著者
重野 寛 本田 新九郎 大澤隆治 永野 豊 岡田 謙一 松下 温
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.1922-1932, 2001-07-15
被引用文献数
19

本稿では,3次元仮想空間をより実感することを可能にする仮想空間システムFriend Parkについて述べる.Friend Parkは3DCGで構築された空間や物体を特徴付ける香りをユーザに提供することや,ユーザが自然な振舞いで利用することのできる入力インタフェースによって,仮想空間の実感を高めるシステムである.人間の五感のうち嗅覚においては,他の感覚器では得ることのできない情報を取得し,物事を実感するうえでその効果は大きいと考えられる.そこで,仮想空間内の嗅覚情報を表現するために,「アロマ」という概念,およびアロマの伝達される範囲を表した「アロマオーラ」を定義し,アロマオーラ内にいるユーザにアロマの伝達を行った.実際に香りを発生させる方法としては,コンピュータ制御可能な芳香発生装置を利用し,香りの発生を行った.また,より自然な振舞いで利用できる入力インタフェースを実現するため,人間の「息を吹きかける」という動作に注目し,専用の風力センサを作成した.ユーザ側にはデバイスによる負荷を与えたり,過度に意識させることなく,ディスプレイに表示されている仮想空間において,息を吹きかけるという動作による直接的なオブジェクトの操作を可能にした.評価を行った結果,香りの伝達および風力センサを利用した入力インタフェースによる仮想空間の実感について,良好な結果を得た.In this paper,we describe a 3D virtual space system named ``Frien Park'' that gives users a more definite sense of reality.Users can get riality by using Friend Park taht provides the information of the sence of smell in virtual space and the input device which user can use by the natural behavior.Human percept the important infomation through tne sense of smell that cannot be perceiced through other senses.So we propose the general idea of ``Aroma'', the area of ``aroma aura''. and the method of transmitting the actual smell from a virtual space to real world.By entering the aroma aura, the user can attain the aroma.In addition, to perform a natural way of input in virtual space,we focused on the action of ``blowing''.we propose the techniqu of operating the virtual object by blowing onto the screen and measuring a force of the wind with a special device.we design a special device that can set below the display,thus the user can naturally make direct input without being too aware of the device.The system evaluation demonstrated that we have gained a better result on transmitting olfactory infomation,input device, and whether users can get riality by them.
著者
井上 亮文 平石 絢子 柴 貞行 市村 哲 重野 寛 岡田 謙一 松下 温
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.38-50, 2005-01-15

シナリオの存在するシーンを一般のユーザが撮影する場合,被写体の数が多かったり,撮影環境がそのつど異なったりするため,効果的なカメラワークを事前に計画することは困難である.そこで本論文ではシナリオ情報に基づいてカメラワークを自動的に計画する手法を提案する.撮影対象としてオーケストラ演奏を想定し,シナリオである楽譜から被写体の候補を決定する方法と,各カメラのショットを決定するための優先度の計算方法を定義している.実際にショットを接続して1 本の映像を編集する実験の結果,提案手法はシナリオや優先度を考慮しないショットで編集したものよりも変化に富んだ映像を制作できることが分かった.また,カメラの配置に適応したショットを提示できることが分かった.
著者
本田 新九郎 富岡 展也 木村 尚亮 岡田 謙一 松下 温
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.7, pp.1454-1464, 1997-07-15
被引用文献数
8

本稿では,在宅勤務の問題点である,コミュニケーションの機会の減少からくる個人の心理負担,社会からの疎外感を解消した仮想オフィスシステムについて述べる.システムでは,オフィス内での自然なインフォーマルコミュニケーションの実現のために,コミュニケーションの支援技術であるアウェアネスの概念を発展させた「位置アウェアネス」を考慮した.位置アウェアネスの実現に際しては,3次元仮想空間内に社員の座席を設けた「大部屋メタファ」に基づく仮想オフィスを構築した.このことにより,これまで考えられていなかったコミュニケーションの空間依存性を考慮したより自然なインフォーマルコミュニケーションが実現された.また「アウェアネススペース」という新たな概念の導入により,コミュニケーション空間とパーソナルスペースの確保の両立をはかった.個室ベースのシステムとの比較による評価から,在宅勤務における問題点解消について良好な結果を得た.In this paper,we describe a virtual office system that dissolves the estrangement feeling of home-office workers,which comes from less opportunity of communication.In order to realize a natural informal communication in the virtual office,the system has considered the new awareness concept "Position Awareness".We have realized the "Position Awareness" by building a virtual office based on the "Shared-Room-Metaphor" on a 3D graphics workstation.By doing this,the system enabled more natural informal communication that depends on the positional relationship.And also by introducing the new concept of "Awareness Space",both the facility of communication and personal space was made compatible.By comparing with the result of the system based on the private room,we have gained a better result on solving the problem of home-office.
著者
井上 亮文 吉田 竜二 平石 絢子 重野 寛 岡田 謙一 松下 温
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.212-221, 2004-01-15
参考文献数
14
被引用文献数
8

