著者
有田 真己 岩井 浩一 万行 里佳
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11477, (Released:2019-02-08)
参考文献数
27

【目的】在宅運動の実施者・非実施者における運動効果の実感の有無および自己効力感の差を明らかにし,運動効果の実感を認識する日常生活場面および身体部位を特定する。【方法】要支援・要介護者117 名を対象に質問紙調査を行った。調査項目は,属性,在宅運動実施状況,運動効果の実感の有無,在宅運動セルフ・エフィカシーとした。運動効果を実感する者に対しては,実感する日常生活場面および身体部位について聞き取った。【結果】運動効果の実感有りと回答した者は運動の実施者に多く,自己効力感の得点も有意に高かった。運動効果を実感する日常生活場面は,「歩く」,「立ち上がる」,「階段昇降」であり,実感する身体部位は,「下肢」,「腰」,「膝」であった。【結論】実感といった内在的報酬は,身近な日常生活の中で獲得されており,運動の継続に関与していることが示唆される。今後は,運動による効果を実感するタイミングについて明らかにする必要がある。
著者
澤 俊二 磯 博康 伊佐地 隆 大仲 功一 安岡 利一 上岡 裕美子 岩井 浩一 大田 仁史 園田 茂 南雲 直二 嶋本 喬
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.325-338, 2003 (Released:2014-12-10)
参考文献数
41
被引用文献数
3

目的 慢性期脳血管障害者における種々の障害の長期間にわたる変化の実態を明らかにする目的で,心身の評価を入院から発病 5 年までの定期的追跡調査として実施した。調査は継続中であり,今回,慢性脳血管障害者における入院時(発病後平均2.5か月目)および退院時(発病後平均 6 か月目)の心身の障害特性について述べる。対象および方法 対象は,リハビリテーション専門病院である茨城県立医療大学附属病院に,平成11年 9 月から平成12年11月までに初発の脳血管障害で入院した障害が比較的軽度な87人である。その内訳は,男64人,女性23人であり,年齢は42歳から79歳,平均59歳であった。方法は,入院時を起点とした,退院時,発病 1 年時,2 年時,3 年時,4 年時,5 年時の発病 5 年間の前向きコホート調査である。結果 入院から退院にかけて運動麻痺機能,一般的知能,痴呆が有意に改善した。また,ADL(日常生活活動)と作業遂行度・作業満足度が有意に改善した。一方,明らかな変化を認めなかったのは,うつ状態であり入退院時とも40%と高かった。また,麻痺手の障害受容度も変化がなく,QOL は低いままであった。逆に,対象者を精神的に支える情緒的支援ネットワークが有意に低下していた。考察 発病後平均 6 か月目である退院時における慢性脳血管障害者の特徴として,機能障害,能力低下の改善が認められたものの,うつ状態,QOL は変化がみられず推移し,また,情緒的支援ネットワークは低下したことが挙げられる。したがって,退院後に閉じこもりにつながる可能性が高く,閉じこもりに対する入院中の予防的対策の重要性が示唆された。
著者
新井 宏昌 渡邉 信晃 高本 恵美 真鍋 芳明 前村 公彦 岩井 浩一 宮下 憲 尾縣 貢
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.335-346, 2004-07-10 (Released:2017-09-27)

A study was conducted to investigate the changes in anthropometric factors, physical fitness, and sprint ability and motion during the preparatory and competitive periods in two Japanese female elite sprinters. The measurements were carried out from the preparatory period to the competitive period three times. The main results were as follows : 1) In both athletes, sprint speed decreased after the preparatory period and increased in the competitive period. 2) High-intensity sprint training during the competitive period led to hypertrophy of the psoas major muscle and improvement of anaerobic power of the upper limbs. 3) During the competitive period in both athletes, the knee continued to flex after contacting, and took off while maintaining a minimal angle. These results suggest that the performance of elite sprinters changes through each training period, and is influenced by a combination of anthropometric factors, physical fitness and sprint motion.
著者
滝澤 恵美 岩井 浩一 伊東 元
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.19-26, 2003-03
被引用文献数
3

転倒経験と高齢者自身の主観的な歩行評価を調査し, 時間的・空間的歩行変数が示す歩行パターンとの関係を検討することを目的とした。対象者は屋外独歩可能な65歳以上の高齢者39名とした。主観的歩行評価は歩行中に「よくつまずくと思いますか?」「転びそうだと思いますか?」の2項目を質問した。転倒は「過去1年間に何回転びましたか?」と質問し, 転倒経験が1回以上の者を転倒経験有りとした。時間的歩行変数は自由歩行速度と最大歩行速度, 空間的歩行変数は歩幅, 重複歩距離, 歩隔の平均値, 歩幅と重複歩距離のばらつき(変動係数)を計測した。転倒経験が有った者は11名(28%)であった。転倒経験は有るが現在「つまずきそうにない。」「転びそうにない。」と感じている者は転倒経験者の約半数存在した。しかし, この様なケースを特微づける時間的・空間的歩行変数は存在せず, 転倒経験と高齢者自身の主観的な歩行評価が歩行パターンに影響を与えるとは言えなかった。
著者
岩井 浩一 大谷 学 和田野 安良 岩村 幸雄
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.33-44, 2002-03

