著者
草間 太郎 相田 潤 東 大介 佐藤 弥生子 小野寺 保 杉山 賢明 坪谷 透 髙橋 達也 小坂 健
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.26-32, 2020-01-15 (Released:2020-02-04)
参考文献数
20

目的 東日本大震災は2011年3月に発生したが,2018年11月現在においても宮城県内では約1,100人の被災者が仮設住宅に入居している。家を失い仮設住宅へ移住することは健康状態を悪化させる可能性があることが報告されている。しかし,仮設住宅入居者の健康状態を長期間にわたって調査した研究はほとんどない。さらに,災害公営住宅入居者まで対象にした研究は我々の知る限り存在しない。本研究の目的は災害公営住宅も含めた応急仮設住宅入居者の震災後からの健康状態の経年推移を明らかにすることである。方法 本研究は宮城県内のプレハブ仮設住宅・民間賃貸借上住宅・災害公営住宅に入居している20歳以上の男女を対象とした繰り返し横断研究である。調査期間は2011年度から2017年度までの7年間である。従属変数として主観的健康感を用い,独立変数として調査年度および入居している住居の種類を用いた。また,共変量として性・年齢を用いた。多変量ロジスティック回帰分析を用いて調整オッズ比(aOR)および95%信頼区間(95%CIs)を算出した。結果 本研究の対象者は延べ179,255人であった。平均年齢は災害公営住宅で一番高く,2017年度で63.0歳であった。主観的健康感の悪い人の割合は民間賃貸借上住宅入居者では経年的に減少していたが,プレハブ仮設住宅入居者においては減少していなかった。また,災害公営住宅入居者はプレハブ仮設住宅・民間賃貸借上住宅入居者に比べて,主観的健康感の悪い人の割合が大きかった。多変量解析の結果,調査年度が新しいほど有意に主観的健康感が良くなっていた(P for trend <0.001)。また,民間賃貸借上住宅入居者とプレハブ仮設住宅入居者の間に有意差は見られなかったが,民間賃貸借上住宅入居者に比べて災害公営住宅入居者では有意に主観的健康感が悪い者が多かった(aOR, 1.20;95%CI, 1.15-1.27)。結論 入居者の健康状態は経年的に改善傾向にあった。しかし,とくに災害公営住宅では健康状態の悪い者の割合が高く,今後も入居者の健康状態をフォローアップし,適切な介入をしていく必要があると考えられる。
著者
大東 雄一郎 大槻 憲一 薮内 裕也 松本 宗明 中本 貴透 北東 大督
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.1171-1176, 2016 (Released:2016-11-30)
参考文献数
15
被引用文献数
3

グリセリン浣腸による直腸損傷から溶血性の急性腎不全を発症した症例を経験したので報告する.患者は58歳,女性.胆石症に対し腹腔鏡下胆嚢摘出術を予定していた.手術前の前処置としてグリセリン浣腸を行ったところ肛門痛と少量の血便を認めたが,予定通り入室し手術を行った.術中より血尿を認め,尿量は少なかった.術後も血尿は続き,血液検査で溶血を認め,ほぼ無尿となった.手術翌日の血液検査,CTで急性腎不全と直腸穿孔を認めた.術前浣腸後の経過から,浣腸による直腸損傷およびグリセリン血中移行による溶血性の急性腎不全と診断した.このため,手術翌日より血液透析を開始し,ハプトグロビンを投与した.直腸穿孔に対しては保存的治療を行った.腎不全・直腸穿孔とも改善し,術後第28病日に退院した.
著者
大久保 美保 安東 大輔 鶴崎 俊哉 志谷 佳久 上野 尚子 永瀬 慎介 濱本 寿治 平田 恭子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0877, 2008 (Released:2008-05-13)

