著者
池田 あゆみ 谷 将之 金井 智恵子 髙山 悠子 大野 泰正 太田 晴久 山縣 文 山田 貴志 渡部 洋実 橋本 龍一郎 岡島 由佳 岩波 明 加藤 進昌
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.133-141, 2014-02-15

抄録 成人アスペルガー障害(AS)を対象に共感指数(EQ)およびシステム化指数(SQ)を含む自閉症スペクトラム障害関連の質問紙を施行し,ASの臨床的特徴と質問紙の有用性を検討した。健常群と比べAS群でEQが有意に低く,SQが有意に高かった。EQとSQに関してAS群の男女間に有意差はなく,ともに超男性脳傾向を示した。AS群においてのみEQと自閉症スペクトラム指数(AQ),SQとAQ,EQと対人的反応性指数(IRI)の相関を認めたが,EQとSQの相関,これらとパーソナリティ尺度との相関は認めなかった。EQおよびSQは,ASの低い共感能と高いシステム化能を反映する指標であり,パーソナリティに影響を受けないため,成人のASを診断する有用な指標となり得る。
著者
武石 卓也 山縣 文治
出版者
関西大学人間健康学部
雑誌
人間健康学研究 : Journal for the study of health and well-being (ISSN:21854939)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.97-108, 2020-03-31

本研究の主たる目的は特に、社会的養護のあり方をめぐって対立的な様相を呈している家庭福祉領域と家族社会学領域における主張の相違点を整理したうえで、家庭養護の拡充にむけた論点を提示することにある。近年、日本における社会的養護は、国際動向の影響などにより、子どもの権利条約の理念に基づく社会的養護の整備に向けて抜本的な改革が図られることになった。家庭養護の拡充が国の方針として打ち出され、里親等への委託の推進や施設の小規模化といった家庭養護の拡充が着実に進展している。こうした動向のなかで、家族社会学研究者の一部から、家庭養護志向に内在する構造的視点や規範的視点などから、批判的な見解が寄せられている。その主たる論点は、1980年代以降の家族社会学における主要なパラダイムとして定着した近代家族論および子育ての社会化論における知見に基づくもので、「家族主義」「実子主義」といった近代家族規範をキー概念として、家庭養護を拡充するにあたっての懸念事項が提示されている。子どもの権利条約に基づく家庭養育の重要性に主眼を置く子ども家庭福祉領域と、家庭での子育てが抱える課題に主眼を置く家族社会学領域の議論は、対立的な側面を有している。家庭養護の拡充にむけては、「家庭養護対施設養護」といった対立的な議論に終止符を打ち、双方の領域が批判的な主張を超えた建設的な議論を展開していく必要がある。家庭養護を子どもの最善の利益を保障するためのシステムとしてだけではなく、社会的養護の核に据えるためには、家族社会学が懸念を示す家庭養護が内包する構造的課題、規範的課題に配慮しつつ、子どもの安定した生活環境やパーマネンシー保障の実現にむけた社会的養護のしくみを構築していくことが期待される。
著者
筒井 孝子 大夛賀 政昭 東野 定律 山縣 文治
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.29-40, 2012

本研究の目的は,児童自立支援施設において小規模ケアおよび家庭的養育を具現化してきた小舎夫婦制と交代制によって提供されたケアの内容および時間,ケアに関わる職員の負担感に関する実証的データを比較し,これらのケア提供体制の特徴を明らかにすることである.その方法として,児童自立支援施設2施設において,他計式1分間タイムスタディ調査データを用いての分析を行った.研究の結果,小舎夫婦制の入所児童の情緒・行動上の障害の程度は,交代制より比較的重く,また,提供されたケア内容は身の回りの世話に関するケア時間が長かった.さらに,小舎夫婦制での提供時間は交代制よりも長かったが,交代制に比較すると負担感は軽かった.今後は,すでに運営が困難となっている小舎夫婦制に変わる新たな体制を模索するとともに,すでに実施されている交代制においても人事マネジメント等のあり方を改めて検討する必要があると考えられた.
著者
山縣 文
出版者
昭和大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

平成21年度は、当初の予定通り4月~9月の間に、主な備品である52チャンネルNIRS装置(Hitachi ETG-4000)の整備・調整を行い、解析用のパソコン、必要な解析ソフト、図書の整備などを行った。10月より患者登録を開始した。昭和大学病院附属東病院精神神経科を受診したDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th ed (DSM-IV)にて大うつ病と診断された未治療の患者のなかで、本研究の参加へ同意を得られたのは9名だった(当初の本年度の目標は10名である)。そのうちの4名が12週間後の2回目の検査も現段階で終えている(残りの5名は当外来へ通院を継続している)。外来に患者の基礎情報を聴取し、かつNIRS測定を採血を実施した。血清BDNFの測定は(株)エスアールエルに外注してる。各被験者の基礎情報や、検査結果は持ち出し禁止のオフラインのノートパソコンと、バックアップ用に外付けハードデイスクに匿名でナンバー化して保存している。また、平成21年11月には米国スタンフォード大学医学部精神科を訪問し、脳科学研究センターにて精神疾患に対するNIRSの臨床応用についてのミーティングに参加し、本研究の概要を説明し、意見交換を行った。