- 著者
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峯松 信明
牧野 武彦
山内 豊
齋藤 大輔
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 基盤研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 2018-04-01
外国語学習の主目的は,対象言語を用いた他者との音声コミュニケーションであるが,その言語を日常使う機会に恵まれなければ,外国語訛りが強く残り,聴取者にとって聞き取り難い発音となる。学習者発音を矯正する場合,教師は自身が内在的に持つモデル発音との差異に基づいて矯正し,これを技術的に実現する場合も,母語話者発音モデルとの差異を自動検出することになる。これらは母語話者のような(native-souding)発音を学習目標とした指導戦略と言えるが,外国語音声学習の主目的は十分伝わる可解性の高い(comprehensible enough)発音の獲得である。この場合,聴取者が持つと想定される発音逸脱への許容度を前提とした指導が必要となるが,聴取者の許容能力を計測・モデル化することが困難であるため,発音了解性に基づく音声指導は,教師の経験と直感に頼らざるを得なかった。本研究では,1) 学習者音声o(t)に対する母語話者シャドーイングを通して,各音声に対して了解度の時系列パターン i(t) を定量的に導出し,o(t) と i(t) のパラレルコーパスを構築する。2) それを用いて,任意の学習者音声のどこが,どの程度聞き取り難くなるのかを深層学習によって予測する技術を構築する。3) 最終的に,LA を母語とし LB を学ぶ学習者群と,LB を母語とし LA を学ぶ学習者群に対して,互いに他群の学習者音声をシャドーイングさせ(互いに他者の評価者となり),学習者音声のどこで了解性が低下するのかを教示する教育インフラを構築・公開し,外国語音声教育に貢献する。2018年度は学習者音声に対して音素事後確率を推定し i(t) とする方式を提案した。その後,シャドー音声以外に母語話者の読み上げ音声を利用する手法を考案することができた。