【目的】臨床において、中枢神経疾患による筋緊張の異常は姿勢や動作による影響を受けやすく、日常生活動作や随意運動を遂行する上での障害となることが多い。また、程度も多様で個人差も大きく、各個人の動作時の筋緊張を客観的に評価する必要がある。先行研究では、Wavelet変換を用いて1)関節トルクを筋電信号から推定することができること、2)関節トルクの推定式から屈筋のトルクと伸筋のトルクとに分けることができること、3)これらの推定が同時収縮の場合と漸増抵抗の場合のいずれでも成り立つことの3点が示唆されている。本研究では片麻痺患者に肘関節の屈曲、伸展方向への等尺性収縮を行わせ、前腕に生じる力を計測し表面筋電からの実際の関節トルク値と先行研究のトルクの推定式との値を比較・分析し、運動の効率性を定量的に評価できる可能性の有無や、臨床での有効性を検討することを目的とした。【対象と方法】対象は片麻痺患者5名(男性3名、女性2名、平均年齢62.8±3.4歳)で、上肢のBrunnstrom stage(以下stage)が3~4(stage3が3名、stage4が2名)であった。対象者を背臥位にて患側の肩関節内・外転0度、肘関節90度屈曲、前腕90度回外位にて前腕をロードセル(以下LC)に固定し、肘関節屈筋群と肘関節伸筋群から表面筋電信号(以下SEMG)を導出した。SEMGおよびLC信号は筋電信号計測装置を経由してPCに取り込んだ。導出条件は1:安静後、2:麻痺側上肢ストレッチ後、3:非麻痺側肘関節最大随意収縮後の3条件で、漸増屈曲を5秒間かけて行い、その後、漸増伸展を5秒間かけて行った。力の強さは任意とした。SEMGとLC信号において、各条件ごとに(1)漸増屈曲(2)漸増伸展のそれぞれ5秒間を任意に抽出して0.5秒ずつに区切り10箇所の信号を分析信号とした。このSEMGからwavelet変換を用いて0.5秒間のエネルギー密度の総和(以下TPw)を算出した。LC信号より求めた関節トルクと屈筋群および伸筋群のTPwから対象者毎に回帰式を求め、関節トルクの予測値を算出し、実測値との相関を求めた。【結果】stage3の人では3例とも安静後は相関が得られた(p<.0001)。抵抗運動後はトルクの屈曲相、伸展相の2相性がみられず相関も低かった。Stage4の人では2例とも各条件下で相関が得られた(p<.0001)。各条件下での屈筋と伸筋の最大値を比較すると、屈筋において一方は抵抗運動後、他方はストレッチ後に最大値をとっていた。伸筋においては、一方はストレッチ後、他方は安静後に最大値をとっていた。【考察】stage4では関節トルクの実測値と推定値に強い相関があり、運動の効率性を定量的に評価できる可能性が示唆された。Stage3では静止時の筋緊張の状態や、与えられた環境因子に左右されやすいことが伺え、今後、これらの情報を加味して再検討することが必要であると考えられた。
著者
中嶋 仁 東 大輝 都留 貴志 加納 一則
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100637, 2013

