著者
杉田 繁治 尹 載秀 劉 仁善 全 京秀 高 恵星 (全 恵星) 朝倉 敏夫 嶋 陸奥彦 KOH Chun He-sung CHUN Kyung-soo YOON Jae-soo YU In-sun
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的は、一つに18世紀における中国、日本、韓国、ヴェトナムの四ケ国の刑律および刑事判例を使い、それぞれの国の家族・親族の構造を折出し比較すること、二つに18世紀の東アジアにおける刑律および刑事判例のデータベースを作成することにある。ことに第一の目的において、刑律および刑事判例を使うことによって、これまでなされてきた上層階級ばかりでなく、すべての社会階層における東アジアの家族・親族の比較を考えている。これら四ケ国は、7世紀に中国の『唐律』を受容し、それぞれの国の要求および状況に即しこれを修正し、17・18世紀にはそれぞれの国における刑律が確立し、刑事判例がだされている。これらの刑律と刑事判例の中から、本研究の目的に合致し、最も信頼すべき、かつ比較に供する史料を慎重に選択し、四ケ国において共通する漢字による原本をコンピュータに入力し分析することが、本研究の一義的な作業となる。これにそって今年度は、昨年度に続き、第3次、第4次、第5次の三回のワークショップで以下の研究作業を進めた。1.各国の刑律および刑事判例のうち、コンピュータに入力する史料を特定し、入力作業を行う。そのサンプルとして、韓国の『増補文献備考:刑考』とヴェトナムの『黎朝刑律』に加えて、韓国の『続大典』『秋官録』『審理録』、中国の『刑案匯覧』『清律』、日本の『御仕置例類集』を選択する。そして、それらの史料を基とした用語解の作成と、参考とすべき各国の刑律・刑事判例の書誌解題の作成する。なお、史料の選択の過程で、ヴェトナムの法が『唐律』に、韓国の法が『明律』に基づいていることから、これらの法を考慮すべきであることを確認する。2.コンピュータに入力する時のコード化の開発とその分析方法を検討する。3.韓国とヴェトナムの史料の具体的入力と編集を行う。中国、日本の史料についても順次入力と編集の作業を進めていく。4.四ケ国それぞれにおける親族研究の回顧と展望をする。5.四ケ国それぞれにおける刑法の展開についての研究の回顧と展望をする。また、以下の点について討議を行った。1.本研究に使用する史料が総合的な法規の実行記録であるため現代西洋の概念との対照が困難であり、法と文化に関する概念の再検討が必要であることを確認する。2.四ケ国における親族の概念の違いが明らかになる。これに関して、さらに社会学、歴史学など各国の専門家との討議が必要であることを確認する。3.コンピュータに入力するための刑律・刑事判例の構文解釈をどのように行うかを各国の法学研究者に諮問し、批判と教示をあおぐ。4.入力・出力の一貫性のため四ケ国の漢字使用の対照表を作成する。四ケ国における漢字のコンピュータ入力の互換性について、今後さらに検討していく。本研究は学際的な研究であり、その構成員も幅広い学問分野から構成されているが、研究を効率的に推進するために、研究作業の分担とともに、研究成果の発表と最終報告の執筆についても試案ではあるが、すでに調整してある。なお、本研究は平成9年度からも2年間の予定で継続していく計画であるが、そこでは本研究で入力されたデータを出力し、これを分析するとともに、さらに入力のコード化を比較文化研究に使用できるよう再検討し、より汎用性と精度の高いデータベースの作成を行い、このデータベースに基づいて、各研究者がそれぞれの学問分野においてテーマを定めて研究を展開していく予定である。
著者
朝倉 敏夫
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.77-80, 2018-12-26 (Released:2019-01-25)
参考文献数
11

Reasons for people to choose food include both biological and cultural functions. Through experiences studying Korean society from the standpoint of cultural anthropology, I would like to introduce the studies on the cultural aspects of food selection, and consider the existence where Koreans ask the reason “Why do they eat it” as an example of dog meat diet.
著者
朝倉 敏夫 太田 心平 岡田 浩樹 島村 恭則 林 史樹 韓 景旭 岡田 浩樹 島村 恭則 林 史樹
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

東アジアのコリアン・ネットワークについて、既存の研究では明らかとなっていなかった、ないし否定されてきた3点が明らかとなった。越域性、多重性、主体性の3点である。この研究成果の主たる報告書、および現地還元活動として、『韓民族海外同胞の現住所―当事者と日本の研究者の声』(學研文化社、2012)を、韓国語にて出版した。
著者
氏家 等 朝倉 敏夫 村上 孝一 山田 伸一 池田 貴夫 會田 理人
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

日本時代から現在に至るサハリン朝鮮民族の生活文化の変遷について、サハリン州や帰還者の住む韓国安山市において、約30名のサハリン朝鮮人の方々から基礎的情報を収集し、記録にとどめてきた。その結果、朝鮮文化のなかでも、オンドルや頭上運搬のような日本時代ないしソ連時代初期に失われた文化要素が少なくない一方で、日本→ソ連→ロシア時代を通じて、(1)日本時代を経験した多くの朝鮮人がウズベキスタンの朝鮮人から餅米を取り寄せ、臼と杵を使って餅を掲き続けてきたこと、(2)ロシア人の墓とは対照的に朝鮮人の墓は盛り土の前に墓石を立てる朝鮮半島方式を守ってきたこと、(3)還暦の行事を朝鮮方式で行い続けてきたなど、継続して守ってきた文化があったことを確認し、食文化や精神文化に関する文化要素は残り、住生活、衣生活などにおいてはその継承が難しかったことを明らかにした。一方、サハリン朝鮮民族は、多様な民族的関係史のなかで、韓国スタイル、北朝鮮スタイル、日本スタイル、ロシア・スタイルをそれぞれ重層的に取り入れた多重化したライフスタイルを構築してきた。また、ペレストロイカ以降の自由主義経済の展開を通じ、韓国人、北朝鮮人、沿海州の朝鮮人、中国人、日本人との交流関係が定着し、そのライフスタイルはより多角化の傾向にあることがわかってきた。日本時代を経験した朝鮮人、ソ連時代に生まれ育ち多くを社会主義経済下で過ごした朝鮮人、ペレストロイカ前後に生まれ育ち多くを自由主義経済下で暮らした朝鮮人など、世代間でそのライフスタイルの指向に違いが見られる事実も浮かび上がっている。韓国安山市等に帰還した元サハリン在住者の間では、周囲にロシア文化を流入させ、韓国文化を拒否する人々が相次ぐなどの課題も生じている。これら新たに生じた課題に踏み込むことにより、サハリン朝鮮民族の文化に対する理解がより深まることとなる。