我々は, 健康な成人を対象に, 持久的運動負荷を加えることによって, ミトコンドリアDNA(mtDNA)に4977-bpの欠失(common deletion)が発現し, 数日後にその欠失が消失することを見いだした。その一連の実験の際, 2名の被験者において, common deletionの欠失配列とは異なる長さの配列が検出された。そこで, 本研究では, この塩基配列の構造について詳細な分析を試みた。まず, シークエンス分析を行い. mtDNA様配列の塩基配列を決定したところ, 2名の被験者においてこの塩基配列は全く同一であった。さらに詳細に検討を行ったところ, この塩基配列はmtDNAの塩基配列とかなり一致していることが明らかになった(類似度:88%)。また, これらの塩基配列をもとにアミノ酸配列を予測し, 読み枠(ORF)解析によりその詳細な構造を探った。これらの結果から, このmtDNA様配列は, 生物の進化の過程でmtDNAの遺伝子が核DNAに挿入されたもので, その変異が現在まで引き続いて核DNA中に組み込まれている可能性が示唆された。
著者
滝澤 恵美 岩井 浩一 横塚 美恵子 伊東 元
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.61-68, 2002-03
被引用文献数
1

歩行パターンの変動が高齢者における将来の転倒を予測するという報告がある。そこで, 本研究は歩行パターンの変動と身体運動機能の関係を調べ, 歩行の安全性や安定性の観点から運動指導する糸口を検討することを目的とした。地域在住の65歳以上の健康な高齢者90名を対象に, 自由歩行時における重複歩距離と歩幅の連続10歩の変動を変動係数(CV)で算出した。身体運動機能は, 筋力, 平衡性, リズム形成, 可動性の4項目を測定し, 歩行パターンの変動との関係を調べた。歩幅CVは, 開眼片足立ち時間と負の関係を認めたことから, 歩幅CVが示す歩行パターンの変動は身体運動機能4項目のなかで平衡性の低下がより関係していることが推察された。今後, 平衡性に注目した運動プログラムの実施, 杖や装具の利用による歩行パターンの変動の変化について検討する必要がある。
著者
岩井 浩 小川 晃一 畠中 順子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.89, no.5, pp.784-793, 2006-05-01
被引用文献数
4

携帯電話端末を人体の正面で保持する姿勢(PDA:Personal Digital Assistance姿勢)を高精度に模擬したi携帯電話端末アンテナ電磁評価用のリアル形状上半身擬似人体を作製した.寸法は日本人34,000人の統計データの平均値に基づいており,44人の20〜30歳代男性に対してPDA姿勢で38個所に及ぶ計測部位の計測値の平均を用いて決定した.擬似人体の肩と肘にそれぞれ上下・前後に移動可能となる機構を設け,手首が仰角方向に回転可能となる機構を設けることにより,姿勢の個人差により生じる端末と人体との相対位置関係を調整可能とした.直方体状の金属筐体に装着された素子長が1/4波長のホイップアンテナを用いて擬似人体の放射特性を検証した結果,日本人の平均に近い身長及び体重を有する人体と放射指向性及びPAG(Pattern Average Gain)がよく一致していることを確認した.
著者
岩井 浩一 澤田 雄二 野々村 典子 石川 演美 山元 由美子 長谷 龍太郎 大橋 ゆかり 才津 芳昭 N.D.パリー 海山 宏之 宮尾 正彦 藤井 恭子 紙屋 克子 落合 幸子
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.57-67, 2001-03

看護職の職業的アイデンティティを確立することは, 看護実践の基盤として極めて重要であると考えられるが, 看護職の職業的アイデンティティの概念や構造は必ずしも明確になっていない。そこで, 現在様々な立場にある看護職を対象に調査を行い, 看護職の職業的アイデンティティの構造を探るとともに, 職業的アイデンティティ尺度を作成した。因子分析の結果をもとに, 1)看護職の職業選択と誇り, 2)看護技術への自負, 3)患者に貢献する職業としての連帯感, 4)学問に貢献する職業としての認知, 5)患者に必要とされる存在の認知, という5つの下位尺度が抽出された。これらの下位尺度に高い因子負荷量を示した項目について信頼性係数を算出したところ, α係数は0.78〜0.89といずれも高い値を示しており, また尺度全体としては0.94と信頼性が高いことが確認された。さらに, 因子得点を算出し, 看護職としての臨床経験年数や看護教員としての教育経験年数などの変数との関連を探ったところ, 看護職の職業選択と誇り, 看護技術への自負, 患者に貢献する職業としての連帯感, および学問に貢献する職業としての認知という4つの因子は, 年齢, 臨床経験年数, および教育経験年数と有意な相関が認められたが, 患者に必要とされる存在の認知因子は年齢および臨床経験年数とのみ関連が見られた。各因子とも, 看護学生群でスコアが低く, どのようにして職業的アイデンティティが高まっていくかを探ることが今後の課題といえる。