著者
山我 哲雄
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.183-207, 2016 (Released:2017-09-15)

ユダヤ教の食物規定(カシュルート)は、主として(1)血の摂取、(2)肉類と乳製品の混合、(3)ブタなどの「穢れた」とされる動物の肉の禁忌を三本の柱とする。個々の禁忌の由来や理由には不明な点が多いが、旧約聖書では、いずれも問答無用の神の絶対的な命令と理解されている。旧約聖書の食物規定がほぼ今の形に体系化されたのは、いわゆるバビロン捕囚時代(前六世紀)であるが、このことは、国と土地を失って異民族、異文化の中で生きることを余儀なくされたユダヤ人捕囚民の状況と関連があろう。圧倒的優位にある周囲の異民族、異文化、異宗教に同化、吸収されないようにするために、彼らは食という、生活の最も基本的な要素を手掛かりとした。周囲と同じものを同じように食べないという生活様式を確立することによって、捕囚のユダヤ人たちは、自分たちの信仰と民族的同一性(アイデンティティ)を維持したのである。
著者
月本 昭男 置田 雅昭 山我 哲雄 市川 裕 杉本 智俊 牧野 久実 桑原 久男 置田 雅昭 市川 裕 桑原 久男
出版者
立教大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

現在のイスラエル国ガリラヤ地方にあるテル・レヘシュ遺跡にて、5次にわたる考古学調査を行った。これによって、同地域における青銅器時代から鉄器時代にかけて見られる都市の発達とその文化的特性を明らかにすることができた。またアマルナ文書をはじめとする文献研究においては、上記テル・レヘシュが前2千年紀後半のエジプト碑文に言及されるアナハラトと同定されることが明らかになった。またこれまで発信地が不明であったアマルナ書簡237~239番がテル・レヘシュから発信された可能性が高いことを突き止めた。
著者
守屋 彰夫 佐藤 研 秦 剛平 月本 昭男 山我 哲雄
出版者
東京女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

ヘブライ語聖書の第2 区分であるネヴィイーム(預言者)に属する 8つの書物(ヨシュア記、士師記、サムエル記、列王記、イザヤ書、エレミヤ書、エゼキエル書、十二小預言書)の本文生成過程を、主として死海文書資料、七十人訳ギリシア語聖書との照応関係と乖離・不整合に関する比較研究を通して、紀元前 3 世紀以降、紀元後 1 世紀に亘る期間について追究し、現在の欧米の学界での成果に迫る基本的理解を得ることが出来た。
著者
八巻 和彦 矢内 義顕 川添 信介 山我 哲雄 松本 耿郎 司馬 春英 小杉 泰 佐藤 直子 降旗 芳彦 橋川 裕之 岩田 靖男 芝元 航平 比留間 亮平
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

<文明の衝突>から<文明の対話>への道は、各社会が己の価値観を絶対視することなく、互いの相違を外的表現の相違であって本質的な相違ではないことを認識することによって確保されうる。たとえば宗教において教義と儀礼を冷静に区別した上で、儀礼は各社会の文化によって表現形式が異なることを認識して、儀礼の間に相違が存在するから教義も異なるに違いないとする誤った推論を避けることである。キリスト教ユニテリアニズムとイスラームの間の教義には本質において相違がないが、儀礼形式は大いに異なることでしばしば紛争が生じ、他方、カトリックとユニテリアニズムの間では教義は大いに異なるにもかかわらず、儀礼が類似しているとみなされることで、ほとんど紛争が生じない、という事実に着目すれば、われわれの主張が裏付けられるであろう。
著者
月本 昭男 佐藤 研 山我 哲雄 市川 裕 澤井 義次 鎌田 繁 池澤 優 河東 仁
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究はユダヤ教,キリスト教,イスラム教における神観につき,比較宗教史的観点から、4.で述べるように、四つの側面から実証的総合研究を行った。そのうち、(1)「古代ユダヤ教における一神教成立の解明」については、下ガリラヤのテル・レヘシュ遺跡発掘調査により、古代イスラエル最初期の宗教に関する実証的なデータが発見され、成果の一部はV国際宗教史会議(トロント大学、2010年8月)および「国際ガリラヤ会議」(立教大学、2011年5月)で公表した。(2)~(4)の課題の研究成果については、以下の報告4を参照されたい。