著者
杉山 登志郎
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.219-224, 2019 (Released:2019-04-01)
参考文献数
11

ICD-11によって, ようやく国際的診断基準に複雑性PTSDが登場する. 診断基準が存在しなかったこともあり, 複雑性PTSDに対して, 医療は治療的な対応がほとんどできていなかった. しかし診断基準の登場によって専門家は直ちに対応を求められることになる.筆者は子ども虐待の治療に従事する中で, 多くの子どもとその親の併行治療を行ってきた. 加虐側の親も元被虐待児でありその多くは複雑性PTSDと診断がされる成人であった. 複雑性PTSDについて, その臨床像を紹介し, 筆者が現在たどり着いた複雑性PTSDへの誰でも実施が可能な安全性が高い治療技法の紹介を行った. 基本は, 少量処方, 漢方薬の使用, そして簡易型のトラウマ処理である. この組み合わせによって, 比較的安全な治療が可能である.
著者
杉山 登志郎
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.62-66, 2018 (Released:2018-01-31)
参考文献数
11
被引用文献数
6

The author describes ego-state therapy. This psychotherapy is used for treating multiple personality disorders. The author mentions the theoretical background of this method, and practical points. Initially, ego-state therapy was developed as a type of hypnotherapy, but it evolved as a safe therapeutic method in combination with trauma processing therapies. The author presents a case study, and discusses the clinical significance of this treatment.
著者
杉山 登志郎
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.179-184, 2014 (Released:2015-03-13)
参考文献数
11

近年の罹病率研究では,発達障害は子どもの 1 割を越えるという驚くべき頻度が示される。これだけ一般的な問題は,多因子モデルが適合することが知られている。多因子モデルによって示される,より広範な素因を有するグループを筆者は発達凸凹と呼んできた。2013年に発表された新しい診断基準 DSM–5 では,多元診断がうたわれており,これは多因子モデルを前提としており,発達凸凹というとらえ方にも合致する。  発達障害の広がりに,支援の側が追いつかない現状がある。特に自閉症スペクトラム障害は,その特異な認知特性を考慮しないと,教育そのものが成立しない。さらに最近,発達障害と心的トラウマとが掛け算になった症例に出会うことが多くなった。これらの難治性症例の臨床的な特徴を紹介し,その治療について述べた。
著者
中村 和彦 杉山 登志郎
出版者
弘前大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

虐待関連性発達障害(自閉症様症状およびADHD様症状)を呈する成人患者に対してPET研究を行った。脳内ドパミンD1受容体の増減で、虐待関連性発達障害の病態がわかり、鑑別ができる可能性がある。虐待関連性発達障害のトラウマ処理の技法として、短時間で行うチャンスEMDRを開発しトラウマ処理への効果を見出した。少量薬物療法について、神田橋條冶による漢方処方のトラウマへの効果、少量抗精神病薬の併存症への効果を見出した。
著者
杉山 登志郎 堀田 洋
出版者
一般社団法人 日本小児精神神経学会
雑誌
小児の精神と神経 (ISSN:05599040)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.15-23, 2019 (Released:2019-04-04)
参考文献数
15

わが国の子ども虐待は疫学統計の常識を覆す増加を続けている.われわれは,表向きは発達障害であるが,治療的に取り組んでみると,親子とも背後に子ども虐待の影響が認められる親子への併行治療に取り組んできた.子ども虐待によって生じる愛着障害から始まる一連の臨床像の推移は,発達性トラウマ障害(developmental trauma disorder)として知られている.その最終的な臨床像は,複雑性PTSDである.ICD-11の診断基準には,従来のPTSDの3症状(侵入症状,過覚醒,回避)に加え,気分変動と他者との関係の障害および,自己価値の障害の3者が加えられた.われわれは,これらの親子に対して,安全に実施できる治療手技について試行錯誤を繰り返してきた.発達性トラウマ障害と複雑性PTSDの臨床像を紹介し,治療を実施するうえでの留意点を説明した.さらに,簡易型トラウマ処理を組み込んだ,安全に外来臨床で実施が可能な,複雑性PTSDへの治療パッケージを提示した.
著者
杉山 登志郎
出版者
日本コミュニケーション障害学会
雑誌
聴能言語学研究 (ISSN:09128204)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.35-40, 2002-04-25 (Released:2009-11-18)
参考文献数
16