本研究では,映画の映像理論に基づく対面会議シーンの自動撮影方式を提案する.対面会議シーンの撮影には複数のカメラを用いる必要があるが,位置的に離れたカメラの映像でスイッチングを行うと急激な変化が生じ,視聴者が参加者の位置関係の認識に混乱を来たす.提案手法では,人物の位置関係を明確にする映像理論であるイマジナリーラインを設定および解除する方法と,参加者の対話シーンを強調する三角形配置に従った撮影用カメラの決定方法を定義している.実験では正確なイマジナリーラインを冗長な部分があるものの70¥%の確率で設定でき,映像表現に影響を与えるような検出ロスは少なかった.アンケートによる比較実験では,人手でスイッチングしたものと比べて位置関係の見やすい映像を自動生成できたことが確認された.In this paper,an automatic shooting method for face-to-face meeting scene based on grammar of the film language is proposed.Shooting a meeting scene requires multiple video cam- eras,however,viewers may get confused in case of switching shot between spatially distant cameras.To shoot participants effectively,we introduce two filming theory into automatic shooting method.The dectection of the メimaginary line モmakes spatial relationships of the participants clear.The determination of the メcamera triangle モfigures out the conversation of the participants.Although there remains some redundancies,the detection ratio of the ideal imaginary line was 70%,the loss of which had less effects on the video image.The comparative experimental result indicated the availability.
著者
本田 新九郎 富岡 展也 木村 尚亮 大澤 隆治 岡田 謙一 松下 温
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.1472-1483, 1998-05-15

本稿では,3次元返想空間を利用した在宅勤務環境を提供する仮想オフィスシステムValentineについて述べる.Valentineは,地理的に分散したユーザをネットワーク上に仮想的に構築したオフィスに出勤させ,そこで他のメンバの雰囲気・気配を伝達し,コミュニケーションを支援するシステムである.物理的なオフィスは存在せず,ユーザはすべて仮想オフィスに通うことを想定している.遠隔地にいる他の社員の気配を伝達するために,「周辺視ビュー」および「効果音」を実現し,アウェアネスの提供を行った.またアウェアネスの過度な提供が効率的な個人作業の妨げとなることから,ユーザの「集中度」を定義し,集中度に応じたアウェアネス提供環境を実現した.集中度は「キーボード,マウスの利用頻度」「椅子を動かす頻度」という2つの要素からシステムで自動検出され,作業環境に反映される.評価実験を行った結果,気配の伝達および集中度に応じた環境の提供について,良好な結果を得た.
著者
本田 新九郎 富岡 展也 木村 尚亮 岡田 謙一 松下 温
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.7, pp.1454-1464, 1997-07-15

本稿では,在宅勤務の問題点である,コミュニケーションの機会の減少からくる個人の心理負担,社会からの疎外感を解消した仮想オフィスシステムについて述べる.システムでは,オフィス内での自然なインフォーマルコミュニケーションの実現のために,コミュニケーションの支援技術であるアウェアネスの概念を発展させた「位置アウェアネス」を考慮した.位置アウェアネスの実現に際しては,3次元仮想空間内に社員の座席を設けた「大部屋メタファ」に基づく仮想オフィスを構築した.このことにより,これまで考えられていなかったコミュニケーションの空間依存性を考慮したより自然なインフォーマルコミュニケーションが実現された.また「アウェアネススペース」という新たな概念の導入により,コミュニケーション空間とパーソナルスペースの確保の両立をはかった.個室ベースのシステムとの比較による評価から,在宅勤務における問題点解消について良好な結果を得た.
著者
福井 健太郎 林 剛史 山本 翔太 重野 寛 岡田 謙一
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.205-212, 2006-06-30 (Released:2017-02-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1

