著者
藤本 展子 松本 秀明
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100053, 2012 (Released:2013-03-08)

これまで仙台平野に分布する浜堤列の形成時期に関して,松本(1984),伊藤(2006)が研究を進めてきた。松本(1984)は仙台平野の浜堤列を陸側から第Ⅰ浜堤列,第Ⅰ'浜堤列,第Ⅱ浜堤列,第Ⅲ浜堤列に大別し,第Ⅰ浜堤列は5,000~4500年前,第Ⅰ'浜堤列は3,100~3,000年前・前後,第Ⅱ浜堤列は2,800~1,600年前,そして第Ⅲ浜堤列は1,000~700年前から現在にかけて形成されたとした。その後,伊藤(2006)は第Ⅲ浜堤列を内陸側から第Ⅲa,第Ⅲb,そして第Ⅲc浜堤列に細分し,それぞれの形成時期を約1,300~1,100 cal.BP,約1,100 cal.BP以降,そして約350 cal.BP以降とした。 しかしながら,近年の筆者らの仙台平野南部,すなわちわたり平野における自然堤防形成時期等に関する調査で,従来第Ⅱ浜堤列として位置づけられてきた現海岸線から3.3km内陸に位置する柴~曽根付近の浜堤列の形成時期に矛盾が生じるなど,いくつかの問題点が見いだされた。本研究では,従来の結果を踏まえながらも,新たな地形断面の計測ならびに放射性炭素年代測定を行い,当平野における浜堤列の形成時期,すなわち各時代の海岸線の位置を再検討した。
著者
千田 昇 松本 秀明 小原 真一
出版者
THE TOHOKU GEOGRAPHICAL ASSOCIATION
雑誌
東北地理 (ISSN:03872777)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.232-239, 1984-11-25 (Released:2010-04-30)
参考文献数
20
被引用文献数
5 7 4

Sanriku Coast located northeastern part of Honshu-island is one of the typical “rias coast” in Japan. In this area, a small delta plains develop at each enbayment. The Rikuzentakata coastal plain, about 2km from north to south and about 2.5km from east to west, is larger one of these plains. The most part of the plain is lower than 5 meters above the sea-level. A beach ridge is recognized along the present shoreline, and a lagoonal area locates behind it. The Kesen river and the Hamada river flow on the western and eastern part of the plain, respectively (Fig. 1).The sequence of Alluvium along the shoreline is shown in Fig. 4. There are two buried valleys corresponding to each river. Excepting the Basal Gravel, which recognized on the buried valley floor about 10m in thickness, the thickness of Alluvium is about 28m. From their textural characteristics, Alluvium is devided into four layers as follows.(i) Lower Sand layer includes marine shells and shell-fragments, is considered as foreset bed sediments. Shellfragments collected at the upper part of the layer, were dated 7, 660±170 yr B. P. by radiometric method.(ii) Middle Mud layer, including a lot of marine shells, consists of silt or sandy silt. This layer is considered as bottomset bed sediments. At the period of Middle Mud sedimentation, the rate of sea-level rise had been superior to the rate of sediment supply. This period was estimated between 7, 500 and 5, 000 yr B. P.(iii) Upper Sand layer also includes shell-fragments. Sedimentary environment of this layer is considered as delta front (foreset bed). The relative rate of sediment supply during this period, exceeded the rise of sea-level gradually. In other wards, the sea-level rise became slower or nearly stable.(iv) Uppermost layer consists of fluvial deposits. At the primary time of this sedimentary period, the sea-level was slightly dropped (2m-4m) than the final sea-level which recorded at the top of Upper Sand layer (-2.7m a. s. l.). Several shallow valleys, dissected the Upper Sand layer, indicate above.From these, the Holocene sea level change curve was restored as the solid line in Fig. 7. On the other hand, annual subsidence about 0.8mm was calculated from the remeasurement of bench marks (Fig. 6) in and around the plain. If this subsidence have been assumed during Holocene, the sea-level curve would be expressed as the broken line in Fig. 7. The highest sea-level during Holocene is estimated at +1.3m a. s. l. and the age is considered about 5, 000 yr B. P.
著者
松本 秀明
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.720-738, 1984-10-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
19
被引用文献数
20 27