【はじめに、目的】呼吸リハビリテーションプログラム(呼吸リハプログラム)の中で下肢の運動による持久力トレーニングは、エビデンスとして最も推奨されている。その方法は歩行練習、階段昇降練習、自転車エルゴメータ、トレッドミルなどがあるが、その中で最も処方されているのは歩行練習である。近年、歩行運動の一つとしてノルディックウォーキング(NW)が注目され、普及している。NWは、2本のポールを持ち歩行することで下肢だけでなく上肢にも負荷がかかり、通常歩行より高い運動効果が得られるとされている。糖尿病、パーキンソン病、心臓疾患や骨関節疾患のリハビリテーションにおけるNWの有用性が報告されている。しかし、日本における呼吸疾患に対するNWの取り組みや効果を報告したものはない。今回の研究の目的は、呼吸リハプログラムにおけるNWの導入効果について明らかにすることである。【方法】対象は、2週間の包括的呼吸リハ目的で入院した独歩可能な慢性呼吸器疾患患者7名(男性4名、女性3名、平均年齢72±8.6歳、VC:2.3±0.5L、%VC:86.8±31.5%、FEV1.0:1.2±0.6 L、FEV1.0%:53.6±14.1% %FEV1.0:59.0±18.0% )である。認知症、脳血管障害を有するものは本研究より除外した。対象者は入院中に呼吸方法、上下肢の筋力トレーニング、ストレッチや自転車エルゴメータなどの一般的な呼吸リハプログラムに加えNWを行った。NWの指導は、(社)全日本ノルディックウォーク連盟の公認指導員の資格をもつ理学療法士が行った。退院後は、自宅で継続させ週1回の外来フォローを行った。NWを加えた呼吸リハの効果判定として、運動耐容能、下肢筋力、健康関連QOL、身体活動量の評価を入院前1か月と退院後1か月に行った。運動耐容能の評価は6分間歩行テスト(6MWT)、下肢筋力は、ハンドヘルドダイナモメ-ター(アニマ社製μTasMT-1)を用いて膝伸展筋力を測定し体重支持指数(WBI:Weight Bearing Index)を求めた。健康関連QOLは疾患特異的尺度のThe St.George'S Hospital Respiratory Questionnaire(SGRQ)を用いた。身体活動量の評価は、スズケン社製の多メモリー加速度計測装置付き歩数計(ライフコーダー)を用いて計測した。計測値は、入院前1か月間と退院後1か月間の起床から就寝までとし1日の平均歩数を求めた。統計学分析として、入院前と退院後1ヵ月の各評価項目を対応のあるt検定を用いて検討した。【倫理的配慮、説明と同意】今回の研究は、当院の倫理委員会の規定に基づいて実施した。本研究の趣旨、内容、中止基準および個人情報の取り扱いに関して説明を行った上で研究協力の承諾を得た。【結果】WBIは入院前1ヵ月35.7±15.4%から退院後1ヵ月52.4±14.7%と有意に増大した(P<0.01)。6MWTは入院前1ヵ月359.2±181.5mから退院後1ヵ月474.5±123.4mと有意に増大した(P<0.05)。SGRQの総得点は入院前1ヵ月48.1±23.6点から退院後1ヵ月35.0±18.0点と有意に変化した(P<0.05)。 身体活動量は、入院前1ヵ月5386±2485歩から退院後1ヵ月8923±2140歩と有意に増大した(P<0.01)。【考察】全ての対象者が、入院前より退院後に身体活動量が増大しNWを継続して行っていた。NWという新しいアイテムが、対象者の運動意欲や運動の動機づけの刺激となり身体活動量が向上したと考える。NWは通常歩行に比べて同じ歩行速度でも心拍数が有意に高い、酸素摂取量が多い、上肢の筋活動が多い、そして、エネルギー消費が多いが主観的強度に差がないなど高い運動効果が報告されている。また、ポールの使用方法を変えることで運動強度を低強度から高強度と患者状態に合わせて運動することが可能である。このようなことから、通常の呼吸リハプログラムにNWを行うことで、運動耐容能、下肢筋力、健康関連QOL、身体活動量が有意に増大したと考える。しかし、今回の研究では通常の呼吸リハも実施しており、NWそのものの効果を証明したとは言えない。これからの課題は、比較対象試験を行いNWの効果を証明することである。【理学療法学研究としての意義】呼吸リハプログラムにNWを導入した報告は日本には無い。今回の研究の結果、多数ある呼吸リハプログラムの中に、NWが新しい構成要因になりうると考えられることに本研究の意義がある。
著者
中嶋 仁 一圓 未央 奥川 和幸 東 大輝 松本 浩希 真田 将幸 加納 一則 辻 文生 中川 法一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.D3O1160, 2010

【はじめに】包括的呼吸リハビリテーション教育入院(包括的呼吸リハ教育入院)の目的の一つは、運動習慣や健康増進に向けた自己管理能力を身につけることである。そして身体活動量の向上を図り、得られた効果を退院後もできるだけ長く維持させることである。しかし包括的呼吸リハ教育入院における効果報告は、呼吸困難感の軽減、運動耐容能の改善、健康関連QOLおよびADLの改善がほとんどで、身体活動量の変化を報告したものはほとんどない。身体活動量の変化を把握することは、呼吸や運動機能の効果を知るだけでなく情意や心理面に伴う変化を知るうえでも重要である。そこで今回の研究目的は、包括的呼吸リハ教育入院における運動習慣の実態を把握するために、教育入院前と退院後の身体活動量の変化を調査することである。また、運動耐容能、健康関連QOL、ADLの変化も合わせて調査する。<BR>【対象】対象は、当院における包括的呼吸リハ教育目的に入院した独歩可能な慢性呼吸器疾患患者16名(COPD15名 気管支拡張症1名)、男性15名、女性1名、平均年齢69.7 ±13.3歳であった。喫煙者、継続調査が出来なかった者、骨関節障害、脳血管障害を有す者は本研究より除外した。<BR>【方法】運動耐容能、ADL、健康関連QOLの評価を入院前1か月と退院後1か月に行った。運動耐容能の評価は6分間歩行テスト(6MWT)をおこなった。ADLの評価は、千住ADL評価表を用いた。健康関連QOLは疾患特異的尺度のThe St.George'S Hospital Respiratory Questionnaire(SGRQ)を用いた。<BR>身体活動量の評価は、スズケン社製の多メモリー加速度計測装置付き歩数計(ライフコーダー)を用いて計測した。計測値は、入院前1か月間と退院後1か月間の起床から就寝までの1か月間の最大歩数と1日の平均歩数とした。統計学分析は、入院前と退院後の各評価項目の平均値を求めt検定を用いて検討した。<BR>【説明と同意】今回の研究は、当院の倫理委員会の規定に基づいて実施した。本研究の趣旨、内容、中止基準および個人情報の取り扱いに関して説明を行った上で研究協力の承諾を得た。<BR>【結果】6MWTは入院前が258.6±107.3m、退院後が317.6±317.9mであった(P<0.05)。千住ADLテストは、入院前が66.87±16.12点、入院後が78.35±22.28点であった(P<0.05)。SGRQの総得点は入院前が40.18±21.48点、入院後が35.05±18.04点であった(P<0.05)。身体活動状況としての1日の平均歩数は入院前が3416±2639.8歩、入院後が5491±2853.6歩であった(P<0.005)。最大歩数は入院前が5405.5±3751.9歩、退院後が8553.8±4492.9歩であった(P<0.001)。<BR>【考察】当院における包括的呼吸リハ教育入院は2週間であるが、諸家の報告通り運動耐容能、健康関連QOL、ADLは入院前と比較して退院後は有意に改善した。身体活動量は、入院前と比較して退院後は有意に増大した。以上の結果より、多職種がチームを組みさまざまな側面から介入する包括的呼吸リハ教育入院は、自己管理能力を高め運動習慣をつけることが出来たと考えられる。<BR>【理学療法学研究としての意義】本研究の意義は、包括的呼吸リハ教育入院がADLやQOLだけでなく身体活動量も向上させることが明らかになったことである。退院後の身体活動量を把握することは、包括的呼吸リハビリテーション教育入院プログラムを再構築するうえで重要である。<BR>
著者
東 大輝 中川 法一 上野 隆司 濱田 太朗 加納 一則
出版者
社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
雑誌
近畿理学療法学術大会 第48回近畿理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.71, 2008 (Released:2008-09-16)

