著者
望月 登志子
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.53-70, 1989

In order to clarify the characteristics of perception of visual space in the early or congenitally blind who have just gained sight after surgery, a series of experiments covering a period of over 10 years were conducted. Subject KT in this paper, who lost her sight binocularly due to congenital cataract, received the operation on her left eye at the age of 15. The following results were obtained: (1) The perceived size of an object placed at various distances on a table decreases when the physical distance exceeds 20cm approximately. The ratio of perceived sizes to physical distances demonstrates that the size constancy is not so high as that of the normally sighted adult. (2) Color perception was slightly easier than that of shape, but it became difficult when the observation distance (D) extended 60cm and when the size of color paper was small. (3) Identification of the shape of a figure was difficult when the figure was presented at D>35cm. At a near distance she could scan the shape as a whole, but at a far distance, KT had to employ the strategy of partial scanning.
著者
望月 登志子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
Japanese Psychological Research (ISSN:00215368)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.10-25, 1973

Perception is treated as a joint function of the value orientation of the subject and the value of stimulus words. Three perceptual mechanisms: perceptual selection, perceptual fixation, and perceptual resonance are measured by recognition, memory, and association, respectively. The results of the study are as follows: The three perceptual mechanisms are facilitated when the subject has high-or low-value orientation to the stimulus words and when the stimulus words have value and meaning. That is, high-or low-valued stimulus words are fast perceived, long memorized and are likely to be associated with some other words.
著者
望月 登志子
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.89-101, 1997

鏡映像の位置を鏡面上に定位し,何の像であるかを織別する活動に関して,開眼少女MOが観察と実験場面で示した結果は次のように要約することができる.(1)自己の鏡映像に初めて対面したときのMOは,鏡そのものを漠然と見るだけこ留まり,映像の位置を定位することもできず,それを自分の映像として認識することは一層困難であった.(2)映像の位置を何とか定位できるようになった段階で,当初対象を探索した場所は鏡の表面乃至は背後の空間であり.鏡と対面する側の手前の空間に対象を探索し始めたのは後の段階であった.(3)映像を鏡の表面上に定位できるようになっても,最初はその映像の対象を自己の動きを模倣する他者であると(実在化して)捉えていた.しかし,触っても鏡面上に対象を捉えることができないことを知ったMOは,鏡の背後にそれを視・触覚的に探索することを始めた.だが,そこにも実対象を捉えることができないことを知ると,恐怖の念を示しつつも鏡の映像機能に気づき始め,それは鏡が映し出した映像であることを徐々に認めるようになった.(4)ただし,映像を見てそれが誰であるかを識別することはまだ困難であった.2年余りの間に断続的に行なわれた実験的試行を経て,自己の映像であることの認識は発生しており,他者像に比べて自己像の認識の方が若干容易である可能性が窺える.ただし自己像については,洋服の色と身体の動きとを容易に照合できることが判断を有利にしている可能性がある.とは言え,顔の形態的特徴に基づいてひとの認識がなされているわけではなく,他者の識別には,背の高さや髪の毛の長さも手がかりとして援用された.(5)MOは,鏡に映る動く対象を最初はすべて「人」として捉えていたが,「人」に限らず,鏡に対面している「事物」や「風景」なども映るという鏡の「映像機能」を理解するに至ったのは後の段階においてであった.その意味では,初期の知覚過程にとって鏡映像の認知が難しいのは必ずしも「人」を対象にした為ではないことを示唆するものである.鏡の映像機能を理解するまでには,自分が手に持っている事物もその鏡と対面する側面が映し出されるという事実や,自分の背後にあることをすでに知っている樹木やカーテンも自分とともに映っている,という現象にMOは気づいている.実験場面で得たこのような体験は,映像の実在化を否定して対象と映像を分離して捉え,映像と対象の空間的位置関係を了解することに一つの転機をもたらした.しかし,鏡映像と対象では,前後,左右関係が逆になることに気づき始めたのはさらに後の段階であった.(6)現在でほ,鏡の反射機能及び実像と映像の空間関係についてMOはある程度の理解を得たと考えられるが,鏡をモニターとして道具的に使用するまでには未だ至っていない.
著者
望月 登志子
出版者
日本女子大学
雑誌
人間研究 (ISSN:02864916)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.50-98, 1985-03
著者
望月 登志子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第9回大会
巻号頁・発行日
pp.99, 2011 (Released:2011-10-02)

「かわいい」という印象を与える平面図形の知覚特性を,現代の20歳前半の女性対象にして,その大きさと色彩の側面から検討した.実験の結果,大きさについては実用性に適したサイズより約30%小さいものが,色彩についてはピンクが最も高い評価を得る.
著者
望月 登志子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.126-126, 2010

Ebbinghausの円対比錯視現象(一般に,中央の円:主円の大きさは,外側にそれより小さい円群:条件円が配置されると過大視され,条件円が大きいときには過小視が生じる)を通じて,視覚による大きさ判断に及ぼす触覚情報の影響を調べた.つまり,主円の大きさ判断に生じる錯視量は,見ながら同時に触る円の大きさによって,一定の偏向性を示すか否かが検討された.実験の結果,条件円の大きさ変化に伴い,主円の大きさ錯視現象は過大視から過小視へと移行し,その点では視覚のみによるときと変わらない.しかし,触覚情報が付加されると,錯視量は量的に補正されることが示された.