One of the most important element which influences user's attitude in human communication is the change of facial expression. Today, the major methods to give the expression to an avatar are achieved by menu selection or automatic control using character-based verbal information. However, these methods can be a burden for a user and they cannot offer an actual user's feelings. Also, it takes a time to influence the expression on the avatar because of the manual input procedure. In this paper, we propose the real-time expression change method of an avatar using an electroencephalogram. By analyzing the data sent from an electroencephalograph, the information of relaxation, agitation, blink, and eye movements are distinguished by the system, and mapped to an avatar. By evaluating this system, the results show that this system successfully visualize the user's feelings without being burden for a user.
著者
堀内 陽介 竹内 達史 西濱 大貴 井上 智雄 岡田 謙一
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2010-GN-75, no.13, pp.1-8, 2010-03-11

演劇創作は,音響や照明,舞台美術,空間デザインなど様々な芸術表現の組み合わせで協調的に作られる総合芸術であるが,実際の演劇で用いる舞台演出などを考える場合,演出を総合的に頭に思い描きながら作業を行うのは容易ではない.そこで本稿では,演劇創作活動の中でも音響や照明の演出プランニングに着目し,実際の舞台をイメージしやすい環境である,演劇における演出プランニングを支援するマルチユーザテーブルトップインタフェースを提案する.このシステムでは,テーブル型のタッチパネル上に役者を模した人形や舞台装置の模型を配置して小型の舞台を構築し,ユーザに対して舞台のイメージ支援を行う.各ユーザはこの小さな舞台空間上で演出を詳細に再現出来る.また,使用しているテーブルトップインタフェースの特性である操作者識別を活かし各ユーザの役割ごとにシステムからのフィードバックを変えることで,テーブルトップ上での複数人による同時な操作を効率的に支援する.さらに,考案した演出をシステムに保存して CUE シートの自動生成を行うことが出来る.評価実験から,提案システムの演出プランニングにおける有用性を確認した.
著者
坂内祐一 石澤 正行 重野 寛 岡田 謙一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.3414-3422, 2006-12-15

近年,映像や音声情報に加えて,香りの情報を遠隔に伝える研究がさかんになっている1) が,香りの基底が見つかっていないため,香り情報を一意に表現する方法が確立していない.そのためオープンな香りコミュニケーションシステムでは,(1) 所望の香りをどう指定するかの問題,(2) 香り発生装置で発生できる香りの種類に限りがあるため,香り再生時に必ずしも意図する香りが伝えられない問題が存在する.この問題に対するアプローチの1 つとして,映像や音声の雰囲気を伝える背景香の概念を導入し,背景香の通信に香りの印象を表現する形容詞(香りの感性語)を用いたコミュニケーションモデルを提案する.映画のシーンを鑑賞する際に様々な背景香を発生させる実験を行った結果,背景香として香りの印象が近ければ異なる香りを用いても,同じように映像や音声の印象を増す効果があることが確認された.
著者
江木 啓訓 石橋 啓一郎 重野 寛 村井 純 岡田 謙一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.202-211, 2004-01-15
参考文献数
23
被引用文献数
8

本研究は,対面同期会議の参加者が内容の理解や発想,意識共有の質的向上を実現するために,議論への参加を促す手法について検討する.従来の議論の場面では発言する機会を得にくい参加者に着目し,発言とは違う形で貢献をしたり,議論のグループ全体の状況を把握しやすくしたりするために,協同記録作成を導入した議論の手法を提案する.議論の内容に関する記録編集を行うことを通じて,参加者が傍観することなく主体的に参加できることを狙いとする.パーソナルコンピュータを持ち寄った対面での議論の環境を対象とし,提案手法を実現するために必要な協同記録作成ツールを設計・実装した.議論に導入した結果,議論と記録の作成を並行するための認知的な負荷が増すという点が明らかになった.また,記録作成ツールを設計する際に,対面同期環境における参加支援の観点から必要なアウェアネス機能を整理し検討を加えた.The object of this research is to enable participants of a discussion to be able to improve the level of understanding, ideas, and shared consensus in a discussion. Toward this end, software which allows editing by multiple users at once was introduced during face-to-face discussion, creating an environment where participants of the discussion can also participate in the editing of the discussion minutes. As a result it became apparent to be a heavy load that assigning discussing and editing minutes to users at once. Furthermore, awareness functions required to encourage discussion contribution are investigated.
著者
加藤 隆雅 萩野 実咲 田山 友紀 岡田 謙一
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2015-GN-94, no.3, pp.1-8, 2015-03-05

