木下 里美 宮下 光令 佐藤 一樹
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.121-128, 2018 (Released:2018-03-29)
参考文献数
34
被引用文献数
1

米国のIntensive Care Unit版Quality of Dying and Death(ICU-QODD)医療者版の終末期における患者の体験に関する評価15項目から,ICU-QODD看護師評価用の日本語版を作成し,総合評価として使用可能かを検討した.尺度の因子妥当性と内的一貫性の確認のための調査は1372名,再調査信頼性の確認のための調査は39名のICU看護師から回答を得た.探索的因子分析の結果,6項目2ドメインとして確定し,「身体症状」,「尊厳」と命名した.Cronbachʼs α係数は,「身体症状」が0.89,「尊厳」が0.75であった.級内相関係数は,「身体症状」が0.62,「尊厳」が0.72であった.因子妥当性,内的一貫性,再調査信頼性のある尺度であることが確認できた.15項目のうち6項目が総合評価として使用可能であることが示唆された.
著者
伊藤 怜子 清水 恵 内藤 明美 佐藤 一樹 藤澤 大介 恒藤 暁 森田 達也 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.761-770, 2017 (Released:2017-12-05)
参考文献数
19

質の高い緩和ケアを普及するための対策を検討するにあたり,症状緩和の具体的な目標値を設定するためには,一般市民の自覚症状の実態を把握する必要がある.しかし,これまでに本邦の一般市民における自覚症状の実態を調査した大規模な研究はない.そこで,全国から無作為に抽出した20〜79歳までの一般市民2400人を対象に,郵送による自記式質問紙調査を実施し,Memorial Symptom Assessment Scale(MSAS)を用いて身体,精神症状を多面的に調査した.分析対象は978部(41.1%)で,有症率,症状の強度,苦痛度を性別・年齢階級別に示し,症状の強度とSF-8™による健康関連quality of life(QOL)スコアとの関連を検討した.痛みが46.1%と最も有症率が高く,身体的QOLスコアと相関がみられた(ρ=−0.55).本研究結果は,本邦の一般市民における自覚症状の実態を示した有用な基礎データとなるであろう.
著者
塩﨑 麻里子 三條 真紀子 吉田 沙蘭 平井 啓 宮下 光令 森田 達也 恒藤 暁 志真 泰夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.753-760, 2017 (Released:2017-11-28)
参考文献数
28
被引用文献数
2

【目的】本研究の目的は,がん患者の家族が,終末期における治療中止の何に,どのような理由で後悔をしているか記述的に明らかにすることである.【方法】がん患者の遺族37名を対象に,意思決定当時と現在の2時点にかけての心理的プロセスに関する半構造化面接を行った.結果は,内容分析によって整理した.【結果】約40%の遺族に何らかの後悔についての発話がみられた.後悔の内容は,8カテゴリーに分類され,決定当時の4カテゴリーから,現在は7カテゴリーに多様化した.後悔に関連する理由は43カテゴリーに分類された.後悔がない理由は,患者や家族の要因や医療者との関係といった当時の状況に関するものが多かった.後悔がある理由は,意思決定のプロセスや選択肢,心理的対処といった意思決定の仕方と医療者との関係が多かった.【結論】後悔の性質と機能的な心理的対処の関連を理解することで,遺族の後悔制御方略を提案できる可能性が示唆された.
著者
西﨑 久純 石川 奈津江 平山 英幸 宮下 光令 中島 信久
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.271-276, 2017 (Released:2017-09-08)
参考文献数
10

【目的】在宅診療を受けているがん末期患者における褥瘡の予測危険因子を明らかにすることを目的とした.【方法】在宅診療を専門としている施設において,在宅のまま死亡にて診療終了となるまで施設入居者を含む在宅診療を受けていたがん末期患者95例について,後ろ向き研究を行った.【結果】褥瘡ができた患者は31名で,できなかった患者は64名であった.二変量解析の結果,統計学的に有意であった変数は,大浦・堀田スケール(以下,OHスケール)(P=0.02),過活動型せん妄(P=0.005),拘縮(P=0.008),ヘモグロビン値(P=0.02)で,多変量ロジスティック解析で有意であった変数は,拘縮(OR=16.55 P=0.0002) と,過活動型せん妄(OR=4.22 P=0.008)が独立した褥瘡のリスク因子として同定された.【考察】在宅診療を受けているがん末期患者においては,褥瘡の予測危険因子として過活動型せん妄についても考慮すべきである.
著者
菅野 喜久子 木下 寛也 森田 達也 佐藤 一樹 清水 恵 秋山 聖子 村上 雅彦 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.131-139, 2014 (Released:2014-11-15)
参考文献数
28

東日本大震災後のがん患者の緩和ケア・在宅医療については, ほとんど調査がされていない. 本研究では, 震災時のがん患者の緩和ケアと在宅医療の実態を明らかにし, 今後の大規模災害に向けたシステムの提言やマニュアルの整備のための基礎資料を作成することを目的とした.被災沿岸地域の医療者53名に半構造化面接を行った. 結果より, がん患者の緩和ケア・在宅医療に対する医療者の経験は, 【がん患者への医療提供の障害】【津波被害や避難の際に内服薬を喪失した患者への服薬継続の障害】【ライフラインの途絶による在宅療養患者への医療提供の障害】【地域の医療者と後方医療支援や医療救護班との連携の障害】【医療者に対する精神的ケア】【原発事故地域の医療提供の障害】の6カテゴリーに整理された. 大規模災害に向けた備えの基礎資料となり, 災害時のがん患者の緩和ケア・在宅療養に関する問題やその対応方法について明らかとなった.
著者
森田 達也 野末 よし子 花田 芙蓉子 宮下 光令 鈴木 聡 木下 寛也 白髭 豊 江口 研二
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.121-135, 2012 (Released:2012-02-22)
参考文献数
19
被引用文献数
5

本研究の目的は, 地域緩和ケアプログラムが行われた地域の医師・看護師の体験した変化を収集することである. OPTIMプロジェクト介入後の医師1,763名, 看護師3,156名に対する質問紙調査の回答706件, 2,236件を対象とした. 自由記述の内容分析を行い, それぞれ327, 737の意味単位を同定した. 好ましい変化として, 【チーム医療と連携が進んだ】 ([相談しやすくなった][名前と顔, 役割, 考え方が分かるようになった]など), 【在宅療養が普及した】 ([在宅移行がスムースになってきた]など), 【緩和ケアを意識するようになり知識や技術が増えた】が挙げられた. 意見が分かれた体験として, 【病院医師・看護師の在宅の視点】【活動の広がり】【患者・家族・市民の認識】が挙げられた. 地域緩和ケアプログラムによるおもな変化は, チーム医療と連携, 緩和ケアの意識と知識や技術の向上, 在宅療養の普及であると考えられた.