【目的】 投球動作は、下肢・体幹・上肢の全身の運動連鎖が重要であるとされている。しかし、投球動作で発生する障害に関して、股関節の可動域が投球後の肩関節可動域にどの程度影響しているかという具体的な報告はない。今回の研究目的は、股関節の可動域改善が、投球後の肩関節可動域に与える影響を検討することである。 【対象と方法】 健常成人で、野球経験者男性9名(右投8名・左投1名、平均年齢20.7±1.4歳)とした。 被験者には、投球前に股関節のストレッチングを行う場合(伸張時)と投球前に何もしない場合(非伸張時)の2つの条件下で、75球の全力投球を課した。投球前・投球直後・投球後1日目から4日目までの投球側肩関節の関節可動域測定を行い、経時的変化をおった。また、運動の持続効果を考慮してストレッチングを行う場合とストレッチングを行わない場合の実施順は無作為に選択した。肩関節90°外転位での内旋(2nd IR)および外旋(2nd ER)、90°屈曲位の内旋(3rd IR)の可動域を測定し、各可動域結果を伸張時と非伸張時で比較検討した。ストレッチングの方法は、膝関節伸展位での股関節屈曲(SLR)と股関節外転とした。統計学的分析には、対応のあるt検定と二元配置分散分析を用い、有意水準を5_%_未満とした。 【結果】 伸張時は、ストレッチング前に比べるとSLR、股関節外転ともに可動域は有意に増加していた(p=0.0004)。 2ndIRの投球後1日目は、伸張時で80.5±11.5°、非伸張時では70.0±14.7°と非伸張時が有意に低下していた(p=0.02)。2ndERの投球後2日目では伸張時で132.2±10.3°、非伸張時が123.8±9.6°となり、投球後3日目では、伸張時が137.7±12.0°、非伸張時が127.7±9.3°と非伸張時が有意に低下していた(p=0.01)。可動域の経時的な変化では、2ndIRにおいて、伸張時では投球前後の可動域に有意な低下は認められなかったが、非伸張時では投球前と投球後1日目、投球直後と投球後1日目および2日目、投球後1日目と3日目および4日目、投球後2日目と4日目の間で有意に低下していた(p<0.0001)。 【考察】 今回の結果から、股関節の可動域を向上させることで、投球後の肩関節の可動域低下を抑える効果があることが示された。これは、上肢に依存した投球動作が減少し、ball release時に強いられる外旋筋の遠心性収縮が下肢・体幹などに分散されたと考えられた。過去の報告より、肩関節の可動域制限が、投球障害を誘発するということから、肩関節の可動域低下の抑制は、野球選手における投球障害肩の予防につながる可能性があると言える。そのためにも股関節の可動性向上が重要となる。
著者
徳原 克治 山中 英治 伊東 大輔 小柴 孝友 佐藤 正人 小切 匡史
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.11, pp.1690-1694, 2001-11-01
被引用文献数
15