近年,大規模な災害が発生した際に市民が中心となって救助活動を行う必要性が指摘されており,日本各地で災害対応訓練が開催されている.しかし,現状の訓練は体位管理やトリアージを訓練する際に傷病者役の手配や資機材の事前準備が必要であり,訓練を手軽に実施する事ができない.さらに,訓練者個人のペースを配慮できていないという問題点がある.このような背景から本研究では,人型入力デバイス QUMARION を使用した災害対応訓練システムを提案する.訓練者は,人型入力デバイスを使用して個人で体位管理訓練を実行する事が出来る.また,学習と実践訓練を分けることで,個人のペースに合わせた訓練が行える.評価実験を行った結果,本システムを使用して正確に学習出来ている事を確認した.人型入力デバイスを使用する事で,事前準備の必要なしに個人のペースで災害救護訓練が行えるとわかった.
著者
野村 恭彦 片山 貴嗣 斉藤研一郎 岡田 謙一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.72-81, 2005-06-15
参考文献数
28
被引用文献数
1

知識の共有・活用は企業の重要課題となっており,そのための情報の蓄積・検索のメカニズムや,掲示板を活用したQ&A メカニズムが提案されてきた.しかし,多くのナレッジ・マネジメントの実践を通して,知識を必要とする人と,その知識を持つ人の間の相互理解や信頼関係がなければ,知識がうまく流れないことが明らかになってきた.本論文では,今は知らない相手でも,出会ったときに「持ちつ持たれつ」あるいは「尊敬しあえる関係」になれる人同士の関係を「潜在ソシアルネットワーク」と呼び,その探索手法の提案を行う.提案手法は,各ユーザの回答可能な知識領域と,各ユーザの持つ知識ニーズを管理し,状況に応じて互恵関係を検索・提示する.プロトタイプを構築し,「私はあなたを助けられるし,あなたは私を助けられる」という関係を提示することが,パブリックに質問を投げて回答を期待する手法に比べ,回答獲得可能性が高く,質問に回答する人の多様性が増すことを示す.Sharing and utilization of knowledge is an important issue among companies. Mechanisms of information retrieval and Q&A by utilizing bulletin board were proposed for such issue. However, it was discovered through number of knowledge management practices, that successful flow of knowledge is difficult if there are no mutual understanding and relationship of trust between those who need the knowledge and those who have such knowledge. In this report, we call "potential social network" which describes the situation where strangers meet each other for the first time and can have relationship of "give and take" or "mutual trust" and will propose its method to search. This method is to manage each user's possible response of knowledge domain and their knowledge needs and search reciprocal relationship according to the condition. Compared to the method that questions the public and wait for their answers, the method that creates prototype and presents the relationship of "I can help you and you can help me," will i crease the possibility of obtaining the response as well as the diversity of the respondents.
著者
前田 典彦 Giseok Jeong 市川 裕介 岡田 謙一 松下 温
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.12, pp.57-64, 1994-01-27
被引用文献数
4

我々は、相手が口にした言葉だけでなく、その時の様子や雰囲気などからも相手の本心を感じとることができる。今回こうした点に着目して、TV会議の実験環境MAJICを試作した。そのデザインコンセプトは、 )等身大の相手画像との自然一致 )複数地点からの映像を一枚の湾曲スクリーンに投影 )デスクトップの作業空間 であり、より自然で人間的なTV会議空間の構築を目標としている。本システムは3地点間を同時に結び、あたかも3人で机を囲んでいるような感覚を提供する。今回の報告ではシステムの実装方法と、その特徴について説明を行なう。MAJIC is an experimental environment for teleconferencing. The design concepts are: 1) supporting eye-contact with a projected image to obtain a life-sized presence. 2) projecting images on a curved large screen. 3) providing shared workspace on a table. In this paper, we describe features of our system and techniques for implementation.
著者
栗原 主計 市川 裕介 田中 俊介 岡田 謙一 松下 温
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.315-316, 1996-03-06

通信技術やコンピュータシステムの発達により、地理的に分散した会議室同士を結ぶ、テレビ会議システムの臨場感を高める研究も飛躍的に発展してきた。しかし、どんなに技術が進歩しても、人間にギャップをまったく感じさせないほどの完壁な臨場感を実現することは不可能とは言わないまでも、困難かつ高価につく。これは、人間の感覚器は非常に精巧に出来ているためである。どれだけ似せても現実との違いに気付く限り、その目標は逃げ水のようなものである。また、毎回会議のたびにテレビ会議システムの利用予約を行い、会議室まで出向くのは面倒であり、電話をかけるような気軽さで各人の席から自由に参加したいという要望は強い。このような、携帯性や簡易性を上げる為には、伝達情報の取捨選択を行い、要らない情報の通信を敢えて切り捨てる必要があると考える。本研究では、人間の関わりを階層化することによって、その関りの深度を明確にすることを試み、人間の協同作業に必要な最小限の情報をそこから抽出し、通信コストを減らす効果を目指している。
著者
本田 新九郎 河内 清人 木村 尚亮 岡田 謙一 松下 温
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.59, pp.37-42, 1996-06-07
被引用文献数
4