高機能広汎性発達障害への言語治療について私見を述べた.自閉症児への言語治療はすでに長い歴史を有する.集中的な治療が自閉症の根本治療としてもてはやされた時代もあったが,現在では他の発達障害と同様に,自閉症にもコミュニケーション全体の改善を行う一環として行われることが多くなった.もちろん従来の構音治療や語理解訓練も重要ではあるが,自閉症の言語障害の中核が語用論的障害であることが明らかになった今日,この語用障害への言語治療ができなくては,自閉症のコミュニケーション指導にはならないであろう.新世紀を迎え,自閉症児への言語治療が新たな展開をみせることを期待するものである.
著者
杉山 登志郎 堀田 洋
出版者
一般社団法人 日本小児精神神経学会
雑誌
小児の精神と神経 (ISSN:05599040)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.15-23, 2019

わが国の子ども虐待は疫学統計の常識を覆す増加を続けている.われわれは,表向きは発達障害であるが,治療的に取り組んでみると,親子とも背後に子ども虐待の影響が認められる親子への併行治療に取り組んできた.子ども虐待によって生じる愛着障害から始まる一連の臨床像の推移は,発達性トラウマ障害(developmental trauma disorder)として知られている.その最終的な臨床像は,複雑性PTSDである.ICD-11の診断基準には,従来のPTSDの3症状(侵入症状,過覚醒,回避)に加え,気分変動と他者との関係の障害および,自己価値の障害の3者が加えられた.われわれは,これらの親子に対して,安全に実施できる治療手技について試行錯誤を繰り返してきた.発達性トラウマ障害と複雑性PTSDの臨床像を紹介し,治療を実施するうえでの留意点を説明した.さらに,簡易型トラウマ処理を組み込んだ,安全に外来臨床で実施が可能な,複雑性PTSDへの治療パッケージを提示した.
著者
田村 国三郎 杉山 登 関 誠夫 田矢 一夫 山田 和俊
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.662-664, 1959

6-アミノサリチル酸のアンモニウム塩のアセトン溶液を室温に放置すると,6-アミノサリチル酸のアンモニウム塩とアセトンとから1分子の水が脱離して縮合した縮合生成物C10H14O3N2(I)が得られる。Iは塩酸塩C10H14O3N2・2HCI(II)を与える。Iの希硫酸溶液を熱すると分解して炭酸ガス,硫酸アンモニウム,アセトンおよびメタアミノフェノールを生ずる。IIは酢酸ナトリウム.塩化ベンゾィルによりIのモノベンゾィル誘導体C17H18O5N2(III)を与える。Iをピリジン・塩化ベンゾィルによりベンゾィル化すると・トリベンゾィル誘導体の無水物C31H24O5N2(IV)が得られる。IにSchotten・Baumann法により塩化ベンゾィルを反応させると・ベンズアミドとC34H32O9N2の組成の物質(VIII)を生ずる。これらの物質はまたIVにアルカリを作用させても得られた.
著者
若山 和樹 篠崎 志美 杉山 登志郎 山田 智子
出版者
一般社団法人 日本小児精神神経学会
雑誌
小児の精神と神経 (ISSN:05599040)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.129-137, 2023-07-01 (Released:2023-07-14)
参考文献数
16

自閉スペクトラム症(ASD)の症例に併存した解離性同一性障害(DID)の症例を集積し比較検討した.その結果,深刻なトラウマ体験がみられないにも関わらずファンタジーの没頭の延長上にDIDが生じた症例が存在することが確認された.その一方で,重大なトラウマ的体験があり,30人から50人以上など,極めて多くの数の部分人格が認められる症例の存在に気づき,われわれはSTP (Status Tot Personalities)解離と命名した.症例の検討から,トラウマ被曝の重症化に伴いDIDは重症化することが明らかになった.ASDに併存したDIDは,ASD独自のまとまりに欠けた自己意識のあり方を基盤にして生じること,その基盤の上にさまざまなレベルのトラウマ体験が絡むことで,独自のDIDが作られるという可能性を検討した.
著者
杉山 登志郎
出版者
日本発達障害学会
雑誌
発達障害研究 = Japanese Journal on Developmental Disabilities (ISSN:03879682)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.111-120, 2008-05-31
参考文献数
24
被引用文献数
2