本論は東北地方の5地域の海岸平野を例に,そこに形成されている浜堤列の成因と形成時期を明らかにするものである. 沖積層の露頭観察,堆積物の粒度分析をもとに,過去6,000年間における旧汀線位置・高度の連続的な変化を復元した.その結果,現在を含めて4回の極大をもつ旧汀線高度の上下変動が認められ,これに伴い沖積上部砂層上面に風成・浅海底砂からなる波状の起伏が生じ,その凸部が地表で浜堤列として認められていることが明らかになった.従来,浜堤列は3列に大別されることが多かったが,本論では地表面下に埋没している浜堤列の存在も認められ,各浜堤列形成時の海水準高度は,仙台平野中部地区において,それぞれ+1m, -1.5m, -1m, ±0m (現在)である. 各海岸平野において個別に求められた浜堤列の形成時期には明らかな同時性が認められ,各列の形成時期は,内陸側から5,000~4,500年前, 3,300~3,000年前, 2,600~1,700年前および800年前~現在であることが明らかになった.
著者
中田 高 木庭 元晴 今泉 俊文 曹 華龍 松本 秀明 菅沼 健
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.29-44, 1980
被引用文献数
40

房総半島南部の完新世海成段丘は,相模トラフに沿って発生する過去の大地震に伴う地殻変動の歴史を記録している.地形的証拠および36個の<sup>14</sup>C年代測定を含む年代資料をもとに,本地域の地殻変動の量と様式について考察した.<br> その結果,本地域は, 6,150年前, 4,350年前, 2,850年前および270年前に急激な海水準の相対的低下があり,これらは,大正・元禄型地震による地震性地殻隆起によるものであると考えられる.地震間の安定期間の長さは,前回の地震時における変位量と比例関係にある.各地震直前の年代と相対的海水準高度をもとに,長期的平均隆起速度を最小二乗法を用いて求めたところ, 3.0mm/年という値が得られた.また,長期的平均隆起速度と各地震間において求められた隆起速度との値の差は,当時の海水準変動の傾向を示すものと考えられる.これによれぽ,約2,700年前ごろには海水準は低下傾向にあり,それ以降,上昇傾向にあるとみることができる.なお,同様の地殻変動様式と海水準変動の傾向は,琉球列島・喜界島の離水サンゴ礁においても認めることができた.
著者
松本 秀明
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.72-85, 1981-02-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
16
被引用文献数
9 18

仙台平野における沖積層の堆積構造を明らかにするため,野外調査・ボーリング資料解析および14C年代測定を行なった.これをもとに約1万年前以降の海岸線変化を復元し,後氷期の海水準変化との関係から仙台平野の地形発達を考察した. 仙台平野の沖積層は堆積環境の違いをもとに8層に細分される.とくに海成層の堆積状態に注目し,海域変化を復元した結果,後氷期の急速な海水準上昇による海域の最拡大期は,阿武隈川の埋積谷においては海水準が-10mに達する7,900年前,名取川・七北田川の埋積谷においてはそれぞれ海水準が-7m, -5mに達する7,500年前, 7,200年前にあり,その後は陸側からの土砂による海底埋積速度が海水準上昇速度を相対的に上まわることにより,海水準は上昇しながらも陸域の拡大によって海域は後退し,現在に到るものと考える.
著者
今村 文彦 後藤 和久 松本 秀明 越村 俊一 都司 喜宣 牧 紀男 高橋 智幸 小岩 直人 菅原 大助 都司 嘉宣
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

千年に一度程度発生する低頻度巨大津波災害であるミレニアム津波ハザードの事例を取り挙げ,災害史学から明らかにされる史実に加え,地質学・堆積学・地形学・地震学など科学的な手法に基づいて補完することで,沖縄および東北地方でのミレニアム津波ハザード評価を検討した.まず,八重山諸島において津波で打ち上がったサンゴ化石(津波石)の分布調査および解析により,1771年明和津波に加え,850,1100 yrBPの2期存在する可能性が示された.さらに,仙台平野でも学際的な調査を行い,869年貞観地震津波に加え,1260や2050yrBPされた.2011年東日本大震災で得られた津波被害関数などの検討も実施した.