- 著者
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小山 信弥
- 出版者
- 一般社団法人 情報科学技術協会
- 雑誌
- 情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.8, pp.389, 2018-08-01 (Released:2018-08-01)
2018年8月号の特集は「情報読解力を考える」です。インターネットの普及と,それを支える技術の進展は,人々の情報入手経路を大きく変容させたことは,既に読者の皆様も実感されていることかと思います。そういった環境の変化に対応し,情報提供部門は様々な取り組みを行い,情報を求める人たちに求める情報を提供してきたと思います。一方で情報の受け手側についても変化がおきていることは,様々な方面から指摘されているところです。例をあげれば「ロボットは東大に入れるか(東ロボ)」プロジェクトが実施した中高生を対象とした「リーディングスキルテスト」の基礎的読解力調査において,中学校を卒業する段階で約3割が表層的な読解ができておらず,高校生の半数以上が教科書の内容を読み取れていない1),という結果が出ています。PISA(国際到達度調査)において2006年に日本は読解力が15位となり2),各方面で様々な対応を行ってきましたが,2012年には4位3)まで上昇したものの2015年には8位4)となり,平均点も下がってしまいました。活字離れでまとまった文章を読む機会が減少したり,語彙(ごい)量が不足したりといった実態が読解力低下の原因とする専門家の指摘もあり,文部科学省は読解力向上に向け小中学校用「指導改善のポイント」を作成するなどして対策を講じています。そこで本特集では情報へのアクセスが容易になり,情報量が豊かになる中で,情報の「発信」側ではなく,「受信」側に起きている状況について調査・読解力向上に係る研究事例や文科省の取り組みを取り上げることとしました。早稲田大学教職大学院の田中博之先生には,PISA型読解力とはどのような力なのかを,OECDのキー・コンピテンシーへの位置づけや現行の学習指導要領との関わりなどをふまえて論じていただきました。文部科学省初等中等教育局教育課程課からはPISA2003の調査結果の公表以降の,読解力に関わる文部科学省の主な施策について執筆いただきました。田中先生の論考とあわせてお読みいただければ,国内の読解力向上に関する動向について更に理解が深まると思います。神戸学院大学の立田慶裕先生からは,米国の学校図書館協議会が提供している21世紀型スキルを学ぶための学校図書館基準とともに,コロラド州の資料から,学校司書に求められる評価基準としてのルーブリックなどのツールを紹介していただきました。武蔵大学の中橋雄先生からは,ソーシャルメディアを利用する際に求められる「読解力」の特徴とその教育方法についてご執筆をいただきました。いずれも図書館や情報部門において活用できる視点を提供していただいたと思います。本特集が,「情報読解力」についての議論の基盤となれば幸いです。(会誌編集担当委員:小山信弥(主査),古橋英枝,長屋俊,光森奈美子)参考文献1)新井紀子.“3教科書が読めない-全国読解力調査”.AI vs. 教科書が読めない子どもたち.東京,東洋経済,2018,p.168-252.(ISBN 978-4492-76239-4)2)OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2006年調査国際結果の要約 http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/04/23/1230782_001.pdf(参照20180703)3)OECD生徒の学習到達度調査~2012年調査国際結果の要約~.国立教育政策研究所 http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/pisa2012_result_outline.pdf(参照20180703)4)OECD生徒の学習到達度調査~2015年調査国際結果の要約~.国立教育政策研究所 http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2015/03_result.pdf(参照20180703)