本稿では,大部屋のインフォーマルコミュニケーションの形態がメンバの空間的配置に関係していることに着目し,大部屋オフィス特有の発話モデルを提案した.またそのモデルに基づいて実装した,大部屋仮想オフィスDOOS(istributed Oriental Office Syste)について述べる.DOOSでは,これまで在宅勤務者が感じていた疎外感を減少するため,これまで個室ベースであった仮想オフィスに大部屋を導入し,メンバの空間的配置を考慮する(メンバに仮想的な座席を提供する)ことにより,他のメンバの存在を感じさせ,大部屋特有のインフォーマルコミュニケーションを実現している.In this paper, we propose an informal communication model in a shared space viewing that there is a close connection between the informal communication in a shared room and members' spacial positions. Based on this model, we realized a shared room like virtual office environment named DOOS(Distributed Oriental Office System) instead of former systems based on individual rooms for each member. DOOS aims to reduce the member's alienation, and to realize informal communication which is peculiar to a shared room, considering members' spacial position(provide flxed seat arrangement for members) in a virtual environment.
著者
小松 洋輔 友吉 唯夫 川村 寿一 岡田 謙一郎
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.17-24, 1970-01

Three cases of intrascrotal rupture of the testis were presented. Case 1: A 21-year-old student got a kick at his left scrotum during Kwarate training. On the third posttraumatic day, the ruptured tunica albuginea was surgically sutured. Case 2: A 25-year-old man fell from the height and got the right scrotum injured. On the third posttraumatic day, the ruptured tunica albuginea was sutured. Case 3: A 58-year-old man got an injury at his right scrotum due to traffic accident while on a motorcycle. It was on the tenth posttraumatic day that the operation was performed. Because the tunica albuginea was so extensively injured, orchiectomy was necessitated. Histological findings of the ruptured testes were described. The rat testes were experimentally ruptured and histological study was made several times after trauma in order to investigate the changes with time.
著者
栖関 邦明 杉山 阿葵 長橋 健太郎 岡田 謙一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.2-13, 2010-01-15

災害時救急救命活動において特に緊急に治療を必要としない軽症患者や中等症患者の治療を一時的に遅らせることや,緊急度が高く助かる見込みのある傷病者をトリアージ(選別)することが災害時救急救命において行われている.現在のトリアージ活動において電子化がなされていないため傷病者の急激な容体の悪化などをリアルタイムで把握ができない,医療従事者が多数の赤タグ負傷者の搬送順を決められないことが問題点としてあげられる.本研究では我々は無線センサネットワークを利用し,傷病者を従来の絶対基準によるトリアージ評価により分類した後,生体情報と外傷の情報をもとに傷病者同士を相対的に比較し,同じ色に分類された傷病者集団の中でどのくらい治療を優先するのかを自動的に割り出すシステムを提案した.システムの機能検証用に作成した人間のバイタルサイン発生装置バイタルサインジェネレータを用いて実験を行ったところ,システムがリアルタイムに変化する傷病者の生体情報を取得し,バイタルサインが急激に変化している傷病者を割り出すことが可能であるという結果が得られた.
著者
堀口 悟史 井垣 宏 井上 亮文 星 徹 岡田 謙一
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.17, pp.1-6, 2013-01-09

本研究では,プログラミング講義中の受講生の状態を講義後に詳しく見直すことで,講義各回や全体の改善支援を目的とする.この目的を達成するため,著者らが開発したシステムで記録した受講生の講義時間中の状態ログを,講義後にさまざまな観点から見直すことができるリフレクション支援ビューを提供する.提供されるビューはウェブ上で動作するブラウザベースのシステムである.本稿では,実際の講義で取得したログからどのような改善点が見つかるかを議論する.評価実験として,受講生 12 名によるプログラミング講義において講義時間中の状態ログを収集し,分析を行った.結果として講義資料の内容が十分であるか,遅れている学生へのフォローが効果があったのか等の議論をすることができた.
著者
高津 良介 牧 宥作 権藤 聡志 井上 智雄 岡田 謙一
雑誌
研究報告デジタルコンテンツクリエーション(DCC)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.42, pp.1-8, 2015-01-19