患者は69歳の男性.1995年頃より, 肛門周囲の皮膚からの排膿, 出血を繰り返し, 1999年3月頃には大豆大の腫瘤が出現した.2000年初めより排膿, 出血が頻回となり腫瘤が増大してきたため, 同年5月当科を受診した.肛門3〜5時方向にかけて表面に潰瘍を有する38×27mm大の腫瘤が存在, その一部を生検したところ中分化腺癌と判明した.また大腸内視鏡で, 肛門縁より20cm口側のS状結腸に2'型進行癌を認め, 生検の結果は中分化腺癌であった.両病巣の組織像が一致したことより, S状結腸癌とその管腔内転移による転移性痔瘻癌と考え, 腹仙骨式直腸切断術を施行した.痔瘻は日常診療においてしばしば遭遇する疾患であるが, 痔瘻に癌が発生した場合は転移性痔瘻癌も念頭に置き大腸検査を施行する必要がある.また大腸癌患者で痔瘻を有する場合は, 痔瘻への転移も考慮にいれた厳重な経過観察が必要であると考えられた.
著者
古元 克好 水野 礼 森 友彦 伊東 大輔 小切 匡史
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.3704-3708, 2009 (Released:2010-05-20)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

10例の急性上腸間膜動脈閉塞症例を検討した.術前診断に有用と考えられたのは腹部CTにおけるsmaller SMV signで,単純CTでも指摘できた.全例が小腸大量切除と大腸部分切除を必要とし救命例6例の平均残存小腸長は75cmで,うち中心静脈栄養を離脱しえた4例は95cm,離脱しえなかった2例は35cmであった.代表例として,中心静脈栄養を離脱できずにいる1例について報告する.68歳男性,腹痛を主訴に来院し腹部単純CTでsmaller SMV signを認め,さらに14時間後のCTで上腸間膜動脈血栓が明らかになったため,発症28時間後に手術を行った.残存小腸が20cmで経口摂取が不可能なため在宅中心静脈栄養中だが,カテーテル感染を繰り返し24回の入れ替えを行っており必ずしも良好なquality of lifeではない.5年以上生存しておりこのような例はまれであるが,肝,腎障害や高カルシウム血症も経験しており短腸症候群の管理の困難さを痛感している.
著者
伊東 大輔 天目 隆平 神原 誠之 横矢 直和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.566, pp.1-6, 2006-01-19
被引用文献数
1

拡張現実感(Augmented Reality : AR)を利用したヒューマンナビゲーションなどの位置に依存した情報提供サービスを実現する上で, 位置に依存した情報を管理するためのオーサリングシステムの必要性が指摘されている.近年, 地図を用いたオーサリングシステムなどの開発も盛んに行われている.しかし, 2次元及び3次元の地図を利用して位置依存情報のオーサリングを行う場合, 地図と現実環境の不一致により, 制作者の意図した提示位置と現実の環境中での提示位置にずれが生じる場合がある.本稿では, 地図情報を利用したシステムとモバイルARシステムを利用した2つのフェーズを切り換えてオーサリングを行うことで, 効率的なオーサリングが可能なシステムの構築を目的とする.第1フェーズでは地図を利用し, 第2フェーズではARを利用してオーサリングを行う.制作者は2種類のクライアントシステムを利用し, 意図した提示位置・姿勢にコンテンツを配置することで, 地図と現実環境の不一致による提示位置のずれ等を解消する.また, プロトタイプシステムを用いた実験結果によりシステムの有用性を示す.
著者
伊東 大介 四倉 達夫 森島 繁生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.122, pp.17-24, 1999-06-17
被引用文献数
1

近年、人間の顔表情をCG (Computer Graphics)にて表現することは映画の特殊効果や、ヒューマンインタフェースのためのエージェントの表現として-般的になっており、そのクオリティは実写に近いレベルまで達している。しかしながらそれらの構築に対しアニメータ等の膨大な労力と資金が必要であり、製作期間も長期間にわたるのが現状である。そこで本論文ではリアルな顔画像生成のため、皮膚組織や表情筋を持つ顔面筋肉モデルを用いて表情表出を行うシステムを構築し、各表情筋の変化に対応した筋電を測定する装置を用いて各々の筋電を測定し、各筋肉の収縮をモデル化する。測定データから顔面筋肉モデルの表情筋をコントロールして、リアルな口形状のモデル化を実現するシステムも可能となった。