オーケストラをはじめとした大人数の演奏形態は身近な存在となり,アマチュアを中心としたオーケストラも多数見られるようになった.大人数による音楽演奏の場において,指揮者の存在は演奏をまとめる上で重要である.指揮者に求められる専門知識の敷居は高く,アマチュアオーケストラにおいては指揮者不足が問題として挙げられている.その状況に焦点を当てた,指揮者不在でも演奏を成立させるための仮想指揮者の研究が存在する.しかし,それらの仮想指揮者は人間の指揮ほど多種多様な表現を行えないため,演奏内容を豊かにするだけの指揮能力を持たせることは困難である.そこで我々は,演奏者一人一人に指揮を行う環境を提案する.本システムでは,演奏者全員の面前にタブレット端末を配置し,これに演奏者の役割に応じた個別の仮想指揮者を表示する.それぞれの仮想指揮者のタイミングは同期を取る.このシステムによって,高い指揮能力を持つ仮想指揮者を実現し,指揮者不在でも演奏しやすい環境を提供できることが期待できる.Instrumental performances which consist of a large number of people, such as the orchestra, have been familiar. In addition, orchestras consist of many amateur musicians are often seen. When music is played by a large group, what becomes most essential in order to put together a performance is the existence of the conductor. A conductor is required of a wide range of expertise, and shortage of conductors due to this load, has been a serious problem within amateur orchestras. Focusing on such situations, there are studies using a Virtual Conductor in order to make performances workout in the absence of the conductor. Unfortunately, these Virtual Conductors obviously lack variety of expressions than human conductors, so it is difficult for the conductor to have conducting abilities to enrich the performance. Therefore, we suggest an environment where each performer can have one conductor to conduct them. In this system, tablets are placed in front of each player. Separate Virtual Conductors are in display that could provide personalized directions that suit their role in the orchestra. Timing of each Virtual Conductor is synchronized. This system can realize a Virtual Conductor with high conducting ability, and is expected to make possible to provide supportive playing environments for amateur players without the conductor.
著者
根本 啓一 ピーター グロア ロバート ローバッカー 岡田 謙一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.83-96, 2015-01-15

本稿では,日本語版と英語版のウィキペディアを対象とし,ウィキペディアの記事を編集するユーザ間に存在する社会ネットワークが,記事編集という協調作業においてどのような影響があるかを分析した.記事編集に関わるユーザ間の社会ネットワークを計測するために,個々のユーザが持つユーザ会話ページへの書き込みによるインタラクションに着目した.英語版のウィキペディアでは,記事の質が最も高い3085の秀逸な記事と,比較的質の高い良質な記事を含む80154の記事での記事編集に関わるユーザのインタラクションを取得した.日本語版ウィキペディアでは,69の秀逸な記事と873の良質な記事における記事編集に関わるユーザのインタラクションを取得した.協調作業のパフォーマンス指標として,記事の質があるレベルから1段階向上し,秀逸な記事や良質な記事と評価されるまでに要した時間を利用した.その結果,記事編集に関わるユーザ間に社会ネットワークが事前に構築されていると,記事の質の向上に要する時間が短くなることが示された.さらに,ユーザ間のインタラクション関係を見ると,ユーザ間の関係構造がより密なネットワークを形成しており,中心性の高いネットワークであると,記事の質を高める協調作業のパフォーマンスが高いことが分かった.これらの結果からユーザ間の社会ネットワークが編集コラボレーションのパフォーマンスに寄与することが示唆された.In this study we measure the impact of pre-existing social network on the efficiency of collaboration among Wikipedia editors in the Japanese and English Wikipedias. To construct a social network among Wikipedians we look to mutual interaction on the user talk pages of Wikipedia editors. As our data set, we analyze the communication networks associated with 3085 and 69 featured articles ― the articles of highest quality in the English and Japanese Wikipedia, comparing it to the networks of 80154 and 873 articles of lower quality from the English and Japanese Wikipedia, respectively. As the metric to assess the quality of collaboration, we measure the time of quality promotion from when an article is previously promoted until it is promoted to the next level. The study finds that the higher pre-existing social network of editors working on an article is, the faster the articles they work on reach higher quality status, such as featured articles. The more cohesive and more centralized the collaboration network, and the more network members were already collaborating before starting to work together on an article, the faster the article they work on will be promoted or featured.